不動産売却時の節税方法について

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスの影響で、緊急事態宣言が出されました。

経済への悪影響からリーマンショックやブラックマンデーと比較されますが、

それよりもスペイン風邪の再来かもしれません。

ともすれば100年に一度の出来事です。

当時は医療がそこまで発達していなかったので、

日本での死者も38万人にのぼったそうです。

人の流れが止まると、お金の流れが止まります。

しかし、今は辛抱でしょうね。

自分のせいで誰かの大切な人をあやめるわけにはいかないのです。

 

さて、3月下旬に某インターネットショッピングサイトで、「マスク」を買いました。

30枚で1,680円なので、1枚55円ですか。

まぁこのご時世で妥当かなぁと思い。

届いたら中国製でした。しかも簡素な袋に入って。

これは現地で作ったものを高く売ってるだけでしょうけど、

マスクを買い占める転売屋だけはちょっと許せないですよね~いかがなものか、です。

 

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【一応使えそうなマスク】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は城之内様(仮称:40才)です。

城之内様はお父様からの遺産のうちの1つであるご実家(不動産)の処分について頭を悩ませておりました。

相続をしたものの、遠方のため使い道が無く、管理もままならないどころか、このままだと、ただただ毎年固定資産税を支払うことになりそうだというのです。

そこで、不動産の売却を検討しているが、売却時に税金がどれくらいかかるのか、あらかじめ知っておきたいということでした。

 

確かに不動産を売却する際には、様々な税金がかかります。

ただし、実際には必ずかかる税金と、状況に応じてかからない税金とに分けることができます。

 

必ずかかる税金

印紙税、登録免許税

状況に応じてかからない税金

譲渡所得税、住民税(+復興特別所得税)

 

それぞれの税金について、解説していきましょう。

1、印紙税

不動産売買契約書に貼りつける収入印紙です。

契約金額によって、貼りつけなければならない印紙の金額は異なります。

なお、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成される不動産の譲渡に関する契約書については、軽減措置が適用されています。

不動産の売買としてメジャーである価格帯の印紙税は以下のとおりです。

500万円超~1,000万以下・・・5,000円(本来10,000円)

1,000万円超~5,000万以下・・・10,000円(本来20,000円)

5,000万円超~1億円以下・・・30,000円(本来60,000円)

 

2、登録免許税

いわゆる登記のための代金です。

なお、不動産売買に関わる登記は主に3種類です。

抵当権抹消登記は住宅ローンが残っている場合、住所変更登記は売主の現在の住所や氏名が登記簿上の住所と異なる場合などに必要です。

抵当権抹消登記(売主)不動産の数×1,000円(+司法書士への報酬)

住所変更登記(売主)不動産の数×1,000円(+司法書士への報酬)

所有権移転登記(買主負担のため割愛)

 

3、譲渡所得税および住民税(+復興特別所得税)

不動産の売買金額に固定資産税などの清算金を加算した金額(譲渡収入金額)から、不動産の取得費および譲渡にかかった費用を差し引いた残りの金額に対して課税される国税です。

 

なお、城之内様のケースのように、ご実家の売却に際して取得費がわからない!ということもあります。

そのような場合には、譲渡収入金額の5%とみなされます。

 

また、譲渡にかかった費用に関しては、以下の項目が該当します。

・仲介手数料
・登記費用
・印紙税
・立退料
・建物の取壊し費用や建物の損失額
・測量に必要となった費用
・買主変更のため支払った違約金
・借地権を売る場合の名義書換料
・資産の維持や管理のためにかかった費用など

 

ポイント!

城之内様のケース(遠方にある空き家を売買する場合)には、特別な控除が適用されます!

これは、少子高齢化や過疎化による空き家問題を解消しようとする政府の試みでもあります。

なお、空き家問題とは、空き家が放置されることによる倒壊などの危険管理、景観を乱す恐れ、悪臭異臭など環境被害の恐れ、犯罪の温床となる恐れなどを指します。

<空き家を売ったときの3,000万円の特別控除の適用条件>

・相続した空き家を取り壊す、もしくは耐震リフォーム後に売却する場合

・旧耐震法の1981年5月31日までに建築された戸建て住宅

・相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかった

・相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る

・売却代金が1億円以下

・平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売却すること

 

条件は厳しいですが、3,000万円の控除によって譲渡所得が0円になる可能性も非常に高いため、ぜひとも有効活用したい特例といえます。

なお、適用を受けるためには各必要書類を添付した上で確定申告が必要となること、延長の可能性はありますが、令和5年12月31日までの適用であることには注意しましょう。

 

 

ちなみに、特例が適用されない場合の税率は、所有期間によって3パターンに分かれています。

① 短期譲渡所得 所有期間が5年以下・・・39.63%

② 長期譲渡所得 所有期間が5年超~10年以下・・・20.315%

③ 長期譲渡所得 10年超・・・金額により14.21%もしくは20.315%

このような棲み分けがなされている理由の1つとしては、不動産の転売によって得た譲渡所得と、マイホームとして住んでいた物件を住み替える目的で得た譲渡所得とを区別することにあります。

 

ただし、先述した空き家に関する3,000万円の特別控除と同様に、マイホームを売却した場合にも3,000万円の特別控除が認められる特例措置があります。

 

 

今回、城之内様は空き家に関する3,000万円の特別控除が無事に適用され、ご実家を円滑に売却できたと喜ばれておりました。

生まれ育ったご実家を手放すということにためらいがあるのは誰もが同じことですが、管理ができずに朽ちていくご実家を見るのもつらいということでしたので、特別控除のあるこの時期の売却は城之内様にとっては最善の選択だったといえるでしょう。

 

 

なお、不動産の売却などを検討される場合には、我々税理士事務所の出番でもありますが、不動産会社からの適切なアドバイスも必要不可欠です。

相続に強い不動産売却の会社に仲介を依頼するというのも、円滑な売却のためには重要といえると感じました。

 

本日はここまでといたしましょう。

相続の盲点、二次相続を考える

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスのせいとはいえ、ここまで株価が暴落するのを目の当たりにすると、さすがに恐怖心が出てきますね・・・。

