忘れられた「ポツンと一軒家」状態の予防的アプローチ「相続登記の義務化」

こんにちは!

こうのとりです!

 

コロナ禍に対応すべく、withコロナ、afterコロナとして、デジタル化が促進されていますが、皆様の企業では進んでいますか?

テレワークが推進されれば、介護や地方の過疎化などの社会問題が解決するのになと感じているのは私だけでしょうか?

 

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※ 画像はイメージです

 

さて、今回から3回にわたって、少子高齢化の弊害として問題が顕在化しつつある所有者不明土地問題解消のための2つの具体的アプローチをまとめていきます。その2つのアプローチとは「予防的アプローチ」と「問題解決的アプローチ」ですが、今回は「予防的アプローチ」についてです。

 

所有者不明土地の予防的アプローチとして特筆すべきは、皆さんも直接関係する可能性が高い「相続登記の申請義務化」です。

コロナ禍の影に隠れて大きなニュースにはなっていませんが、国内では絶対的な権利とされている所有権に踏み込んだ内容である上、これから相続を控える方には相応なインパクトになるため、心構えをしておくべきでしょう。

なお、義務化は2024年以内とされており「土地や建物の相続を知った日から3年以内に登記するよう義務づけ」という内容になっています。

 

 

そもそも、相続登記も含まれる「所有権移転登記」は義務ではありません。登記は、あくまでも第三者に所有権を主張するための1つのツールであり、任意の行為です。

 しかしながら、不動産の売買契約時には「所有権移転登記」が合わせて行われるのがごく一般的です。これは、登記をしていないと、二重売買がなされた場合に所有権を主張できないケースや、将来的に売却する際に売ることができなくなるなどのリスクがある他、住宅ローンなどを組む場合には必須条件(金融機関は、不動産を担保に融資するため)とされていることがほとんどであるという理由です。

 

一方で、不動産の相続時も所有権が移転するものの、ほとんどが親から子、もしくは親族や身内への引継ぎであり、すでに居住している実家などの家屋を、そのまま占有し続けるケースが多かったために(20年占有による時効取得というルールがある)、第3者に対して所有権を主張する必要性がありませんでした。その上、登記には費用も手間もかかるということで敬遠されてきたといえます。

 

要するに、これまでのルールで特段問題はなかったのですが、少子高齢化という社会問題によってが問題が顕在化することになりました。たとえば、「兄弟のうち長男が実家を引き継ぐ」という古い慣習的な考え方も過去のものとなり、生活基盤が都心部にあれば容易に移住できないことや、地方の不動産を処分しても二束三文であること、あるいは、生家を残しておきたいという思いなどから、住人不在で空き家のまま、実家などを相続される方が増えてきたといえるのです。

しかし、仮にこのような状況の方が一人っ子で未婚、相続登記をしないまま突発的に亡くなられらどうなるでしょう?亡くなられた本人名義の財産は、選定された相続財産管財人のもとで国庫に帰属(つまり国の所有)となりますが、たとえば地方に残された実家が「ポツンと一軒家」状態であったとすれば、その家は誰かの名義で、誰かが所有しているのだろうという考えのもと、長らく放置されることになるのです。

 

本日はここまでといたしましょう。

長くなりましたので、話は次回へ持ち越します。

2024年以内に相続登記義務化!遠方に遺産がある方は注意!

こんにちは!

こうのとりです!

自制の日々が続きますが、頑張っていきましょう!

 

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※ 画像はイメージです

 

2021年4月、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が可決成立しました(4月28日公布)。

コロナウィルスや五輪に関するニュースに隠れて、あまり取り上げられてはいませんが、その内容を見てみると、少子高齢化や地方過疎化という社会問題に対峙するための抜本的な法改正および法成立となっており、絶対的な権利である所有権にもかなり踏み込んだ内容となっています。

法律の施行日は、公布後3年以内と決められていますので、2024年までには施行され、義務化が進むことになります。

 

そもそも、日本において土地の所有権が認められるようになったのは、1873年の地租改正時にさかのぼります。明治政府は私的所有権を認めたうえで、土地に対して租税を納めさせるという政策を取りました。

当時は「地券」というもので土地の所有権を証明していましたが、これが後の「登記制度」に変遷していきます。

 

一方、土地の私的所有権は1896年に民法で明文化されました。このときに参考としたのがドイツの民法なのですが「土地の所有権は絶対的、排他的」であるというその内容が引き継がれ、日本においても所有権が絶対的、排他的な権利として、今もなお続いていることになります。

 

この所有権の強さが仇となり、少子高齢化によって地方の空き家問題が深刻になっていても、所有者不明の土地だからといって、国や地方自治体さえも処分できずに放置せざるを得ないという状況だったのです。

 

さらに、相続登記が任意であるという制度上の問題も足かせとなっていました。例えば、地方の実家を相続した方が登記をしないまま都内で生活をしていたとして、万が一事故死や、高齢化して孤独死などをした場合はどうでしょうか。地方の実家はそのまま放置され、所有者不明のまま誰も手をつけることなく残ることになります。

 

もちろん、所有者がただ不明なだけであれば問題ありません。しかしながら、その場所に線路を敷きたい鉄道事業者がいたらどうでしょう?また、空き家が放置されて、その中で鳥獣被害や虫害が起きたらどうでしょう?立地にあった廃材が吹き飛ばされて通行人に直撃したらどうでしょう?

 

このように、所有者不明土地が引き起こす問題は何かと厄介なのですが、現時点で日本全体の面積の約2割程度がすでに所有者不明の土地として存在しています。

 

この、所有者不明土地問題を対処するために、長年指摘されていたものの実現がしなかった「相続登記の義務化」によって所有者不明問題の入口を塞ぐ予防的アプローチをとった上で、「所有者不明土地の利用円滑化」によって所有者不明土地であっても利活用ができように出口を広げる問題解決的アプローチが講じられることになったのです。

 

本日はここまでにしておきましょう。

次回より、各アプローチの具体的な方策について、より詳しく確認していきたいと思います。 

子どもなしの夫婦が遺言書を残こすべき理由とは(2)

こんにちは!

