民法大改正による不動産相続への影響とは!?

こんにちは!

こうのとりです。

 

 

現在外出制限真っただ中ですが、最近外出したのはいつだろうな~と思っていると、2月初旬にイベント参加した時以来、まともな外出をしていないことに気が付きました(汗)

基本的に出不精だし、勉強もあるしってことで納得なんですが、過去の写真を眺めていたら「アルパカ」を発見!

一緒に行ったとある女性から「あっちにカピバラがいるよ!」といわれ、他の男性からは「ヤギがいるから見に行ったら?」といわれ、結局いたのは「アルパカ」だったという・・・ややこしや・・・。

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【カピバラでもヤギでもなく、アルパカです】

 

さて、今回はお客様の案件ではありません。

相続法に関する近年の大きな出来事について、まとめておきたいと思います。

その大きな出来事とは、およ40年ぶりの改正といわれる民法の大改正です。

 

相続法に関しては2018年7月に改正され、その施行が段階的におこなわれていますが、コロナショックの渦中において、4月1日にも施行された内容もあるのです。

こういう改正や特例措置があるから、税理士資格は勉強が大変で・・・という愚痴はさておき。

 

主な改正内容(施行日)は以下のとおりです。

1、配偶者への優遇措置(2019年7月1日、2019年4月1日)

2、遺言に関する条件緩和(2019年1月13日、2020年7月10日)

3、介護(特別寄与)に応じた額の金銭要求(2019年7月1日)

4、預貯金の払戻し制度の新設(2019年7月1日)

5、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ(2019年7月1日)

 

1、配偶者への優遇措置

配偶者への優遇措置としては、以下2点の改正です。

① 居住用不動産の贈与等に関する優遇(2019年7月1日より施行)

② 配偶者居住権の新設(2019年4月1日より施行)

 

これらの優遇措置がなされた背景について考えてみましょう。

たとえば、地方の実家に住む父と母、都内に住む息子の3人家族だったとしましょう。

父が他界した場合、相続の権利は母と息子に半分ずつの分配になります。

もし実家の不動産に3,000万円の価値があり、預貯金が1,000万円あったとすれば、どのように遺産を分配すればよいのでしょうか。

本来は2,000万円ずつの相続になるはずですが、実家に住み続けたい母が実家を相続すれば3,000万円の相続、息子は現金1,000万円のみ相続することになり、息子の相続分が1,000万円足りません。

すると母は、息子に対して不足分を補わなければいけません。

このような事態を解消するために新設されたのが、①と②の措置です。

 

①についてはすでに施行済ですが、婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産の遺贈又は贈与については、遺産分割の際に相続財産としてみなさないという措置です。

本来、生前贈与は遺産の先渡しという取り扱いでした。

そのため、愛する妻のためにと生前贈与をしたとしても、遺産分割の際には結果的に相続の対象となってしまいます。

 

先ほどの例でいえば、もしマイホームの持ち分を半分生前贈与していたとすれば、今回の措置によってマイホームに関する相続1,500万円分と現金のみが遺産相続の対象となります。

結果として、2,500万円分を半分ずつ相続するため、各自1,250万円の相続となり、息子に支払うべき金額を1,000万円から250万円までおさえることができました。

 

そして、先日施行されたのが、②の配偶者居住権の新設です。

こちらは、配偶者が引き続きマイホームに住み続けることができる措置になります。

この配偶者居住権については、相続発生時に自宅に住んでいた配偶者にだけ認められ、かつ、登記が必要な措置です。

 

先ほどの例でいえば、生前贈与をしていても息子へ現金補填をしなければいけないため、問題が全て解決したとはいえない状態でした。

しかし、配偶者居住権の新設により、問題は全て片付きます。

これは、所有権を配偶者のために分離するという、非常に大きな措置です。

この措置によって、本来相続するはずの3,000万円相当の所有権を、配偶者居住権1,500万円と負担付き所有権1,500万円とに分割することができます。

そして、相続の際には、それぞれの所有権を相続するのです。

 

つまり、母は配偶者居住権1,500万円と現金500万円を相続し、息子は負担付き所有権1,500万円と現金500万円を相続することになります。

母の負担が相当軽くなったといえるでしょう。

 

2、遺言に関する条件緩和

遺言に関する条件緩和についても、以下2点の改正です。

①自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月13日より施行)

②遺言保管制度の新設(2020年7月10日より施行)

 

①については、自筆証書遺言のうち財産目録はパソコンで作成できるようになったというもので、なんだか時代に追いついていない気もしますね・・・。

②については2020年7月10日からの施行ですが、法務局で遺言者の自筆証書遺言を保管してもらえることになるため、自宅で保管していて紛失したという事態を防ぐことができます。

 

3、介護(特別寄与)に応じた額の金銭要求

こちらもよくある話ですが、面倒見るといっていた相続人の肉親が面倒を見ず、他の親戚が面倒をみていたりというケースに関して、金銭を要求できるというものです。

詳細は割愛しますが、相続人ではない親族が被相続人に特別寄与した場合、相続の恩恵を特別寄与料として受け取ることができるようになりました。

すでに施行済の法律です。

 

4、預貯金の払戻し制度の新設

こちらも遺産相続のあるあるですが、遺産分割が終了するまでは預貯金に関しても勝手に使用ができないため、葬儀を執り行う相続人が自己負担で建て替えるケースが多く、負担となっていました。

そこで、被相続人の葬儀を行う相続人に関しては、単独であっても、被相続人の預貯金の一部を払戻せるようになりました。

こちらも施行済の法律です。

 

5、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ

遺留分は、最低限保証された相続人の取り分です。

この遺留分の存在によって、本来は避けるべき共有不動産が存在することになっていました。

共有不動産は、処分が厄介になるだけではなく、特に会社の事業承継の足かせになっていました。

このような事態を避けるべく、共有不動産となりうるケースにおいては、遺留分に関して現金のみが請求できるようになりました。

「減殺」ではなく「侵害額」になったのですね。

こちらも施行済の法律です。

 

 

相続に関するこれらの措置の背景には、もちろん遺産相続問題があり・・・。

肉親であっても、骨肉の争いに発展する可能性はあります。

いくら仲が良かった肉親であってもです。

このような事態になる前に、遺産に関しては真剣に、かつ被相続人が健在な時から話し合いの場を設けておくべきといえるでしょう。

 

本日はここまでといたしましょう。