まさか過去に受けとった財産の返還を求められるとは!特別受益について

 

 こんにちは!

こうのとりです。

 

アメリカの大統領選挙はこのままバイデン候補の勝利に終わりそうですね。

トランプさんはパリ協定やWHO(1年後)から脱退し、

「世界のアメリカ」となることをやめた大統領です。

 

自国民に利益にならないことはしない!と損得勘定を徹底したところは

いかにもビジネスマンであり、あれだけの支持を集めたことも頷けますが、

ここまで接戦になったということが、アメリカの分断を象徴している気がしますね。

コロナの問題も含め、この先アメリカはどうなっていくのでしょうか。

 

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【いなかに帰って緑を見ると安らぎます。でも、今年の年末は帰っていいのかな・・・】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は坂東様(仮称:34才)です。

 

坂東さまは先日、大好きだった祖母を亡くされましたが、悲しみに明け暮れる暇もなく、坂東さまの叔母様にあたる親族に、過去に祖母から譲り受けた財産を返してほしいと求められたということで、どうしたらいいのかと相談にいらっしゃいました。

孫に対して財産の返却を求めることなどありえないと思われるかもしれませんが、坂東さまのケースは特別受益に抵触する可能性があることあるため、問題になったといえるでしょう。

 

この特別受益とは、生前に被相続人が相続人に対して特別に贈与をしていた場合などに取り上げられる問題です。つまり、遺産相続について、遺書などが無ければ法定相続分通りに配分されるべきですが、特定の相続人が生前贈与を受けていたとすれば、生前贈与を受けることができなかった他の相続人は不利益を被ることになります。

たとえば、被相続人にに子どもが2名いたとして、車を買うための費用を兄に対して500万円ほど工面してあげたとします。その後、被相続人が亡くなり、遺産分割となった場合に、工面した500万円を除外したまま遺産を計算すれば、兄以外の相続人が不利益を被るというわけです。

 

このような不平等を無くすために、考えられたのが特別受益ですが、まず大前提として、特別受益者の対象となるのは、特別受益を受けた共同相続人に限ります。

つまり、相続人でなければ特別受益者には該当しないため、孫にあたる坂東様は本来、法定相続人では無いために特別受益者から除外されるはずでした。

しかし、坂東様は最近ご両親を亡くされていたこともあり、ご両親の相続権をそのまま受け継ぐことになっていたため、特別受益者に該当する可能性があったのです。

 

しかしながら、ここには1つ坂東様が特別受益を得たことにならない理由が見逃されていました。

実は坂東様が留学の費用を工面してもらったのは、坂東様のご両親が亡くなった後だったのです。

つまり、相続人が相続人の地位になる前に受け取った財産に関しては、特別受益としては認められないのです。

 

さて、特別受益に関しては、民法第903条に明文化されています。

「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるとき」について、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなす」とされており、「算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする」との記載があります。

 

この条文から読み解くと、特別受益の範囲については、

1 遺贈(遺言で財産を受け継ぐ場合)

2 婚姻のための生前贈与

3 養子縁組のための生前贈与

4 生計の資本としての生前贈与

の4つに限定されます。

 

それぞれの細かい解説は省きますが、特別受益の観点は、遺産の前渡しによる不公平を無くすというものです。

そのため、妥当と思われる範囲内の援助については特別受益には当たらないとされています。

 

また、近年(2019年7月1日)の法改正で

1、遺留分の基礎財産に含める贈与については期間制限がなかったものが、相続開始前の10年間に限定される

2、結婚から20年以上が経つ配偶者に対する自宅の生前贈与については、特別受益の持戻し免除が推定される

など、特別受益の対象を限定する改正があったことについても念頭におくべきといえるでしょう。

 

ちなみに、特別受益とは話が逸れますが、祖父母からの留学費については「教育資金贈与」とされて、1,500万円までは非課税対象となります。

学費を受ける方の年齢は原則30歳まで(場合によって40歳まで)と、期間が長いこともありますので、ぜひとも、この非課税枠については有効に利用していただきたいと思います。

 

坂東様は叔母に今回のことを説明したそうです。

叔母様もムキになってごめんなさいと、謝られていたそうですよ。

本日は、ここまでといたしましょう。

誰に相談すればいいの?相続と相談すべき士業の棲み分け

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスに有効なワクチンがいよいよ出てきたようで何よりです!