アメリカのダウ平均は高値から10,000ドル以上も下がって、トランプ大統領就任時と同じ株価になってしまったとか。

今年はアメリカの大統領選挙がある中で、今まで株価をけん引してきたトランプさんにとっては厳しい展開になりそうですが、とにもかくにもコロナウィルスの終息を願うばかりです。 

 

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【佐渡でトキに遭遇しました!】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は二宮様(仮称:50才)です。

二宮様は先日旦那様を亡くされたのですが、旦那様の遺産相続について相談にいらっしゃいました。

というのも、配偶者が相続税を大幅に控除されるという話を親戚から聞き、どのような制度が知りたい、ぜひとも活用したい!とのお話でした。

たしかに、相続税に関しては配偶者への特例があり、配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円(もしくは法定相続分)までは、配偶者には一切相続税がかかりません。

しかし、そこには二次相続の落とし穴があるのです。

 

さて、そもそも相続税が課税されるケースはごく稀といってよいでしょう。

2018年の統計では死亡者に対する相続税の課税件数割合は8.5%となっていますが、これは2015年に相続税の税制が改正されたことによるもので、それ以前は4%程度でした。

なぜここまで相続税が課税されるケースが少ないかといえば、そもそも相続税の基礎控除額が大きいことに起因しています。

現在の税制における相続税の基礎控除額は「3,000万円」に「600万円×法定相続人数」を加算したもので、たとえば奥様と子ども2名が相続人となる場合には、「3,000万円+600万円×3=4,800万円」まで基礎控除とされるのです。

4,800万円相当の遺産が残されている家族なんて、そんなにいないと思いませんか?

結局、遺産が基礎控除額内であれば無税となるので、実際に相続税を課税されるケースが1割未満に収まっていることになります。

 

今回ご相談にいらした二宮様の場合は2人の子どもがいらっしゃったため、基礎控除額としては4,800万円まであったのですが、旦那様の遺産が1億円ほど残されており、基礎控除額をオーバーしてしまうことが明白でした。

そんな時に、配偶者の控除が1億6,000万円まであると聞いて、相談をしにいらっしゃったのですが、もちろん、この控除をフル活用することは可能です。

つまり、配偶者である二宮様と2人の子どもで話し合い、1億円の遺産を全て二宮様が相続することで、全額に対して無税とできるのです!

 

しかし、もしその後、二宮様が亡くなった場合、どうなるのでしょうか。

1億円の遺産がそのまま残っていたら、結局は2人の子どもがその遺産を相続することになります。

被相続人の配偶者が相続することを一次相続とすれば、これが二次相続です。

 

さて、一次相続で、配偶者控除をフル活用し、遺産の全部を配偶者である二宮様が相続した場合と、通常の相続をした場合で、シミュレーションをしてみましょう。

一体どれくらい差が出るのでしょうか。

 

まず、一次相続で配偶者控除をフル活用した場合、一次相続時にかかる相続税は、もちろん1億6,000万以内になりますので、0円です。

しかし、二次相続ではそのまま1億円を2人の子どもが相続することになるため、「1億円-基礎控除額(3,000万円+600万円×2)=5,800万円」が課税対象となり、法定相続分の課税対象額は子どもそれぞれが2,900万円となります。

 

一方、一次相続で法定相続分通り(母が2分の1、子どもが4分の1ずつ)相続をした場合、「1億円-基礎控除額(3,000万円+600万円×3)=5,200万円」が遺産に対する課税対象となり、法定相続分で課税価格を求めると配偶者が2,600万円、子どもはそれぞれ1,300万円ずつが課税対象額となりますが、配偶者控除をここで利用することになるので、配偶者分は無税です。

そして、二次相続については、配偶者が相続した5,000万円が遺産となるため、「5,000万円-基礎控除額(3,000万円+600万円×2)=800万円」が課税対象となり、二次相続については子どもはそれぞれ400万円ずつが課税対象額となります。

一次相続と二次相続を合算すると、課税対象額は子どもそれぞれが1,700万円となり、一次相続で配偶者控除をフル活用した場合よりも安く済むことになるのです。

 

このように、目先の利益だけを考えて配偶者控除を利用してしまうと子どもが損をすることもあるため、遺産の相続については自分の後の世代のことも考えながら、どのような方法を取るべきか検討すべきといえるでしょう。

ちなみに、二宮様はこの話を説明したところ、通常通りの相続をすることに決めたとのことでした。

 

本日はここまでといたしましょう。

 

遺産が不動産しかない!不動産の分割方法

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルス、まだまだ終息しないようですね・・・。

マスクが手に入らないのがほんとに厄介で、一体どこへ消えてしまってるんだ~と思うばかりです・・・。

 

不幸中の幸いとはちょっと違いますけど、毎朝の通勤電車がすごい空いてます!

あんなに押し合い圧し合い、満員電車で通う意味って何なんでしょう?

いろいろ考えさせられる日々です。

 

そういえば、先日佐渡に行く機会がありまして、佐渡金山にも立ち寄ってみました。

世界遺産間近だって聞いてますけど、コロナウィルスが終息しないとお客さん来ないだろうな~。

 

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【歴史を感じる入口でした】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は新藤様(仮称:42才)です。

新藤様は地方に住むご実家にお父様が1人で住まわれていたのですが、先日他界され、遺産を処分することになったそうです。

相続人としては、配偶者であるお母様がすでに他界されていたこともあり、ご本人と弟、妹の3人ですが、この時に判明したのが、お父様の遺産がご実家の不動産以外、特段残されていなかったこと。

そして、皆で集まってご実家を誰が継ぐのかという話になったそうです。

しかし、3人とも実家に遠い場所に住んでいるため、あまり乗り気ではありません。

もし、実家を相続したとすれば、空き家として管理をしなければいけない上、毎年固定資産税を支払う必要があるためです。

そこで、他に何か良い方法は無いかということで、当事務所へ相談にいらっしゃいました。

 

このように、相続する遺産の中に不動産がある場合は、相続人が納得できるような遺産の分割が難しいことがあります。

たとえば、預貯金や株式、車など、様々な遺産があれば、「長男が不動産を相続する代わりに次男は車と預貯金半額、長女は預貯金半額と株式」など、話し合いで分けることは可能ですが、そう簡単に話し合いが進むわけではありません。

そこで、不動産をさまざまな形で分割することで相続することになります。

 

