愛人が子どもと共に遺産相続を主張してきた!その権利は?

こんにちは!

こうのとりです。

 

 

今年は梅雨が長い?という印象がありますが、皆さまはどうお感じになられますか? 

雨が降っていると私の天敵であるヤブ蚊があまり飛ばないのでうれしいのですが、セミも鳴きはじめ、そろそろヤブ蚊たちも出てくるようになってます・・・。

もちろん、そんな時に欠かせないのは蚊取りリキッドなのですが、私はどちらかというと蚊取り線香のほうが好き。

ただ、、蚊取り線香で蚊が死んでいることを見たことないのですが・・・効果はいかほどなのでしょうかね・・・。

 

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【お香の香りは好きなんですが、蚊取り線香を浴びると煙臭くなるので注意です】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は浜本様(仮称:42才)です。

浜本様は突然の事故でご主人を亡くされ、その後、遺産相続を粛々と進めておりましたが、そんな最中、ご主人の愛人を名乗る女性が訪ねてきて、ご主人との間にできた子供の養育費のため、遺産を分けてほしいと依願してきたそうです。

たしかに浜本様はご主人との結婚生活が破綻していたことは認めておられましたが、とはいえども、ご主人の愛人にまで遺産を渡したくはないとのことで、ご相談にいらっしゃいました。

 

さて、まずは愛人への遺産相続を考える前に、配偶者と愛人、そして内縁の妻について整理しておきましょう。

配偶者は紛れもなく民法上の婚姻関係にある異性を指し、愛人ただの恋愛関係にある異性を指します。そして、内縁の妻というのは、民法上の婚姻関係にはないものの、同居をして生計を一にしているなど、いわゆる事実婚の状態にある異性を指します。

つまり、遺産相続の権利を持つ法定相続人という観点からいえば、愛人や内縁の妻は法定相続人とされないため、遺産を相続する権利を有しないことになります。

 

しかし、愛人や内縁の妻が遺産を相続する方法が無いわけでは無く、その主たる方法が遺言であるといえます。

もし、被相続人が愛人や内縁の妻に「遺産を全て渡す」と書かれている形式上有効な遺言が残されていた場合、その遺言が尊重されることになりますが、もちろん、「全て渡す」という意思が残されていても、全てが記載どおりに尊重されるわけではありません。

被相続人をそそのかした愛人が悪いのか、結婚生活を破綻させていた配偶者が悪いのかという論点はさておき、法定相続人については遺留分という最低限の権利が残されているのです。そして、遺留分は法定相続分の2分の1と決められています。この権利がある以上、法定相続人は遺産を相続する強い立場を有することになります。

 

また、被相続人と生計を一にしていた内縁の妻に限っては、被相続人の身の回りの世話をしていたということで、特別縁故者への相続財産分与が認められるケースがあります。

ただし、これが認められるためには、被相続人に法定相続人がいないことを条件とし、家庭裁判所にて特別縁故者と認められる手続きが必要です。

 

それでは、愛人や内縁の妻の子どもについては、どうでしょう?

被相続人と愛人の関係がたとえ不埒であったとしても、彼らの子どもにも罪を負わせるのはあまりにも酷い仕打ちといえるでしょう。

そのため、愛人や内縁の妻の子どもについては、配偶者との間にできた子どもである嫡出子に対して、非嫡出子という区分であっても遺産相続が認められます。

さらに、2013年9月5日の法改正によって、嫡出子と非嫡出子が受け取れる相続分の差異が無くなり、被相続人の子どもとして法定相続を受けることが可能となりました。

 

ただし、非嫡出子として相続が認められるためには、父親が自分の子どもであると認知することが必要です。

認知がなされていない場合には、その子どもは遺産相続はおろか、父親に対する扶養請求すらできません。

その場合、認知の訴えを裁判所に対して起こすことになりますが、ここでは割愛とさせていただきます。

 

このように、いくら婚姻生活が破綻していたとはいえ、法定相続人の権利はしっかりと守られているため、正しく遺産を相続したいのであれば、法的に婚姻関係の解消、もしくは結ぶことが求められます。

 

相談者の浜本様は、遺産が全て自分のものにならなかったことに不満はあったようですが、認知されていた子どもにまでその責任を負わせることには自責の念があったようで、遺留分を相続することでご納得されたということです。 

 

本日は、ここまでといたしましょう。

遺産相続?生前贈与?お得に遺産を残す特例の活用方法

こんにちは!

こうのとりです。

 

東京のコロナウィルス感染者が急増し、全国の1日の感染者もとうとう1,000人超えをするなか、ニューノーマルな生活への対応の難しさが浮き彫りになっていますね。

若い人ほど重篤化する可能性がないという情報が先行してしまっているので、若い人たちがコロナに対しての危機意識を削ぐ結果となっている気がします。

少なくとも人を感染させるリスクを考えて行動してほしいものですが、人の善意を拠り所にする方法はあまりにも短絡的で、せめて検査が手軽に、かつ強制的に行えるようになってほしいなと思うばかりです。

 

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【実家近くの駅は超ローカル線です。今年は規制も憚られますね】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は内村様(仮称:65才)です。

内村様はご自身のお子様たちが遺産相続で紛争とならないようにするために、遺言書をしたためておられましたが、遺言書より確実に遺産を相続すべく、生前贈与について検討をされるようになったそうです。