このような未知のウィルスが出てきても、それに対して1年もせずにワクチンを開発できる医学者・科学者たちはすごいと思います。尊敬しかありません。

もちろん、感染者が増える中でまだまだ油断はできませんし、マスクを付けることが常識化すると、風邪とかインフルエンザもひかないんじゃないかな?と思ったりしてます。

でもマスクを年中付けてるのも息苦しいし・・・難しいところですね。

 

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【久々に行った喫茶店のルノアールが、紙製のストローになってました!驚き!】 

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は笹尾様(仮称:25才)です。

 

笹尾様は若くして遺産分割協議に参加することになったものの、相続の際にどの分野をどの専門家に頼めばいいか、わからないと嘆いておられました。

幸い、問題はすでに解決したのですが、たしかに言われてみればそうかもなと私も感じることがあります。

そこで今回は、行政書士、司法書士、弁護士、そして私たち税理士などが、相続問題にどのように関わっているか、簡単にまとめてみたいと思います。

 

・行政書士の役割

「一言でいうと」文書作成のスペシャリスト

 

行政書士は、その名のとおり、行政に関する書類作成を専門とします。

行政に関する書類といっても種類は豊富で、自動車のナンバー変更から登録、日本国籍取得の帰化手続き、法人設立の際の定款作成から風営法に関する届け出までジャンルも多岐に渡ります。

  (相続に関する業務) 

相続に関する業務としては、遺言作成の支援や遺産分割協議書などの作成、場合によっては相続財産の調査を引き受けてくれることもあります。

また、農地から宅地への転用など、土地に関する申請手続きも行うことがあります。

 

・司法書士の役割

「一言でいうと」登記のスペシャリスト(+弁護士業務の一部)

 

司法書士は行政書士と混同しやすいですが、司法に関する書類作成を専門とするという意味では、その名のとおりとなります。

ここで「司法に関する」という文言を「法務局や裁判所に関する」と言い換えると分かりやすくなるかもしれません。

司法書士の独占業務としては「法務局に提出する書類作成や手続きの代理」および「裁判所に提出する書類作成や手続きの代理」を挙げることができます。

そして、法務局で行うのが、不動産登記、商業登記、法人登記などです。

また、裁判所にてに提出する書類作成や手続きの代理(法律業務)という業務内容は、弁護士に近しい内容なのですが、司法書士ができる法律業務は一部に限られています。

例えば、民事事件(140万円以下の民事事件においては認定司法書士であれば対応可能)や破産・民事再生等の申立てについては、司法書士が行うことができないため注意が必要です。

  (相続に関する業務)

先に述べた通り、不動産登記が得意分野となります。

近年、これまで義務化とされていなかった不動産登記が義務化される動きも出てきておりますので、今後、司法書士が活躍する場が増えていくと思われます。

 

・弁護士の役割

「一言でいうと」法律のスペシャリスト

 

いわずもがな、法律のスペシャリストである弁護士であり、弁護士資格で行うことができない法律事務の分野はありません。

過去に、登記業務を司法書士の独占業務とすべきであるとの訴訟が行われましたが、結果としては登記業務も法律事務の一部であることから、司法書士側の訴訟は退けられたという経緯があります。

ただし、弁護士は法律を包括的に行うため、純粋な登記業務の専門家は司法書士であるというイメージが強いのではないでしょうか。

  (相続に関する業務)

遺産分割協議や遺言、登記など、相続に関する法律事務は全て任せることができますが、どちらかといえば遺産分割協議が紛争になりそうである場合など、単純な登記で済まない場合に依頼することが多いといえるでしょう。

 

・税理士の役割

「一言でいうと」税金のスペシャリスト

 

こちらもいわずもがなですが、税金に関する専門家が税理士です。

主な業務としては、税の申告に関する書類作成や申告の代理、アドバイスなどです。これらは税理士の独占業務でもあります。

個人からの相談は少な目といえますが、近年では確定申告が発生する住宅ローン控除関連の相談などが多くなっていますね。 

そして、私が勉強をして辟易するのは、税制は例年見直しが行われるということに尽きます。つまり、知識を常にアップデートしなければならないのです。

だからこそ、専門家が必要といえばそれまでですが(笑)

 (相続に関する業務)

相続に関して税理士の役割といえば、相続時に相続税が発生するような規模の遺産相続に関する税の申告業務やアドバイスです。

相続税については基礎控除額が大きいですから、相続税の申告対象となりうる方は少ないといえるのですが、近年基礎控除額が引き下げられていることから、対象になるかもしれないので調べてほしいという相談は多くなっています。

また、遺産相続対策としての生前贈与などについても、関連する税金について相談するとよいでしょう。

 

・土地家屋調査士

「一言でいうと」不動産調査のスペシャリスト

 

土地家屋調査士は、登記簿上の「表示に関する登記」の代理を独占業務としています。

「表示に関する登記」とは、登記されたその不動産がどのような形状をしており、広さや用途がどのようなものであるかを示す部分です。現状では登記簿上の「権利に関する登記」は義務ではありませんが、「表示に関する登記」は義務となっています。

土地の広さなどを正確に把握する測量の技術を持つという意味において、非常に専門性が高いといえます。

ちなみに、測量士という資格もありますが、土地家屋調査士との違いは登記ができるかどうかです。測量士は計測についての専門家であり、土地家屋調査士は登記に関する計測についての専門家です。

公共工事でカメラのようなものを覗いて測量をしていることを見かけたことがある人もいるかもしれませんが、あの方々は測量士です。土地家屋調査士が公共工事の測量などを請け負うことはありません(基本測量や公共測量は測量士の独占業務)。

  (相続に関する業務)

測量が相続に関係してくる場合は、相続した土地全体を複数人の相続人で分割(分筆)したい場合などが挙げられるでしょう。

 

棲み分けがあるということは、それだけ専門性が各々高い証拠でもありますよね!