さて、不動産の分割方法としては主に次の4種類の方法がありますが、それぞれメリットとデメリットもあるため、どの方法が適切か、しっかり検討する必要があります。

 

1つ目の方法は、現物分割です。

現物分割は、土地や建物をそのまま相続人に対して分け与える方法です。

複数の不動産を所有していれば、相続人同士の話し合いでどの不動産を相続するか決めることも可能ですが、一つの不動産しかない場合にはその不動産そのものを分割します。

つまり、相続する土地が広くて物理的に分割できるようなら、境界線を確定して、分割したそれぞれの土地を個々の相続人の所有とします。

個々の所有となった後は、自由に利用、また処分ができるようになります。

そもそも分割できるほどの不動産を所有していなければ、採用できない方法です。

 

2つ目の方法は、換価分割です。

換価分割は、不動産売って換金してから、相続人たちで分ける方法です。

現金であれば分けやすいので、一番ポピュラーともいえる方法ですが、相続する不動産によってはなかなか売れなかったり、売れるまでに時間がかかったりすることがデメリットになります。

また、先祖代々受け継がれた実家を売却するのは嫌だという方がいらっしゃれば、採用できない方法になります。

 

3つ目の方法は、代償分割です。

代償分割は、相続人のうち誰かが不動産を相続する代わりに、他の相続人へ不足分を支払う方法です。

換価分割のデメリットである、先祖代々受け継がれた実家を売却したくない場合などは、その方が実家を相続する代わりに、他の相続人へお金を支払うことで解決が可能です。

ただし、不動産の相続人に、支払えるお金の資力がなければ採用できない方法であることは、いうまでもありません。

 

4つ目の方法は、共有分割です。

 

共有分割は、相続人全員で不動産を共有不動産として扱う方法ですが、後ほど紛争につながる可能性が高いため、あくまでも最後の手段として利用される方法です。

たとえば、新道様の例であれば、ご本人と弟、妹のそれぞれが3分の1の権利を持つ不動産として相続することになります。

共有不動産になってしまうと、全員の承諾を得なければ不動産の売却ができない(持ち分の売却は可)など、さまざまな制約があるためおすすめできません。

そして、相続人同士が仲が良ければそれでいいというわけでもなく、相続人が死亡すれば、その配偶者や子どもが相続をすることになり、権利関係がグチャグチャになることもデメリットになります。

 

ちなみに、新藤様については、換価分割の方法を取り、ご実家を売却した上で分割する方法を決断されたようです。

たしかに、自身の思い出もある実家を簡単に手放すことには葛藤もあったようです。

しかし、2015年5月26日に施行された「空家等対策特別措置法」が、新藤様たちの背中を押す要素になりました。

「空家等対策特別措置法」は、倒壊などの恐れのある空き家を減らして、所有者に対して適切な管理を求める法律ですが、この法律によって一定の要件を満たした空き家は、特定空き家として認定されることになります。

もし特定空き家に認定されると、建物が建っている土地へ固定資産税の優遇措置が撤廃されることになるため、固定資産税が6倍になるケースも考えられます。

管理もままならない遠方の実家をそのまま残しておくことがリスクにつながる可能性を考えて、新藤様は実家の売却を決定したようですね。

 

地方の空き家問題は少子高齢化社会でますます深刻になっていきますが、遺産として不動産がある場合には、その遺産が空き家として相続人の負担になる可能性も考え、生前に処分するなり、相続方法を検討しておきたいものですね。

 

今日はこのあたりにしておきましょう。

 

 

余命宣告とリビングニーズ特約

こんにちは!

こうのとりです。

私の父親は肺がんですでに他界しているのですが、間質性肺炎という診断を受けた際に、余命5年と言われ、本当に5年目に亡くなってしまいました。

父親の意思を尊重し、抗がん剤治療は受けずに、ホスピスでの治療を選択したのですが、他界する1週間前まで実家で過ごしてましたし、ほとんど苦しまなかったと思います。

もっと長く生きたかったとは思うけど、自分の意思とは別に事故などで死んでしまう人がいる中、余命宣告があったことでその後の5年間はいろいろな心構えができたともいえます。

もちろん、本人の気持ちは今となってはわかりませんが・・・。

少ししんみりした出だしになってしまいましたが、今回は余命宣告に関わる内容なので、記載させていただきました。

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年始には父の墓参りに行ってきました。 

 

 

皆様は生命保険のリビングニーズ特約については、ご存知でしょうか?

リビングニーズ特約とは、被保険者の余命が6か月以内と医師から判断された場合に、死亡時に受け取ることができるはずの死亡保険金の一部または全部を、生きている間に受け取ることができる特約です。

この特約によって生前に受け取った給付金については、自由に使うことができます。

高額になるであろう医療費に使うこともできますし、亡くなっていく方の意思を尊重した金銭の使い方もできるのです。

このように、個人を尊重したメリットの多いリビングニーズ契約ですが、税金面での扱いはどのようになるのでしょうか?

 

そもそも死亡保険金については、被保険者が亡くなった後で受け取ると、契約内容に応じて以下の税金のいずれかが課税されることになります。

① 契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じ場合、所得税

② 契約者(保険料負担者)は被保険者で保険金受取人が別の人の場合、相続税

③ 契約者(保険料負担者)が被保険者でも保険金受取人でもない場合、贈与税

 しかし、リビングニーズ特約で受け取るお金については、生前給付金であり、死亡保険金ではないため、税金の取り扱いも異なってきます。

 

まず、リビングニーズ特約を使って生前給付金を受け取った場合、受給者が所得税を支払うことはありません

これは、もともと疾病や重度障害になった際に支払わられる保険金が非課税であることに起因するものです。

生前給付金は、死亡保険金の前払いと言い換えることができるかもしれませんが、受け取りの条件が余命半年以内となっており、死亡が給付条件になっていません。

よって、上記の疾病や重度障害になった際に支払われる医療保険金が非課税となることと同等の扱いを受けることができるのです。

 

では、相続税の扱いはどのようになるのでしょうか。

実は、使いきれなかった現金があるかどうかが肝心で、生前に受け取って余っていた現金(預金)は、単なる相続財産として扱われます。

よって、相続税の課税対象になるというわけです。

 