こうのとりです。

 

今回は前回の続きで、子どもなしの夫婦が遺言書を残こすべき理由などについて見ていきたいと思います。

 

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配偶者と親に財産を相続させたいときの遺言書の書き方

次に、配偶者と親に財産を相続させたいときの遺言書の書き方について確認します。
以下は記載例のひとつです。

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これはあくまでも記載例なので、相続財産の状況に合わせて遺言書を作成してください。

配偶者に残す財産以外は遺産分割協議をしてほしい場合の遺言書の書き方

次に、配偶者に残す財産以外は遺産分割協議をしてほしい場合の遺言書の書き方について見てみましょう。

先述の通り、まず

配偶者に残したい遺産を特定して記載します。
そして残りの財産につき、遺産分割協議をしてほしい旨を記載します。

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なお、遺言で配偶者に残すべき旨を指定されなかった財産につき、法定相続分通りに相続することもできます。

子どもがいない夫婦が遺言書を作成するときの注意点

子どもがいない夫婦が遺言書を作成するときの注意点は3つあります。
一つ目は夫婦それぞれに遺言を書くこと、2つ目はできるかぎり公正証書遺言を用いること、3つ目は遺言執行者を定めておくことです。

 

夫婦それぞれに遺言を作成する

まず、1つ目の注意点を確認します。

 

夫婦共同遺言の禁止

子どもがいない夫婦が遺言書を作成するときに、まず注意しなければならないことがあります。
それは、夫婦で1通の遺言書を作成しても、その遺言は無効になってしまうということです。

遺言は遺言者一人一人の意思に従って書かれなければなりません。
夫婦で同じ紙に書かれると、一方の本意ではないのに、一方の顔色をうかがって書かなければならない場合もあるためです。
そこで民法により、遺言は2人以上の者が1通の紙に書くことができないと定められていて、「夫婦共同遺言の禁止」といわれています。

 

一方だけの遺言書では足りない

夫婦のどちらかのみが遺言書を書かないと、遺言書を書かなかった方が先に亡くなった場合、先述したようなトラブルが起きるかもしれません。

子どもがいない夫婦は、夫婦各1通ずつ遺言書を作成してください。

 

遺言執行者を定める

子どもがいない夫婦が遺言書を作成するときは、遺言執行者を定めましょう。
遺言執行者を定めない遺言書も無効ではありませんが、信頼できる人に遺言の執行を頼んでおかないと、相続手続きが円滑に進まない可能性があります。

 

遺言執行者の立場と任務

遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の権限を与えられています。
遺言執行者が定められていれば、相続人の一人が遺言を履行したり、遺言執行を妨げたりすることはできません。

遺言執行者は、遺贈、遺産分割方法の指定、株式や不動産の名義変更手続きなどを行うことができます。
また、遺言による認知、廃除の手続きについては遺言執行者しかできません。

 

その他

遺言執行者についてのその他のルールも確認しておきましょう。

 

遺言執行者についてのルール

第三者への任務の依頼 原則として自己の責任で第三者に遺言執行させることができる
遺言執行者が複数いる場合 原則として、遺言執行者の過半数で決する
ただし、保存行為は単独で可
遺言執行者の報酬の発生 ・遺言に定められているとき
・家庭裁判所が定めたとき

公正証書遺言を利用する

最後に、遺言書の種類と形式につき、どの遺言書が一番安心か見ておきましょう。

 

遺言書の種類と信用度

先述したとおり、一般的に利用される遺言書には自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言がありますが、それぞれの特徴を見ておきましょう。
特に、証拠力や改ざんの恐れにつき確認します。

 

自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の比較

  証拠力 改ざんの恐れ
自筆証書遺言 低い 高い
秘密証書遺言 低い 高い
公正証書遺言 高い 低い


公正証書遺言は、公証人が作成する遺言書です。
したがって公正証書遺言は公文書なので、自筆証書遺言、秘密証書遺言よりも高い証拠力を有します。

 

また、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されるため、改ざんの恐れが低い遺言書です。
これに対して自筆証書遺言や秘密証書遺言は、遺言者や知人や親族が保管しているので、改ざんされる恐れがあります。

 

また、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、発見することすら難しいかもしれません。
公正証書遺言は、生前に夫婦で公正証書遺言を作成しておけば、遺言者には謄本が渡されます。
公証役場に確認することもでき、発見されずに終わってしまうこともないでしょう。

 

なお、公正証書遺言は改ざんの恐れがないことから、遺言者の死後、家庭裁判所の検認を受ける必要はありません。
この点も公正証書遺言は子どもがいない夫婦が作成する遺言書としておすすめの理由です。

 

遺言書の検認の要否

自筆証書遺言 検認が必要
秘密証書遺言 検認が必要
公正証書遺言 検認は不要

 

遺言書に書ける事項

民法では、遺言書に記載できる事項を定めています。
民法で定められていない事項を記載することはできますが、法的な効力はありません。
法定記載事項以外の事項を「付言事項」と言います。

 

自分亡き後の家族への思いなど、付言事事項として書く方が増えていますが、法定記載事項との差がわかりつらいのではないでしょうか?
何が法定記載事項で付言事項なのか、公正証書遺言を利用すれば公証人に確認できるので安心です。

 

なお、遺言書の法定記載事項の中で重要な事項は、相続分の指定、遺産分割方法の指定と分割の禁止、遺贈、廃除の手続きなどです。

 

 

公正証書遺言作成の注意点

公正証書遺言は2人以上の証人と、公証人の手数料などの費用がかかります。

 

公正証書遺言のポイント

 

証人 証人2人が必要
(推定相続人や受遺者、これらの配偶者および直系血族は証人になれない)
費用 公証人の手数料(財産額による)がかかる


公正証書遺言の証人には欠格事由があるので、公証役場に依頼する前に、弁護士に相談して弁護士などに証人になってもらうとよいでしょう。

 