本日は、ここまでといたしましょう。

住宅ローン減税制度がコロナウィルスで延長に!控除期間3年延長が有力

こんにちは!

こうのとりです。

 

実家の愛犬はアポクリン癌という予後の悪いガンにかかってます。

余命半年が平均値ですが、まもなく1年です。

お尻の腫れもひどくなり、もうそろそろかなというところ。よく頑張った。

せめて苦しまないようにって思いますが、実のところ、犬は痛みをどの程度感じるかについて、はっきりとはわからないそうです。

せめて言葉が分かればと思いますが、そういうわけにもいかないですし・・・。

なるべくそばにいてあげてと、母親にお願いしておきました。 

 

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【病気なんてなんのその!でも、ちょっとリラックスしすぎじゃありませんか?】

 

さて、今回は案件の紹介ではなく、住宅ローン減税制度の控除期間延長のお話です。

まず、住宅ローン減税制度についておさらいしておきましょう。

住宅ローン減税制度については、2019年10月からの消費税増税の対策として設けられた特例措置であり、毎年の住宅ローン残債の1%について、10年間、所得税から控除(控除しきれない分は住民税からも一部控除)してもらえるという制度です。

控除期間中は「あれ?毎月手取り金額が少しずつ増えたような気がする」と錯覚しますが、単純に、本来は毎月差し引きされるはずの税金額が少なくなっているため、手取り額が増えるという仕組みです。

住宅ローンは毎年残債が減っていくものではありますが、例えば3,000万円の住宅を購入した場合には、初年度は30万円の控除が受けられるわけですからかなりお得です(収入によっては最大控除額を受けきれない可能性もあります)。

 

新築住宅だけではなく、一定の基準を満たした中古住宅にも適用される制度であり、戸建てだけではなくマンションにも適用されるという意味では、マイホーム全体に対して適用される特例措置だと認識しておけばよいでしょう。

そして、購入だけではなく、増改築に対しても適用となることもポイントです。バリアフリーや省エネ改修はもちろん、2世帯住宅への改築などにも適用されます(100万円以上の工事費の場合)。

ただし、省エネやバリアフリーの場合は、「住宅のバリアフリー改修工事に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例」を利用するほうが、得となる場合もあります。

こちらの特例が適用となる条件としては、令和3年12月までに改修工事が済んだマイホームへ入居することで、住宅ローン減税制度の半分の期間である5年間の控除期間となりますが、50万円を超える工事費が対象とされているため適用範囲が広いのが特徴です。

住宅ローン減税制度との併用はできず、どちらかを選択することになりますので、どちらかがお得になるか専門家にしっかり相談をしながらすすめるべきでしょう。

 

さて、住宅ローン減税制度に話を戻しますが、この制度について、10年間からの延長措置が検討されているということです。

もちろん、延長措置の議論のきっかけとなったのは、コロナウィルスに他なりませんが、延長措置としては13年間とされるのが有力とのこと。

  

そして、この控除については原則、購入したマイホームに令和2年の12月末までに入居した場合が対象となりますが、コロナウィルスの影響で建築や入居が遅れている事情を鑑みて、一定の条件下で、令和3年の12月末までの入居であれば認められているのが現状です。

この一定の条件というのは、「注文住宅を新築する場合には2020年の9月末までの契約が締結されていること」もしくは「分譲住宅や既存住宅の取得、増改築の場合には2020年11月末まで契約が締結されていること」というものですが、この条件についても撤廃が議論されており、一律で、令和3年の12月末までの入居であれば、住宅ローン減税制度の対象とされるよう、議論がなされています。

令和4年12月末までの延長要望もあるということで、今後の正式な発表が待たれるところです。

 

また、この特例を受けるための要件として、

1、床面積が50㎡以上であること

2、借入金の償還期間が10年以上であること

などが挙げられますが、床面積の制限についても緩和をするよう求められているところです。

たとえば、夫婦のみで過ごすための小ぶりなマイホームについては、50㎡よりも小さい場合もあるため、対象外であれば不平等になりうるという話ですね。

 

あくまでも延長措置ですから、残債が減っている状態では恩恵が若干少ないとはいえども、やはり数十万円単位の控除が受けられ、可処分所得が増えるのですから、家計としては助かります。

ぜひとも有効活用なさってください。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

相続不動産が古家だった場合の解体と滅失登記、譲渡の特例について

こんにちは!

