遺産分割協議に全員が集まらない!行方不明者に対する失踪申告と不在者財産管理人の指定

こんにちは!

こうのとりです。

  

東京アラートって一体なんだったんだろうな~と思いつつ、

アメリカの株価暴落を後目に、経済活動再開ってすごい難しいな~と感じる日々です。

早く昔のように戻ればいいなと思いますが、油断は禁物ですね!

  

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【桜はすっかり新緑に変わりました。在宅ワークはニューノーマルになるのでしょうか?】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は大内様(仮称:48才)です。

大内様は先日、お母様がお亡くなりになり、10人いる兄弟姉妹(大家族!)を集めて遺産分割協議をすることになったのですが、久々に全員に連絡をしてみたところ、その中の一人がどうしても連絡がつかず、困ってしまっているとのことで、ご相談に参られました。

たしかに、遺産分割協議については、相続人全員で行うのが原則です。遺産分割協議をするために、故人の戸籍謄本を辿っていくことで相続人を確定していく作業を行うのですが、確定した相続人に連絡をしていくのが、案外骨の折れる作業になります。大内様のように兄弟が多かったり、実は相続の権利がある親族が新たに見つかったりすれば、なおさらです。

しかし、連絡を取ろうとしてもどうしても連絡がつかない行方不明者がいる場合には、どうしたらよいのでしょうか?

 

その場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選定を申し立てることができます。

任命された不在者財産管理人が、行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加することで、協議を滞りないものとすることができるのです。

なお、申立てにあたっては、不在者財産管理人選定にかかる管理費用について、家庭裁判所に納める必要がありますが、予納金については30~50万円と高額になることには注意が必要です。

 

さて、もし不在者財産管理人を選定して遺産分割協議を行った場合、その後行方不明者が一向に現れなければ、第3者である不在者財産管理人が分割された遺産の管理をし続けなければなりません。これでは、不在者財産管理人にリスクが多すぎます。

このような状態を回避する方法として、行方不明者の遺産相続分は少なく配分しておいて他の相続人が一時的に預かり、もし行方不明者が戻ってきた場合に、預かっていた遺産を受け渡すという帰来時弁済型遺産分割の方法が利用されることがあります。

もちろん、遺産を預かる相続人に関しては、使い込みを避けるためにも、家庭裁判所に対して自身の資力が十分にあることを証明しなければなりません。

 

また、行方不明者である相続人が生きているかどうかも分からない場合には、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てるという方法もあります。

この申立てによって、行方不明者の消息不明となってから(最後の連絡など)7年が経過している場合に限り、失踪宣告がなされ、行方不明者が亡くなっているとみなしてもらうことができるのです。

ちなみに、震災などに被災して行方不明者となった場合(危難失踪)には、危難が去ったときから1年の経過にて失踪宣告の申立てが可能となる特例もあります。

なお、当然ではありますが、失踪宣言の申立てができるのは利害関係人に限られ、行方不明者の配偶者や相続人、財産管理人、受遺者など、失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者とされています。

 

失踪宣告を経た遺産相続について注意すべき点は、その行方不明者に子どもがいる場合、その子が代襲相続人となる点です。ただし、行方不明者が亡くなったとみなされた日が、被相続人が亡くなる前であれば、そもそも行方不明者は相続人でなかったことになるため、代襲相続は発生しません。

また、行方不明者が見つかって失踪が取り消された場合には、すでに行った遺産分割は取り消されないものの、受け取った遺産が残っているのであれば、その範囲内で遺産を返す必要があります。

なお、失踪宣告の手続きには少なくとも半年の時間がかかるため、相続税の申告期限(被相続人の死後10ヶ月以内)に間に合わない可能性が十分にあります。この場合、申告期限の延長だけでは不十分になるケースが多いため、一旦は不在者財産管理人を選任して申告期限までに相続税申告を済ませておき、失踪が宣告された後で改めて修正申告をすることになります。

 

大内様は、不在者財産管理人と失踪宣告の併用で問題を解決することになりましたが、遺産分割協議については、どんな状況であってもすんなりいくことはないなぁと、再認識させられたのでした。

 

本日はここまでといたしましょう。