余命宣告とリビングニーズ特約

こんにちは!

こうのとりです。

私の父親は肺がんですでに他界しているのですが、間質性肺炎という診断を受けた際に、余命5年と言われ、本当に5年目に亡くなってしまいました。

父親の意思を尊重し、抗がん剤治療は受けずに、ホスピスでの治療を選択したのですが、他界する1週間前まで実家で過ごしてましたし、ほとんど苦しまなかったと思います。

もっと長く生きたかったとは思うけど、自分の意思とは別に事故などで死んでしまう人がいる中、余命宣告があったことでその後の5年間はいろいろな心構えができたともいえます。

もちろん、本人の気持ちは今となってはわかりませんが・・・。

少ししんみりした出だしになってしまいましたが、今回は余命宣告に関わる内容なので、記載させていただきました。

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年始には父の墓参りに行ってきました。 

 

 

皆様は生命保険のリビングニーズ特約については、ご存知でしょうか?

リビングニーズ特約とは、被保険者の余命が6か月以内と医師から判断された場合に、死亡時に受け取ることができるはずの死亡保険金の一部または全部を、生きている間に受け取ることができる特約です。

この特約によって生前に受け取った給付金については、自由に使うことができます。

高額になるであろう医療費に使うこともできますし、亡くなっていく方の意思を尊重した金銭の使い方もできるのです。

このように、個人を尊重したメリットの多いリビングニーズ契約ですが、税金面での扱いはどのようになるのでしょうか?

 

そもそも死亡保険金については、被保険者が亡くなった後で受け取ると、契約内容に応じて以下の税金のいずれかが課税されることになります。

① 契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じ場合、所得税

② 契約者(保険料負担者)は被保険者で保険金受取人が別の人の場合、相続税

③ 契約者(保険料負担者)が被保険者でも保険金受取人でもない場合、贈与税

 しかし、リビングニーズ特約で受け取るお金については、生前給付金であり、死亡保険金ではないため、税金の取り扱いも異なってきます。

 

まず、リビングニーズ特約を使って生前給付金を受け取った場合、受給者が所得税を支払うことはありません

これは、もともと疾病や重度障害になった際に支払わられる保険金が非課税であることに起因するものです。

生前給付金は、死亡保険金の前払いと言い換えることができるかもしれませんが、受け取りの条件が余命半年以内となっており、死亡が給付条件になっていません。

よって、上記の疾病や重度障害になった際に支払われる医療保険金が非課税となることと同等の扱いを受けることができるのです。

 

では、相続税の扱いはどのようになるのでしょうか。

実は、使いきれなかった現金があるかどうかが肝心で、生前に受け取って余っていた現金(預金)は、単なる相続財産として扱われます。

よって、相続税の課税対象になるというわけです。

 

ここでの注意点は、生前給付金に対しては、死亡保険金の非課税枠が適用されないことです。

生命保険などで、死亡した際に受け取ることができる死亡保険金については、特別な非課税枠が用意されています。

もし、働き盛りバリバリのお父さんが急逝してしまったら、残された家族はこの保険金が唯一の頼りとなります。

この時に、全てを課税対象にするには酷ではないかというお話。

しかし、生前給付金として受け取った場合には、この非課税枠(「500万円×法定代理人数」)の適用を受けることができないということになります。

 

これら様々な条件を踏まえたとき、余命6ヶ月の段階で生前給付金をもらうほうがいいのか、それとも死亡保険金として相続人に残すべきなのか、悩ましいところです。

どちらが良いかについては、様々な条件次第と言えるのですが、いくつかのケースに分けて説明していきます。 

① 相続財産が基礎控除の範囲内である

相続財産が基礎控除額の範囲内であれば、そもそも相続税はゼロなので、生前給付金としてもらっても死亡保険金としてもらっても問題はありません。

② 死亡保険金として受け取った

この場合は、死亡保険金の非課税枠が適用され、その範囲を超えた部分で相続税が課税されることになります。

③ 生前給付金を全額使い切った

例えば、死亡保険金が5,000万円だった場合に、2,000万円を生前給付金として受け取り、全額使い切ったとしまます。

残りの3,000万円に対しては、死亡保険金の非課税枠が適用され、その範囲を超えた部分で相続税が課税されることになります。

ただし、相続税については基礎控除額が「3,500万円+500万円×法定相続人数」ありますので、死亡保険金以外の財産を合わせて基礎控除額内であれば、相続税は課税されません。

④ 生前給付金を使い切れなかった

例えば、死亡保険金が5,000万円だった場合に、2,000万円を生前給付金として受け取り、1,000万円を使いきれずに残してしまったとします。

この場合、死亡保険金として受け取る3,000万円に対しては、死亡保険金の非課税枠が適用され、その範囲を超えた部分で相続税が課税されることになります。

一方、残った1,000万円は現金としてそのまま相続税の課税対象となります。

 

このように、リビングニーズ特約で受給した生前給付金については所得税が非課税であり、使いきれなかった部分については財産として相続税がかかる(かつ死亡保険金のような非課税枠はなし)ことには注意が必要となります。

法定相続人数や保険金の金額、全財産の金額によっては、課税対象額が大きく異なってきます。

我々の存在価値の1つでもありますが、これらを踏まえて、様々なパターンを検討しつつ、一番お得なお金の受け取り方を考えるべきです。

これが、正攻法の節税ともいえます。

 

今日はここまでにしておきましょう。