こうのとりです。

 

今年は実家への帰省を自粛しました。

親としては顔が見たいという気持ちはあるでしょうけど、万が一のことがあれば病気を持ち帰ることになってしまいますし、田舎ではまだまだ誹謗中傷の可能性もあることを考えれば止むをえずでした。

しかし、ガンを患っている愛犬には、会いに行きたいな~と葛藤の日々です。

 

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【人から譲り受けたミニチュアダックスですが、母親のことが大好きです】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は飯野様(仮称:55才)です。

飯野様は遺産分割協議にて、遠方のご実家を相続分として所有することになったのですが、傷みのあるご実家をどのように処分しようか迷われているとのことで、滅失登記や売却した場合の譲渡所得の控除について相談に参られました。

 

生活圏ではない遠方に所在するご実家を相続した場合には、その活用や処分が難しく感じられることでしょう。思い出の詰まったご実家を容易に売却することには躊躇いを感じるでしょうが、誰も住むことの無い古家を放置することも、それなりのリスクを伴います。

方法としては、そのまま売却するか、古家のみ解体して土地を売却するか、通える範囲であればリノベーションなどで古家自体を利活用し居住するか、賃貸させるか、選択肢は多岐に渡ります。

もし、これらの判断に迷う時には、それぞれの方法について、時流に合わせた特例措置が講じられているかどうか調べてみると良いでしょう。

 

まず、古家の解体については自治体からの補助金制度などが整いつつありますが、あくまでも自治体独自の制度なので、要件や支給上限も様々です。

そして、古家を解体して建物が建っていない土地に関しては、固定資産税が高くつく(建物が建っていれば固定資産税が最大6分の1に減額される)というデメリットもある一方で、昨今の空き家問題対策として、自治体によって特定空き家に指定された場合には、固定資産税の減額が適用されないおそれもあり、まさに一長一短の状況といえるでしょう。

ちなみに、古家の解体の費用については、地域差があるものの木造で坪3~5万円、鉄筋コンクリートであれば坪6~8万円の自己負担となるため、30坪程度の古家であっても100万円~200万円の費用が発生することになります。補助金の上限額によっては、自己負担せざるを得ないでしょう。

また、古家の解体については、複数の業者に見積もりをとって依頼すべきですが、見積もりの際の現地調査や解体前の近隣への挨拶、電気やガス、水道などのライフラインの撤去依頼などもありますので、遠方に実家があった場合には、その都度、足を運ぶ必要性が出てくることは念頭に置くべきでしょう。

 

売却については、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」があります。一定の要件に当てはまる場合に関しては、譲渡所得の金額から最高3,000万円までを控除することができるという優遇制度です。

要件としては、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったことなど、まさに「空き家となった遠方の実家の相続」への特例なのですが、これは我が国で社会問題として深刻となりつつある空き家の増加への対応策ともいえるものです(現在、令和5年12月31日までの期限付き)。

古家を解体して更地にしてから売却する場合には必ず売却できるという保証がないまま解体費用を負担することになるため、古家付きのまま売却をしたり、リノベーションをしたのちに売却をするという方法も検討しつつ、控除の特例を活用できるようにしましょう。

 

なお、古家を解体した後、土地の売却を検討している場合には、建物滅失登記を忘れずに行わなければなりません。建物を解体工事した場合には、1ヶ月以内に建物滅失登記を行うことが定められているのです。これをしなかった場合には過料の罰則規定もあります(現実的には徴収されることはほとんど無いようですが・・・)。

そして、古家の登記がされたままの土地に関しては、新しい建物が建築された場合に、表示登記ができません。新築の表示登記ができなければ、買主が住宅ローンの融資に行き詰まるなど、大な迷惑をかける可能性もありますので、古家の解体後には必ず、建物滅失登記を行いましょう。

 

飯野様は、良かれと思って古家の実家を相続しましたが、ここまで処分に窮するとは思っていなかったと、心情を吐露されていました。ご自身も高齢化していく将来を見据えれば、いずれは管理が行き届かなくなることも、十分にご理解されたようです。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

相続税対策はできるのか!?小規模宅地の特例

こんにちは!

こうのとりです。

 

来年の東京オリンピック、一体どうなるんでしょうね?

コロナウィルスを乗り越えた結果としての開催であれば、過去最大級に盛り上がるでしょうけど、縮小のまま開催するなら、むしろ再延期のほうがいいんじゃないかなと思ったりします。

高校野球もそうだったけど、なんといっても人生をかけているアスリートの方々の努力が報われない現状には、ほとほと嫌気がさしますね・・・。

 

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 【以前は北海道出張が多かったのですが、今では全てWEB会議です】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は南條様(仮称:62才)です。

南條様はご子様たちへの遺産相続に先立ち、相続税対策として、所有している土地を有効活用できないか、ご相談に参られました。

相続税については、平成25年度の税制改正を受けて、基礎控除額が大幅に減額されました。具体的には、それまで「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)」だったものが、平成27年1月1日以降より「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」へと変更になっています。

相続税は元々基礎控除が大きいですから、ほとんどの方が非課税とされてきたものですが、今回の改正で最低でも2,400万円もの大幅な減額となったことで、南條様はもしかすると相続税の課税対象になるかもしれず、今のうちから対策をしておきたいとのことでした。

 

さて、相続税対策として土地の相続を考えた時に有効活用したいのが小規模宅地の特例です。これは、適用された場合に、相続税を計算する際に用いられる土地の相続税評価額が最大80%も減額されるという強力な節税方法です。

