相続の盲点、二次相続を考える

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスのせいとはいえ、ここまで株価が暴落するのを目の当たりにすると、さすがに恐怖心が出てきますね・・・。

アメリカのダウ平均は高値から10,000ドル以上も下がって、トランプ大統領就任時と同じ株価になってしまったとか。

今年はアメリカの大統領選挙がある中で、今まで株価をけん引してきたトランプさんにとっては厳しい展開になりそうですが、とにもかくにもコロナウィルスの終息を願うばかりです。 

 

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【佐渡でトキに遭遇しました!】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は二宮様(仮称:50才)です。

二宮様は先日旦那様を亡くされたのですが、旦那様の遺産相続について相談にいらっしゃいました。

というのも、配偶者が相続税を大幅に控除されるという話を親戚から聞き、どのような制度が知りたい、ぜひとも活用したい!とのお話でした。

たしかに、相続税に関しては配偶者への特例があり、配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円(もしくは法定相続分)までは、配偶者には一切相続税がかかりません。

しかし、そこには二次相続の落とし穴があるのです。

 

さて、そもそも相続税が課税されるケースはごく稀といってよいでしょう。

2018年の統計では死亡者に対する相続税の課税件数割合は8.5%となっていますが、これは2015年に相続税の税制が改正されたことによるもので、それ以前は4%程度でした。

なぜここまで相続税が課税されるケースが少ないかといえば、そもそも相続税の基礎控除額が大きいことに起因しています。

現在の税制における相続税の基礎控除額は「3,000万円」に「600万円×法定相続人数」を加算したもので、たとえば奥様と子ども2名が相続人となる場合には、「3,000万円+600万円×3=4,800万円」まで基礎控除とされるのです。

4,800万円相当の遺産が残されている家族なんて、そんなにいないと思いませんか?

結局、遺産が基礎控除額内であれば無税となるので、実際に相続税を課税されるケースが1割未満に収まっていることになります。

 

今回ご相談にいらした二宮様の場合は2人の子どもがいらっしゃったため、基礎控除額としては4,800万円まであったのですが、旦那様の遺産が1億円ほど残されており、基礎控除額をオーバーしてしまうことが明白でした。

そんな時に、配偶者の控除が1億6,000万円まであると聞いて、相談をしにいらっしゃったのですが、もちろん、この控除をフル活用することは可能です。

つまり、配偶者である二宮様と2人の子どもで話し合い、1億円の遺産を全て二宮様が相続することで、全額に対して無税とできるのです!

 

しかし、もしその後、二宮様が亡くなった場合、どうなるのでしょうか。

1億円の遺産がそのまま残っていたら、結局は2人の子どもがその遺産を相続することになります。

被相続人の配偶者が相続することを一次相続とすれば、これが二次相続です。

 

さて、一次相続で、配偶者控除をフル活用し、遺産の全部を配偶者である二宮様が相続した場合と、通常の相続をした場合で、シミュレーションをしてみましょう。

一体どれくらい差が出るのでしょうか。

 

まず、一次相続で配偶者控除をフル活用した場合、一次相続時にかかる相続税は、もちろん1億6,000万以内になりますので、0円です。

しかし、二次相続ではそのまま1億円を2人の子どもが相続することになるため、「1億円-基礎控除額(3,000万円+600万円×2)=5,800万円」が課税対象となり、法定相続分の課税対象額は子どもそれぞれが2,900万円となります。

 

一方、一次相続で法定相続分通り(母が2分の1、子どもが4分の1ずつ)相続をした場合、「1億円-基礎控除額(3,000万円+600万円×3)=5,200万円」が遺産に対する課税対象となり、法定相続分で課税価格を求めると配偶者が2,600万円、子どもはそれぞれ1,300万円ずつが課税対象額となりますが、配偶者控除をここで利用することになるので、配偶者分は無税です。

そして、二次相続については、配偶者が相続した5,000万円が遺産となるため、「5,000万円-基礎控除額(3,000万円+600万円×2)=800万円」が課税対象となり、二次相続については子どもはそれぞれ400万円ずつが課税対象額となります。

一次相続と二次相続を合算すると、課税対象額は子どもそれぞれが1,700万円となり、一次相続で配偶者控除をフル活用した場合よりも安く済むことになるのです。

 

このように、目先の利益だけを考えて配偶者控除を利用してしまうと子どもが損をすることもあるため、遺産の相続については自分の後の世代のことも考えながら、どのような方法を取るべきか検討すべきといえるでしょう。

ちなみに、二宮様はこの話を説明したところ、通常通りの相続をすることに決めたとのことでした。

 

本日はここまでといたしましょう。