相続税が支払えないときに使う延納制度の利用条件・必要書類(後半)

こんにちは!

こうのとりです。

今日は前回の続きで相続税延納申請書についての記事になります。

相続税が支払えないときに使う延納制度にはどのような書類が必要になるのでしょうか。

 

相続税の延納申請に必要な書類

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相続税延納申請では相続税延納申請書などの提出をしなければいけません。
相続税延納手続きの必要書類は以下の通りです。

 

・相続税延納申請書
・金銭納付を困難とする理由書
・不動産等の財産の明細書
など

相続税延納申請書や理由書、財産の明細書などは相続税延納を申請するすべての人が提出しなければいけません。

相続税延納申請書は相続税延納の申し込みのための書類で、理由書は相続税をなぜ延納しなければならないのかを税務署に説明するための書類です。

 

相続税は現金一括納付が基本であり、相続財産や相続人の私財で支払いが困難なときに認められる支払い方法になります。

支払いが困難でなければ延納を認める必要はありません。
税務署側に延納の理由を説明しなければいけないのです。

相続税延納申請書などの他に、担保として提供する財産にまつわる書類が必要になります。

 

財産にまつわる書類は、どのような財産を担保にするかによって変わってくるため注意が必要です。
たとえば土地を担保にする場合は土地の担保目録及び担保提供書などの他に登記事項証明書や固定資産税評価証明書などが必要になります。


担保にする財産に合わせて、税理士や税務署へ必要書類の確認を取ることをおすすめします。

 

なお、担保にする財産関係の書類準備に時間がかかるなどの理由から提出期限を延ばす場合は、担保提供関係書類提出期限延長届出書の提出も要するため注意してください。

 

記載が必要な相続税延納申請書などの記載例については次の見出しで詳しく説明します。

 

 

相続税延納申請書の記載例

相続税延納申請書はすべての相続税延納ケースで提出しなければならない書類です。


相続税延納申請のために必要な相続税延納申請書の記載例について説明します。

 

相続税延納申請書は国税庁のホームページでダウンロード可能です。

 

 

相続税延納申請書については、それぞれの欄で尋ねられていることに対して記載すれば特に問題ありません。

 

欄によっては尋ねられていることが他の提出書類(金銭納付を困難とする理由書など)と重なります。

 

記載事項が他の提出書類などと重なる場合も相続税延納申請書の方にあらためて記載する必要があるので注意してください。

 

相続税延納申請書の記載例についてもう少し詳しく説明します。

 

 

相続税延納申請書の記載例・記載すべき欄

相続税延納申請書で記載が必要になる主な欄は以下の通りです。

 

●相続税の延納申請税額

相続税延納申請書でまず記載するのは相続税の延納申請税額です。
相続税延納申請税額については延納分の金額そのものだけを記載するのではなく、相続税額や物納の額、現金で支払った額などを順番に記載して、最終的に相続税延納分を算出のうえで記載する仕組みになっています。

 

●金銭で納付することを困難とする理由

相続税を金銭で納付することを困難とする理由について記載します。
相続税延納申請では理由書も提出しますが、こちらの欄にもあらためて記載を要するのです。
金銭で一時に納付することが困難な金額(延納許可限度額)については理由書の方で計算します。

 

●不動産の割合

相続税の延納では遺産に占める不動産の割合が重要になります。
相続税に占める不動産の割合によって延納期間や延納の利子が変わってくるのです。
基本的に遺産に占める不動産の割合が多くなると、その分だけ延納期間を長く設定できます。
相続税延納利子も不動産の割合が多くなると低くなるのです。
税務署側は遺産にどれくらいの不動産があるか確認しなければいけないため、この欄で不動産について記載し、遺産に占める不動産割合を報告するかたちになります。

 

●延納申請税額の内訳・延納申請年数

延納申請税額の欄には、不動産の価額に応じた割合と計算式により相続財産の種類ごとの延納相続税額を計算します。
延納申請年数の欄には、希望する延納の期間を記載します。

 

●担保欄

相続税延納申請書の下の方にある「別紙不動産等の財産の明細書のとおり」の文言は、不動産などの価額の割合が75%未満である場合は消しておきます
相続税延納額が100万円以下で、かつ、延納の年数が3年以下の場合は「別紙目録のとおり」の文字も消してください

 

●分納税額、分納期限及び分納税額の計算の明細

分納する税額や支払いの期限について記載する欄です。
分納の支払い期限については納期限から1年以内の希望日を記載してください。
毎月の支払い日は同一日を記載します。

 

●相続税延納申請書のその他の記載欄

その他参考事項の欄ではそれぞれの欄で尋ねられている事項について記載します
被相続人・遺贈者、相続発生・遺贈年月日などの欄があります。

 

●相続税延納申請書を提出した後の流れ

相続税延納申請書を提出してもすぐにその場で延納の可否がわかるわけではありません。


相続税延納申請書や理由書などすべての必要提出書類がそろっているか確認され、さらに相続税延納申請書などの記載欄に漏れがないか、延納申請の内容なども確認されます。
そのうえで税務署側が相続税延納を認めるかどうか判断するという流れです。

 

税務署側が提出必要書類の内容で相続税延納について許可するという判断の場合は「相続税延納許可通知書」が送られてきます
相続税延納申請書などの提出書類を確認したうえで相続税延納を許可しないという判断を下した場合は「延納申請却下通知書」が届くという流れです。

 

税務署側が相続税の延納を認めたらそれで延納申請手続きは終了ではなく、さらに担保についての手続きを行わなくてはいけません。
たとえば不動産を相続税延納の担保として提供した場合は法務局で抵当権設定の登記をするという流れになるのです。