しかしながら、適用されるためにはいくつかの条件がある上、本来の目的は事業承継や、配偶者が継続して居住できるような配慮であるため、相続税対策としての駆け込み要素は排除されていることにも注意しなければなりません。

まず、対象となるのは、相続前から被相続人と生活を共にしていた(もしくは生計を一にしていた)親族であることです。

そして、評価額減額の対象は、住宅の敷地である宅地(特定居住用宅地等)、事業に用いられている建築物がある宅地(特定事業用宅地等)、アパートや駐車場など不動産貸付業に使用されている宅地(貸付事業用宅地等)の3種類に大分され、それぞれに減額割合と対象とされる上限面積が決められています。

 

1、特定居住用宅地等

主に被相続人の配偶者が継続して居住できるようにするたできるようにするための要件ですが、必ずしも同居が必須というわけではありません。また、条件によっては別居の親族でも特例が受けられる場合もあります(家なき子特例)。

減額割合は80%で、上限面積は330㎡までです。

 

2、特定事業用宅地等

被相続人が行っていた事業を継続して行うことができるようにするための要件です。会社というよりは、八百屋や書店などの店舗をイメージするとよいでしょう。相続税節税を目的とした駆け込み的需要の対策として、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等は、除外される法改正が近年ありました(例外あり)。また、相続人が相続税の申告期限まで事業を継続している必要もあります。

減額割合は80%で、上限面積は400㎡までです。

 

3、貸付事業用宅地等

被相続人が賃貸アパートや駐車場などの不動産貸付業に使っていた土地を相続する場合の要件です。相続税対策として賃貸アパートや駐車場を設置する行為が乱用されたため、「相当の対価」で貸付が行われているか、駐車場についてはその形態が「構築物の敷地」といえるかどうかなど、対象となるかどうかの判断基準が若干複雑です。また、こちらも相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等の除外対象となっています。

減額割合は50%で、上限面積は200㎡までです。

 

南條様はこれらの特例の活用を見据えながら、まずは本当に相続税が課税されるのかどうか、遺産の整理から行うことにされたようです。

相続税が課税される可能性がある遺産相続に関しては、様々な特例を計画的に利用しつつ、生前贈与や遺産分割の方法、遺書の作成なども含め、包括的な目線で行うべきです。法改正も度々行われますので、我々のような専門家に事前相談しながら、確実に進めていただければと思います。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

共有不動産を相続した場合に単独でできることは限りある!

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスによって、主にバックオフィスの業務は

在宅ワークが推進されるようになっていますが、

なかなか根づかないのは日本固有のコミュニケーション文化が

身体に染みついているからなのでしょうかね?

喫煙所での会話や、飲みニケーションも風化しつつある今、

世代間ギャップも広がりつつあるなぁと思う今日この頃です・・・。

 

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 【昨年の慰労会。お酒は弱いけど、ご飯をしっかり食べると割り切って参加しますw】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は森永様(仮称:68才)です。

森永様は、お父様の他界によって、地方にあるご実家を遺産相続することになりましたが、相続人の兄弟姉妹との話し合いの結果、ご実家が避暑地に所在していることもあるため、共有不動産として相続をすることにしたそうです。

森永様は兄弟姉妹が4人いますが、仲は良いとのことで、実家は別荘代わりとして、各々が利用したい時にすればよいという考えで一致し、持ち分を4等分にして相続をした後、5年が経った今まで、何ら問題なくご実家を共有してきたそうです。

 

しかしながら、兄弟姉妹の1人であるお兄様が他界し、この共有不動産の権利をお子様が相続することになってから、事態は変わってきました。

お兄様のお子様(甥っ子)は「シーズンオフに放置をしているのはもったいない。建物としての傷みもひどいのだから、土地も含めて売却を検討しないか?」と、残りの兄弟姉妹に相談を持ち掛けてきたのでした。

甥っ子様の主張もごもっともであり、経年劣化する遠方の不動産を誰が管理するかについては、いずれ問題となりそうな状況です。

しかし、相談の結果、残った3人の兄弟姉妹のうち、2人は甥っ子の主張に賛成でしたが、1人だけ「思い出の詰まった実家を手放したくない」と否定的であったため、甥っ子の提案はあえなく却下されてしまったとのこと。

この問題をきっかけに、これはいずれかの二次相続(遺産の権利者が後継者に移ること)後の紛争にもなりかねないとのことで、共有不動産の扱いについて、ご相談に来社されました。

 

共有不動産については、できることが限られています。

そして、その内容から、以下の3種類に分類されます。

1、単独でできること

2、共有持ち分を所有する割合が過半数以上でできること

3、共有者全員の同意のもとにできること

 

1、単独でできることについては、共有不動産の使用、修繕などの現状維持を目的としたリフォーム(保存行為)、共有持ち分の売却です(他に不法占有者への明け渡し請求や、虚偽の内容に関する登記の抹消請求)。

