遺言書は自筆証書遺言か、公正証書遺言か

こんにちは!

こうのとりです。

最近は勉強で頭がパンパンですが、まだまだ勉強不足を痛感しています。

いつになったら自分の自身につながるのかなぁと、不安て仕方ありません(汗)

その不安を払拭すべく、今日も頭の整理をしていきたいと思います。

 

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【今年は暖冬ですね!こちらは昨年の木場公園です】

 

さて、今回ご相談にきた吉田様(仮称:65歳)は、有名なおしどり夫婦である俳優の中尾彬さんと女優の池波志乃さんたちが行ったという終活に触発され、自身の身辺を整理し始めたということでした。

吉田様は妻と子供3人の家族ですが、そんな吉田様には終活をするにあたって、1つの懸念事項がありました。

それは、勘当してしばらく会っていないという長女の存在。

詳細は割愛しますが、とにかく自分勝手なことをして出て行ったことから、もし、自身が死んで遺産分割となっても、この長女だけには遺産を残したくないという強い思いがありました。

しかし、いくら吉田様の思いがあったとしても、法定相続人に対しては遺産を相続する権利(遺留分)が与えられています。

そこで、吉田様の意思を尊重するために、とある遺言書を残すことにしたというわけです。

 

さて、遺言とは自分の死後のために、財産の処置などを言い残すことですが、本人が死んだ後はその真否を正すことはできません。

それだけ重要なものですから、口約束でも成立してしまう「契約」とは違って、遺言の残し方については、法律で厳しく定められているものなのです。

そして、その方式は書面とされており、その方式を守らない遺言は全て無効です。

例えば、声を録音テープによって遺言を録音したとしても、スマホで動画を撮影していたとしても、法律では認められず、無効です。

録音テープなどのデータは、改ざんの可能があるという理由からです。

現在、日本国内で有効となる遺言の残し方は書面のみです。

  

そして、この書面にも3つの種類があります。

①自筆証書遺言

遺言者が、遺言の全文・日付・氏名を自書し、捺印した遺言書のことです。

自分で紙に書き記す遺言書のことで、誰でも気軽にいつでも作成が可能です。

そのため、遺言書としては一番多く利用されていますが、書き間違えがあったり、その内容が判然としない場合には遺言書として無効と判断されることがあり、注意が必要です。

 

②公正証書遺言

遺言者の指示により公証人が筆記した遺言書に、遺言者、公証人および2人以上の証人が、内容を承認の上で、署名・捺印した遺言書のことです。

公証役場にいる公証人と呼ばれる人が、法律の規定どおりに公正証書として書類を作成します。

確実に有効な遺言書を残したいときや相続財産の金額が大きい時に主に利用されている方法で、一番確実に遺言を残すことができます。

 

③秘密証書遺言

遺言者が遺言書に署名・捺印の上封印し、封紙に公証人および2人以上の証人が署名・捺印等をした遺言書のことです。

公正証書遺言の無いように加えて封印されることで、遺言内容について公証人に知られずに作成できるため、役人であっても誰にも知られたくない!という場合に利用できますが、あまり利用はされていません。

 

遺産相続に関しては、主に①か②で遺言書を残すことになりますが、①よりも②のほうがはるかに効果の強い遺言書となることはご理解いただけたと思います。

  

なお、吉田様の場合、遺言執行者として、私の働く事務所を指定してくださいました。

あらかじめ遺言執行者を決めておくと、遺言の内容を正確に行う権利を得ることとなります。

この遺言執行者とは、遺言に記載することで指定することできるのですが、指定できるのは、未成年者及び破産者以外のものです。

つまり、相続人を指定することもできますが、基本的には第三者であり、法律知識や事務能力に長けた個人又は法人を指定することがほとんどです。

そして、執行できる内容は相続登記や名義変更ですが、しかも単独でできるのがポイント。

遺産相続では誰かのサインがもらえないから話が進まないという事態が起きがちです。

遺言執行者を指定することで、相続人の勝手な行為を防ぎ、遺言内容の確実な履行を行うことができるというわけです。

 

さて、長女にはビタ一文渡したくない!という吉田様の強い意志を踏まえ、まず我々を遺言執行者として公正証書遺言を作成しました。

そしてその中に『相続人による虐待行為があったために相続排除を希望する』旨を記載しておくことになりました。

もし、吉田様の長女が遺留分を主張してきたとしても、相続排除が認められれば遺留分すらもらうことができなくなります。

なお、相続排除の該当要件としては、暴力がふるう・侮辱をしてくる・著しい非行のあるなどの推定相続人です。

吉田様の長女が該当するかどうかは、また別のお話。

ひとまず、被相続人の死後、我々遺言執行者が家庭裁判所に申立をすることで相続排除の手続きを執行することも可能となったというわけです。

 

最後に、遺言が見つかった場合の手続きスケジュールをまとめておきましょう。

① 遺言を発見する

② 家庭裁判所へ検認の申し立てをする(公正証書遺言は不要)

③ 遺言執行者が就職する

④ 遺言の実現を行う

・財産目録の調製と相続人への交付を実施する

・財産目録に基づく財産管理を行う

・遺言の執行に必要な登記行為を行う

⑤ 遺言執行が終了した旨を相続人に通知する

 

今日は遺言書についてまとめてみましたが、相談にいらした吉田様も、ほっとした顔で帰っていかれたのが印象的でした。

親子であっても、兄弟であっても、遺産相続では揉め事が多くなります。

万が一の際にそのような事態にならないよう、皆様も遺言を残してみてはいかがでしょうか。

 

本日はここまでといたしましょう。