ただし、遺産相続であれば基礎控除額が大きいため税金の心配は無かったものの、生前贈与については税金がどのように課されるのか、また損をすることが無いかなど不安も多いにあるとのことで、今回ご相談に参られました。

 

たしかに、遺産相続に課される相続税の基礎控除については、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」となっており、ほとんどの方がこの基礎控除の範囲内に収まることから、税金の心配はいりません。

一方、生前贈与については、相続税ではなく贈与税が科されることになるため、贈与税の基礎控除を理解しておかなければ課税対象となり、単純に損をすることになってしまうのです。

そして、贈与税の基礎控除はたったの110万円(暦年贈与の場合、1年間の基礎控除額)ですから、基礎控除を比べるだけでも、圧倒的に遺産相続のほうが遺産を多く残せることになります。

 

しかし、生前贈与にはいくつかの特例があるため、これらの特例を有効活用することで、一定の遺産を損なく生前贈与することが可能となっています。この特例を利用して生前贈与をし、残った遺産については通常通り遺産相続をしてもらえば、遺産の金額も抑えられ紛争のリスクも抑えられるというわけです。

 

では、実際にどのような特例があるかですが、まず不動産の贈与として効果が高いのが、配偶者控除の特例です。

この特例は、婚姻期間20年以上の夫婦間において居住用不動産を贈与する場合に、2,000万円まで非課税となるもので、主に夫婦で居住していた実家などが、遺産相続の対象とならないようにするため、定められた特例です。

 

続いて、教育資金の贈与非課税の特例も利用価値があります。

父母や祖父母などの直系尊属から、教育資金として一括贈与を受ける場合1,500万円までが非課税となるため、お孫さんに対して学費を出してあげたいという場合などには特に有効に機能します。

注意すべきは、平成25年4月1日から令和3年3月31日までという期限が決められていることと、受贈者は30歳未満の方に限るということ、専用口座が必要となることです。

 

さらに、 結婚・子育て資金の贈与非課税の特例も活用したいところです。

こちらは、父母や祖父母などの直系尊属から、結婚・子育て資金として一括贈与を受ける場合1,000万円までが非課税となるため、大いに活用可能な特例です。

こちらも、平成25年4月1日から令和3年3月31日までという期限が決められており、受贈者は20歳以上50歳未満の方と決められていること、専用口座が必要となることには注意が必要です。

 

加えて、住宅取得等資金の贈与非課税の特例も活用すべきでしょう。

父母や祖父母などの直系尊属から、住宅取得等資金として一括贈与を受ける場合最大3,000万円までが非課税となる特例もあります。

同じく、平成27年1月1日から令和3年12月31日までという期限が決められており、省エネ等住宅か否か、また、契約の締結日によって非課税限度額が大きく異なるため、十分な注意が必要です。

 

これらの特例は、少子化や受贈者の高齢化など、様々な社会問題の対策として講じられているものでもありますので、幅広くこれらの特例措置を利用していただくことにより、生前贈与を促すものとなります。

 

ご相談者の内村様は今回のお話をご理解され、奥様に不動産の生前贈与と、お孫さんに教育資金の生前贈与をすることになさったそうです。

残った金額は取るに足らないため、お子様たちで争うことはないだろうと安心されておりました。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

相続登記って必要あるんですか?備えあれば憂いなし 

こんにちは!

こうのとりです。

 

在宅ワークが増えると、日本の四季を感じられる機会も少なくなってる気がします。

通勤はストレスでしかないと思っていたけど、風景を見たり、あれこれ考える時間にはなっていたのかなと思います。ただし、あくまでも満員電車でなければの話ですが(汗)

 

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【私が一番好きな長野の戸隠神社。自然の偉大さを体感できます。また行きたいです。】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は旭様(仮称:35才)です。

旭様は遺産分割協議にて、土地を相続することになりましたが、相続に際して名義を自身に変更しておくべきか否か、周囲の方々に聞いてみても意見が割れているということで、ご相談に参られました。

 

不動産を所有している方が亡くなられた際に、相続人が不動産を相続し、名義変更をする手続きについては、相続登記と呼ばれています。

相続登記については、ズバリ、義務ではありません。罰則もありません。

しかし、将来的に問題の火種となる可能性があるため、本来あるべき名義にしておいたほうが良いといえるでしょう。備えあれば憂いなしということです。

 

もし、相続登記をしない場合、相続人全員が不動産を共有しているとみなされてしまいます。相続人同士で話し合いが済んでいたとしても、万が一その相続人の誰かが他界してしまえば、相続の権利は他界した相続人の妻や子供に移ります。

つまり、相続登記をしていなかったことで、2次相続3次相続の際に紛糾する可能性や、いざ登記をしようと思った際に手間がかかることになるのです。

また、相続人全員が不動産を共有している状態であるとみなされることで、相続人の中に債務を払いきれない方がいた場合には、差し押さえの対象となる可能性があることにも気を付けなければなりません。

もちろん、相続した不動産を処分する場合に、自身が所有しているという登記が必要であることはいうまでもありません。

 

このように、相続登記をしないことで様々なリスクが発生、かつ混在する可能性があります。そのため、相続登記については義務化も検討されているようですね。

 

さて、実際に相続登記が必要となるケースは、一通りではなく、その内容によって、相続登記をすべき人が変わります。

主なケースとしては、1、遺言による遺産相続を起因とするもの2、相続人同士の遺産分割協議による遺産相続を起因とするもの3、遺産分割協議が長引いていることを起因とするものに分けることができます。