担保の提供についても手続きが終了したら、後は相続税分納の申請内容に沿って実際に分納を行います。

なお、相続税分納の担保に設定した不動産に火災保険などの契約がある場合は、火災保険の契約更新などの際にも税務署に連絡し質権設定などの手続きが必要になるため注意してください。

 

相続税延納申請書は記載内容が複雑です。
被相続人や相続人が延納を希望する額などを簡単に記載して申請すればいいわけではありません。


記載が必要な欄に遺産、中でも不動産関係の計算が絡む点に難しさがあります。
もちろん自分で計算してもかまいません。


ですが、計算ミスや記入ミスは相続税延納手続きの遅延にもつながります。
期限内に書類を準備して相続税延納申請書などに正しい情報や数字、計算結果を記入することは、相続税の専門的な知識がないと難しいことです。

 

相続税延納申請の手続きをスムーズかつミスなく行うためにも相続税の専門家に依頼してはいかがでしょう。
相続税延納の際は専門家に相談のうえで相続税延納申請書の作成などをサポートしてもらうことをおすすめします。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

相続税が支払えないときに使う延納制度の利用条件・必要書類(前半)

こんにちは!

こうのとりです。

今日は相続税についての記事です。

 

相続税は被相続人の死によって唐突に課税され、基本的には現金一括納付になります。
そのため相続人の中には「現金の準備がなく相続税を課税されても急に払えない」というケースがあるのです。

人の死は唐突です。
事前に確実に予見することはできません。
だからこそ資金準備が難しいのが相続税なのです。

突発的に課税されるなどの相続税の事情を考慮して相続税には「延納」という制度が定められています。
この記事では延納の条件や相続税延納の申請に必要な書類、相続税延納申請書の記載例など、相続税延納の手続きに必要な知識をご紹介します。

少し長くなりますので、2回にわたって解説していきます。

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相続税を延納するための条件

相続税の延納とは相続税を分割払いする制度です
相続税は現金一括払いが基本ですが、相続人の生活状況や相続税の額によっては一括で相続税を払うことが難しいことでしょう。
さらに相続は被相続人の突発的な死によりはじまるという事情もあります。
被相続人の死後に遺産ごとに相続税評価(価値の評価)をしてみないと正確な税額をなかなか算定できないため、資金準備の難しさに拍車をかけているのです。
そのため、相続税には分割払いでの相続税納付を許可する「延納」という制度が定められています。

相続税分割払いという内容から買い物の分割払いを想像するかもしれません。
相続税の分割払いは確かに相続税を分割で支払う方法になりますが、買い物の分割払いのような柔軟さはありません。
分割払いできるといってもあくまで基本は現金一括払いですので、相続人が分割払いしたいからといって簡単にできるものではありません。
相続税のルールで定められた条件に当てはまっていないと延納の利用は許されないのです。

相続税の延納を使うためには以下の利用条件に当てはまっていなければいけません

 

1.相続税額が10万円を超えている

延納を利用するためには相続税額(贈与税額)が10万円を超えていなければいけません
相続税額が低い場合は使えないということです。
相続税額が低い場合は一括で払える可能性が高いからです。

たとえば相続人が姉と妹のふたりだったとします。
姉の相続税額は20万円で、妹の相続税額は5万円でした。
このような場合は、姉は相続税の延納を使えますが妹は使えません。

 

2.相続税の現金納付が困難である

クレジットカードの分割払いは現金払いが困難かどうかは関係ありません。
使いたいときに使えます。
しかし相続税の分割払いは現金払いが困難であるという条件に当てはまっていなければ利用できません。

現金払いが困難かどうかは遺産に加えて相続人の資産もチェックされます。
たとえば相続財産で払うことが困難でも相続人の資産で払うことができるなら、それは現金払いできるということです。
相続人の資産をもってしても現金払いが難しいケースしか使えません

なお、相続人の資産で払えるかどうかを判断されるときは生活費などについては考慮されます。
給与と預金すべてを相続税の支払いに充てろということではないので安心してください。

 

3.相続税延納申請書などを期限までに提出する

相続税の延納を利用するためには相続税の申告期限まで相続税延納申請書や担保関係書類といった必要書類を提出しなければいけません

相続税の申告期限は10カ月です。

 

4.相続税延納の担保を提供する

相続税の延納を使うためには担保を提供しなければいけません。
延納によっても相続税を払えないときのための保険が延納の担保です。
相続税延納の担保については別の見出しで説明します。

 

相続税延納は利息が発生する

クレジットカードなどで分割払いをすると、分割の回数にもよりますが所定の手数料がかかります。
相続税の延納も似ていて、延納をすると相続税の他に利息が発生する仕組みになっているのです。
もちろん買い物の分割払いと相続税の延納は性質自体が異なりますが、延納の利息については分割払い手数料のようなものだと捉えれば比較的理解しやすいかもしれません。

相続税延納の年利は1.2%~6.0%ほどです。
相続税の延納の利息は延納の期間と相続財産に占める不動産の割合などによって変わってきます。

 

相続税の延納に利用できる担保

相続税の延納では相続税を支払えないときの保険として担保を提供する必要があります。
延納によっても相続税を払えない場合は担保から回収されるわけです。

担保はいざというときに相続税を回収するための保険ですから、どのような財産でも認められるわけではありません。
延納の担保として使える財産が定められている他、担保に提供する財産についての条件もあるのです。

 

相続税の延納で担保にできる財産

相続税の延納では以下のような財産を担保にできます。

 