ここでの注意点は、生前給付金に対しては、死亡保険金の非課税枠が適用されないことです。

生命保険などで、死亡した際に受け取ることができる死亡保険金については、特別な非課税枠が用意されています。

もし、働き盛りバリバリのお父さんが急逝してしまったら、残された家族はこの保険金が唯一の頼りとなります。

この時に、全てを課税対象にするには酷ではないかというお話。

しかし、生前給付金として受け取った場合には、この非課税枠(「500万円×法定代理人数」)の適用を受けることができないということになります。

 

これら様々な条件を踏まえたとき、余命6ヶ月の段階で生前給付金をもらうほうがいいのか、それとも死亡保険金として相続人に残すべきなのか、悩ましいところです。

どちらが良いかについては、様々な条件次第と言えるのですが、いくつかのケースに分けて説明していきます。 

① 相続財産が基礎控除の範囲内である

相続財産が基礎控除額の範囲内であれば、そもそも相続税はゼロなので、生前給付金としてもらっても死亡保険金としてもらっても問題はありません。

② 死亡保険金として受け取った

この場合は、死亡保険金の非課税枠が適用され、その範囲を超えた部分で相続税が課税されることになります。

③ 生前給付金を全額使い切った

例えば、死亡保険金が5,000万円だった場合に、2,000万円を生前給付金として受け取り、全額使い切ったとしまます。

残りの3,000万円に対しては、死亡保険金の非課税枠が適用され、その範囲を超えた部分で相続税が課税されることになります。

ただし、相続税については基礎控除額が「3,500万円+500万円×法定相続人数」ありますので、死亡保険金以外の財産を合わせて基礎控除額内であれば、相続税は課税されません。

④ 生前給付金を使い切れなかった

例えば、死亡保険金が5,000万円だった場合に、2,000万円を生前給付金として受け取り、1,000万円を使いきれずに残してしまったとします。

この場合、死亡保険金として受け取る3,000万円に対しては、死亡保険金の非課税枠が適用され、その範囲を超えた部分で相続税が課税されることになります。

一方、残った1,000万円は現金としてそのまま相続税の課税対象となります。

 

このように、リビングニーズ特約で受給した生前給付金については所得税が非課税であり、使いきれなかった部分については財産として相続税がかかる(かつ死亡保険金のような非課税枠はなし)ことには注意が必要となります。

法定相続人数や保険金の金額、全財産の金額によっては、課税対象額が大きく異なってきます。

我々の存在価値の1つでもありますが、これらを踏まえて、様々なパターンを検討しつつ、一番お得なお金の受け取り方を考えるべきです。

これが、正攻法の節税ともいえます。

 

今日はここまでにしておきましょう。

実家を残したければ限定承認

こんにちは!

こうのとりです。

昨日は事務所の大掃除をしたのですが、不要になった書類などを整理するのは本当に一苦労です・・・

それでも掃除が終わると心機一転というか、気持ちを新たに業務に取り組める気がしますね。

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【こちらは夜の浅草です。電気ブランが体に染みます~】

 

さて、今回まとめていくのは限定承認について。 

別の記事で相続放棄について記載すると思うのですが、財産と借金を比べて相続を放棄すべきかどうかについては、相続放棄と同じく限定承認についても、相続があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出なければいけません。

相続放棄も限定承認もしなかった場合には、単純承認をしたとみなされてしまうのです。

財産と借金を比べて相続を放棄すべきかどうかについて、全てを把握するために時間がかかりそうという場合や、財産と借金を相殺した時に、プラスであるのかマイナスであるのかわからないという場合に、この限定承認という手続きが有効となります。

 

まず、限定承認とは相続をするかしないか(単純相続か相続放棄)を検討するにあたり、相続財産に資産・財産と負債・借金が混在していた場合、資産額で相殺できる限度でのみ負債を相続するという非常に便利な相続方式です。

非常に便利ではあるもの、そこには大きなハードルがあるためあまり利用が広がっていません。

限定承認も相続放棄と同じく、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があるとは先に述べましたが、これに加えて限定承認は、法定相続人が複数いる場合、相続人全員が共同で行わなければならないとされています。

つまり、相続人のうち1人でも反対する者がいれば、限定承認を行うことができません。

たった3ヶ月の間に、相続人全員の同意をもらうこと自体が手間で、苦慮する場合もあるため、限定承認は相続人単独で申請できる相続放棄とは使い勝手が違うのです。

 

さらに、限定承認をするとき、取得する相続財産に不動産が含まれると、その不動産は、被相続人から相続人に対して、取得時の時価で譲渡したものとみなされることにも注意が必要です。

その結果、不動産が購入時から値上がりしていると、被相続人の生前の収入があったということとみなされ、準確定申告を行う必要が出てくる上、「みなし譲渡所得税」という税金が課税されることになります。

 

このように、便利な方式に見えて、実は複雑な限定承認を申請するよりも、相続放棄をしてしまった方が早いことから、敬遠されがちな相続方式なのです。

なお、3ヶ月以内に相続を放棄すべきかわからない場合には、家庭裁判所に「相続放棄のための申述期間伸長の申請」を行うという手段もありますが、今回は割愛します。

 

 

では、そんな限定承認をすることで受けることができるメリットをまとめておきましょう。

1つ目は、先にも述べましたが、相続した財産以上の借金を弁済する必要がなくなるという点です。

相続人が残した借金を、自腹で弁済する必要がなくなるということです。

2つ目は、不動産を手元に残すことができるという点で、この理由で限定承認が選ばれるケースが多いといえます。

思い出が詰まった実家だけはお金を払ってでも手放したくないという方にとっては、限定承認は有効な手段となるのです。

もちろん、不動産相当額の借金を弁済できなければ不動産を売却しなければいけないのことには注意が必要です。

3つ目は、後から見つかった隠し財産についても相続できるという点です。

もし相続放棄をすでに選択してしまった後、後から隠れた財産が大量に見つかったとしても、すでに相続をする権利はありません。

しかし、限定承認であれば、後から発見されたプラスの財産についても、負債と相殺されたのちに相続することが可能です。

4つ目は、 少人数で相続手続きを終わらせられる可能性があるという点です。

限定承認は相続者全員の同意が必要ではあるものの、相続者が配偶者と数人の子どもだけであれば、比較的同意は得られやすいのかもしれません。

昔のように兄弟が10人以上いるともなれば話は別ですが(笑)