公正証書遺言作成の費用は、他の遺言書よりもかかります。
しかし、公正証書遺言の信頼性や改ざんの恐れがないというメリットを考えれば、費用をかけても損はないでしょう。

 

ここまでで説明した公正証書遺言と異なり、自筆証書遺言は遺言者が、その内容、日付および氏名を自書し、これに押印しなければ効力がありません。
財産目録を除き、パソコンやワープロで作成することはできず、作成し辛いのが自筆証書遺言です。

 

また、秘密証書遺言は、遺言書への遺言者の署名・押印、証書に用いた印による遺言書の封印が必要です。
このように、自筆証書遺言と秘密証書遺言は何か要件を満たさない可能性が高いので、できるかぎり公正証書遺言作成をおすすめします。

子どもなしの夫婦が遺言書を残こすべき理由とは(1)

こんにちは!

こうのとりです。

 

子どもなしの夫婦の一方が亡くなった場合、夫や妻の財産はすべて自分が相続するというイメージを持っている方もいるかもしれません。

 

しかし、民法では子ども以外にも被相続人(亡くなった方)の一定の親族は、法定相続人となると定めています。

 

つまり、子どもがいなくても、妻や夫が残した相続財産を他の相続人と共同で相続するかもしれないということです。

 

子どもなしの夫婦の一方が亡くなり、遺言書が残されていなければ、トラブルの可能性が増えます。

 

そこで、2回の記事に分けて子どもなしの夫婦が遺言書を残すべき理由や、遺言書の書き方や注意点などを解説します。
 

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子どもなしの夫婦が遺言書をのこすべき理由

子どもなしの夫婦が遺言書を残すべき理由はなんでしょうか?
それは、法定相続制度と遺留分、親族の付き合いなどが関係します。

 

遺産分割がまとまらない

子どもがいない夫婦が遺言を残さなかったらどのようなトラブルがあるのか、見ていきましょう。

 

家も預金も配偶だけのものにはならない

子どもなしの夫婦の一方が亡くなった場合、被相続人の父母や兄弟姉妹と遺産を共同で相続します。
相続財産は法定相続人の「共有財産」であり、勝手に処分できないということです。

 

相続財産が預金の場合、他の相続人の同意がなければ、解約して使うことはできません。
相続財産が土地や建物の場合、たとえ被相続人の配偶者が住んでいたとしても、被相続人の父母や兄弟姉妹と共有になってしまいます。

 

不動産の場合は、他の相続人に賃料を要求されないともかぎりません。
被相続人の妻が、住み慣れた家をもらいたいと思っても、他の相続人が納得しなければ、売却して出ていかなければなりません。

 

譲ってくれるとは限らない

普段、関係性が良い義父母や義理の兄弟姉妹なら、遺産分割協議の話し合いをしやすいかもしれません。
しかし親族間の関係性が希薄だったり、元からあまり良い関係ではなかったりすると、遺産分割の話し合いをしづらいでしょう。

 

それだけでなく、義父母や義理の兄弟姉妹が法定相続分通りの権利を主張したら、受け入れざるをえません。
相続財産が預貯金や現金、株式、不動産など多岐に渡れば、法定相続分に合わせて分けることも容易です。
でも、前述の通り、相続財産が不動産のみのケースでは、住み慣れた家を手放さなければならないかもしれません。

 

「そんなことありえない」と思われるかもしれませんが、次に説明するように、子どもがいない場合の法定相続人と法定相続分が定められているためです。
法定相続人と法定相続分と違う割合で夫や妻に残したい場合、遺言書を書かなければなりません。

 

親や兄弟も法定相続人

まず理解していただきたいのは、子どもがいない夫婦の法定相続人は、配偶者と親、配偶者と兄弟姉妹だということです。

 

もちろん、夫や妻の両親も兄弟姉妹もいなければ、配偶者のみが相続人です。
しかし、兄弟姉妹の代襲相続などを見過ごしてしまうと自分だけが法定相続人と勘違いしてしまいます。
まず、子どもがいない夫婦の法定相続人などを確認します。

 

配偶者と親が相続人のケース

子どもなしの夫婦のどちらかが亡くなった場合、まず、被相続人の配偶者と直系尊属が法定相続人となります。

 

配偶者と直系尊属が法定相続人となる場合、それぞれの法定相続分は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1です。

父母が健在の場合は、父母が各自6分の1の割合で相続します。

 

常に相続人 配偶者(内縁を含まない)
第1順位
第2順位 直系尊属(祖父母は代襲相続権なし)
第3順位 兄弟姉妹

 

 

被相続人の父母と同居していなくても、被相続人の財産を共同で相続することに変わりはありません。
相続財産を換価したり分けたかったりする場合、相続人である被相続人の配偶者と父母が遺産分割協議をしなければなりません。

 

なお、被相続人に養子、婚外子、離婚した配偶者の子がいる場合は「子どもがいる」と同じケースなので、注意しましょう。
また、被相続人の子が被相続人より前に他界していても、その子(被相続人の孫)などが代襲相続します。

 

なお、相続放棄した人の子や孫は代襲相続できませんが、相続欠格や廃除に当たる子については、代襲相続が認められています

 

兄弟姉妹と配偶者が相続人のケース

次に、兄弟姉妹と配偶者が相続人となるケースを確認します。
子どもなしの夫婦のどちらかが亡くなった場合、被相続人の直系尊属がいなければ、兄弟姉妹が共同で相続人となります。

 

この場合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。
ただし、兄弟姉妹が複数いる場合、被相続人と父母の一方が異なる兄弟姉妹の法定相続分は、被相続人と父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1となります。

 

遺産分割協議をする場合、被相続人の配偶者と兄弟姉妹全員でおこなわなければなりません。
なお、被相続人の兄弟姉妹が先に他界している場合、甥・姪が代襲相続人となります。
甥や姪の子は代襲相続できません。

 