・国債や地方債、社債
・不動産(土地や建物)
・船舶や飛行機、自動車、建設機械
・各種の財団
・税務署長などが認める保証人

など

以上のような財産が相続税延納の担保になります。
担保にできる財産の共通点は「価格変動が少なく簡単に処分できる財産である」ことです。

ただ、上記のような財産であれば何でも担保にできるわけではないため注意が必要になります。
担保にするためには担保の条件を満たす必要があるのです。

 

相続税延納の担保の条件

相続税延納の担保にする財産には3つの条件があります。
条件を満たしていない財産は担保として認められません。

 

(1)担保の換金が容易である

担保にしても換金できなければいざというときに相続税延納分の回収ができません。
相続税延納の担保にするためには換金が容易な財産でなければいけません。
担保として提供された財産の換金に時間がかかると税務署は速やかに相続税を回収できないことになります。
いざというときにスムーズに相続税延納分を回収できるかがチェックポイントになるわけです。

 

(2)土地に抵当権の設定が可能

相続税延納で土地を担保にした場合は土地に抵当権を設定します。
ただ、抵当権の設定ができても他に抵当権者がいて後順位になってしまう場合は担保にできないのです。

 

(3)延納金額と同程度の価値がある

担保にする財産は相続税延納の金額と同程度の価値を持っていなければいけません。
相続税延納の金額が1,000万円なのに担保の価値が100万円ほどだと価値が釣り合わないのです。
いざというときに相続税延納分を回収できません。税額に釣り合った財産でなければ担保として認められません。
なお、財産を担保にした後に価値が低下したような場合は追加の担保を求められることがあります。

 

相続税の延納で担保にできない財産

相続税の延納で担保にできる財産であっても、以下のような財産は担保不適格として相続税延納の担保には使えません

 

・処分禁止の財産
・所有権争いがあるなど係争中の財産
・第三者などの同意や許可が必要なケースで同意や許可が得られない財産
・売却できる見込みのない財産
・存続期間が延納の期間より短い財産

など

共通点としては「相続税延納分の回収が困難な財産」です。

 

相続税を延納するための条件について解説してきました。


本日は、ここまでといたしましょう。

 

その土地は誰の土地?相続登記の義務化について

 

こんにちは!

こうのとりです。

 

もう寒い季節なんですよねー。

私、極度の暑がりなもので、コートを着ずにスーツのまま冬を越えることもしばしば(笑)

周りの人からは引かれますけどね・・・でも、暑いんだもん!!!

もともと、寒いところで生まれ育ったからでしょうね。

クーラーという概念が無い土地でした。

 

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【休日の散歩は、毎週の日課になりつつあります。】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は田谷様(仮称:48才)です。

やや特殊な案件ではありましたが、タイムリーな内容なので書き残しておきます。

 

事の発端は、田谷様のお父様が他界する最後の最後で「借金があるから、実家の裏山を売って返済してほしい」と言い残したことから始まりました。

田谷様が半信半疑ながらも、調べられる範囲で調べてみると、たしかに借金は見つかったものの、実家の裏山は誰のものかわからずじまいであり、田谷様はその後、借金を免れるために相続放棄をしたという話です。

 

実は少子高齢化に関連して、現在の日本において問題になっているのが、誰が所有しているのかわからない土地が引き起こす社会問題です。

所有者がはっきりしなければ、空き家と同様に荒廃するのはもちろんのこと、道路や水路などのインフラを構築する際の障壁になったり、山火事や土砂崩れなどの防災対応にも大きな問題となりうるのです。

 

それではなぜ、とある土地について、誰が所有しているのかわからなくなってしまうのでしょうか。

例えば、身寄りのいないご老人が他界したケースを考えてみると、確かに遺産の引き取り手がおらず、所有者不明となるように思われますが、この場合には特定の手順が踏まれたのちに国庫に納められることとなっているため問題がありません。

問題は被相続人に相続人がいないということではなく、土地の所有者が自分の土地に対して必ずしも登記をしていないという現状にあります。

 

一般的に、不動産の売買や遺産分割協議を行った場合には、あくまでも第3者への対抗措置として、当たり前のようにその不動産の名義変更(所有権移転登記や相続登記)を行うものですが、実はこれは義務ではありません。

つまり、売買や遺産分割協議などのきっかけがなく、親から子ども1人への単純な相続だった場合などにおいて、親の遺産は当然自分のものと理解している方は、いちいち費用をかけて名義変更をすることもなく、親の名義のまま所有しているということが大いにあり得るのです。

また、突然死の場合などは親の資産を調べ切れず、単純にその資産の存在に気付かないまま相続を終えている可能性もあります。特に、固定資産税が課税標準額を下回っているような田舎の土地(山林や原野)であれば、固定資産税が請求されることが無いため、気づきにくい状態といえるでしょう。

 

このような事態を重く見た政府は、所有権という絶対的権利を後目にしながらも、所有者不明である土地の問題に着手するようにになりました。

まず先行して行われたのが、令和元年6月1日に全面施行された「所有者不明土地法(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法)」です。

これは主に、所有者が不明である土地を使用したり収用しようとする場合に、都道府県知事に対してスムーズにお伺いを立てることができるという法律であり、国や自治体などの行政にとって利便性が高いものとなっています。

 

しかし、今後ますます少子高齢化が進むことを鑑みれば、事後対応よりも事前対策が望ましいとされるのはもちろんです。

最終的には「相続登記の義務化」が現在検討されているところです。

早ければ令和3年中に施行されるのではないかといわれていますし、罰金も検討されているようですから、今後相続を控えている方については、相続の際に登記が義務化されている可能性を念頭に入れておきましょう。

 

なお、相続登記は主に司法書士などに依頼すると円滑に進みますが、依頼した場合の費用の相場は約6万円~8万円程度となっています。

現在所有されている不動産の名義がご自身のものになっているかについても、あらかじめ確認しておいたほうがよいかもしれません。

万が一の際に名義がはっきりしていない場合、売却や相続が円滑に行われず、ご家族に手間を取らせる可能性も十分にあり得るからです。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

離婚をした場合は持ち家を真っ二つにする?離婚と不動産と課税対象と

あけましておめでとうございます!

