相続税の申告が自分でできるケース・税理士に依頼した方が良いケース

こんにちは!

こうのとりです。

 

親が亡くなった場合など、相続人となって遺産を相続した場合は、相続税の申告をしなければならない場合があります。

 

ただ、自身が相続人となることは数えるほどしかないため、相続税の申告書を作成したことのある人は、ほとんどいません。

 

そのため、相続税の申告は税理士に頼むしかないと思っている方も多いと思います。
しかし、実際には相続税の申告が自分でできる場合もあります。

 

そこで、相続税の申告を自分でする場合、どのようにしたらいいか解説していきます。

 

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相続税の申告が自分でできるケース

相続税の申告を相続人自身で行うことができるとはいっても、あらゆるケースにおいて自身で申告するのがいいとは限りません。

そこで、どのような場合に自身で相続税の申告をするのがいいのか、ご紹介します。

 

ここでご紹介するのは、いずれのケースも相続人どうしでのトラブルになる可能性が非常に少ないといえるものばかりです。

逆にいえば、ここにあげたケースでも、相続人間のトラブルに発展する可能性がある場合は、税理士に依頼すべきなのです。

 

相続人が1人の場合

相続人が1人の場合は、相続財産の額を正しく求めることができれば、あとは相続税額まで計算式にしたがって計算するだけです。

 

相続人どうしで遺産分割の方法をめぐる争いになることもありませんし、仮に計算ミスをしてもすべて自分の問題となります。

 

そのため、相続税の申告書を作成する際に、絶対に間違えることができないという状況にはならずに済むのです。

 

納付する相続税がゼロとなる場合

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など、相続税の申告をしなければ適用されない特例があります。

 

これらの特例を適用すると相続税額がゼロとなり、誰も相続税を納付しなくていいということが起こり得ます。

 

このような場合は、申告だけを行えばいいことから、税額の計算ミスなどが起こる心配はありません

そのため、相続税の申告後にトラブルが発生する可能性は極めて低くなります。

 

名義預金や生前贈与などがない場合

他人の名義になっていても、相続財産に含めなければならない財産があります。

その代表例が名義預金であり、また相続発生前3年以内に贈与が行われた場合も、その贈与された財産が相続財産になります。

 

これらの財産があると、被相続人の名義以外の財産を相続税の計算対象に含める必要があることから、申告漏れが起こりやすいです。

 

相続税の申告後に税務調査が行われて、申告漏れが指摘されると、多額の追徴税額が発生することも少なくありません。

 

そのため、名義預金や生前贈与がないことが確認できた場合だけ、自分で申告を行うようにした方がいいのです。

 

相続人どうしの争いが起こらない場合

相続人が2人以上いる場合でも、すべてのケースで相続人どうしの争いが起きるとは限りません。

 

例えば、2人の相続人が被相続人の配偶者と子供である場合、トラブルに発展する可能性はそれほど多くないかもしれません。

 

また、子供が何人かいても、非常に仲が良ければ問題がないというケースもあります。

そのような場合には、後から計算ミスが指摘されたとしても、トラブルにはならないと考えられます。

 

そのため、税理士を頼まずに相続税の申告を行うことも可能となるのです。

 

相続税の申告書を提出する必要がない場合

相続が発生した場合でも、相続税の申告をしなければならないケースは実はそれほど多くありません。

 

相続財産の額が基礎控除額以下であれば、相続税は発生しないことから、そもそも申告書を提出する必要がないのです。

 

申告書を提出する必要がなければ、税理士に相続税の申告を依頼する必要もないのです。

 

相続税の申告を税理士に依頼した方が良いケース

一方で、相続税の申告を税理士に依頼した方が、スムーズに相続税の申告ができる場合もあります。

 

特に、下記のような場合は、税理士に依頼した方が、後々大きなトラブルになるのを回避できるでしょう。

  • 相続人が複数人いる場合
  • 相続税が発生する場合(金額が大きければ大きいほど)
  • 名義預金や生前贈与された財産がある場合
  • 相続人どうしの仲が悪くトラブルになりそうな場合

 

とりわけ、相続税額が大きい場合や相続人が何人かいる場合は、相続税の申告が原因で揉めることがあります。

このような場合、相続税に関する手続きは税理士に依頼して進めるようにしましょう。

 

本日はここまでといたしましましょう。

生産緑地制度の期限を2022年に控えて、首都圏の地価はどうなるの?