遺言については最優先されるため、遺留分を侵害していない限り、指定された相続人が相続登記をすることになります。

遺産分割協議を経た場合には、遺産分割協議で不動産の相続が決まった相続人が相続登記をすることになります。複数人が相続をするのであれば共有不動産として相続登記をします。

問題は遺産分割協議が長引いている場合ですが、先に述べたとおり、この状態では相続人全員の共有不動産とみなされるため、やむを得ず相続登記をする場合にも、ひとまず共有不動産として相続登記をすることになります。

 

続いて、相続登記の方法ですが、相続する不動産を管轄している法務局で、登記申請書を提出することで行います。一般的には司法書士や弁護士などに代理で依頼をすることが多いでしょう。

 

相続登記の費用としては、士業への報酬と登記に必要な登録免許税(登記する不動産の固定資産評価額の0.4%)、各書類を取り寄せるための実費と合わせて、10万円~20万円程度の費用となりますが、不動産の価値や士業へ依頼する際の代理の範囲(書類作成のみか、その他代理行為をお願いするか)によって変動することには注意が必要です。

 

相続登記に必要な書類としては、登記申請書、被相続人の一連の戸籍謄本、被相続人の住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本・抄本、不動産を取得する相続人の住民票の写し、相続する不動産の固定資産税評価証明書、(代理申請の場合)相続人の委任状、相続関係説明図・・・と多岐にわたる上、遺産分割協議などが行われていた場合にはそれ以外にも必要となる書類が出てきます。

この書類集めの煩雑さが相続登記について敬遠される原因ともなっていますが、お金はかかるものの士業への代理も検討しながら、コツコツと着実に進めていくべきでしょう。

 

旭様は相続登記をしないことによるデメリットの多さに驚かれ、早速相続登記の手続きを始めることにしたようです。

少子高齢化が進むことで、相続した遠方の実家をどう処分するかなど、相続については登記の煩雑さはもとより、今後多くの課題があると感じた次第です。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

借地権は立派な相続財産~借地権割合とは

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスで人との交流が分断されていることは間違いないですね。

以前は通勤時にアタッシュケースを持っていた観光客の方が多かったのですが、今では全く見かけず、通勤が快適です。

しかし、インバウンドに力を入れて観光立国を目指していた日本としては、これではいけないんだろうなぁと感じています。

感染リスクは抑えなきゃいけません。難しい綱引きが始まっています。

 

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【コロナ前の夜の雷門です。観光地も見かけるのは日本の方のみです】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は佐野様(仮称:38才)です。

佐野様は、この度、遺産分割協議に参加することになりましたが、相続財産の中に記載のあった借地権について、正しい扱いを受けているかお知りになりたいと、ご来社されました。

 

借地権は「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と借地借家法に規定されています。つまり、マイホームなどを建てる場合に、土地を買わずに、地代を支払って地主から土地を借りる場合の権利が借地権です。

しかし、なぜ土地を購入せずに借りるのでしょう?

もちろん、借りている土地ですから、地代を支払う必要があったり、建物の増改築や売却には地主の承諾が必要だったりと、一定の負担は必要ですし、将来的に返却しなければならない資産です。

つまり、返却しなければならない土地ですから、買うよりも当然費用は安く済むことになります。また、土地を所有するわけではないので固定資産税の負担もゼロとなり、金額面で総じてお得なのです。

 

さて、今回のお客様である佐野様については、資産として借地権が存在していました。実は、ご実家は借地に建てられたマイホームだったのです。

この場合、ただ土地を借りているだけの権利である借地権は、財産にみなされることになります。なぜなら、借地権については契約期間も長く、正当な理由がなければ更新を拒むこともできないため、総じて借地人が強い権利を持つことになるからです。特に借地借家法が施行された平成4年8月1日以前の「旧法借地権」については、地主と借地人のどちらが所有者かわからなくなるほど、強い権利でした。

よって、土地の所有権は、借地権を設定していることで不完全なものとなります。考え方としては、借地人のもつ借地権と、地主の持つ名義としての権利(底地権)を合わせて、はじめて土地の所有権として存在できるようになるのです。

 

では、それだけ強い権利である借地権の価値は、どのように考えられるのでしょうか。遺産分割協議や相続税の算出のためには、借地権の評価をしたうえでその価値を決めなければならないのです。

そこで利用されるのが借地権割合というものです。

 

借地権割合は、国税庁の路線価図・評価倍率表を参照しますが、固定資産税路線価ではなく、相続税路線価にて借地権割合を調べることができます。インターネット上でも検索可能です。

具体的な借地権割合の記述については、路線価と並んでそれぞれの土地にアルファベット表記されており、アルファベットごとに借地権割合が決められています(Aは90%、Bは80%~Gは30%など)。

なお、借地権割合については、土地の価格が高い地域ほど高く設定される性質のものです。これはもちろん、先に述べた借地権の権利としての強さと、地価の高い土地を使用できるという意味とが相まって、高く設定されるものと考えれば良いでしょう。

 

さて、借地権割合が判明すれば、その土地の路線価と合わせて、借地権の資産価値を算出することができるようになります。

たとえば、路線価が3,000万円で借地権割合が70%だとすれば、借地権の価値は「3,000万円×70%=2,100万円」と算出されます。

 

今回ご相談にいらっしゃった佐野様の場合、借地権として1,200万円の記載があったということでしたが、実際にインターネット上で調べた結果、相違はなかったということです。借地権の性質も理解され、安心できたようですね。

それにしても、借地権はあくまでも土地を借りているというだけの権利であるのにも関わらず、ここまで強い権利であること、そして財産としてもしっかり評価されることには驚きですよね。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

遺産の宅地にセットバックの可能性あり!相続税評価額はどう変わる?