被相続人の兄弟姉妹と日頃から交流していれば、遺産分割協議もしやすいでしょう。
しかし、数回しか会ったこともないような関係の場合、被相続人の配偶者と兄弟姉妹の遺産分割協議は難航するケースもあります。

そのようなことにならないためにも、子どもがいない夫婦は、互いに遺言書を残すべきなのです。

 

配偶者に全ての財産を相続させたいときの遺言書の書き方

ではいよいよ、実際に遺言書をどう書いたら良いか見ていきましょう。

遺言書のルール

遺言書は、形式面と内容面の双方を守らなければ有効となりません。

配偶者に全ての財産を相続させる遺言書の内容

極端な例を言えば、「遺言者は、遺言者の全財産を妻に相続させる」趣旨を記載すれば足りますが、次のように記載します。

一般的に遺言書は、次に示すように、「〇条」「1」「2」など、項目に分けて記載します。
ただし、法律で内容の書き方が決まっているわけではないので、遺言の内容が法律に即し、形式を満たしていれば問題ありません。

 

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このように、相続財産を指定するときは、正確に記載しなければなりません。
特に不動産は記載方法に注意しましょう。
不動産は住所で表さず、地番や家屋番号で記載します。

 

不動産の記載は、できるかぎり最新の登記事項証明書を取り寄せて、そのとおりに記載してください。
株式、預貯金についてもできるかぎり細かく特定してください。

 

また、遺言日の妻は1人しかいませんが、妻の名前と生年月日を入れておきましょう。

なお、後述するように、自筆証書遺言または秘密証書遺言を利用する場合、遺言の内容だけでなく、形式面に注意しなければなりません。

 

遺言書の形式

通常、一般的に利用する遺言書は、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類です。
それぞれに自筆すべきかどうか、押印は必要かなど細かな形式が定められています。
形式を守らない遺言は無効です。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は自分で作成しなければならず、形式面で整っていない遺言書も多いので注意しましょう。

 

遺留分に注

子どもがいない夫婦が配偶者に全財産を相続させたいときは、遺留分に注意しましょう。

直系尊属の遺留分

遺留分とは配偶者、子、直系尊属が法定相続人になる場合に認められた最低限の取り分とイメージして下さい。
配偶者と直系尊属が相続人の場合、遺留分は全体で2分の1です。
遺留分を害する遺言も有効ですが、遺留分権利者は遺留分侵害額請求できます。
相続時にトラブルになるような遺言はできるかぎり避けましょう。

 

たとえば相続財産が6000万円で、被相続人の配偶者と父が法定相続人の場合、遺留分全体が3000万円です。
そして3000万円に父の法定相続分である3分の1を乗じて個別の遺留分を計算すると、父の遺留分は1000万円となります。

 

仮に「遺産の全てを配偶者に残す」旨の遺言があったとしたら、父の遺留分1000万円を侵害しています。
したがって父は、遺留分侵害額請求をすることができます。

 

兄弟姉妹の遺留分

被相続人の兄弟姉妹が法定相続人の場合、兄弟姉妹に遺留分は認められません。
兄弟姉妹と配偶者が相続人になるケースでは、全財産を配偶者に相続させる旨の遺言を作成しても、遺留分を心配する必要はありません。

 

 

本日は、ここまでといたしましょう。

 

 

代襲相続・養子縁組・遺言がある場合の遺産相続順位はどうなる?

こんにちは!

こうのとりです。

 

相続は前回までみてきた基本ルールに必ずしも当てはまるような家族構成ばかりではありません。
この相続順位の確定を少し難しくさせるような場合も見ていきましょう。

 

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代襲相続の場合

故人に子どもと孫がいて、相続発生時には子どもはすでに亡くなっている場合です。
この場合のことを代襲相続といいます。

この場合は、孫が子どもに代わって第1順位の相続人となります。
この代襲相続は、兄弟姉妹の子どもにも発生する権利です。

 

さらに、故人に子ども、孫、ひ孫もいて、相続発生時には子どもとひ孫がすでに亡くなっている場合には、ひ孫が孫と子どもの代わりに相続人となります。
これを再代襲相続といいます。

 

養子縁組の場合

被相続人となるものが生存中に養子縁組をした場合は、実際に相続が発生した場合、その養子は被相続人の子として第1順位となります。
このように、相続においては、実子と養子の間で法定相続分に差はなく、これが適用される養子の人数にも限りはありません。

また、養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組とが存在します。
同じ養子縁組とはいっても、この二つには目的や要件、手続きにおいても違いがあります。
この二つの制度の簡単な解説とともに、相続における特徴を解説します。

 

普通養子縁組の場合

こちらが一般的に、養子縁組といわれるもののことです。
普通養子縁組をすることによって、養親との間に法律上の親子関係が成立することになります。

 

一方で、実親との間の親子関係が解消されるわけではありませんので、この場合は親が2組存在することになります。
したがって、子は実親と養親の両方に対して、相続権を持つことになります。

 

特別養子縁組の場合

普通養子縁組とは違い、実親との親子関係が解消され、養親のみが法律上の親となる養子縁組が特別養子縁組です。

 

この制度を利用する場合には、実親との親子関係がなくなってしまうという大きな影響があるため、当事者の希望のみにより簡単に認められるものではありません。

 

実の親子間に問題がある場合などに利用される制度です。
したがって、子は養親に対してのみ、相続権を持つことになります。

 

その他の考えられるケース

代襲相続や養子縁組以外にも、様々な場合が考えられます。

 

ここには全て挙げられないほどのパターンの数がありますが、その中の数パターンをここで紹介します。

 

胎児がいる場合

民法上では、相続が発生した時点でまだ生まれていない胎児は、すでに生まれたものとして考えられます。


この意味は、例えばこういうことです。
相続発生時に、配偶者と母、故人の母親が存在する場合には、第1順位の相続人は、配偶者と胎児となります。


この場合に、母は第2順位となりますので、相続人とはなりません。

 