こうのとりです。

 皆さま良い年を迎えられましたでしょうか?

 

「やられたらやり返す、倍返しだ!」

もうあのドラマが終わって半年以上経つんですね。

決してミーハーじゃない私も、池井戸潤さんの小説とテレビドラマは全部見てます。

そして、購入したのが100倍返しまんじゅう!

パッケージがね、金ピカなんですよ!正月らしいでしょ?

そして、あまりにもピカピカなんで、家に飾ってたら、そこから金運が良くて!

嘘みたいな話、信じるか信じないかは、あなた次第です(笑)

  

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【目が痛くなるくらいピカピカです。残念ながら半沢次長の名刺はステッカー】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は植松様(仮称:35才)です。

植松様は旦那様とお子様一人の3人家族でしたが、紆余曲折ありつつも、植松様は旦那様と別々の道を歩むことを決め、離婚をしたそうです。

当然のことながら、財産分与や養育費の取り決めも行ったのですが、この場合の税金はどのように考えたらよいのかということで、ご相談に参られました。

 

まず、離婚をする場合の財産整理として考えられるのは以下の3つです。

1、財産分与について

2、養育費について

3、慰謝料について

 

このそれぞれについて、課税対象となるのかどうか、ご説明していきましょう。

 

1、財産分与について

財産分与の原則は、半分ずつです。

植松様のご家族は共働きでしたが、たとえどちらかが専業主婦(主夫)であっても半分ずつに分けるのが当然です。

ただし、貢献度によって割合が異なるケースもあります。

たとえば、旦那様が全く働きもしない家事もしないとして、奥様が家計を支えていた場合に、いざ離婚をする際に半分ずつ財産分与をするのはおかしいわけですね。

また、当然ながら結婚をする前から持っていた財産については財産分与の対象外です。結婚をしたのちに2人で築いてきた財産が、財産分与の対象として認められます。

 

財産分与は資産を多く持つ方から、相手方へ資産を渡すことになるため贈与に見えますが、あくまでも財産分与の過程での受け渡しであるため、贈与税は発生しませんし、損得がないために所得税も課税されません。

ただし、財産を非課税で奥様に渡すための偽装離婚などはもちろんのこと、財産分与の結果として財産が多すぎる場合についても課税対象となる可能性があります。

 

注意点としては、不動産を財産分与時に受け渡す場合です。

基本的には非課税なのですが、もし、その不動産が購入した当初よりも大きく値上がりしていた場合などには、そこに儲けが発生することになりますので、差額に対して譲渡所得税が課税されることになるのです。

 

2、養育費について

養育費に関しては、当然のことながら非課税とされます。

ただし、相手の顔をもう二度と見たくもないので、まとめて養育費が欲しいと請求をして相手に納得してもらったとしても、あまりにも高額である場合には贈与税が発生する可能性がありますので、注意しましょう。

基本的には毎月いくらという取り決めになるケースが多いため、そこまで問題になることはありません。

 

3、慰謝料について

慰謝料については、損害賠償に分類されるため非課税です。

これは、所得税法上認められている事項になります。

ただし、こちらも常識の範囲内です。あまりにも高額であれば贈与税が課税される可能性もありますが、ケースとしては稀でしょう。

 

さて、財産分与としての不動産の処分について、もう少し掘り下げてみましょう。

もし、持ち家を財産分与の対象とする場合にはどのようにすればよいのでしょうか。

 

まず、大前提として、どちらか一方が住み続けるのか否かという問題があります。

もし住み続けることなく、それぞれが引っ越していくのであれば、持ち家を売却して得た金額を財産分与すればよいでしょう。

 

しかし、住み続けたいという希望がある場合には、住宅ローンが残っているか否かによって、財産分与の方法が異なります。

住宅ローンが残っていれば、持ち家の資産価値から住宅ローンの残債を差し引いた額を算出し、それを財産分与対象としてそれぞれの割合で計算します。

もちろん、住み続ける側は出て行く側に対して、計算した金額を支払うことになります。

住宅ローンが残っていない場合については、単純に持ち家の資産価格を財産分与対象としてそれぞれの割合で計算することになります。

そして、住み続ける側は出て行く側に対して、計算した金額を支払うのです。

 

人生を共に歩もうと決めた場合であっても、お互いが消耗するほどすれ違ってしまっている場合には、その状態を続けるのはお互いにとってマイナスでしかありません。

2人で築いてきたものをしっかりと分けて、前向きに、それぞれが新しい船出へと向かうのであれば、それはそれで良いのでは?と思うのです。

本日は、ここまでといたしましょう。

疎遠だった親族が孤独死!降りかかる借金はどう処理するの?

こんにちは!

こうのとりです。

 

携帯電話の割引って、今後どうなるんでしょうかね?

政権が代わって、携帯電話の見直しが加速しそうですけど、今のところは大容量プランの見直しだけなんですよね~。

私、今のところ単身だからな・・・(涙)

そんな中、楽天モバイルを契約してみました!

なんと太っ腹の1年間無料+機種代も実質無料なので!