こんにちは!

こうのとりです。

 

在宅ワークが多くなると、家の汚れについつい目がいきます。

そこで、カーペットの掃除にと、重曹をまいてみました!

しかし・・・掃除機で重曹を吸い取ったところ、大変!

安物のハンディ掃除機だったせいか、フィルターで重曹がろ過されず、掃除機の排気口から重曹が勢いよく飛び出す始末!

家の中が、バルサンを焚いた後のようになってしまいました・・・まぁ、無害なのでいいですけどね^^;

 

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  【ベーキングパウダーにも変化する重曹ってすごいですよね】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は金井様(仮称:48才)です。

金井様は、遺産分割協議に際して、ご実家の宅地の相続税評価額を算出することになったのですが、宅地にセットバックの可能性があるという指摘が親族からあったとのことで、評価額の算出方法について相談にいらっしゃいました。

 

そもそもセットバックとは、建築基準法第42条の第2項に規定されている道路に面している宅地のうち、将来その道路を4m幅に広げる可能性を見越して、宅地を中央線より2mの範囲で後退させた部分のことを指します。この部分には建築物はもとより、門や堀なども建てることはできません。

なぜ、セットバックが個人の資産である宅地に設けられることになったかといえば、建築基準法第43条にある「建築物の敷地は、建築基準法上の道路に2m以上の長さで接していなければならない」という接道義務(火災などの災害時の消火活動、救命活動などに備えることを目的)があるからです。

そして、この建築基準法上の道路については、原則として幅が4m以上あることが必要とされています。しかしながら、日本には幅が4m未満の道が多く存在しているため、宅地が接道義務を果たすことができません。

そこで、この救済措置として、建築基準法第42条の第2項にて、いわゆる「みなし道路」が設けられたというわけです。このみなし道路は2項道路と呼ばれています。

 

さて、相続税評価の話に戻しますと、2項道路に接している宅地のうち、セットバック部分は家や建造物を建てらず、利用することができないのですから、所有者にとって価値の無い土地であるといっても過言ではありません。

一方で、接道義務が定められたのは1950年であるため、それ以前に建てられた古家に関しては2項道路に接していてもセットバックをせずに宅地利用されている場合もあるわけです(このような宅地に再建築をする場合に、セットバックが求められることになります)。

これらの状況から、セットバックを必要とする宅地の相続税評価額については7割を控除し、価値率を3割とすることで計算されます。

 

具体的な計算方法としては、(1)宅地全体の評価額を計算し、算出された評価額に対して、(2)セットバック部分の割合から、セットバック部分の評価額を算出します。そして、(3)宅地全体の評価額からセットバック部分の評価額の7割を差し引きすることで、最終的な評価額とします。

たとえば、敷地全体が200㎡(1㎡を100,000円とする)、セットバック部分が20㎡の宅地について考えてみましょう。

(1)宅地全体の評価額は20,000,000円です。

(2)セットバック部分は全体の10%なので、セットバック部分の評価額は2,000,000円です。

(3)20,000,000円-(2,000,000円×70%)=18,600,000円がこの宅地の相続税評価額となります。

 

ちなみに、自身が所有している宅地の一部が私道として利用されている場合にも、評価額の控除がなされています。

具体的には、通り抜けができる私道については100%の控除行き止まりがある私道の場合にはセットバックと同じく7割を控除し、価値率を3割として計算されます。

 

さて、相続税とは関係ありませんが、セットバックをした部分に関しては、固定資産税・都市計画税が非課税です。ただし、非課税とされるためには申告が必要です。

そもそも宅地については特例で固定資産税が6分の1に減額されていますし、セットバック部分も宅地全体の数パーセントであるため、あまり節税の効果が無い可能性もありますが、頭の片隅に入れておくべきでしょう。

 

金井様は、今回のご相談でセットバックについてもクリアになり、遺産分割協議が進むと喜ばれておりました。肉親であっても骨肉の争いになる可能性がある遺産分割については、できるだけスムーズに行いたいものですね。

 

本日はここまでといたしましょう。

遺産分割協議に全員が集まらない!行方不明者に対する失踪申告と不在者財産管理人の指定

こんにちは!

こうのとりです。

  

東京アラートって一体なんだったんだろうな~と思いつつ、

アメリカの株価暴落を後目に、経済活動再開ってすごい難しいな~と感じる日々です。

早く昔のように戻ればいいなと思いますが、油断は禁物ですね!

  

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【桜はすっかり新緑に変わりました。在宅ワークはニューノーマルになるのでしょうか?】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は大内様(仮称:48才)です。

大内様は先日、お母様がお亡くなりになり、10人いる兄弟姉妹(大家族!)を集めて遺産分割協議をすることになったのですが、久々に全員に連絡をしてみたところ、その中の一人がどうしても連絡がつかず、困ってしまっているとのことで、ご相談に参られました。

たしかに、遺産分割協議については、相続人全員で行うのが原則です。遺産分割協議をするために、故人の戸籍謄本を辿っていくことで相続人を確定していく作業を行うのですが、確定した相続人に連絡をしていくのが、案外骨の折れる作業になります。大内様のように兄弟が多かったり、実は相続の権利がある親族が新たに見つかったりすれば、なおさらです。

しかし、連絡を取ろうとしてもどうしても連絡がつかない行方不明者がいる場合には、どうしたらよいのでしょうか?