しかし、胎児が死産となってしまった場合には、第1順位となるはずであった胎児(子)がいませんので、故人の母が第1順位となって相続人となります。

 

このように胎児である時点で実際に相続や遺産分割協議をしてしまうと、死産の場合に一度確定した相続をやり直す必要が出てきてしまい、混乱が生じます。

 

したがって、胎児が生まれてきてから相続や遺産分割協議を行うことが一般的な手続きの流れになります。

 

嫡出子と非嫡出子

嫡出子とは、法律上の夫婦の間に生まれた子、非嫡出子とは、法律上の夫婦でない相手との間に生まれた子のことをいいます。

現在は、嫡出子と非嫡出子の相続における扱いは全く同じとなります。相続順位や相続の割合が全く同じということです。

 

相続人がいない場合

身内が一人もいなく、相続人が誰もいない場合も考えられます。

 

この場合には、故人の財産は全て国庫に帰属することと民法で規定されています。
遺言の制度があるため、相続人は必ずしも家族・親族である必要はありません。

 

身内が一人もいない場合には、遺言書で相続人を指定してもよいでしょう。

 

遺言がある場合の遺産相続順位はどうなる?

法定相続人以外のものが相続するのは、遺言によって法定相続人以外のものの相続が書かれている場合です。


この遺言によって財産を受け取るものを受遺者といいます。

 

正しい形式で書かれた遺言は全てに優先されますので、遺言の内容に従うこととなります。
したがって、遺言がある場合の相続順位は、遺言に従います。

 

ただし、遺留分という制度があり、遺言で残された相続内容にかかわらず、法定相続人などの一定の範囲の家族・親族には、最低限度の割合の遺産を受け取る権利が残されます。

 

この遺留分は請求をしなければ消滅してしまう権利になりますので、遺言の内容に不服のある遺留分侵害請求権を持つ相続人は、この権利を行使する必要があります。

 

この万能とも思える遺言書ではありますが、民法上で遺言書によってできる行為が定められています。

 

ここでは、その遺言書によってできる行為を簡単にみていきます。

 

  • 認知
  • 財産処分
  • 後見人、後見監督人の指定
  • 相続人の排除または排除の取り消し
  • 相続分の指定または指定の委託
  • 遺産分割方法の指定または指定の委託
  • 遺産分割の禁止
  • 相続人相互の担保責任の指定
  • 遺言執行者の指定または指定の委託
  • 遺留分侵害請求方法の指定

 

 

相続順位やそのケースごとの違いについて理解を深めていただくことはできたでしょうか?

それぞれの家族構成によっても大きく異なりますし、また、遺言の内容によっては、予想もしていなかったような相続となる場合もあります。

 

家族構成による相続順位のパターンはここで例を上げ切れないほど存在します。

相続において、少しでも疑問があるような場合は、早めに弁護士などの専門家に相談をすることも一つの手です。


多少の費用はかかりますが、後々もめる要因を作らないためにも知識のあるプロに依頼をし、それぞれの権利をしっかりと調査、確定させることが大切です。

今回の内容がご自身で相続手続をする場合ももちろん、専門家のサポートが必要な事例かどうかの判断をする場合にもお役に立てば幸いです。

あまり頻繁に活用する知識ではありませんが、いざというときにこの知識を活用していただけるはずです。

 

 

本日は、ここまでといたしましょう。

遺産相続の順位の基本的なルールとは?

こんにちは!

こうのとりです。

 

相続の話というのは、いくら親しい間柄の家族や親族であってもなかなか話しにくい話題であるかもしれません。
しかし、相続について話し合うというのは大切なことです。

 

というのも、相続というのは、財産を引き継ぐ権利だけがあるのではなく、相続税の支払いや不動産の名義変更など、義務や関連した様々な手続きをする必要があるからです。
放置しておけば、次世代、またその先の世代において、財産の管理に苦労することになってしまいます。
相続はこのような点から考えても、大切な意味があります。

 

かといって、身内が亡くなった場合に何でもかんでも首を突っ込むわけにもいきません。
自分が相続に関わることになるのかを判断する必要があります。

今回は、その判断に必要となる相続順位のルールを解説します。

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 相続順位の基本的なルールとは

相続順位とは、民法によって定められた法定相続人となる順位のことをいいます。
法定相続人とは、民法で定められている遺産を引き継ぐ権利を持った人のことです。
この相続順位は、家族構成によって様々なケースがあります。

相続において、なぜこの法定相続人と相続順位が大切になるかというと、それぞれについて相続の割合が異なる定めがあるためです。
家族の構成によって法定相続人となるものがそれぞれ違います。
ここではまず、基本的なルールからみていきましょう。

 

  • 配偶者は常に相続人となる
  • 配偶者以外の相続人は順位があり、順位の先のものが相続人となる権利を得る
  • 同順位間での相続割合は等しい

 

言葉だけではイメージがつきにくいと思いますので、図解にして示します。

 

配偶者は常に相続人

被相続人(故人)の配偶者は、必ず相続人となります。

これは民法の定めにより決められています。したがって、配偶者には順位はつきません。
この配偶者というのは、法律上の妻や夫のことですので、役所に届出を済ませた婚姻関係でなくてはなりません。

 

内縁の妻や夫では、法律上の婚姻関係といえないので、法律上は相続人と認められませんので、注意が必要です。
内縁の妻や夫に相続をさせようとする場合には、遺言にその旨を残す必要があります。
遺言については、後ほど詳しく解説します。

 

配偶者以外の相続人の順位と割合

法定相続人には順位があり、順位が上のものから順に相続人となる権利を持っており、同順位のものだけが相続人となります。
それぞれの順位はこちらの通りです。

 

  • 第1順位 子供や孫などの直系卑属
  • 第2順位 父母や祖父母などの直系尊属
  • 第3順位 兄弟姉妹

 

ここで気をつけておきたいことは、子の妻や子の夫については相続権がありません。
どうしてもこれらのものに相続をさせたい場合は、養子縁組をして、親子関係を作ることが必要です。

 

また、被相続人の配偶者とともに各順位ごとの法定相続人が相続をした場合の法定相続分はこちらの通りです。

 

  • 第1順位 配偶者:直系卑属=1/2:1/2
  • 第2順位 配偶者:直系尊属=2/3:1/3
  • 第3順位 配偶者:兄弟姉妹=3/4:1/4

 

同一順位間での相続割合

同順位のものは全員が相続人となり、その同一順位間での相続割合は等しくなります。
同一順位間では、年齢などの他の条件は関係ありません。

 

 

本日は、ここまでといたしましょう。

 

相続税が支払えないときに使う延納制度の利用条件・必要書類(後半)

こんにちは!

