「相続登記の義務化」以外の予防的アプローチと相続放棄

こんにちは!

こうのとりです!

 

そうえいば、コロナ禍で業務量が格段に減った航空会社の添乗員などが、他業種のコールセンター業務などに出向するというニュースがありましたよね。

なりふり構わずに会社を守ろうとする従業員の皆様には頭が下がる一方で、SARSやMARSなどの経験を踏まえて、パンデミック下でも生き抜く方法を企業は検討してこなかったのかな?という疑問や、それをしてしまうと、非正規雇用者の働き口が単純に減少することになるのでは?という懸念も出てきます。

立場が変われば正義も変わると思う今日この頃です。

 

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※画像はイメージです

 

さて、前回は所有者移転登記が任意であるというルールに、少子高齢化という社会問題が加わることで、地方の空き家問題が所有者不明のまま残されるというケースをご説明しましたが、もう1つの良くあるケースも記載しておきます。それは、財産相続時に遺産を特定できないケースです。

 

例えば、配偶者に先立たれ、地方の実家に一人暮らしをしていた父親が、突発的に他界してしまったとします。その後の遺産分割については、まずは父親の資産の確認と、相続人を特定することから始まるわけですが、相続人に関しては戸籍謄本をたどることで特定しやすいものの、資産については生前から相続人が把握しているとは限りません。むしろ「お父さん、遺産ってどこにどれだけあるの?」と聞くほうが、デリカシーに欠けると思われる方も多いわけです。

突発的な他界の場合、実家で通帳や金庫などを確認しながら1つ1つ探していくことになりますが、ここで、登記されていない不動産が存在すれば、その存在に気付く術がありません

 

もちろん、遺産分割時に見落とされたとしても、固定資産税の納付通知が実家に届いたり、その土地を購入したい人が名義を調べて交渉しに来るなどでで、知りえなかった遺産に気付くこともあります。

しかし、その土地が山林であった場合など、土地の評価額が安いために非課税対象だったり、そもそも需要が少ない土地である場合にはその遺産に気付くタイミングが無く、長い年月が過ぎていることも多くあります。結果的に、その遺産は、誰にも気づかれることのない所有者不明土地となってしまうわけです。

 

さて、主たる予防的アプローチとして「相続登記の義務化」を取り上げましたが、それ以外にも「登記名義人の死亡事実の公示」「名称・住所変更登記の申請義務化」「相続等により取得をした土地所有権の国庫帰属制度」など、多くの予防的アプローチが講じられる予定です。

「登記名義人の死亡事実の公示」でより多くの方に知らしめ、「名称・住所変更登記の申請義務化」で正しい登記情報を残す、そして「相続等により取得をした土地所有権の国庫帰属制度」で不要な土地は無理に管理をしたり固定資産税を払う必要もなく、国に返すという内容です。

 

注意したいのは「国庫帰属制度」の承認要件が厳しく安易に所有権を手放すことができない点です。たとえば、土地の上に建物がある場合や、通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地など、様々な制約があります。

本来は、不要な遺産を放棄したい場合には相続放棄の手段を検討しますが、この手段は財産の全部を放棄しなければなりません。つまり、自分の都合の良い資産だけ相続するということは許されないのです。

万が一、遺産分割協議や相続が終わってから新しい資産が見つかり、それを手放したい場合には、売却か寄付しかありません。売却の需要がないような土地であれば寄付を検討することになりますが、寄付だとしても譲渡税がかかることには注意が必要です。

 

本日はここまでといたしましょう。

次回は、問題解決的アプローチについて、まとめていきます。