 

その場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選定を申し立てることができます。

任命された不在者財産管理人が、行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加することで、協議を滞りないものとすることができるのです。

なお、申立てにあたっては、不在者財産管理人選定にかかる管理費用について、家庭裁判所に納める必要がありますが、予納金については30~50万円と高額になることには注意が必要です。

 

さて、もし不在者財産管理人を選定して遺産分割協議を行った場合、その後行方不明者が一向に現れなければ、第3者である不在者財産管理人が分割された遺産の管理をし続けなければなりません。これでは、不在者財産管理人にリスクが多すぎます。

このような状態を回避する方法として、行方不明者の遺産相続分は少なく配分しておいて他の相続人が一時的に預かり、もし行方不明者が戻ってきた場合に、預かっていた遺産を受け渡すという帰来時弁済型遺産分割の方法が利用されることがあります。

もちろん、遺産を預かる相続人に関しては、使い込みを避けるためにも、家庭裁判所に対して自身の資力が十分にあることを証明しなければなりません。

 

また、行方不明者である相続人が生きているかどうかも分からない場合には、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てるという方法もあります。

この申立てによって、行方不明者の消息不明となってから(最後の連絡など)7年が経過している場合に限り、失踪宣告がなされ、行方不明者が亡くなっているとみなしてもらうことができるのです。

ちなみに、震災などに被災して行方不明者となった場合(危難失踪)には、危難が去ったときから1年の経過にて失踪宣告の申立てが可能となる特例もあります。

なお、当然ではありますが、失踪宣言の申立てができるのは利害関係人に限られ、行方不明者の配偶者や相続人、財産管理人、受遺者など、失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者とされています。

 

失踪宣告を経た遺産相続について注意すべき点は、その行方不明者に子どもがいる場合、その子が代襲相続人となる点です。ただし、行方不明者が亡くなったとみなされた日が、被相続人が亡くなる前であれば、そもそも行方不明者は相続人でなかったことになるため、代襲相続は発生しません。

また、行方不明者が見つかって失踪が取り消された場合には、すでに行った遺産分割は取り消されないものの、受け取った遺産が残っているのであれば、その範囲内で遺産を返す必要があります。

なお、失踪宣告の手続きには少なくとも半年の時間がかかるため、相続税の申告期限(被相続人の死後10ヶ月以内)に間に合わない可能性が十分にあります。この場合、申告期限の延長だけでは不十分になるケースが多いため、一旦は不在者財産管理人を選任して申告期限までに相続税申告を済ませておき、失踪が宣告された後で改めて修正申告をすることになります。

 

大内様は、不在者財産管理人と失踪宣告の併用で問題を解決することになりましたが、遺産分割協議については、どんな状況であってもすんなりいくことはないなぁと、再認識させられたのでした。

 

本日はここまでといたしましょう。

遺産分割!相続する不動産の価値はどうやって決めるの?

こんにちは!

こうのとりです。

  

ゴールデンウィークは7~8割の自粛率だったそうですね!

日本人ってこういうところ、すごいですよね!

罰則も無いのに、みんな家にいるんだもんな~!

もともとソーシャルディスタンスを大事にする民族だし、このままコロナが終息すればいいんですけどね。

そしたら、自粛した分、苦しかった観光地や飲食店にお金が循環すると思います!

今はみんなで辛抱ですね。

 

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【間近で見ることがなかったスカイツリー、でっかいです!】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は椎名様(仮称:62才)です。

椎名様は先日お父様が亡くなられ(お母様はすでに他界)、お父様の遺産を妹と弟の3人で分けることになったそうです。

しかし、残された遺産はご実家の不動産のみでした。

そこで、この不動産を売却して、お金を3等分しようという話に一度は決まったのですが、しばらくしてから妹さんが「思い出の残る実家を残したい!」ということになり、実家を継ぐ代わりに、その他2人に相続相当分の金銭を支払うことで合意しました。

 

椎名様のようなケースは、比較的良くある話なのですが、今回椎名様がご来所された理由は、相続相当分の金銭はどのようにして決めれば良いのか?というご相談だったのです。

 

ちなみに、遺産分割において、不動産の分割方法はいくつかの種類に分けることができます。

まずは、不動産を売却してから売却代金を分割する換価分割、次に、実際に不動産の現物を3等分する現物分割、そして、椎名様のような、特定の相続人が不動産を相続する代わりに金銭を支払う代償分割です。

 

そして、代償分割を行う場合には、不動産の価値を評価することになりますが、この評価の種類は、相続税申告評価額、固定資産税評価額、公示価格、不動産鑑定士による評価額、実勢価格など多岐にわたるものです。

 

1、相続税申告評価額

相続税路線価ともいいますが、相続税を算出するために全国共通で設定された道路ごとの評価額です。毎年評価が見直されているのでタイムリーな価格を参考にできますが、その価格は実勢価格(実際に取引が行われた場合の評価額)の80%程度の金額とされます。土地のみの価格です。

 

2、固定資産税評価額 および 固定資産税路線価

固定資産税路線価は、市町村が固定資産税を課税する際に基準となる道路ごとの評価額です。3年ごとにしか評価が見直されないことには注意すべきでしょう。その価格は実勢価格の70%程度の金額とされます。路線価については土地のみの価格です。