こうのとりです。

今日は前回の続きで相続税延納申請書についての記事になります。

相続税が支払えないときに使う延納制度にはどのような書類が必要になるのでしょうか。

 

相続税の延納申請に必要な書類

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相続税延納申請では相続税延納申請書などの提出をしなければいけません。
相続税延納手続きの必要書類は以下の通りです。

 

・相続税延納申請書
・金銭納付を困難とする理由書
・不動産等の財産の明細書
など

相続税延納申請書や理由書、財産の明細書などは相続税延納を申請するすべての人が提出しなければいけません。

相続税延納申請書は相続税延納の申し込みのための書類で、理由書は相続税をなぜ延納しなければならないのかを税務署に説明するための書類です。

 

相続税は現金一括納付が基本であり、相続財産や相続人の私財で支払いが困難なときに認められる支払い方法になります。

支払いが困難でなければ延納を認める必要はありません。
税務署側に延納の理由を説明しなければいけないのです。

相続税延納申請書などの他に、担保として提供する財産にまつわる書類が必要になります。

 

財産にまつわる書類は、どのような財産を担保にするかによって変わってくるため注意が必要です。
たとえば土地を担保にする場合は土地の担保目録及び担保提供書などの他に登記事項証明書や固定資産税評価証明書などが必要になります。


担保にする財産に合わせて、税理士や税務署へ必要書類の確認を取ることをおすすめします。

 

なお、担保にする財産関係の書類準備に時間がかかるなどの理由から提出期限を延ばす場合は、担保提供関係書類提出期限延長届出書の提出も要するため注意してください。

 

記載が必要な相続税延納申請書などの記載例については次の見出しで詳しく説明します。

 

 

相続税延納申請書の記載例

相続税延納申請書はすべての相続税延納ケースで提出しなければならない書類です。


相続税延納申請のために必要な相続税延納申請書の記載例について説明します。

 

相続税延納申請書は国税庁のホームページでダウンロード可能です。

 

 

相続税延納申請書については、それぞれの欄で尋ねられていることに対して記載すれば特に問題ありません。

 

欄によっては尋ねられていることが他の提出書類(金銭納付を困難とする理由書など)と重なります。

 

記載事項が他の提出書類などと重なる場合も相続税延納申請書の方にあらためて記載する必要があるので注意してください。

 

相続税延納申請書の記載例についてもう少し詳しく説明します。

 

 

相続税延納申請書の記載例・記載すべき欄

相続税延納申請書で記載が必要になる主な欄は以下の通りです。

 

●相続税の延納申請税額

相続税延納申請書でまず記載するのは相続税の延納申請税額です。
相続税延納申請税額については延納分の金額そのものだけを記載するのではなく、相続税額や物納の額、現金で支払った額などを順番に記載して、最終的に相続税延納分を算出のうえで記載する仕組みになっています。

 

●金銭で納付することを困難とする理由

相続税を金銭で納付することを困難とする理由について記載します。
相続税延納申請では理由書も提出しますが、こちらの欄にもあらためて記載を要するのです。
金銭で一時に納付することが困難な金額(延納許可限度額)については理由書の方で計算します。

 

●不動産の割合

相続税の延納では遺産に占める不動産の割合が重要になります。
相続税に占める不動産の割合によって延納期間や延納の利子が変わってくるのです。
基本的に遺産に占める不動産の割合が多くなると、その分だけ延納期間を長く設定できます。
相続税延納利子も不動産の割合が多くなると低くなるのです。
税務署側は遺産にどれくらいの不動産があるか確認しなければいけないため、この欄で不動産について記載し、遺産に占める不動産割合を報告するかたちになります。

 

●延納申請税額の内訳・延納申請年数

延納申請税額の欄には、不動産の価額に応じた割合と計算式により相続財産の種類ごとの延納相続税額を計算します。
延納申請年数の欄には、希望する延納の期間を記載します。

 

●担保欄

相続税延納申請書の下の方にある「別紙不動産等の財産の明細書のとおり」の文言は、不動産などの価額の割合が75%未満である場合は消しておきます
相続税延納額が100万円以下で、かつ、延納の年数が3年以下の場合は「別紙目録のとおり」の文字も消してください

 

●分納税額、分納期限及び分納税額の計算の明細

分納する税額や支払いの期限について記載する欄です。
分納の支払い期限については納期限から1年以内の希望日を記載してください。
毎月の支払い日は同一日を記載します。

 

●相続税延納申請書のその他の記載欄

その他参考事項の欄ではそれぞれの欄で尋ねられている事項について記載します
被相続人・遺贈者、相続発生・遺贈年月日などの欄があります。

 

●相続税延納申請書を提出した後の流れ

相続税延納申請書を提出してもすぐにその場で延納の可否がわかるわけではありません。


相続税延納申請書や理由書などすべての必要提出書類がそろっているか確認され、さらに相続税延納申請書などの記載欄に漏れがないか、延納申請の内容なども確認されます。
そのうえで税務署側が相続税延納を認めるかどうか判断するという流れです。

 

税務署側が提出必要書類の内容で相続税延納について許可するという判断の場合は「相続税延納許可通知書」が送られてきます
相続税延納申請書などの提出書類を確認したうえで相続税延納を許可しないという判断を下した場合は「延納申請却下通知書」が届くという流れです。