2、共有持ち分を所有する割合が過半数以上でできることについては、短期間に限っての賃貸物件としての貸し出し(利用行為)、資産価値を高めるようなリフォームやリノベーション(改良行為)です。

3、共有者全員の同意のもとにできることは、共有不動産の売却、建物の解体、建物の建築、抵当権の設定、長期間における賃貸物件としての貸し出し(これら全て処分行為)です。

 

共有持ち分の売却については甥っ子が単独でできるものの、活用が制限されている共有不動産の一部の持ち分だけを買う人はほとんどいないばかりか、相場よりもかなり安い値段となることは免れません。やはり、売却をするのであれば、共有者全員の同意をとりつけ、共有不動産全体を売りに出すべきでしょう。

また、空き家を賃貸物件として貸し出すことは可能ですが、短期か長期かによって同意を求める人数が変わってきます。土地については5年以内、建物については3年以内が短期とされており、この場合は共有持ち分の過半数以上の賛成で賃貸が可能となります。

 

今回の件で森永様は共有不動産の取り扱いの難しさを痛感されたようです。いくら兄弟姉妹の仲が良かったとしても、いずれはやってくる二次相続の結果として、それぞれのご子息同志で紛争になるようでは元も子もないと、現在の所有者同士で改めて実家の処分を話し合うことに決めたとのこと。

共有不動産の状態になるのは、相続の結果としてやむを得ずというケースはありますが、基本的には避けるべき状態であることは、認識しておかなければなりませんね。

本日は、ここまでといたしましょう。

超複雑!超タイト!相続税の申告手順と必要書類について

こんにちは!

こうのとりです。

コロナウィルスの動静に一喜一憂することはなくなりましたが、やはり今年のお盆は帰省せず、家でおとなしく過ごすことにしました。

都会の喧騒を離れて、田んぼの多い田舎に帰るのは年に数回の楽しみだったのですが、今回は止むを得ません。万が一自分が無症状で、大切な人たちにウィルスを感染させてしまっては、後悔してもしきれませんので。

年末には帰れるといいな~と思っています。 

 

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 【暑い日についつい食べたくなるのがこのサクレ、レモン味以外もあるんですね!】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は篠原様(仮称:52才)です。

 

篠原様のお父様が先日急逝されたとのことで、今後の遺産相続に関して長男である篠原様が遺産相続手続きの全てを一任されており、どのような手順で進めれば良いのかわからないということで相談に参られました。

 

相続税の申告については、①被相続人の戸籍情報を手にいれつつ、相続人となりうる人たちをリストアップすることから始まります。

次に、②遺産についてのリストをつくり、そのリスト次第で相続放棄や限定承認を決めることになるのですが、相続放棄や限定承認の期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から3ヶ月以内とタイトです。

そして、③遺言書が無い場合には遺産分割協議に入りますが、原則は法定相続人全員で協議をしなければならないため、皆のスケジュールを合わせて集まるのがひと手間です。

しかしながら、④相続税の申告については被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内と決まっており、相続人共同で提出しなければならないため、この申告の前には遺産分割協議を終える必要があるのです。

もちろん、遺産が相続税の基礎控除額以内「3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)」に収まっていれば相続税の申告は不要なのですが、相続放棄や限定承認の期限は被相続人が亡くなってから3ヶ月以内であるため、遺産が基礎控除額内であっても、一定の手続きは進めておかなければならないのです。

 

さて、今回は主に相続税が課税される場合の手順についてご説明していきます。

全般の流れについては国税庁のホームページからダウンロードできる「相続税の申告のしかた」を読み進めるとよいでしょう。

ただし、この冊子も文章が多く、読むだけでも苦労しますので、心してかかってくださいね(笑)

 

まず、相続税の申告書と申告に必要な書類を準備します。

申告書については、最寄りの税務署か国税庁のホームページでもダウンロード可能ですが、基本的には手書きです(専用の申告ソフトなどがあれば別)。

申告に必要な書類は相続財産の種類が多ければ多いほど多岐に渡りますが、こちらも国税庁のホームページでダウンロード可能な「相続税の申告のためのチェックシート」を確認しながら行うと良いでしょう。

以下、チェックシートに記載があり、必要とされる書類です。

 

1、相続財産の分割について

遺言書があれば遺言書の写し

未成年がいれば特別代理人の審判の証明書

戸籍謄本

遺産分割協議書の写し および 各相続人の印鑑証明書

 

2、相続財産について

不動産に関する書類

事業用(農業用)財産に関する書類

有価証券に関する書類

現金・預貯金に関する書類

生命保険金・退職手当金等に関する書類

立木に関する書類

その他財産に関する書類

 

3、債務・葬式費用について

債務に関する書類

葬式費用に関する書類

 

4、生前贈与について

相続時精算課税および暦年課税についての書類

 

5、財産評価について

不動産評価に関する書類

非上場株式に関する書類

上場株式に関する書類

立木に関する書類

 

6、特例について

小規模宅地等の特例を受ける場合の書類

特定計画山林についての書類

農地等の納税猶予についての書類

 