タダより怖いものはないという格言はありますが、今のところ大丈夫です(笑) 

 

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【もし使い勝手がよければ、母親にも購入を薦めようかなぁ~】

 

さて、今回ご紹介する案件は、事務所の先生のご友人である唯野様(仮称:55才)のケースです。

 

唯野様は遠方に一人暮らしのお兄様がいらっしゃいましたが、日頃から交流はなく、疎遠な状態が続いていたようです。

そんなある日のこと、お兄様が住んでいたマンションの管理人様より「お兄様が孤独死をした」との手紙が突然届きました。

慌てて連絡をしてみると、たしかに3カ月前に孤独死をしたとのことで、当時は身元が分からなかったため、遺体については役所にてすでに荼毘に付したとのことでした。

 

管理人様はお兄様との会話や、その後も届いた郵便物などからなんとか唯野様にたどり着いたとのことでしたが、管理人様の主張としては「未払いの家賃と、孤独死によって負担した費用を請求したい」という内容でした。

その金額はなんと100万円近くにもなっており、さらに相続放棄については期限が決められてることを知っていた唯野様は、どう対応したらよいのかということで先生にご相談なさったというわけです。

 

このような孤独死の問題は、高齢化社会が社会問題となっている日本において、誰しもが直面する可能性のある出来事でしょう。

孤独死であろうがなかろうが、誰かが死亡すれば相続の問題が出てきます。

そして、唯野様のケースのように、第3者からの請求によって孤独死が判明する場合など、負の遺産から孤独死が判明することが往々にしてあるといえます。

 

まず、ご安心いただきたいのは、相続放棄の期限は相続開始を知ってから3ヶ月以内であることです。死亡時から3ヶ月以内ではありません。

唯野様のケースなどは、管理人様からの連絡から3ヶ月以内と解されるべきでしょう。

では、唯野様が3ヶ月以内にすべきことは何でしょうか。

大きく分けると、

1、相続人を特定すること

2、資産を調査すること

この2点といえるでしょう。

 

1、相続人を特定すること

孤独死ですから、相続人を調べてどうするのかと思われるかもしれませんが、遺産がプラスであろうがマイナスであろうが、相続人には遺産を相続する権利があります。

つまり、唯野様個人が相続放棄をすれば済むという問題ではなく、たとえば唯野様のご両親が存命だった場合などにおいては、唯野様ではなくご両親に遺産相続の権利が集中するわけです。

孤独死であっても戸籍上に配偶者や子供がいないかなどについても確認すべきであるといえるでしょう。

 

2、資産を調査すること

続いて資産の調査についてです。

しばらく音信不通だった上の孤独死である場合、なかなか確認が難しいといえますが、銀行や生命保険会社、社会保険の有無や年金の有無など、1つずつ確認していかなければなりません。

これらの意味はもちろん、プラスの遺産が無いかどうかについての確認ですが、唯野様のように負の遺産が先行して見つかったとしても、プラスの遺産で相殺される可能性も十分にあります。

 

また、もし、遺産の調査が難航した場合などで、相続開始を知ってから3ヶ月以内に相続放棄をすべきか判断に迷う場合には、限定承認を選択することも可能です。

限定承認とは、相続によって得たプラスの遺産の範囲内でマイナスの遺産を引き受ける制度で非常に便利です。

しかし、大きなデメリットとして、法定相続人の全員が共同して行う必要があるため、結果として先に述べた相続人を特定することが非常に重要となってくるわけですね。

 

なお、注意点としては、孤独死を早期にみつけたからといって、遺品の整理を先にやってしまうと、単純承認したもの(相続を受けた)とみなされて、その後の相続放棄ができなくなる可能性があることです。

経済的に価値がないものであれば問題ありませんが、海外や貴金属などが遺品に見つかった場合には、勝手に処分するのは危険といえるでしょう。

 

唯野様のケースのように、孤独死を引き受ける側が手を煩わせることがないよう、身寄りがいない状態であった場合には、遺言を残して置いたり連絡先や親族について、あらかじめ周囲の方に伝えておくことも重要ですね。

本日は、ここまでといたしましょう。

まさか過去に受けとった財産の返還を求められるとは!特別受益について

 

 こんにちは!

こうのとりです。

 

アメリカの大統領選挙はこのままバイデン候補の勝利に終わりそうですね。

トランプさんはパリ協定やWHO(1年後)から脱退し、

「世界のアメリカ」となることをやめた大統領です。

 

自国民に利益にならないことはしない!と損得勘定を徹底したところは

いかにもビジネスマンであり、あれだけの支持を集めたことも頷けますが、

ここまで接戦になったということが、アメリカの分断を象徴している気がしますね。

コロナの問題も含め、この先アメリカはどうなっていくのでしょうか。

 

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【いなかに帰って緑を見ると安らぎます。でも、今年の年末は帰っていいのかな・・・】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は坂東様(仮称:34才)です。

 

坂東さまは先日、大好きだった祖母を亡くされましたが、悲しみに明け暮れる暇もなく、坂東さまの叔母様にあたる親族に、過去に祖母から譲り受けた財産を返してほしいと求められたということで、どうしたらいいのかと相談にいらっしゃいました。

孫に対して財産の返却を求めることなどありえないと思われるかもしれませんが、坂東さまのケースは特別受益に抵触する可能性があることあるため、問題になったといえるでしょう。

 

この特別受益とは、生前に被相続人が相続人に対して特別に贈与をしていた場合などに取り上げられる問題です。つまり、遺産相続について、遺書などが無ければ法定相続分通りに配分されるべきですが、特定の相続人が生前贈与を受けていたとすれば、生前贈与を受けることができなかった他の相続人は不利益を被ることになります。