 

税務署側が相続税の延納を認めたらそれで延納申請手続きは終了ではなく、さらに担保についての手続きを行わなくてはいけません。
たとえば不動産を相続税延納の担保として提供した場合は法務局で抵当権設定の登記をするという流れになるのです。


担保の提供についても手続きが終了したら、後は相続税分納の申請内容に沿って実際に分納を行います。

なお、相続税分納の担保に設定した不動産に火災保険などの契約がある場合は、火災保険の契約更新などの際にも税務署に連絡し質権設定などの手続きが必要になるため注意してください。

 

相続税延納申請書は記載内容が複雑です。
被相続人や相続人が延納を希望する額などを簡単に記載して申請すればいいわけではありません。


記載が必要な欄に遺産、中でも不動産関係の計算が絡む点に難しさがあります。
もちろん自分で計算してもかまいません。


ですが、計算ミスや記入ミスは相続税延納手続きの遅延にもつながります。
期限内に書類を準備して相続税延納申請書などに正しい情報や数字、計算結果を記入することは、相続税の専門的な知識がないと難しいことです。

 

相続税延納申請の手続きをスムーズかつミスなく行うためにも相続税の専門家に依頼してはいかがでしょう。
相続税延納の際は専門家に相談のうえで相続税延納申請書の作成などをサポートしてもらうことをおすすめします。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

相続税が支払えないときに使う延納制度の利用条件・必要書類(前半)

こんにちは!

こうのとりです。

今日は相続税についての記事です。

 

相続税は被相続人の死によって唐突に課税され、基本的には現金一括納付になります。
そのため相続人の中には「現金の準備がなく相続税を課税されても急に払えない」というケースがあるのです。

人の死は唐突です。
事前に確実に予見することはできません。
だからこそ資金準備が難しいのが相続税なのです。

突発的に課税されるなどの相続税の事情を考慮して相続税には「延納」という制度が定められています。
この記事では延納の条件や相続税延納の申請に必要な書類、相続税延納申請書の記載例など、相続税延納の手続きに必要な知識をご紹介します。

少し長くなりますので、2回にわたって解説していきます。

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相続税を延納するための条件

相続税の延納とは相続税を分割払いする制度です
相続税は現金一括払いが基本ですが、相続人の生活状況や相続税の額によっては一括で相続税を払うことが難しいことでしょう。
さらに相続は被相続人の突発的な死によりはじまるという事情もあります。
被相続人の死後に遺産ごとに相続税評価(価値の評価)をしてみないと正確な税額をなかなか算定できないため、資金準備の難しさに拍車をかけているのです。
そのため、相続税には分割払いでの相続税納付を許可する「延納」という制度が定められています。

相続税分割払いという内容から買い物の分割払いを想像するかもしれません。
相続税の分割払いは確かに相続税を分割で支払う方法になりますが、買い物の分割払いのような柔軟さはありません。
分割払いできるといってもあくまで基本は現金一括払いですので、相続人が分割払いしたいからといって簡単にできるものではありません。
相続税のルールで定められた条件に当てはまっていないと延納の利用は許されないのです。

相続税の延納を使うためには以下の利用条件に当てはまっていなければいけません

 

1.相続税額が10万円を超えている

延納を利用するためには相続税額(贈与税額)が10万円を超えていなければいけません
相続税額が低い場合は使えないということです。
相続税額が低い場合は一括で払える可能性が高いからです。

たとえば相続人が姉と妹のふたりだったとします。
姉の相続税額は20万円で、妹の相続税額は5万円でした。
このような場合は、姉は相続税の延納を使えますが妹は使えません。

 

2.相続税の現金納付が困難である

クレジットカードの分割払いは現金払いが困難かどうかは関係ありません。
使いたいときに使えます。
しかし相続税の分割払いは現金払いが困難であるという条件に当てはまっていなければ利用できません。

現金払いが困難かどうかは遺産に加えて相続人の資産もチェックされます。
たとえば相続財産で払うことが困難でも相続人の資産で払うことができるなら、それは現金払いできるということです。
相続人の資産をもってしても現金払いが難しいケースしか使えません

なお、相続人の資産で払えるかどうかを判断されるときは生活費などについては考慮されます。
給与と預金すべてを相続税の支払いに充てろということではないので安心してください。

 

3.相続税延納申請書などを期限までに提出する

相続税の延納を利用するためには相続税の申告期限まで相続税延納申請書や担保関係書類といった必要書類を提出しなければいけません

相続税の申告期限は10カ月です。

 

4.相続税延納の担保を提供する

相続税の延納を使うためには担保を提供しなければいけません。
延納によっても相続税を払えないときのための保険が延納の担保です。
相続税延納の担保については別の見出しで説明します。

 

相続税延納は利息が発生する

クレジットカードなどで分割払いをすると、分割の回数にもよりますが所定の手数料がかかります。
相続税の延納も似ていて、延納をすると相続税の他に利息が発生する仕組みになっているのです。
もちろん買い物の分割払いと相続税の延納は性質自体が異なりますが、延納の利息については分割払い手数料のようなものだと捉えれば比較的理解しやすいかもしれません。

相続税延納の年利は1.2%~6.0%ほどです。
相続税の延納の利息は延納の期間と相続財産に占める不動産の割合などによって変わってきます。

 

相続税の延納に利用できる担保

相続税の延納では相続税を支払えないときの保険として担保を提供する必要があります。
延納によっても相続税を払えない場合は担保から回収されるわけです。

担保はいざというときに相続税を回収するための保険ですから、どのような財産でも認められるわけではありません。
延納の担保として使える財産が定められている他、担保に提供する財産についての条件もあるのです。

 

相続税の延納で担保にできる財産

相続税の延納では以下のような財産を担保にできます。

 