こんにちは!

こうのとりです。

 

今年は7月下旬に雨が多い時期があって、それ以降は35℃ぐらいが平均的に続く猛暑となっていますね。

今年も海へ行けなかったなぁというのが残念です・・・。

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※写真はイメージです

 

さて、前回は、生産緑地制度についてまとめていきましたが、今回はさらに踏み込んでいきます。生産緑地制度では、一定期間(30年間)について、農地を維持した場合のは税優遇を受けられるという内容でしたが、それでは、2022年に一定期間を迎えた生産緑地はどうなるのでしょうか?

そもそも30年間にわたって農地を維持するというのも簡単ではありません。そのため、農業従事者が死亡したり、農業に従事することが困難になった場合、市町村に農地買取の申し出ができことになっています。

しかし、30年経過した場合には、そのまま生産緑地として維持することができるほかに、他の用途に活用することや売却を行うことができるのです。

 

ということは、地価が上がっているという背景(少なくともバブル崩壊後の1992年よりは上昇している)や、高齢となり土地を管理できない方もいらっしゃるとすれば、2022年に指定期間を終えた生産緑地がこぞって売りに出される可能性もあるのです。

一方で、人口減で空き家問題が深刻化しているうえ、都心のマンションですら空室が増えているという状況下ですが、テレワークの普及などで都心離れが進んでいるところで生産緑地が売り出されるようになると、供給過多となる可能性も十分に考えられるということです。

 

そして、供給過多になれば当然、不動産価格は下落していくことになるので、仮に不動産を相続してから売却しようとしている方々にとっては、遺産が思わぬ足かせになる可能性もあります。もっとも、都心部の土地であれば、買い手がつかないということはほとんどあり得ないとは思うのですが・・・。

 

最後に、資産のなかでも特筆すべき、中古マンションと新築マンションの価格高騰についても触れておきたいと思います。そもそも首都圏の地価高騰は、マンション建設による需要が大半でしたので、今後のマンション需要がその地価に影響を与えると考えられるためです。

さて、首都圏の新築マンションは、1990年頃のバブル崩壊前には平均6,000万円ほどの価格でしたが、バブル崩壊を経て平均4,000万円ほどに落ち込んだものの、その後は回復をして、現在バブル期と同等の平均約6,000万円となっています。

同じく首都圏の中古マンションについても、1990年頃のバブル崩壊前には平均3,500万円ほどの価格でしたが、バブル崩壊を経て平均2,000万円ほどに落ち込んだものの、新築マンションと同じく、その後は回復をして、現在バブル期と同等の平均約3,500万円となっています。

 

つまり、現在のマンション価格は、バブル崩壊前ほどの価格にまで高騰しているということです。ここまで価格が高騰している状況で、供給過多になりつつあるところに、生産緑地制度によって土地供給が増えていけばどうなるでしょうか。

考えられるストーリーは2つで、単純に地価が下がるストーリー、もう1つは都心部にアクセスがしやすい駅近くのマンション需要などがテレワークの促進などで削がれ、都心部よりも少し離れた地域の一戸建て需要が増え、生産緑地制度を終えて売買される土地が高騰するというストーリーです。

もちろん、不動産の価格動向を予測することは難しいのですが、不動産相続時の評価額にも影響を及ぼすため、価格変動が上下しやすい場所に相続不動産がある場合には、相続後に管理ができるかも含め、被相続人と十分に相談しておくべきかと思います。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

宅地不足は生産緑地のせい?東京にも農地はあるんです!

こんにちは!