さて、相続順位が同じ人が全員相続放棄をすると次順位の人が新たに相続人とされます。

つまり、配偶者と子ども2人が相続人だとして、子ども2人が相続放棄をすれば、その権利は被相続人の親、親が既に他界していれば被相続人の兄弟姉妹が得ることになります。

しかし、子ども2人が相続放棄をした理由が、借金が多額であったことだとしたらどうでしょう。

これらの理由も後順位の方々に伝達しておかなければ、思わぬ不利益を他の人が被る可能性もあるのです。

このような事態にならないように、限られた人数で話をつけたい場合には限定承認が選ばれるケースもあります。

 

続いて、限定承認のデメリットについても簡単に触れておきましょう。

1つ目は先にも述べましたが、相続人全員で行う必要があるという点です。

相続人のうち1人でも反対する人がいた場合は限定承認をおこなうことができません。

2つ目も先に軽く触れましたが、譲渡所得税を支払う必要があるという点です。

限定承認の場合、被相続人から相続人に財産が時価で譲渡されたとみなされるため、譲渡所得税を支払う必要があります。

さらに、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をおこなう必要もあるため、単純承認よりも手続きが増えます。

3つ目も手続きの煩雑さに関する者ですが、債務清算手続きに手間がかかる点です。

限定承認の場合、裁判所の手続きで債務を清算することになります。

そのため、裁判所に様々な申請書を提出するなど、手続きに手間がかかりますが、その間は財産を処分することができないため、相続放棄には無い大きなデメリットといえるでしょう。

 

 

最近の方というのは案外ドライなようで、田舎の古い一軒家である実家を継いでも仕方ないしなぁと考える方も多いようですね。

たしかに、誰かが住むわけでもない、古家付きの不動産を遠方に所有していても管理が行き届かないことは間違いありません。

特定空き家に認定されれば支払う固定資産税額も増えることになりますし・・・。

 

今日は頭がいっぱいなので、ここまでとします!

遺言書は自筆証書遺言か、公正証書遺言か

こんにちは!

こうのとりです。

最近は勉強で頭がパンパンですが、まだまだ勉強不足を痛感しています。

いつになったら自分の自身につながるのかなぁと、不安て仕方ありません(汗)

その不安を払拭すべく、今日も頭の整理をしていきたいと思います。

 

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【今年は暖冬ですね!こちらは昨年の木場公園です】

 

さて、今回ご相談にきた吉田様(仮称:65歳)は、有名なおしどり夫婦である俳優の中尾彬さんと女優の池波志乃さんたちが行ったという終活に触発され、自身の身辺を整理し始めたということでした。

吉田様は妻と子供3人の家族ですが、そんな吉田様には終活をするにあたって、1つの懸念事項がありました。

それは、勘当してしばらく会っていないという長女の存在。

詳細は割愛しますが、とにかく自分勝手なことをして出て行ったことから、もし、自身が死んで遺産分割となっても、この長女だけには遺産を残したくないという強い思いがありました。

しかし、いくら吉田様の思いがあったとしても、法定相続人に対しては遺産を相続する権利(遺留分)が与えられています。

そこで、吉田様の意思を尊重するために、とある遺言書を残すことにしたというわけです。

 

さて、遺言とは自分の死後のために、財産の処置などを言い残すことですが、本人が死んだ後はその真否を正すことはできません。

それだけ重要なものですから、口約束でも成立してしまう「契約」とは違って、遺言の残し方については、法律で厳しく定められているものなのです。

そして、その方式は書面とされており、その方式を守らない遺言は全て無効です。

例えば、声を録音テープによって遺言を録音したとしても、スマホで動画を撮影していたとしても、法律では認められず、無効です。

録音テープなどのデータは、改ざんの可能があるという理由からです。

現在、日本国内で有効となる遺言の残し方は書面のみです。

  

そして、この書面にも3つの種類があります。

①自筆証書遺言

遺言者が、遺言の全文・日付・氏名を自書し、捺印した遺言書のことです。

自分で紙に書き記す遺言書のことで、誰でも気軽にいつでも作成が可能です。

そのため、遺言書としては一番多く利用されていますが、書き間違えがあったり、その内容が判然としない場合には遺言書として無効と判断されることがあり、注意が必要です。

 

②公正証書遺言

遺言者の指示により公証人が筆記した遺言書に、遺言者、公証人および2人以上の証人が、内容を承認の上で、署名・捺印した遺言書のことです。

公証役場にいる公証人と呼ばれる人が、法律の規定どおりに公正証書として書類を作成します。

確実に有効な遺言書を残したいときや相続財産の金額が大きい時に主に利用されている方法で、一番確実に遺言を残すことができます。

 

③秘密証書遺言

遺言者が遺言書に署名・捺印の上封印し、封紙に公証人および2人以上の証人が署名・捺印等をした遺言書のことです。

公正証書遺言の無いように加えて封印されることで、遺言内容について公証人に知られずに作成できるため、役人であっても誰にも知られたくない!という場合に利用できますが、あまり利用はされていません。

 

遺産相続に関しては、主に①か②で遺言書を残すことになりますが、①よりも②のほうがはるかに効果の強い遺言書となることはご理解いただけたと思います。

  

なお、吉田様の場合、遺言執行者として、私の働く事務所を指定してくださいました。

あらかじめ遺言執行者を決めておくと、遺言の内容を正確に行う権利を得ることとなります。

この遺言執行者とは、遺言に記載することで指定することできるのですが、指定できるのは、未成年者及び破産者以外のものです。

つまり、相続人を指定することもできますが、基本的には第三者であり、法律知識や事務能力に長けた個人又は法人を指定することがほとんどです。

そして、執行できる内容は相続登記や名義変更ですが、しかも単独でできるのがポイント。

遺産相続では誰かのサインがもらえないから話が進まないという事態が起きがちです。

遺言執行者を指定することで、相続人の勝手な行為を防ぎ、遺言内容の確実な履行を行うことができるというわけです。

 