・国債や地方債、社債
・不動産(土地や建物)
・船舶や飛行機、自動車、建設機械
・各種の財団
・税務署長などが認める保証人

など

以上のような財産が相続税延納の担保になります。
担保にできる財産の共通点は「価格変動が少なく簡単に処分できる財産である」ことです。

ただ、上記のような財産であれば何でも担保にできるわけではないため注意が必要になります。
担保にするためには担保の条件を満たす必要があるのです。

 

相続税延納の担保の条件

相続税延納の担保にする財産には3つの条件があります。
条件を満たしていない財産は担保として認められません。

 

(1)担保の換金が容易である

担保にしても換金できなければいざというときに相続税延納分の回収ができません。
相続税延納の担保にするためには換金が容易な財産でなければいけません。
担保として提供された財産の換金に時間がかかると税務署は速やかに相続税を回収できないことになります。
いざというときにスムーズに相続税延納分を回収できるかがチェックポイントになるわけです。

 

(2)土地に抵当権の設定が可能

相続税延納で土地を担保にした場合は土地に抵当権を設定します。
ただ、抵当権の設定ができても他に抵当権者がいて後順位になってしまう場合は担保にできないのです。

 

(3)延納金額と同程度の価値がある

担保にする財産は相続税延納の金額と同程度の価値を持っていなければいけません。
相続税延納の金額が1,000万円なのに担保の価値が100万円ほどだと価値が釣り合わないのです。
いざというときに相続税延納分を回収できません。税額に釣り合った財産でなければ担保として認められません。
なお、財産を担保にした後に価値が低下したような場合は追加の担保を求められることがあります。

 

相続税の延納で担保にできない財産

相続税の延納で担保にできる財産であっても、以下のような財産は担保不適格として相続税延納の担保には使えません

 

・処分禁止の財産
・所有権争いがあるなど係争中の財産
・第三者などの同意や許可が必要なケースで同意や許可が得られない財産
・売却できる見込みのない財産
・存続期間が延納の期間より短い財産

など

共通点としては「相続税延納分の回収が困難な財産」です。

 

相続税を延納するための条件について解説してきました。


本日は、ここまでといたしましょう。

 

その土地は誰の土地?相続登記の義務化について

 

こんにちは!

こうのとりです。

 

もう寒い季節なんですよねー。

私、極度の暑がりなもので、コートを着ずにスーツのまま冬を越えることもしばしば(笑)

周りの人からは引かれますけどね・・・でも、暑いんだもん!!!

もともと、寒いところで生まれ育ったからでしょうね。

クーラーという概念が無い土地でした。

 

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【休日の散歩は、毎週の日課になりつつあります。】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は田谷様(仮称:48才)です。

やや特殊な案件ではありましたが、タイムリーな内容なので書き残しておきます。

 

事の発端は、田谷様のお父様が他界する最後の最後で「借金があるから、実家の裏山を売って返済してほしい」と言い残したことから始まりました。

田谷様が半信半疑ながらも、調べられる範囲で調べてみると、たしかに借金は見つかったものの、実家の裏山は誰のものかわからずじまいであり、田谷様はその後、借金を免れるために相続放棄をしたという話です。

 

実は少子高齢化に関連して、現在の日本において問題になっているのが、誰が所有しているのかわからない土地が引き起こす社会問題です。

所有者がはっきりしなければ、空き家と同様に荒廃するのはもちろんのこと、道路や水路などのインフラを構築する際の障壁になったり、山火事や土砂崩れなどの防災対応にも大きな問題となりうるのです。

 

それではなぜ、とある土地について、誰が所有しているのかわからなくなってしまうのでしょうか。

例えば、身寄りのいないご老人が他界したケースを考えてみると、確かに遺産の引き取り手がおらず、所有者不明となるように思われますが、この場合には特定の手順が踏まれたのちに国庫に納められることとなっているため問題がありません。

問題は被相続人に相続人がいないということではなく、土地の所有者が自分の土地に対して必ずしも登記をしていないという現状にあります。

 

一般的に、不動産の売買や遺産分割協議を行った場合には、あくまでも第3者への対抗措置として、当たり前のようにその不動産の名義変更(所有権移転登記や相続登記)を行うものですが、実はこれは義務ではありません。

つまり、売買や遺産分割協議などのきっかけがなく、親から子ども1人への単純な相続だった場合などにおいて、親の遺産は当然自分のものと理解している方は、いちいち費用をかけて名義変更をすることもなく、親の名義のまま所有しているということが大いにあり得るのです。

また、突然死の場合などは親の資産を調べ切れず、単純にその資産の存在に気付かないまま相続を終えている可能性もあります。特に、固定資産税が課税標準額を下回っているような田舎の土地(山林や原野)であれば、固定資産税が請求されることが無いため、気づきにくい状態といえるでしょう。

 

このような事態を重く見た政府は、所有権という絶対的権利を後目にしながらも、所有者不明である土地の問題に着手するようにになりました。

まず先行して行われたのが、令和元年6月1日に全面施行された「所有者不明土地法(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法)」です。

これは主に、所有者が不明である土地を使用したり収用しようとする場合に、都道府県知事に対してスムーズにお伺いを立てることができるという法律であり、国や自治体などの行政にとって利便性が高いものとなっています。

 

しかし、今後ますます少子高齢化が進むことを鑑みれば、事後対応よりも事前対策が望ましいとされるのはもちろんです。

最終的には「相続登記の義務化」が現在検討されているところです。

早ければ令和3年中に施行されるのではないかといわれていますし、罰金も検討されているようですから、今後相続を控えている方については、相続の際に登記が義務化されている可能性を念頭に入れておきましょう。

 

なお、相続登記は主に司法書士などに依頼すると円滑に進みますが、依頼した場合の費用の相場は約6万円~8万円程度となっています。

現在所有されている不動産の名義がご自身のものになっているかについても、あらかじめ確認しておいたほうがよいかもしれません。

万が一の際に名義がはっきりしていない場合、売却や相続が円滑に行われず、ご家族に手間を取らせる可能性も十分にあり得るからです。

 

本日は、ここまでといたしましょう。