こうのとりです。

 

そろそろお盆が近いですが、昨年も今年もあんまりお盆って気分じゃないですね。

いつになったらこの状況が続くのだろうと、先の見えないゴールはなかなかキツイです。

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※ 写真はイメージです。

 

前回、不動産価格動向についてまとめてみましたが、2021年の公示価格は全体的に下落しているということで、不動産需要の鈍化がみられているところに、2022年の生産緑地問題によって、さらに不動産価格を下落させる可能性が出てきました。

ということで、今回と次回については、この生産緑地についてまとめていきたいと思います。

 

まず、1972年に定められた生産緑地法について確認していきましょう。

これは、最低30年間について、農地や緑地として土地を維持すれば、税制優遇を受けることができるという制度でした。

そもそも、このような制度が設けられた経緯については、高度経済成長期の終期である1970年頃、人口増加によって都市部の緑地が宅地に転用されていった結果、緑地が失われて住環境が悪化し、土地の地盤保持機能や保水機能を失ったことがきっかけでした。

 

しかし、その後も農地や緑地の宅地化が止まらなかったために、1992年にこの生産緑地法が改正され、市街化区域内(すでに市街地を形成している区域 および おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域)の農地は生産緑地と宅地化農地に区別されるようになりました。

 

ここで指定された生産緑地については、固定資産税が格安なうえ(宅地の数100分の1程度)、相続税や贈与税の納税猶予が受けられる場合もありました。その代わりに一定期間の間は、農地として管理し、維持するという条件が与えられたというわけです。そして、この一定期間というのが30年なのです。

 

なお、生産緑地の大半は大都市圏であり、そのほとんどが東京です。東京都心部については、さすがに大きな農地があることは見かけませんが、私が昔住んでいた板橋区や練馬区の方面は、ところどころで農地があったのを覚えています。練馬のキャベツって有名だった気がしますね。

ちなみに、生産緑地の具体的面積ですが、2014年のデータでは東京が3,300ヘクタールに対して、神奈川は1,400ヘクタール、埼玉は1,800ヘクタール、千葉は1,200ヘクタール、大阪は2,100ヘクタールとなっていますが、長野は3ヘクタール、福岡は2ヘクタールなど、主に首都圏と大阪、愛知がその大半を占めています。

 

お気づきのとおり、1992年から指定された一定期間である30年が経つとすれば、2022年になりますね。もう来年の話です。では、2022年を迎えるとどのようになるのでしょうか。次回は、期限を迎えた生産緑地についてまとめていきたいと思います。

 

本日はここまでといたしましょう。・

テレワークが進めば不動産価格が下がる?マンション一強の価格高騰

こんにちは!

こうのとりです。

 

ついにオリンピック目前となりましたが、開会式にかかわる関係者が辞任ラッシュとなっていて、非常に暗い影を落としつつあります・・・。

たしかに過去に差別行為を行っていた方々が処分されるのは致し方ないですが、もっと早く確認できなかったのかな?という思いと、「とにかく五輪反対!」という国民感情が大爆発しているとも感じます。先が見えないコロナ禍に、皆疲れてますよね・・・。

 

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※写真はイメージです 

 

さて、前回に続いて、今回も全国の不動産価格動向について確認していきたいと思います。都心部のうち、特に東京中心に地価が高騰しているというのはなんとなくイメージがついていたのですが、ほとんどが東京に一極集中している状態とは思いもよりませんでした。それでは、続いて不動産の種別(戸建住宅やマンションの価格動向について確認していきましょう。

 

さっそくですが、戸建住宅については、2008年の不動産価格指数と比べてほぼ横ばいだったのに対し、なんと、マンションについては、不動産価格が160にまで高騰していました。つまり、60%の伸び率ということです。約10年でマンション価格が1.5倍に高騰していることには驚きを隠せませんが、たしかに東京都心部では、特に湾岸エリアを中心にタワーマンションが立ち並んでいる状況です。

なお、商業用不動産については、店舗やオフィスなどはマンションと同じく高騰しており、不動産指数が140だった一方で、商業地や工業地についてはほぼ横ばいであり、やはり都心部などのビルを中心に価格が上昇してきたことがわかります。

 

最後に、コロナ禍以降(2021年)の公示地価についてもまとめておきます。公示地価(国が調査元で、主に公的な土地取引の目安されるもの)も、基準地価(公示地価に近く、都道府県が調査元)や路線価(相続税や贈与税を産出される際に用いられる評価額)、不動産価格地数と同様に、不動産の価格を示す1つの重要な指標です。

実は、2021年の公示地価は全体的に下落しており、住宅地では5年ぶり、商業地では7年ぶりの下落となっています。とくに商業地での下落が大きいことから、コロナウィルスによる商業地の利用者減や観光客頼みだったホテル需要減に加え、テレワーク増で企業が自社ビルを縮小化していることなどが考えられます。

テレワークが今後も継続されていくようですと、本社への出社機会が減った方々は都心に住む必要がなくなり、実家のある地方を拠点に生活するようになる可能性も十分にありあえます。

ちなみに、私の実家は群馬ですが、やっぱり物価が安いです!車がないと移動できないのは不便ですけどね・・・。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

都心部の地価高騰が顕著!相続前に知っておきたいエリア別不動産価格動向

こんにちは!