さて、長女にはビタ一文渡したくない!という吉田様の強い意志を踏まえ、まず我々を遺言執行者として公正証書遺言を作成しました。

そしてその中に『相続人による虐待行為があったために相続排除を希望する』旨を記載しておくことになりました。

もし、吉田様の長女が遺留分を主張してきたとしても、相続排除が認められれば遺留分すらもらうことができなくなります。

なお、相続排除の該当要件としては、暴力がふるう・侮辱をしてくる・著しい非行のあるなどの推定相続人です。

吉田様の長女が該当するかどうかは、また別のお話。

ひとまず、被相続人の死後、我々遺言執行者が家庭裁判所に申立をすることで相続排除の手続きを執行することも可能となったというわけです。

 

最後に、遺言が見つかった場合の手続きスケジュールをまとめておきましょう。

① 遺言を発見する

② 家庭裁判所へ検認の申し立てをする(公正証書遺言は不要)

③ 遺言執行者が就職する

④ 遺言の実現を行う

・財産目録の調製と相続人への交付を実施する

・財産目録に基づく財産管理を行う

・遺言の執行に必要な登記行為を行う

⑤ 遺言執行が終了した旨を相続人に通知する

 

今日は遺言書についてまとめてみましたが、相談にいらした吉田様も、ほっとした顔で帰っていかれたのが印象的でした。

親子であっても、兄弟であっても、遺産相続では揉め事が多くなります。

万が一の際にそのような事態にならないよう、皆様も遺言を残してみてはいかがでしょうか。

 

本日はここまでといたしましょう。

相続放棄はもろ刃の剣?

こんにちは!

こうのとりです。

今年は本当に暖冬ですよね!

私は朝が起きやすくてうれしい限りなんですが、雪を商売にしている観光地やスキー場を営む方にとっては死活問題だそうで・・・。

誰かにとっての幸せは誰かにとっての不幸だったりするんだなぁと、しみじみ感じたわけでございます(笑)

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【奥にウグイスがいるの見えますかね? 】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は木下様(仮称:48才)です。

木下様は、父親が他界してから、母親と協力しながら相続財産をまとめていたのですが、なんと、隠された多大な借金を父親が抱えていたことが判明しました。

その額、なんと2,000万円とのことで、父親の遺産では到底相殺できません。

困り果てて我々の事務所に来社されたというわけです。

 

隠された借金が、相続人の死後に判明する。

このような事態は、誰にでも起こりうる事態といえます。

「このやろー!」と文句を言いたくなっても、死人に口なしですしね(笑)

 

こんな時のために、「相続放棄」という方法が残っています。

これは、故人の財産と負債の全ての相続権を放棄することであり、借金を肩代わりすることから免れます。

そんな 相続放棄については、2つの場面で利用されることがほとんどです。

1つ目は木下様のように、財産よりも借金や負債のほうが多い場合です。

財産よりも借金や負債が多いことが明らかな場合には、相続放棄をするべきでしょう。

なお、借入金については、万が一返済が遅れていたような場合、その遅延損害金や利息についても引き継ぐことになるため、注意が必要です。

 2つ目は、相続で争いたくない場合です。

遺産相続をする場合、相続人たちとの遺産分割協議や様々な書類を集めて提出する遺産分割手続きなど、煩わしい手続きや打ち合わせに足を運ぶ必要もなくなります。

もらえる遺産の額がほとんどないことが明白な場合、相続放棄してしまうのも1つの手です。

  

一方で、相続放棄にはデメリットがあることにも注意しなければいけません。

それは、全ての遺産を相続できなくなるということです。

例えば、仮に被相続人が所有する家に住んでいた場合であっても、家を相続することができなくなるため、最終的に所有者となった者から求められれば、家から出なくてはなりません。

また、後から思わぬ財産が見つかった場合でも相続することができなくなります。

 

さらに、相続放棄によって相続人が代わってしまうこともデメリットになります。

相続放棄をすると、次の順位の法定相続人に相続の権利が移るのですが、この時、被相続人の財政状況を知らなければどうでしょう?

第2順位である親や、第3順位である兄弟姉妹が、借金を抱えることになってしまう可能性もあるのです。

このような事態を避けるべく、相続放棄をする場合には後順位の法定相続人に現状を伝えておくべきでしょう。

  

さて、相続放棄にはいくつかの注意点があることも覚えておかなければなりません。

1つ目は、生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産については、相続放棄をしても受け取ることができる点です。

生命保険金や死亡退職金は民法上の相続財産とはされていないのです。

遺産だと思っていたので受け取らなかった!ということがないようにしましょう。

ただし、生命保険金や死亡退職金は相続税法上では相続財産とみなされるため、これらみなし相続財産を受け取った場合には、相続税を支払う必要があります。

その際、みなし相続財産の非課税枠を利用することができなくなることには注意が必要です。

この非課税枠は「500万円×法定相続人の数」で計算されますが、相続放棄をした場合、受領する金額そのものに相続税が課税されることになります。

 

2つ目は、相続放棄の手続きについては相続があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し出なければいけないという点です。

言い方を変えれば、被相続人が亡くなった後の3か月という期間で、遺産や借金の額を調査して、相続するか放棄するかを判断しなければならないのです。

もし、3か月を過ぎてしまった場合には、単純相続をしたとみなされてしまうため、借金や負債が多い場合はそのまま相続人が受け継ぐことになってしまうので注意が必要です。

 

なお、3か月以内に相続を放棄すべきかわからない場合には、家庭裁判所に「相続放棄のための申述期間伸長の申請」を行うことができます。

この申請は、期限までに相続放棄すべきか判断することが難しい理由を記入し、家庭裁判所に対して申請を行います。

家庭裁判所は、様々な背景や提出された理由により、伸長の判断をすることになります。

例えば、海外出張で知る由もなかったなども理由の1つになるようです。

申立てには、申立書、被相続人の住民票除票又は戸籍附票、利害関係人からの申立ての場合は利害関係を証する資料、伸長を求める相続人の戸籍謄本などが必要となります。

延長してもらえる期間は一般的には1か月~3か月程度ですが、家庭裁判所の裁量によっては、1年以上の延長が認められることもあります。

 

さらに、相続放棄の期限を過ぎてしまった場合にも、相続放棄ができる特別な例があるので列挙しておきます。

・ 相続発生後財産調査をしてはいたが、隠れた借金が見つかった

・ その借金の存在を知ってから、3ヶ月以内である

・ 相続した財産の処分に未着手

これらの条件を満たせば、期限が過ぎていても相続放棄が相当と認められます。

万が一の際には、我々に相談してくださいね!