一方、毎年課税されている固定資産税評価額については、この固定資産税路線価を元に決められているもので、土地のみではなく建物についても評価額の参照が可能です。こちらも実勢価格の70%程度の金額とされています。

 

3、公示価格

公示価格とは、国土交通省によって定められた、土地の評価額です。不動産鑑定士が関与し、その鑑定結果をもとに評価されています。毎年見直しが行われて、例年3月下旬頃に公表されるものです。

不動産鑑定士が関わっているだけあり、実勢価格により近い価格ではありますが、土地のみの価格しか確認できません。実勢価格の80~90%程度の金額とされています。

 

4、不動産鑑定士による評価額

個別に不動産鑑定士に依頼をして得られた評価額については、信頼性が高く、遺産分割調停などにおいても利用されるものです。それだけ信頼度が高いとはいえども、鑑定を依頼する場合には鑑定費用がかかることがネックとなります。親族同士が不動産の評価額で紛糾しない限りは、利用されにくいといえるでしょう。

 

5、実勢価格

実際に取引が行われた場合の価格である実勢価格を知るためには、不動産会社の査定を受けるという方法がポピュラーです。市場で取引されている類似物件や建物の外観などを踏まえながら総合的に値付けされるものですが、依頼をする不動産会社によって価格が上下するというデメリットがあります。

 

これだけ多くの参考価格があると、どれを選択したら良いかわからないという方も多いかもしれませんが、ここには大きなポイントがあります。

実は、合意形成さえ取れればどの価格を参考にしても良いのです。

つまり、代償分割を行う場合に、代金を受け取る相続人が納得しさえすれば、どの価格を参考にして代償すべき金額を決めても良いのです。

2つの評価額を組み合わせて参考にしても良いですし、不動産会社に査定を依頼して見積もられた金額だけを参考にしても良いということです。

 

遺産分割協議というと、何やらお堅いイメージになりますが、あくまでも「話し合い」に過ぎません。話し合いで合意さえできれば、相続分をどのように配分しようが、問題無いのです。

法定相続分や遺留分は、法に則った場合にはこのように分割しなさいという決まりであり、租税の計算などに使われる形式的なものです。

もっとも、話し合いで簡単に決まることではないので、法的な根拠を元に遺産分割協議が行われるという実態はあります。

どんなに仲が良い肉親であっても、遺産相続で骨肉の争いに発展する可能性は十分にありますので、そんな争いに発展しないためにも、法に則りながら、平等に分割するのが良いともいえますね。

 

さて、椎名様は結局、知り合いの不動産会社に依頼をして不動産査定をしてもらい、その金額を元に代償分割を行ったということです。

とはいえども椎名様も弟様も、実は実家を売却することに抵抗が無かったわけではなく、「実家を妹が引き継いでくれるなら」ということで、結果としてわずかな現金を代償として引き受けるだけで、合意したそうです。

そして、今では1年に一度は、思い出のあるご実家に集まるようになったそうですよ!

 

 

本日はここまでといたしましょう。

不動産を相続するときの流れとは?

こんにちは!

こうのとりです。

 

緊急事態宣言が延長となりましたが、ほんとにコロナによって世界が混沌としている気がします・・・。

税理士事務所としては、5月ごろまでが繁忙期なのですが、今年はちょっと違った忙しさですね。

資金繰りですとか助成金のお話が多く、繁忙期はまだまだ続きそうです。

ここは皆の力を合わせて、乗り切っていきたいですね!

 

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【桜の木はすっかり新緑となりました】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は寺岡様(仮称:38才)です。

寺岡様は奥様のお父様の遺産相続(特に不動産)に関して、どのような進め方をして良いかわからず、まずは専門家のアドバイスをということで来所されました。

たしかに、ひとえに相続とはいえども、被相続人がお亡くなりになった後の流れを時系列で理解しておくのは重要なことです。その大きな理由な1つとしては、遺産相続に関わる申請について、それぞれ期限が決められているからです。

 

<被相続人の臨終より7日以内>

・葬儀社に相談

→各種相談、火葬場の予約などを代行してくれます。病院から葬儀社の紹介を受けることもあるでしょう。また、終活の一環で、生前に葬儀社を決めている場合もあるため、後述する遺言書の有無や財産の有無も含め、日頃のコミュニケーションが重要といえるでしょう。

 

・死亡診断書を病院に記載してもらう

→コピーを何部か取っておくと、様々な手続きの際に便利です。

 

・死亡届を死亡地か本籍地、または届出人の所在地の市区町村役場に提出

→同時に火葬許可申請書を提出することで、火葬(埋葬)許可証が発行されます。なお、死亡診断書と死亡届は同じ用紙であることが多いようです。また、火葬許可申請書に火葬場所を記載することになるので、葬儀社などに事前確認をしておきましょう。

 

<被相続人の臨終より10日~14日以内>

・年金関係の手続き

→年金受給停止、年金受給権者死亡届の提出など、説明は割愛

 

・保険関係の手続き

→国民健康保険証の返却、介護保険の資格喪失届など、説明は割愛

 

・住民票関係の手続き

→住民票の抹消届、住民票の除票の申請、世帯主の変更届など、説明は割愛

 

<被相続人の臨終後なるべく早め

期限はないものの、相続放棄および限定承認の手続きは相続発生から3ヶ月以内という非常に短い期間であるため、遺産に関わる以下4つの項目は、葬儀終了後、速やかに行う必要があります。

 