こうのとりです!

 

さて、オリンピック目前ですが、まだまだ混沌としております・・・。

イギリスやアメリカでは感染者数は許容する方向に舵を切ってますが、日本は果たして・・・

 

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※写真はイメージです 

 

さて、被相続人が元気なうちに遺産の整理をすることで、後の親族間の紛争防止となることは間違いありませんが、いざ不動産を相続することになった相続人の立場としては、被相続人の遺産を本当に全て相続すべきなのか、それとも放棄すべきなのか考えなければなりません。特に遠方にあって管理のために定期的に通わなけばならない不動産などは、一度相続をすること簡単に手放すこともできず、非常に厄介です。

そこで今回と次回については、不動産を相続すべきかいなかの1つの判断材料として、最新の不動産価格動向をまとめてみたいと思います。

 

まず、国土交通省が公開している不動産価格指数(令和3年1月現在)を見ていきましょう。全体の不動産価格は、2010年の平均価格を100とした場合に117.1となりました。

日本の不動産価格は、1980年代こ高度経済成長の後のバブル崩壊によって、一気に下落しましたが、その後ゆっくりと回復した後に、2008年のリーマンショックで再度下落しています。しかしながら、リーマンショックが終わっていったんの底値をつけた2010年から約10年間で17%近く増えているといることですから、不動産価格は株価と同様に、順調に上がり続けているといってよいでしょう。

逆にいえば、バブル崩壊や、リーマンショックなどの世界的な金融不安が起こった場合には不動産価格は暴落する可能性があるでしょう。

 

続いて、各地域別に不動産価格(土地)の推移を確認していくと、首都圏では面白い傾向があります。神奈川、埼玉、千葉では価格がほぼ横ばいなのに対して、東京だけ不動産指数が115と、約15%も伸びているのです。

これは、次回まとめていく不動産種別の価格上昇率にもかかわってくることですが、東京都内などの都心ではマンション需要が著しく、マンションを建てるための土地がそれに伴って高騰しているという仕組みです。

 

しかし、都心部のマンション需要を考えれば、大阪や愛知を中心とした地域も、と新聞を中心に不動産価格が高騰しているかといえばそういうわけではありません。大阪、京都に関してはほぼ横ばい、兵庫県に関しては5%ほど下落しています。

一方、愛知県は105%と都心部としての需要がみられているものの、岐阜県や三重県は10%下落しており、都心部をそれ以外の地域で大きな差がみられるという特徴的な結果となりました。

 

このように、全国的な不動産価格平均の上昇は、主に東京を中心とする都心部の地価高騰が原因となっていることは明確です。しかしながら、コロナ禍による行動制限やテレワークの普及から、都心部ではなく地方へ居住地を求める方が多くなっていることも注目すべき内容です。

オリンピック終了後の選手村の販売、そして、いずれまとめておこうと思っていますが、生産緑地による不動産供給問題などで、不動産価格はいったんは頭打ちになるのではないでしょうか。

 

本日はここまでといたします。

兄弟10人、この不動産は誰のもの?所有者不明土地の問題解決的アプローチ

こんにちは!

こうのとりです!