たとえば、被相続人にに子どもが2名いたとして、車を買うための費用を兄に対して500万円ほど工面してあげたとします。その後、被相続人が亡くなり、遺産分割となった場合に、工面した500万円を除外したまま遺産を計算すれば、兄以外の相続人が不利益を被るというわけです。

 

このような不平等を無くすために、考えられたのが特別受益ですが、まず大前提として、特別受益者の対象となるのは、特別受益を受けた共同相続人に限ります。

つまり、相続人でなければ特別受益者には該当しないため、孫にあたる坂東様は本来、法定相続人では無いために特別受益者から除外されるはずでした。

しかし、坂東様は最近ご両親を亡くされていたこともあり、ご両親の相続権をそのまま受け継ぐことになっていたため、特別受益者に該当する可能性があったのです。

 

しかしながら、ここには1つ坂東様が特別受益を得たことにならない理由が見逃されていました。

実は坂東様が留学の費用を工面してもらったのは、坂東様のご両親が亡くなった後だったのです。

つまり、相続人が相続人の地位になる前に受け取った財産に関しては、特別受益としては認められないのです。

 

さて、特別受益に関しては、民法第903条に明文化されています。

「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるとき」について、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなす」とされており、「算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする」との記載があります。

 

この条文から読み解くと、特別受益の範囲については、

1 遺贈(遺言で財産を受け継ぐ場合)

2 婚姻のための生前贈与

3 養子縁組のための生前贈与

4 生計の資本としての生前贈与

の4つに限定されます。

 

それぞれの細かい解説は省きますが、特別受益の観点は、遺産の前渡しによる不公平を無くすというものです。

そのため、妥当と思われる範囲内の援助については特別受益には当たらないとされています。

 

また、近年(2019年7月1日)の法改正で

1、遺留分の基礎財産に含める贈与については期間制限がなかったものが、相続開始前の10年間に限定される

2、結婚から20年以上が経つ配偶者に対する自宅の生前贈与については、特別受益の持戻し免除が推定される

など、特別受益の対象を限定する改正があったことについても念頭におくべきといえるでしょう。

 

ちなみに、特別受益とは話が逸れますが、祖父母からの留学費については「教育資金贈与」とされて、1,500万円までは非課税対象となります。

学費を受ける方の年齢は原則30歳まで(場合によって40歳まで)と、期間が長いこともありますので、ぜひとも、この非課税枠については有効に利用していただきたいと思います。

 

坂東様は叔母に今回のことを説明したそうです。

叔母様もムキになってごめんなさいと、謝られていたそうですよ。

本日は、ここまでといたしましょう。

誰に相談すればいいの?相続と相談すべき士業の棲み分け

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスに有効なワクチンがいよいよ出てきたようで何よりです!

このような未知のウィルスが出てきても、それに対して1年もせずにワクチンを開発できる医学者・科学者たちはすごいと思います。尊敬しかありません。

もちろん、感染者が増える中でまだまだ油断はできませんし、マスクを付けることが常識化すると、風邪とかインフルエンザもひかないんじゃないかな?と思ったりしてます。

でもマスクを年中付けてるのも息苦しいし・・・難しいところですね。

 

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【久々に行った喫茶店のルノアールが、紙製のストローになってました!驚き!】 

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は笹尾様(仮称:25才)です。

 

笹尾様は若くして遺産分割協議に参加することになったものの、相続の際にどの分野をどの専門家に頼めばいいか、わからないと嘆いておられました。

幸い、問題はすでに解決したのですが、たしかに言われてみればそうかもなと私も感じることがあります。

そこで今回は、行政書士、司法書士、弁護士、そして私たち税理士などが、相続問題にどのように関わっているか、簡単にまとめてみたいと思います。

 

・行政書士の役割

「一言でいうと」文書作成のスペシャリスト

 

行政書士は、その名のとおり、行政に関する書類作成を専門とします。

行政に関する書類といっても種類は豊富で、自動車のナンバー変更から登録、日本国籍取得の帰化手続き、法人設立の際の定款作成から風営法に関する届け出までジャンルも多岐に渡ります。

  (相続に関する業務) 

相続に関する業務としては、遺言作成の支援や遺産分割協議書などの作成、場合によっては相続財産の調査を引き受けてくれることもあります。

また、農地から宅地への転用など、土地に関する申請手続きも行うことがあります。

 

・司法書士の役割

「一言でいうと」登記のスペシャリスト(+弁護士業務の一部)

 

司法書士は行政書士と混同しやすいですが、司法に関する書類作成を専門とするという意味では、その名のとおりとなります。

ここで「司法に関する」という文言を「法務局や裁判所に関する」と言い換えると分かりやすくなるかもしれません。

司法書士の独占業務としては「法務局に提出する書類作成や手続きの代理」および「裁判所に提出する書類作成や手続きの代理」を挙げることができます。

そして、法務局で行うのが、不動産登記、商業登記、法人登記などです。

また、裁判所にてに提出する書類作成や手続きの代理(法律業務)という業務内容は、弁護士に近しい内容なのですが、司法書士ができる法律業務は一部に限られています。

例えば、民事事件(140万円以下の民事事件においては認定司法書士であれば対応可能)や破産・民事再生等の申立てについては、司法書士が行うことができないため注意が必要です。

  (相続に関する業務)

先に述べた通り、不動産登記が得意分野となります。

近年、これまで義務化とされていなかった不動産登記が義務化される動きも出てきておりますので、今後、司法書士が活躍する場が増えていくと思われます。

 

・弁護士の役割

「一言でいうと」法律のスペシャリスト

 

いわずもがな、法律のスペシャリストである弁護士であり、弁護士資格で行うことができない法律事務の分野はありません。

過去に、登記業務を司法書士の独占業務とすべきであるとの訴訟が行われましたが、結果としては登記業務も法律事務の一部であることから、司法書士側の訴訟は退けられたという経緯があります。

