相続不動産が古家だった場合の解体と滅失登記、譲渡の特例について

こんにちは!

こうのとりです。

 

今年は実家への帰省を自粛しました。

親としては顔が見たいという気持ちはあるでしょうけど、万が一のことがあれば病気を持ち帰ることになってしまいますし、田舎ではまだまだ誹謗中傷の可能性もあることを考えれば止むをえずでした。

しかし、ガンを患っている愛犬には、会いに行きたいな~と葛藤の日々です。

 

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【人から譲り受けたミニチュアダックスですが、母親のことが大好きです】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は飯野様(仮称:55才)です。

飯野様は遺産分割協議にて、遠方のご実家を相続分として所有することになったのですが、傷みのあるご実家をどのように処分しようか迷われているとのことで、滅失登記や売却した場合の譲渡所得の控除について相談に参られました。

 

生活圏ではない遠方に所在するご実家を相続した場合には、その活用や処分が難しく感じられることでしょう。思い出の詰まったご実家を容易に売却することには躊躇いを感じるでしょうが、誰も住むことの無い古家を放置することも、それなりのリスクを伴います。

方法としては、そのまま売却するか、古家のみ解体して土地を売却するか、通える範囲であればリノベーションなどで古家自体を利活用し居住するか、賃貸させるか、選択肢は多岐に渡ります。

もし、これらの判断に迷う時には、それぞれの方法について、時流に合わせた特例措置が講じられているかどうか調べてみると良いでしょう。

 

まず、古家の解体については自治体からの補助金制度などが整いつつありますが、あくまでも自治体独自の制度なので、要件や支給上限も様々です。

そして、古家を解体して建物が建っていない土地に関しては、固定資産税が高くつく(建物が建っていれば固定資産税が最大6分の1に減額される)というデメリットもある一方で、昨今の空き家問題対策として、自治体によって特定空き家に指定された場合には、固定資産税の減額が適用されないおそれもあり、まさに一長一短の状況といえるでしょう。

ちなみに、古家の解体の費用については、地域差があるものの木造で坪3~5万円、鉄筋コンクリートであれば坪6~8万円の自己負担となるため、30坪程度の古家であっても100万円~200万円の費用が発生することになります。補助金の上限額によっては、自己負担せざるを得ないでしょう。

また、古家の解体については、複数の業者に見積もりをとって依頼すべきですが、見積もりの際の現地調査や解体前の近隣への挨拶、電気やガス、水道などのライフラインの撤去依頼などもありますので、遠方に実家があった場合には、その都度、足を運ぶ必要性が出てくることは念頭に置くべきでしょう。

 

売却については、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」があります。一定の要件に当てはまる場合に関しては、譲渡所得の金額から最高3,000万円までを控除することができるという優遇制度です。

要件としては、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったことなど、まさに「空き家となった遠方の実家の相続」への特例なのですが、これは我が国で社会問題として深刻となりつつある空き家の増加への対応策ともいえるものです(現在、令和5年12月31日までの期限付き)。

古家を解体して更地にしてから売却する場合には必ず売却できるという保証がないまま解体費用を負担することになるため、古家付きのまま売却をしたり、リノベーションをしたのちに売却をするという方法も検討しつつ、控除の特例を活用できるようにしましょう。

 

なお、古家を解体した後、土地の売却を検討している場合には、建物滅失登記を忘れずに行わなければなりません。建物を解体工事した場合には、1ヶ月以内に建物滅失登記を行うことが定められているのです。これをしなかった場合には過料の罰則規定もあります(現実的には徴収されることはほとんど無いようですが・・・)。

そして、古家の登記がされたままの土地に関しては、新しい建物が建築された場合に、表示登記ができません。新築の表示登記ができなければ、買主が住宅ローンの融資に行き詰まるなど、大な迷惑をかける可能性もありますので、古家の解体後には必ず、建物滅失登記を行いましょう。

 

飯野様は、良かれと思って古家の実家を相続しましたが、ここまで処分に窮するとは思っていなかったと、心情を吐露されていました。ご自身も高齢化していく将来を見据えれば、いずれは管理が行き届かなくなることも、十分にご理解されたようです。

 

本日は、ここまでといたしましょう。