 

五輪が近づいてきましたが、折角の自国開催なのに今回は素直に楽しめそうにないですね・・・。どうせなら、お祭り騒ぎで応援したかったな~と、個人的には感じています。

 

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※写真はイメージです

 

さて、前回まで2回にわたって所有者不明土地問題解消に向けた予防的アプローチをご紹介してきましたが、今回は問題解決的アプローチについて、まとめておきたいと思います。

 

所有者不明の土地があったとしても、絶対的権利である所有権を侵害するほどの法改正は難しいことは間違いなく、問題解決的アプローチとしては、やや緩やかな内容となっています。

具体的には「共有物管理・共有物変更の手続合理化」「所有者不明土地管理制度 および 管理不全土地・建物管理制度」、そして「隣地関係の法整備」が挙げられます。

 

まず「共有物管理・共有物変更の手続合理化」ですが、これは現在でも問題として抱えている方々が多いケースへのアプローチになりそうです。

簡単に言えば「私たち兄弟は仲がよいし、実家は兄弟みんなで相続をして実家を管理しましょう!」とか、遺産分割協議などでしっかり話し合う時間がなく「とりあえずみんなの名義で相続しよう!」などという、いわゆる共有不動産が引き起こす問題の解決策です。

共有不動産という相続の方法は望ましくありません。かなりの確率で揉めることになりますし、その資産が子供に引き継がれ、さらにその子供に引き継がれと、代を重ねるうちに、1つの土地を大人数が共有することにもなりかねないのです。

共有不動産といえども、一人ひとりの持ち分は立派な所有権ですが、なるべく持ち分の状態を解消しやすいような緩和策を講じるとともに、不明共有者については公告や通知で反応が無ければ「頭数から除く」ことができるようにしました。

 

続いては「所有者不明土地管理制度 および 管理不全土地・建物管理制度」ですが、こちらは、利害関係人の請求によって、裁判所が認めれば所有者不明土地の管理人が選任され、土地の管理を命ずる処分をおこなえる制度(所有者不明土地管理制度)と、不動産の所有者が不明であるかどうかにかかわらず、管理が不適当であることで他人の権利や法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合に、同じく裁判所によって管理人が選任され、土地の管理を命ずる処分をおこなえる制度(管理不全土地・建物管理制度)です。

主たる目的は、危険な空き家問題に対する対応を柔軟にするものかなと感じます。つまり、空き家が老朽化し、倒壊しそうという場合などに、管理不全であるとして裁判所に管理を願い出ることができるということですね。老朽化した家屋は耐震性も弱くなっていることがあり、非常に危険なのです。

 

そして最後は「隣地関係の法整備」ですが、たとえば隣地に土地に大きな木が育っていて、その枝が自分の家の境界線を越えてどんどんと伸びてきた場合はどうすべきでしょうか?

実は、境界線を越えて伸びてきた枝を勝手に切ることができません。もちろん、お隣さんが住んでいれば「ちょっと〇〇さん、枝が伸びてきてますよ!」と言って切ってもらえばいいのですが、誰も住んでおらず、所有者も不明な隣地からの枝であった場合、誰にも依頼することができないことになります。そこで、所有者不明の土地である場合などには、隣地に立ち入って枝を切ってもいいでしょうという、緩和的な法改正になります。

 

少子高齢化によって、地方を中心に所有者不明土地問題はこれからもますます増えていくと考えられていましたが、所有権に踏み込むギリギリのラインで様々な緩和措置を講じ、少しでも所有者不明土地を減らそうという動きが今後加速してくことになると思います。

 

本日はここまでといたしましょう。

「相続登記の義務化」以外の予防的アプローチと相続放棄

こんにちは!

こうのとりです!

 

そうえいば、コロナ禍で業務量が格段に減った航空会社の添乗員などが、他業種のコールセンター業務などに出向するというニュースがありましたよね。

なりふり構わずに会社を守ろうとする従業員の皆様には頭が下がる一方で、SARSやMARSなどの経験を踏まえて、パンデミック下でも生き抜く方法を企業は検討してこなかったのかな?という疑問や、それをしてしまうと、非正規雇用者の働き口が単純に減少することになるのでは?という懸念も出てきます。

立場が変われば正義も変わると思う今日この頃です。

 

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※画像はイメージです

 

さて、前回は所有者移転登記が任意であるというルールに、少子高齢化という社会問題が加わることで、地方の空き家問題が所有者不明のまま残されるというケースをご説明しましたが、もう1つの良くあるケースも記載しておきます。それは、財産相続時に遺産を特定できないケースです。

 

