こんにちは!
こうのとりです。
今回は前回の続きで、子どもなしの夫婦が遺言書を残こすべき理由などについて見ていきたいと思います。
配偶者と親に財産を相続させたいときの遺言書の書き方
次に、配偶者と親に財産を相続させたいときの遺言書の書き方について確認します。
以下は記載例のひとつです。
これはあくまでも記載例なので、相続財産の状況に合わせて遺言書を作成してください。
配偶者に残す財産以外は遺産分割協議をしてほしい場合の遺言書の書き方
次に、配偶者に残す財産以外は遺産分割協議をしてほしい場合の遺言書の書き方について見てみましょう。
先述の通り、まず
配偶者に残したい遺産を特定して記載します。
そして残りの財産につき、遺産分割協議をしてほしい旨を記載します。
なお、遺言で配偶者に残すべき旨を指定されなかった財産につき、法定相続分通りに相続することもできます。
子どもがいない夫婦が遺言書を作成するときの注意点
子どもがいない夫婦が遺言書を作成するときの注意点は3つあります。
一つ目は夫婦それぞれに遺言を書くこと、2つ目はできるかぎり公正証書遺言を用いること、3つ目は遺言執行者を定めておくことです。
夫婦それぞれに遺言を作成する
まず、1つ目の注意点を確認します。
夫婦共同遺言の禁止
子どもがいない夫婦が遺言書を作成するときに、まず注意しなければならないことがあります。
それは、夫婦で1通の遺言書を作成しても、その遺言は無効になってしまうということです。
遺言は遺言者一人一人の意思に従って書かれなければなりません。
夫婦で同じ紙に書かれると、一方の本意ではないのに、一方の顔色をうかがって書かなければならない場合もあるためです。
そこで民法により、遺言は2人以上の者が1通の紙に書くことができないと定められていて、「夫婦共同遺言の禁止」といわれています。
一方だけの遺言書では足りない
夫婦のどちらかのみが遺言書を書かないと、遺言書を書かなかった方が先に亡くなった場合、先述したようなトラブルが起きるかもしれません。
子どもがいない夫婦は、夫婦各1通ずつ遺言書を作成してください。
遺言執行者を定める
子どもがいない夫婦が遺言書を作成するときは、遺言執行者を定めましょう。
遺言執行者を定めない遺言書も無効ではありませんが、信頼できる人に遺言の執行を頼んでおかないと、相続手続きが円滑に進まない可能性があります。
遺言執行者の立場と任務
遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の権限を与えられています。
遺言執行者が定められていれば、相続人の一人が遺言を履行したり、遺言執行を妨げたりすることはできません。
遺言執行者は、遺贈、遺産分割方法の指定、株式や不動産の名義変更手続きなどを行うことができます。
また、遺言による認知、廃除の手続きについては遺言執行者しかできません。
その他
遺言執行者についてのその他のルールも確認しておきましょう。
遺言執行者についてのルール
第三者への任務の依頼 | 原則として自己の責任で第三者に遺言執行させることができる |
---|---|
遺言執行者が複数いる場合 | 原則として、遺言執行者の過半数で決する ただし、保存行為は単独で可 |
遺言執行者の報酬の発生 | ・遺言に定められているとき ・家庭裁判所が定めたとき |
公正証書遺言を利用する
最後に、遺言書の種類と形式につき、どの遺言書が一番安心か見ておきましょう。
遺言書の種類と信用度
先述したとおり、一般的に利用される遺言書には自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言がありますが、それぞれの特徴を見ておきましょう。
特に、証拠力や改ざんの恐れにつき確認します。
自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の比較
証拠力 | 改ざんの恐れ | |
---|---|---|
自筆証書遺言 | 低い | 高い |
秘密証書遺言 | 低い | 高い |
公正証書遺言 | 高い | 低い |
公正証書遺言は、公証人が作成する遺言書です。
したがって公正証書遺言は公文書なので、自筆証書遺言、秘密証書遺言よりも高い証拠力を有します。
また、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されるため、改ざんの恐れが低い遺言書です。
これに対して自筆証書遺言や秘密証書遺言は、遺言者や知人や親族が保管しているので、改ざんされる恐れがあります。
また、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、発見することすら難しいかもしれません。
公正証書遺言は、生前に夫婦で公正証書遺言を作成しておけば、遺言者には謄本が渡されます。
公証役場に確認することもでき、発見されずに終わってしまうこともないでしょう。
なお、公正証書遺言は改ざんの恐れがないことから、遺言者の死後、家庭裁判所の検認を受ける必要はありません。
この点も公正証書遺言は子どもがいない夫婦が作成する遺言書としておすすめの理由です。
遺言書の検認の要否
自筆証書遺言 | 検認が必要 |
---|---|
秘密証書遺言 | 検認が必要 |
公正証書遺言 | 検認は不要 |
遺言書に書ける事項
民法では、遺言書に記載できる事項を定めています。
民法で定められていない事項を記載することはできますが、法的な効力はありません。
法定記載事項以外の事項を「付言事項」と言います。
自分亡き後の家族への思いなど、付言事事項として書く方が増えていますが、法定記載事項との差がわかりつらいのではないでしょうか?
何が法定記載事項で付言事項なのか、公正証書遺言を利用すれば公証人に確認できるので安心です。
なお、遺言書の法定記載事項の中で重要な事項は、相続分の指定、遺産分割方法の指定と分割の禁止、遺贈、廃除の手続きなどです。
公正証書遺言作成の注意点
公正証書遺言は2人以上の証人と、公証人の手数料などの費用がかかります。
公正証書遺言のポイント
証人 | 証人2人が必要 (推定相続人や受遺者、これらの配偶者および直系血族は証人になれない) |
---|---|
費用 | 公証人の手数料(財産額による)がかかる |
公正証書遺言の証人には欠格事由があるので、公証役場に依頼する前に、弁護士に相談して弁護士などに証人になってもらうとよいでしょう。
公正証書遺言作成の費用は、他の遺言書よりもかかります。
しかし、公正証書遺言の信頼性や改ざんの恐れがないというメリットを考えれば、費用をかけても損はないでしょう。
ここまでで説明した公正証書遺言と異なり、自筆証書遺言は遺言者が、その内容、日付および氏名を自書し、これに押印しなければ効力がありません。
財産目録を除き、パソコンやワープロで作成することはできず、作成し辛いのが自筆証書遺言です。
また、秘密証書遺言は、遺言書への遺言者の署名・押印、証書に用いた印による遺言書の封印が必要です。
このように、自筆証書遺言と秘密証書遺言は何か要件を満たさない可能性が高いので、できるかぎり公正証書遺言作成をおすすめします。