ただし、弁護士は法律を包括的に行うため、純粋な登記業務の専門家は司法書士であるというイメージが強いのではないでしょうか。

  (相続に関する業務)

遺産分割協議や遺言、登記など、相続に関する法律事務は全て任せることができますが、どちらかといえば遺産分割協議が紛争になりそうである場合など、単純な登記で済まない場合に依頼することが多いといえるでしょう。

 

・税理士の役割

「一言でいうと」税金のスペシャリスト

 

こちらもいわずもがなですが、税金に関する専門家が税理士です。

主な業務としては、税の申告に関する書類作成や申告の代理、アドバイスなどです。これらは税理士の独占業務でもあります。

個人からの相談は少な目といえますが、近年では確定申告が発生する住宅ローン控除関連の相談などが多くなっていますね。 

そして、私が勉強をして辟易するのは、税制は例年見直しが行われるということに尽きます。つまり、知識を常にアップデートしなければならないのです。

だからこそ、専門家が必要といえばそれまでですが(笑)

 (相続に関する業務)

相続に関して税理士の役割といえば、相続時に相続税が発生するような規模の遺産相続に関する税の申告業務やアドバイスです。

相続税については基礎控除額が大きいですから、相続税の申告対象となりうる方は少ないといえるのですが、近年基礎控除額が引き下げられていることから、対象になるかもしれないので調べてほしいという相談は多くなっています。

また、遺産相続対策としての生前贈与などについても、関連する税金について相談するとよいでしょう。

 

・土地家屋調査士

「一言でいうと」不動産調査のスペシャリスト

 

土地家屋調査士は、登記簿上の「表示に関する登記」の代理を独占業務としています。

「表示に関する登記」とは、登記されたその不動産がどのような形状をしており、広さや用途がどのようなものであるかを示す部分です。現状では登記簿上の「権利に関する登記」は義務ではありませんが、「表示に関する登記」は義務となっています。

土地の広さなどを正確に把握する測量の技術を持つという意味において、非常に専門性が高いといえます。

ちなみに、測量士という資格もありますが、土地家屋調査士との違いは登記ができるかどうかです。測量士は計測についての専門家であり、土地家屋調査士は登記に関する計測についての専門家です。

公共工事でカメラのようなものを覗いて測量をしていることを見かけたことがある人もいるかもしれませんが、あの方々は測量士です。土地家屋調査士が公共工事の測量などを請け負うことはありません(基本測量や公共測量は測量士の独占業務)。

  (相続に関する業務)

測量が相続に関係してくる場合は、相続した土地全体を複数人の相続人で分割(分筆)したい場合などが挙げられるでしょう。

 

棲み分けがあるということは、それだけ専門性が各々高い証拠でもありますよね!

本日は、ここまでといたしましょう。

住宅ローン減税制度がコロナウィルスで延長に!控除期間3年延長が有力

こんにちは!

こうのとりです。

 

実家の愛犬はアポクリン癌という予後の悪いガンにかかってます。

余命半年が平均値ですが、まもなく1年です。

お尻の腫れもひどくなり、もうそろそろかなというところ。よく頑張った。

せめて苦しまないようにって思いますが、実のところ、犬は痛みをどの程度感じるかについて、はっきりとはわからないそうです。

せめて言葉が分かればと思いますが、そういうわけにもいかないですし・・・。

なるべくそばにいてあげてと、母親にお願いしておきました。 

 

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【病気なんてなんのその!でも、ちょっとリラックスしすぎじゃありませんか?】

 

さて、今回は案件の紹介ではなく、住宅ローン減税制度の控除期間延長のお話です。

まず、住宅ローン減税制度についておさらいしておきましょう。

住宅ローン減税制度については、2019年10月からの消費税増税の対策として設けられた特例措置であり、毎年の住宅ローン残債の1%について、10年間、所得税から控除(控除しきれない分は住民税からも一部控除)してもらえるという制度です。

控除期間中は「あれ?毎月手取り金額が少しずつ増えたような気がする」と錯覚しますが、単純に、本来は毎月差し引きされるはずの税金額が少なくなっているため、手取り額が増えるという仕組みです。

住宅ローンは毎年残債が減っていくものではありますが、例えば3,000万円の住宅を購入した場合には、初年度は30万円の控除が受けられるわけですからかなりお得です(収入によっては最大控除額を受けきれない可能性もあります)。

 

新築住宅だけではなく、一定の基準を満たした中古住宅にも適用される制度であり、戸建てだけではなくマンションにも適用されるという意味では、マイホーム全体に対して適用される特例措置だと認識しておけばよいでしょう。

そして、購入だけではなく、増改築に対しても適用となることもポイントです。バリアフリーや省エネ改修はもちろん、2世帯住宅への改築などにも適用されます(100万円以上の工事費の場合)。

ただし、省エネやバリアフリーの場合は、「住宅のバリアフリー改修工事に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例」を利用するほうが、得となる場合もあります。

こちらの特例が適用となる条件としては、令和3年12月までに改修工事が済んだマイホームへ入居することで、住宅ローン減税制度の半分の期間である5年間の控除期間となりますが、50万円を超える工事費が対象とされているため適用範囲が広いのが特徴です。

住宅ローン減税制度との併用はできず、どちらかを選択することになりますので、どちらかがお得になるか専門家にしっかり相談をしながらすすめるべきでしょう。

 

さて、住宅ローン減税制度に話を戻しますが、この制度について、10年間からの延長措置が検討されているということです。

もちろん、延長措置の議論のきっかけとなったのは、コロナウィルスに他なりませんが、延長措置としては13年間とされるのが有力とのこと。

  