このように、相続税の申告には多くの書類が必要となる上、相続税の申告書は第1表から第15表まで、様々な様式で構成されているため、記載する順番についても重要です。

以下の順番で記載していくと良いでしょう。

① 第9表(生命保険金など)

② 第10表(退職手当金など)

③ 第11表 および 第11の2表の付表1~4(小規模宅地の特例など)

④ 第11表(課税財産)

⑤ 第13表(債務・葬式費用等)

⑥ 第14表(相続開始前3年以内の贈与財産等)

⑦ 第15表(相続財産の種類別価額表

⑧ 第1表(課税価格、相続税額)

⑨ 第2表(相続税の総額)

⑩ 第4表(相続税額の加算金額の計算書)

⑪ 第4表の2(暦年課税分の贈与税額控除額の計算書)

⑫ 第5表(配偶者の税額軽減)

⑬ 第6表(未成年控除・障碍者控除)

⑭ 第7表(相次相続控除)

⑮ 第8表(外国税額控除)

 

以上のように、相続税の申告については、時間をかけながら個人で行うことも可能ですが、期限が決められていることもあり、我々税理士事務所のような専門家に依頼をしたほうが良い場合もあります。

専門家に依頼したほうがよい例としては、遺産総額が多額(1億円を超える)な場合、遺産に不動産が多く含まれる場合、特例や税額軽減を利用したい場合、などは任せてしまったほうがよいと感じます。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

愛人が子どもと共に遺産相続を主張してきた!その権利は?

こんにちは!

こうのとりです。

 

 

今年は梅雨が長い?という印象がありますが、皆さまはどうお感じになられますか? 

雨が降っていると私の天敵であるヤブ蚊があまり飛ばないのでうれしいのですが、セミも鳴きはじめ、そろそろヤブ蚊たちも出てくるようになってます・・・。

もちろん、そんな時に欠かせないのは蚊取りリキッドなのですが、私はどちらかというと蚊取り線香のほうが好き。

ただ、、蚊取り線香で蚊が死んでいることを見たことないのですが・・・効果はいかほどなのでしょうかね・・・。

 

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【お香の香りは好きなんですが、蚊取り線香を浴びると煙臭くなるので注意です】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は浜本様(仮称:42才)です。

浜本様は突然の事故でご主人を亡くされ、その後、遺産相続を粛々と進めておりましたが、そんな最中、ご主人の愛人を名乗る女性が訪ねてきて、ご主人との間にできた子供の養育費のため、遺産を分けてほしいと依願してきたそうです。

たしかに浜本様はご主人との結婚生活が破綻していたことは認めておられましたが、とはいえども、ご主人の愛人にまで遺産を渡したくはないとのことで、ご相談にいらっしゃいました。

 

さて、まずは愛人への遺産相続を考える前に、配偶者と愛人、そして内縁の妻について整理しておきましょう。

配偶者は紛れもなく民法上の婚姻関係にある異性を指し、愛人ただの恋愛関係にある異性を指します。そして、内縁の妻というのは、民法上の婚姻関係にはないものの、同居をして生計を一にしているなど、いわゆる事実婚の状態にある異性を指します。

つまり、遺産相続の権利を持つ法定相続人という観点からいえば、愛人や内縁の妻は法定相続人とされないため、遺産を相続する権利を有しないことになります。

 

しかし、愛人や内縁の妻が遺産を相続する方法が無いわけでは無く、その主たる方法が遺言であるといえます。

もし、被相続人が愛人や内縁の妻に「遺産を全て渡す」と書かれている形式上有効な遺言が残されていた場合、その遺言が尊重されることになりますが、もちろん、「全て渡す」という意思が残されていても、全てが記載どおりに尊重されるわけではありません。

被相続人をそそのかした愛人が悪いのか、結婚生活を破綻させていた配偶者が悪いのかという論点はさておき、法定相続人については遺留分という最低限の権利が残されているのです。そして、遺留分は法定相続分の2分の1と決められています。この権利がある以上、法定相続人は遺産を相続する強い立場を有することになります。

 

また、被相続人と生計を一にしていた内縁の妻に限っては、被相続人の身の回りの世話をしていたということで、特別縁故者への相続財産分与が認められるケースがあります。

ただし、これが認められるためには、被相続人に法定相続人がいないことを条件とし、家庭裁判所にて特別縁故者と認められる手続きが必要です。

 

それでは、愛人や内縁の妻の子どもについては、どうでしょう?