・遺言書の有無の確認および検認

→公正証書遺言以外の遺言書については、家庭裁判所の検認が必要です。中身が気になるかもしれませんが勝手に開封しないように注意しましょう。

もし、家の中に遺言書が見つからない場合でも、被相続人が公正証書遺言を残していれば、公証役場の遺言検索システムで遺言書の存在を確認することができます。

 

・相続人の調査

→被相続人の戸籍謄本などを取り寄せ、法定相続人を確定させていく作業ですが、この作業が案外、骨の折れる作業であり、被相続人の死亡時の戸籍謄本から、戸籍を遡って取得していくことになります。転籍や婚姻など、様々な事情で戸籍は変遷していくため、集めていくと最終的には複数枚の戸籍に及ぶこともあります。

この作業の結果で血縁者が確定すると同時に、法定相続人も確定します。

 

・財産の調査

→生前あらかじめ財産が整理されていればよいのですが、突然の死去だった場合などはそれぞれを調査していかなければなりません。

不動産関係で財産となるのは、土地や建物の現物以外に、借地権や借家権が挙げられます。不動産関係以外の財産としては、預貯金、生命保険、株式(有価証券)、ゴルフ会員件、貴金属、自動車などが該当します。

財産調査の手がかりは郵送物や納税書類等ですが、煩雑になることも多いため、これらの調査を専門家へ代行依頼することも可能です。

 

・遺産分割協議

→法定相続人と財産が揃ったら、遺産分割協議を行うことになります。

基本的には法定相続人全員が顔を突き合わせて話し合うことで、相続人全員の合意形成が必須です。

相続人全員の合意形成がとれれば、合意の証明として遺産分割協議書を作成することになります。この遺産分割協議書は、被相続人の各種名義変更や預金引き出しの際に重要となります。

 

<被相続人の臨終後3ヶ月以内>

・相続放棄または限定承認の申述

→相続の手続きをタイトにしているのが、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内を期限としている、相続放棄または限定承認の申述です。

相続放棄は借金などのマイナスの遺産が多い場合に遺産を放棄をする方法で、限定承認はプラスの遺産とマイナスの遺産のどちらが多いかわからない場合に利用し、結果として財産がプラスになった部分のみ引き継ぐ方法です。

ここで重要なのが、相続放棄は相続人一人一人が単独で行える申述である一方で、限定承認は相続人全員の共同で申述しなくてはならない点です。

さらに、期限を過ぎれば単純承認をしたと見なされるので、マイナスの遺産が多い場合でもその遺産を相続していく必要が出てきてしまいます。

このような事態を避けるためにも、遺言書、相続人、財産の調査および遺産分割協議については、速やかに行うべきなのです。

ちなみに、特段の事情があれば、相続放棄または限定承認の申述の延長が認められることもあります。どうしても進捗が悪い場合には家庭裁判所へ相談しましょう。

 

<遺産分割協議終了後、相続財産が確定したら速やかに>

・相続財産の名義変更

→相続財産の中に不動産が含まれる場合には、その不動産の名義変更をしておくほうが無難です。名義変更は義務ではありませんが、二次相続などが起こった場合に揉め事にならないよう、あらかじめ自身の名義に変更しておく べきといえるでしょう。

 

<被相続人の臨終後4ヶ月以内>

・被相続人の所得税の確定申告(準確定申告)

→被相続人は1年の途中で臨終を迎えることになるでしょうから、その時点までの被相続人の確定申告は、相続人が代わって 行います。

この、準確定申告についても、相続人全員で行う必要があります。もし、個別で行った場合には、他の相続人に申告内容を通知しなければならないのです。

 

<被相続人の臨終後10ヶ月以内>

・相続税の申告

 →相続財産が多額であり、控除分を超えてしまう場合には、相続税を申告しなければなりません。こちらも被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内と期限が明確に決められており、万が一期限に間に合わなければ、延滞税や無申告加算税などの追徴課税が科されることになるため注意が必要です。

 

<その他>

 ・公共料金の名義変更、解約

→電気、ガス、水道、インターネット、携帯電話などが挙げられますが、これらも早めに行ったほうが良いでしょう。

 

・各請求関連

→葬祭費、埋葬費、高額医療費、生命保険金などの請求はもれなく行いましょう。

 

 以上が相続における一連の流れです。

 やることがほんとにたくさんありますね。

ご相談者の寺岡様は、被相続人が存命のうちに相談し、なるべく整理をしておくとのことでしたが、やはり終活は大事なんだなと実感いたしました。

 

本日はここまでといたしましょう。

民法大改正による不動産相続への影響とは!?

こんにちは!

こうのとりです。

 

 

現在外出制限真っただ中ですが、最近外出したのはいつだろうな~と思っていると、2月初旬にイベント参加した時以来、まともな外出をしていないことに気が付きました(汗)

基本的に出不精だし、勉強もあるしってことで納得なんですが、過去の写真を眺めていたら「アルパカ」を発見!