そして、この控除については原則、購入したマイホームに令和2年の12月末までに入居した場合が対象となりますが、コロナウィルスの影響で建築や入居が遅れている事情を鑑みて、一定の条件下で、令和3年の12月末までの入居であれば認められているのが現状です。

この一定の条件というのは、「注文住宅を新築する場合には2020年の9月末までの契約が締結されていること」もしくは「分譲住宅や既存住宅の取得、増改築の場合には2020年11月末まで契約が締結されていること」というものですが、この条件についても撤廃が議論されており、一律で、令和3年の12月末までの入居であれば、住宅ローン減税制度の対象とされるよう、議論がなされています。

令和4年12月末までの延長要望もあるということで、今後の正式な発表が待たれるところです。

 

また、この特例を受けるための要件として、

1、床面積が50㎡以上であること

2、借入金の償還期間が10年以上であること

などが挙げられますが、床面積の制限についても緩和をするよう求められているところです。

たとえば、夫婦のみで過ごすための小ぶりなマイホームについては、50㎡よりも小さい場合もあるため、対象外であれば不平等になりうるという話ですね。

 

あくまでも延長措置ですから、残債が減っている状態では恩恵が若干少ないとはいえども、やはり数十万円単位の控除が受けられ、可処分所得が増えるのですから、家計としては助かります。

ぜひとも有効活用なさってください。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

相続不動産が古家だった場合の解体と滅失登記、譲渡の特例について

こんにちは!

こうのとりです。

 

今年は実家への帰省を自粛しました。

親としては顔が見たいという気持ちはあるでしょうけど、万が一のことがあれば病気を持ち帰ることになってしまいますし、田舎ではまだまだ誹謗中傷の可能性もあることを考えれば止むをえずでした。

しかし、ガンを患っている愛犬には、会いに行きたいな~と葛藤の日々です。

 

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【人から譲り受けたミニチュアダックスですが、母親のことが大好きです】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は飯野様(仮称:55才)です。

飯野様は遺産分割協議にて、遠方のご実家を相続分として所有することになったのですが、傷みのあるご実家をどのように処分しようか迷われているとのことで、滅失登記や売却した場合の譲渡所得の控除について相談に参られました。

 

生活圏ではない遠方に所在するご実家を相続した場合には、その活用や処分が難しく感じられることでしょう。思い出の詰まったご実家を容易に売却することには躊躇いを感じるでしょうが、誰も住むことの無い古家を放置することも、それなりのリスクを伴います。

方法としては、そのまま売却するか、古家のみ解体して土地を売却するか、通える範囲であればリノベーションなどで古家自体を利活用し居住するか、賃貸させるか、選択肢は多岐に渡ります。

もし、これらの判断に迷う時には、それぞれの方法について、時流に合わせた特例措置が講じられているかどうか調べてみると良いでしょう。

 

まず、古家の解体については自治体からの補助金制度などが整いつつありますが、あくまでも自治体独自の制度なので、要件や支給上限も様々です。

そして、古家を解体して建物が建っていない土地に関しては、固定資産税が高くつく(建物が建っていれば固定資産税が最大6分の1に減額される)というデメリットもある一方で、昨今の空き家問題対策として、自治体によって特定空き家に指定された場合には、固定資産税の減額が適用されないおそれもあり、まさに一長一短の状況といえるでしょう。

ちなみに、古家の解体の費用については、地域差があるものの木造で坪3~5万円、鉄筋コンクリートであれば坪6~8万円の自己負担となるため、30坪程度の古家であっても100万円~200万円の費用が発生することになります。補助金の上限額によっては、自己負担せざるを得ないでしょう。

また、古家の解体については、複数の業者に見積もりをとって依頼すべきですが、見積もりの際の現地調査や解体前の近隣への挨拶、電気やガス、水道などのライフラインの撤去依頼などもありますので、遠方に実家があった場合には、その都度、足を運ぶ必要性が出てくることは念頭に置くべきでしょう。

 

売却については、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」があります。一定の要件に当てはまる場合に関しては、譲渡所得の金額から最高3,000万円までを控除することができるという優遇制度です。

要件としては、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったことなど、まさに「空き家となった遠方の実家の相続」への特例なのですが、これは我が国で社会問題として深刻となりつつある空き家の増加への対応策ともいえるものです(現在、令和5年12月31日までの期限付き)。

古家を解体して更地にしてから売却する場合には必ず売却できるという保証がないまま解体費用を負担することになるため、古家付きのまま売却をしたり、リノベーションをしたのちに売却をするという方法も検討しつつ、控除の特例を活用できるようにしましょう。

 

なお、古家を解体した後、土地の売却を検討している場合には、建物滅失登記を忘れずに行わなければなりません。建物を解体工事した場合には、1ヶ月以内に建物滅失登記を行うことが定められているのです。これをしなかった場合には過料の罰則規定もあります(現実的には徴収されることはほとんど無いようですが・・・)。

そして、古家の登記がされたままの土地に関しては、新しい建物が建築された場合に、表示登記ができません。新築の表示登記ができなければ、買主が住宅ローンの融資に行き詰まるなど、大な迷惑をかける可能性もありますので、古家の解体後には必ず、建物滅失登記を行いましょう。

 

飯野様は、良かれと思って古家の実家を相続しましたが、ここまで処分に窮するとは思っていなかったと、心情を吐露されていました。ご自身も高齢化していく将来を見据えれば、いずれは管理が行き届かなくなることも、十分にご理解されたようです。

 

本日は、ここまでといたしましょう。