被相続人と愛人の関係がたとえ不埒であったとしても、彼らの子どもにも罪を負わせるのはあまりにも酷い仕打ちといえるでしょう。

そのため、愛人や内縁の妻の子どもについては、配偶者との間にできた子どもである嫡出子に対して、非嫡出子という区分であっても遺産相続が認められます。

さらに、2013年9月5日の法改正によって、嫡出子と非嫡出子が受け取れる相続分の差異が無くなり、被相続人の子どもとして法定相続を受けることが可能となりました。

 

ただし、非嫡出子として相続が認められるためには、父親が自分の子どもであると認知することが必要です。

認知がなされていない場合には、その子どもは遺産相続はおろか、父親に対する扶養請求すらできません。

その場合、認知の訴えを裁判所に対して起こすことになりますが、ここでは割愛とさせていただきます。

 

このように、いくら婚姻生活が破綻していたとはいえ、法定相続人の権利はしっかりと守られているため、正しく遺産を相続したいのであれば、法的に婚姻関係の解消、もしくは結ぶことが求められます。

 

相談者の浜本様は、遺産が全て自分のものにならなかったことに不満はあったようですが、認知されていた子どもにまでその責任を負わせることには自責の念があったようで、遺留分を相続することでご納得されたということです。 

 

本日は、ここまでといたしましょう。

遺産相続?生前贈与?お得に遺産を残す特例の活用方法

こんにちは!

こうのとりです。

 

東京のコロナウィルス感染者が急増し、全国の1日の感染者もとうとう1,000人超えをするなか、ニューノーマルな生活への対応の難しさが浮き彫りになっていますね。

若い人ほど重篤化する可能性がないという情報が先行してしまっているので、若い人たちがコロナに対しての危機意識を削ぐ結果となっている気がします。

少なくとも人を感染させるリスクを考えて行動してほしいものですが、人の善意を拠り所にする方法はあまりにも短絡的で、せめて検査が手軽に、かつ強制的に行えるようになってほしいなと思うばかりです。

 

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【実家近くの駅は超ローカル線です。今年は規制も憚られますね】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は内村様(仮称:65才)です。

内村様はご自身のお子様たちが遺産相続で紛争とならないようにするために、遺言書をしたためておられましたが、遺言書より確実に遺産を相続すべく、生前贈与について検討をされるようになったそうです。

ただし、遺産相続であれば基礎控除額が大きいため税金の心配は無かったものの、生前贈与については税金がどのように課されるのか、また損をすることが無いかなど不安も多いにあるとのことで、今回ご相談に参られました。

 

たしかに、遺産相続に課される相続税の基礎控除については、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」となっており、ほとんどの方がこの基礎控除の範囲内に収まることから、税金の心配はいりません。

一方、生前贈与については、相続税ではなく贈与税が科されることになるため、贈与税の基礎控除を理解しておかなければ課税対象となり、単純に損をすることになってしまうのです。

そして、贈与税の基礎控除はたったの110万円(暦年贈与の場合、1年間の基礎控除額)ですから、基礎控除を比べるだけでも、圧倒的に遺産相続のほうが遺産を多く残せることになります。

 

しかし、生前贈与にはいくつかの特例があるため、これらの特例を有効活用することで、一定の遺産を損なく生前贈与することが可能となっています。この特例を利用して生前贈与をし、残った遺産については通常通り遺産相続をしてもらえば、遺産の金額も抑えられ紛争のリスクも抑えられるというわけです。

 

では、実際にどのような特例があるかですが、まず不動産の贈与として効果が高いのが、配偶者控除の特例です。

この特例は、婚姻期間20年以上の夫婦間において居住用不動産を贈与する場合に、2,000万円まで非課税となるもので、主に夫婦で居住していた実家などが、遺産相続の対象とならないようにするため、定められた特例です。

 

続いて、教育資金の贈与非課税の特例も利用価値があります。

父母や祖父母などの直系尊属から、教育資金として一括贈与を受ける場合1,500万円までが非課税となるため、お孫さんに対して学費を出してあげたいという場合などには特に有効に機能します。

注意すべきは、平成25年4月1日から令和3年3月31日までという期限が決められていることと、受贈者は30歳未満の方に限るということ、専用口座が必要となることです。

 

さらに、 結婚・子育て資金の贈与非課税の特例も活用したいところです。

こちらは、父母や祖父母などの直系尊属から、結婚・子育て資金として一括贈与を受ける場合1,000万円までが非課税となるため、大いに活用可能な特例です。

こちらも、平成25年4月1日から令和3年3月31日までという期限が決められており、受贈者は20歳以上50歳未満の方と決められていること、専用口座が必要となることには注意が必要です。

 

加えて、住宅取得等資金の贈与非課税の特例も活用すべきでしょう。

父母や祖父母などの直系尊属から、住宅取得等資金として一括贈与を受ける場合最大3,000万円までが非課税となる特例もあります。

同じく、平成27年1月1日から令和3年12月31日までという期限が決められており、省エネ等住宅か否か、また、契約の締結日によって非課税限度額が大きく異なるため、十分な注意が必要です。

 

これらの特例は、少子化や受贈者の高齢化など、様々な社会問題の対策として講じられているものでもありますので、幅広くこれらの特例措置を利用していただくことにより、生前贈与を促すものとなります。

 

ご相談者の内村様は今回のお話をご理解され、奥様に不動産の生前贈与と、お孫さんに教育資金の生前贈与をすることになさったそうです。

残った金額は取るに足らないため、お子様たちで争うことはないだろうと安心されておりました。

 

本日は、ここまでといたしましょう。