一緒に行ったとある女性から「あっちにカピバラがいるよ!」といわれ、他の男性からは「ヤギがいるから見に行ったら?」といわれ、結局いたのは「アルパカ」だったという・・・ややこしや・・・。

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【カピバラでもヤギでもなく、アルパカです】

 

さて、今回はお客様の案件ではありません。

相続法に関する近年の大きな出来事について、まとめておきたいと思います。

その大きな出来事とは、およ40年ぶりの改正といわれる民法の大改正です。

 

相続法に関しては2018年7月に改正され、その施行が段階的におこなわれていますが、コロナショックの渦中において、4月1日にも施行された内容もあるのです。

こういう改正や特例措置があるから、税理士資格は勉強が大変で・・・という愚痴はさておき。

 

主な改正内容(施行日)は以下のとおりです。

1、配偶者への優遇措置(2019年7月1日、2019年4月1日)

2、遺言に関する条件緩和(2019年1月13日、2020年7月10日)

3、介護(特別寄与)に応じた額の金銭要求(2019年7月1日)

4、預貯金の払戻し制度の新設(2019年7月1日)

5、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ(2019年7月1日)

 

1、配偶者への優遇措置

配偶者への優遇措置としては、以下2点の改正です。

① 居住用不動産の贈与等に関する優遇(2019年7月1日より施行)

② 配偶者居住権の新設(2019年4月1日より施行)

 

これらの優遇措置がなされた背景について考えてみましょう。

たとえば、地方の実家に住む父と母、都内に住む息子の3人家族だったとしましょう。

父が他界した場合、相続の権利は母と息子に半分ずつの分配になります。

もし実家の不動産に3,000万円の価値があり、預貯金が1,000万円あったとすれば、どのように遺産を分配すればよいのでしょうか。

本来は2,000万円ずつの相続になるはずですが、実家に住み続けたい母が実家を相続すれば3,000万円の相続、息子は現金1,000万円のみ相続することになり、息子の相続分が1,000万円足りません。

すると母は、息子に対して不足分を補わなければいけません。

このような事態を解消するために新設されたのが、①と②の措置です。

 

①についてはすでに施行済ですが、婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産の遺贈又は贈与については、遺産分割の際に相続財産としてみなさないという措置です。

本来、生前贈与は遺産の先渡しという取り扱いでした。

そのため、愛する妻のためにと生前贈与をしたとしても、遺産分割の際には結果的に相続の対象となってしまいます。

 

先ほどの例でいえば、もしマイホームの持ち分を半分生前贈与していたとすれば、今回の措置によってマイホームに関する相続1,500万円分と現金のみが遺産相続の対象となります。

結果として、2,500万円分を半分ずつ相続するため、各自1,250万円の相続となり、息子に支払うべき金額を1,000万円から250万円までおさえることができました。

 

そして、先日施行されたのが、②の配偶者居住権の新設です。

こちらは、配偶者が引き続きマイホームに住み続けることができる措置になります。

この配偶者居住権については、相続発生時に自宅に住んでいた配偶者にだけ認められ、かつ、登記が必要な措置です。

 

先ほどの例でいえば、生前贈与をしていても息子へ現金補填をしなければいけないため、問題が全て解決したとはいえない状態でした。

しかし、配偶者居住権の新設により、問題は全て片付きます。

これは、所有権を配偶者のために分離するという、非常に大きな措置です。

この措置によって、本来相続するはずの3,000万円相当の所有権を、配偶者居住権1,500万円と負担付き所有権1,500万円とに分割することができます。

そして、相続の際には、それぞれの所有権を相続するのです。

 

つまり、母は配偶者居住権1,500万円と現金500万円を相続し、息子は負担付き所有権1,500万円と現金500万円を相続することになります。

母の負担が相当軽くなったといえるでしょう。

 

2、遺言に関する条件緩和

遺言に関する条件緩和についても、以下2点の改正です。

①自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月13日より施行)

②遺言保管制度の新設(2020年7月10日より施行)

 

①については、自筆証書遺言のうち財産目録はパソコンで作成できるようになったというもので、なんだか時代に追いついていない気もしますね・・・。

②については2020年7月10日からの施行ですが、法務局で遺言者の自筆証書遺言を保管してもらえることになるため、自宅で保管していて紛失したという事態を防ぐことができます。

 

3、介護(特別寄与)に応じた額の金銭要求

こちらもよくある話ですが、面倒見るといっていた相続人の肉親が面倒を見ず、他の親戚が面倒をみていたりというケースに関して、金銭を要求できるというものです。

詳細は割愛しますが、相続人ではない親族が被相続人に特別寄与した場合、相続の恩恵を特別寄与料として受け取ることができるようになりました。

すでに施行済の法律です。

 

4、預貯金の払戻し制度の新設

こちらも遺産相続のあるあるですが、遺産分割が終了するまでは預貯金に関しても勝手に使用ができないため、葬儀を執り行う相続人が自己負担で建て替えるケースが多く、負担となっていました。

そこで、被相続人の葬儀を行う相続人に関しては、単独であっても、被相続人の預貯金の一部を払戻せるようになりました。

こちらも施行済の法律です。

 

5、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ

遺留分は、最低限保証された相続人の取り分です。

この遺留分の存在によって、本来は避けるべき共有不動産が存在することになっていました。

共有不動産は、処分が厄介になるだけではなく、特に会社の事業承継の足かせになっていました。

このような事態を避けるべく、共有不動産となりうるケースにおいては、遺留分に関して現金のみが請求できるようになりました。

「減殺」ではなく「侵害額」になったのですね。

こちらも施行済の法律です。

 

 

相続に関するこれらの措置の背景には、もちろん遺産相続問題があり・・・。

肉親であっても、骨肉の争いに発展する可能性はあります。

いくら仲が良かった肉親であってもです。

このような事態になる前に、遺産に関しては真剣に、かつ被相続人が健在な時から話し合いの場を設けておくべきといえるでしょう。

 

本日はここまでといたしましょう。