例えば、配偶者に先立たれ、地方の実家に一人暮らしをしていた父親が、突発的に他界してしまったとします。その後の遺産分割については、まずは父親の資産の確認と、相続人を特定することから始まるわけですが、相続人に関しては戸籍謄本をたどることで特定しやすいものの、資産については生前から相続人が把握しているとは限りません。むしろ「お父さん、遺産ってどこにどれだけあるの?」と聞くほうが、デリカシーに欠けると思われる方も多いわけです。

突発的な他界の場合、実家で通帳や金庫などを確認しながら1つ1つ探していくことになりますが、ここで、登記されていない不動産が存在すれば、その存在に気付く術がありません

 

もちろん、遺産分割時に見落とされたとしても、固定資産税の納付通知が実家に届いたり、その土地を購入したい人が名義を調べて交渉しに来るなどでで、知りえなかった遺産に気付くこともあります。

しかし、その土地が山林であった場合など、土地の評価額が安いために非課税対象だったり、そもそも需要が少ない土地である場合にはその遺産に気付くタイミングが無く、長い年月が過ぎていることも多くあります。結果的に、その遺産は、誰にも気づかれることのない所有者不明土地となってしまうわけです。

 

さて、主たる予防的アプローチとして「相続登記の義務化」を取り上げましたが、それ以外にも「登記名義人の死亡事実の公示」「名称・住所変更登記の申請義務化」「相続等により取得をした土地所有権の国庫帰属制度」など、多くの予防的アプローチが講じられる予定です。

「登記名義人の死亡事実の公示」でより多くの方に知らしめ、「名称・住所変更登記の申請義務化」で正しい登記情報を残す、そして「相続等により取得をした土地所有権の国庫帰属制度」で不要な土地は無理に管理をしたり固定資産税を払う必要もなく、国に返すという内容です。

 

注意したいのは「国庫帰属制度」の承認要件が厳しく安易に所有権を手放すことができない点です。たとえば、土地の上に建物がある場合や、通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地など、様々な制約があります。

本来は、不要な遺産を放棄したい場合には相続放棄の手段を検討しますが、この手段は財産の全部を放棄しなければなりません。つまり、自分の都合の良い資産だけ相続するということは許されないのです。

万が一、遺産分割協議や相続が終わってから新しい資産が見つかり、それを手放したい場合には、売却か寄付しかありません。売却の需要がないような土地であれば寄付を検討することになりますが、寄付だとしても譲渡税がかかることには注意が必要です。

 

本日はここまでといたしましょう。

次回は、問題解決的アプローチについて、まとめていきます。

忘れられた「ポツンと一軒家」状態の予防的アプローチ「相続登記の義務化」

こんにちは!

こうのとりです!

 

コロナ禍に対応すべく、withコロナ、afterコロナとして、デジタル化が促進されていますが、皆様の企業では進んでいますか?

テレワークが推進されれば、介護や地方の過疎化などの社会問題が解決するのになと感じているのは私だけでしょうか?

 

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※ 画像はイメージです

 

さて、今回から3回にわたって、少子高齢化の弊害として問題が顕在化しつつある所有者不明土地問題解消のための2つの具体的アプローチをまとめていきます。その2つのアプローチとは「予防的アプローチ」と「問題解決的アプローチ」ですが、今回は「予防的アプローチ」についてです。

 

所有者不明土地の予防的アプローチとして特筆すべきは、皆さんも直接関係する可能性が高い「相続登記の申請義務化」です。

コロナ禍の影に隠れて大きなニュースにはなっていませんが、国内では絶対的な権利とされている所有権に踏み込んだ内容である上、これから相続を控える方には相応なインパクトになるため、心構えをしておくべきでしょう。

なお、義務化は2024年以内とされており「土地や建物の相続を知った日から3年以内に登記するよう義務づけ」という内容になっています。

 

 

そもそも、相続登記も含まれる「所有権移転登記」は義務ではありません。登記は、あくまでも第三者に所有権を主張するための1つのツールであり、任意の行為です。

 しかしながら、不動産の売買契約時には「所有権移転登記」が合わせて行われるのがごく一般的です。これは、登記をしていないと、二重売買がなされた場合に所有権を主張できないケースや、将来的に売却する際に売ることができなくなるなどのリスクがある他、住宅ローンなどを組む場合には必須条件(金融機関は、不動産を担保に融資するため)とされていることがほとんどであるという理由です。