 

最後に、相続放棄の手続きに必要な書類についてです。

故人の戸籍謄本、故人の住民票または戸籍の附表、相続放棄する人の戸籍謄本、相続放棄申述書などが挙げられます。

これらの書類を依頼者に集めてもらうのが実は案外大変なんですよね(汗)

手続きが面倒くさいから相続放棄したい!と思っても、これらの作業は各々で行っていただく必要がある最低限の作業と考えていただければ良いでしょう。

 

今日はこのあたりにしておきます。

私の実家は相続についてどう考えているんだろう?

母さんに連絡してみよう!

相続時精算課税 VS 贈与の非課税枠(暦年贈与)

こんにちは!

こうのとりです。

先日、受験を控える職場のお子様のためにと思い、湯島天神に行って参りました。

見てくださいこの絵馬の数!

神様も大変だなぁ~(笑)

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たまには神様に「いつもありがとうございます」とだけ言って帰るようにしたいですね!

 

さて、今回は相続の方法としての、「相続時精算課税」「贈与の非課税枠(暦年贈与)」の比較です。

お客様の佐竹様(仮称:65才)は、かわいいお孫の将来のためにと、財産を少しでも残してあげたいと思い、贈与を考えていました。

そんな佐竹様が困っていたのは、相続時精算課税を利用すべきか、贈与の非課税枠(暦年贈与)の範囲で贈与をするかというところです。

「相続時精算課税なら2,500万円まで非課税になるんでしょ?」

「贈与の非課税枠(暦年贈与)は1年間110万しかないですからね。」

「でも相続時精算課税にはデメリットも多いと聞きますし。」

佐竹様のおっしゃるとおり、相続時精算課税は、 贈与額の総額から2500万円までが非課税になり、それを超えた分は一律20%の贈与税が課税されるという制度です。

贈与者が死亡し相続税を計算する際に、贈与した財産を遡って加算して相続税を計算します。

一方、贈与の非課税枠(暦年贈与)1年間110万のみで繰り越しは無いため、23年間に渡って贈与を続けて、ようやく2530万円となりますが、23年間というのが長すぎるとのお考えのようです。

佐竹さんが一番お困りである点は、この相続時精算課税と贈与の非課税枠(暦年贈与)については併用ができないということ。

どちらか一方を選ぶ必要があるのです。

では、一体どちらがお得なのでしょう?

 

まず、大前提として贈与税は受け取る側が支払う税金であるということをおさえてくださいね。

さて、相続時精算課税については、いくつかの条件があります。

① 贈与者が贈与をした年の1月1日時点で60歳以上
② 贈与を受ける人が贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上
③ 贈与者と受贈者の関係が親子か祖父母と孫

まず、年齢制限が結構厳しいですね。

佐竹さんは、孫の学費のためにとの思いがあったようなので、この条件では20歳以上が対象なので、合致しません。

ちなみに、贈与の非課税枠(暦年贈与)110万円については、相手の年齢を問わないばかりか、家族でなくとも、赤の他人でも贈与可能です。

孫に特別扱いできないのは佐竹さんにとっては少しデメリットになるのでしょうか。

 

しかしながら、 相続時精算課税については、佐竹様が亡くなるまで累積で2,500万円まで贈与税が非課税となるわけです。

しかも、佐竹様以外から、お孫様が贈与を受けた場合、累積されません。

つまり、佐竹様から2,500万円、佐竹様の奥様から2,500万円、それぞれに対して贈与税が非課税になるわけです。

 

こんなにお得なら間違いなく相続時精算課税を選択すべき!と思いがちですが、実はそこには大きな落とし穴があります。

贈与税は非課税であるが、相続税は課税されるということ。

しかも、配偶者と一親等の血族(子、親)以外の者が相続で財産を取得した場合には、2割加算が適用(ただし、孫に法定相続人の権利が無い場合)されることになっています!

あらら・・・。

つまり、節税効果としては期待できないどころか、一旦始めたら取り消すことのできないこの制度が、大きな足かせになる可能性もあるのです。

 

もちろん、使い方によっては節税効果を生む場合もあります。

たとえば、佐竹様がお亡くなりになられた時に、相続財産が全て合わせて基礎控除額以内に収まっている場合です。

この場合にはお孫さんが負担する贈与税はありません。

 

また、価値が上がることが見込まれている不動産などを相続する場合にも、大きな節税効果を生みます。

例えば、相続時に1,000万円の価値の不動産を孫に贈与したとしましょう。

そして、佐竹さんが亡くなった時に、この不動産が1,500万円の価値になっていたとします。

相続時精算課税を利用した場合、佐竹様が亡くなった際に計算される財産として計上されるのは、1,000万円のみです。

しかし、相続時精算課税を利用しなかった場合、佐竹さんが亡くなった時の価値で財産総額が決められるため、1,500万円が計上されるということです。

このように、不動産の価格が上がることが見込まれているなら、利用する価値はあるでしょう。

とはいえども、不動産の価値が上がるかどうかなんて、プロの不動産投資家だって苦労するところだと思いますがね(汗)

 

さて、それでも相続時精算課税制度を利用したい場合の注意点を2つご紹介しておきます。

 

① 110万円以下の贈与でも申告の必要

贈与の非課税枠(暦年贈与)には110万円の基礎控除があるため、年間110万円以下の贈与であれば贈与税が課税されません。

よって、贈与税の申告をする必要もありません。

しかし、相続時精算課税制度を選択した場合には、年間110万円以下の贈与であっても贈与した年は税務署に申告手続きをする必要があるのです。

 

 ②小規模宅地等の特例が使えない

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たした場合に限り、土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。

相続時精算課税制度を利用して土地を贈与した場合、その土地に小規模宅地等の特例を適用することができません。

小規模宅地等の特例については様々な要件がありますので、確認が必要ですが、と土地の相続税評価額80%の軽減は大きな節税につながります。

 

今日はこのあたりにしておきましょう。

ちなみに佐竹様は、贈与の非課税枠(暦年贈与)で少しずつお孫さんに贈与することに決めたようでした!