 

一方で、不動産の相続時も所有権が移転するものの、ほとんどが親から子、もしくは親族や身内への引継ぎであり、すでに居住している実家などの家屋を、そのまま占有し続けるケースが多かったために(20年占有による時効取得というルールがある)、第3者に対して所有権を主張する必要性がありませんでした。その上、登記には費用も手間もかかるということで敬遠されてきたといえます。

 

要するに、これまでのルールで特段問題はなかったのですが、少子高齢化という社会問題によってが問題が顕在化することになりました。たとえば、「兄弟のうち長男が実家を引き継ぐ」という古い慣習的な考え方も過去のものとなり、生活基盤が都心部にあれば容易に移住できないことや、地方の不動産を処分しても二束三文であること、あるいは、生家を残しておきたいという思いなどから、住人不在で空き家のまま、実家などを相続される方が増えてきたといえるのです。

しかし、仮にこのような状況の方が一人っ子で未婚、相続登記をしないまま突発的に亡くなられらどうなるでしょう?亡くなられた本人名義の財産は、選定された相続財産管財人のもとで国庫に帰属(つまり国の所有)となりますが、たとえば地方に残された実家が「ポツンと一軒家」状態であったとすれば、その家は誰かの名義で、誰かが所有しているのだろうという考えのもと、長らく放置されることになるのです。

 

本日はここまでといたしましょう。

長くなりましたので、話は次回へ持ち越します。

2024年以内に相続登記義務化!遠方に遺産がある方は注意!

こんにちは!

こうのとりです!

自制の日々が続きますが、頑張っていきましょう!

 

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※ 画像はイメージです

 

2021年4月、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が可決成立しました(4月28日公布)。

コロナウィルスや五輪に関するニュースに隠れて、あまり取り上げられてはいませんが、その内容を見てみると、少子高齢化や地方過疎化という社会問題に対峙するための抜本的な法改正および法成立となっており、絶対的な権利である所有権にもかなり踏み込んだ内容となっています。

法律の施行日は、公布後3年以内と決められていますので、2024年までには施行され、義務化が進むことになります。

 

そもそも、日本において土地の所有権が認められるようになったのは、1873年の地租改正時にさかのぼります。明治政府は私的所有権を認めたうえで、土地に対して租税を納めさせるという政策を取りました。

当時は「地券」というもので土地の所有権を証明していましたが、これが後の「登記制度」に変遷していきます。

 

一方、土地の私的所有権は1896年に民法で明文化されました。このときに参考としたのがドイツの民法なのですが「土地の所有権は絶対的、排他的」であるというその内容が引き継がれ、日本においても所有権が絶対的、排他的な権利として、今もなお続いていることになります。

 

この所有権の強さが仇となり、少子高齢化によって地方の空き家問題が深刻になっていても、所有者不明の土地だからといって、国や地方自治体さえも処分できずに放置せざるを得ないという状況だったのです。

 

さらに、相続登記が任意であるという制度上の問題も足かせとなっていました。例えば、地方の実家を相続した方が登記をしないまま都内で生活をしていたとして、万が一事故死や、高齢化して孤独死などをした場合はどうでしょうか。地方の実家はそのまま放置され、所有者不明のまま誰も手をつけることなく残ることになります。

 

もちろん、所有者がただ不明なだけであれば問題ありません。しかしながら、その場所に線路を敷きたい鉄道事業者がいたらどうでしょう?また、空き家が放置されて、その中で鳥獣被害や虫害が起きたらどうでしょう?立地にあった廃材が吹き飛ばされて通行人に直撃したらどうでしょう?

 

このように、所有者不明土地が引き起こす問題は何かと厄介なのですが、現時点で日本全体の面積の約2割程度がすでに所有者不明の土地として存在しています。

 

この、所有者不明土地問題を対処するために、長年指摘されていたものの実現がしなかった「相続登記の義務化」によって所有者不明問題の入口を塞ぐ予防的アプローチをとった上で、「所有者不明土地の利用円滑化」によって所有者不明土地であっても利活用ができように出口を広げる問題解決的アプローチが講じられることになったのです。

 

本日はここまでにしておきましょう。

次回より、各アプローチの具体的な方策について、より詳しく確認していきたいと思います。