めでたしめでたし!

相続税の計算方法~控除の考え方

こんにちは!

こうのとりです。

今日が初めての記事更新になります!

改めてよろしくお願いします^^

※ 私がこのブログを作成するに至った背景・経緯はこのブログについてを参照くださいね!

 

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【お金の巡りが良いと言われる穴八幡宮の参拝は毎年の恒例行事です^^】

 

今回の記事は、相続税の基本中の基本、相続税の計算方法についてです。

そのためには、そもそもの税金の考え方を理解しなければいけませんが、税金計算には、控除と減税の違いを理解するところから始まります。

これを私たちとって身近である、消費税で考えてみましょう。

コンビニで100円のコーヒーを(税抜)買ったとして、コンビニでの買い物には消費税が課税されますね。

今ではイートインだと10%!(世知辛い世の中です・・・。)

さて、私は迷わず持ち帰りを選ぶので、消費税率8%だと考えれば、支払い金額は108円ですね。

 

ここで、それぞれの対象を見てみましょう。

控除の対象 ・・・ 100円コーヒー

減税の対象 ・・・ 消費税率8%

このようになりますが、もし仮に、我々小市民の税負担を軽減しようと政府が決めた場合には、控除をするか減税をするかによって、計算方法が異なるわけです。

 

控除のそもそもの意味は「ある金額から一定の金額を差し引くこと」ですから、この例でいえば、課税対象であるコーヒーの金額から、いくらか差し引きしようという考え方になります。

例えば、全てのコーヒーから20円控除しようという法律が決まったとすれば、

<支払額:100円+(100円-20円)×0.08=106.4円>

と計算できます。

 

この、課税対象である全ての金額から、一定の金額を指し引くことを、基礎控除というわけです。

 

一方、減税をする場合にはどのような計算になるでしょうか。

減税の場合は、税率を引き下げる意味になるので、全てのコーヒーにかかる消費税率を0.03%減税しようという法律が決まったとすれば、

<支払額:100円+100円×(0.08-0.03)=105円>

と計算できることになります。

 

さらに、課税対象からの基礎控除ではなく、算出された消費税額から控除しようとした場合、税額控除がなされることになります。

全てのコーヒーにかかる消費税額から5円控除しようという法律が決まったとすれば、

<支払額:100円+(100円×0.08-5円)=103円>

と計算できることになるわけです。 

 

このように、税制は控除や減税など、その対象によって様々な計算方法に変化することがお分かりいただけたかと思います。

  

 

さて、話を元に戻して、相続税における「基礎控除額」はいくらなのでしょう?

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

ズバリ、これが基礎控除額となります。

つまり、相続税の課税対象となるものの総額が、上記の金額以内であれば、課税対象は0円となるため、相続税を支払う必要が無いのです。

遺産が1,000万もあるわけない!とか、あっても2,000万だなという方は相続税を申告する対象にありませんね。

 

次に、ここで出てくる「法定相続人」とは誰のことでしょうか。

これは、あくまでも法律で決められた相続人のことを指しますが、法定相続人となる可能性があるのは、配偶者、子、親、兄弟姉妹です。

なお、配偶者については常に法定相続人となることが決まられており、子・親・兄弟姉妹については、子か親か兄弟姉妹かのいずれかであることがポイントです。 

つまり、被相続人に子どもがいなければ、法定相続人は配偶者と親になりますし、被相続人が独身で配偶者がいなければ、法定相続人は親のみとなります。

被相続人に子どもも親もいなければ、法定相続人は配偶者と兄弟姉妹になるのです。

 

先日相談にいらいした高橋さん(仮称:78歳)のケースを例に挙げてみましょう。

高橋さんは配偶者(妻)とお子様2人を残されて他界されました。

この場合、法定相続人が3名ということになりますので、

基礎控除額は「3,000万円+500万円×3=4500万円」です。

  

このブログについてでも書きましたが、実際に相続税を申告し、支払いの義務が生じる方は、被相続人(亡くなった人)の10%といわれています。

しかし、「なるほどね、相続税を申告するのは一部の富裕層のみなのね!」とタカをくくるのは時期尚早です!

なぜかと言えば、思わぬ隠し財産が残っていることも多いにあるからです。

相続税の課税対象となるものは土地や建物などの不動産、預貯金などの現金だけではなく、株式や社債、生命保形金や死亡退職金など多岐に渡ります。

 

さらに、以下3つの財産も忘れがちです。

① 生命保険金や死亡退職金などの「みなし相続財産」

② 「相続開始前3年以内」の贈与財産

③ 「相続時精算課税制度の適用を受けた」贈与財産

これらを全て含めて、課税対象となる財産の総額を算出しなければなりません。

 

高橋さんの場合、財産の総額が3,000万円だと思っていたら、他に生命保険金が5,000万円あることに気付き、相続税の申告が必要なのか、奥様がご相談にいらしたのです。

 

では、高橋さんのケースで実際に相続税の申告義務があるのかどうか、相続税額はいくらになるのかみていきましょう。

まず、財産の総額8,000万円のうち、基礎控除と共にあらかじめ控除される金額があります。

それは生命保険金の非課税枠(金額)債務・葬式費用です。

 

生命保険金は、あらかじめ「500万円×法定相続人の数」が非課税とされます。

高橋さんの場合、法定相続人が3名ですので、1,500万円は非課税とされるのです。

さらに、葬式費用が200万円かかったとのことで、これも控除されます。

そして、先ほど計算した基礎控除4,500万円を差引すると、

8,000万円-(1,500万円+200万円+4,500万円=1,800万円

となり、相続税の申告と納付が必要な方々だということが判明したのです!

  

さて、課税対象となる遺産の総額を算出したら、次にやるべきことは、各人の仮の相続税額の計算です。

これは、遺産分割協議などで決められた実際の相続額ではなく、あくまでも法律で決められた相続税の総額です。

 

高橋さんの場合、法定相続人は、配偶者と子ども2人の合計3名ですが、それぞれの法定相続人の法律で決められた相続分はどのような割合かといえば、これは法定相続人となるものの属性で割合が変わります。

パターン分けすると、

① 相続人が配偶者と子どもであれば、配偶者が2分の1、子どもは2分の1

② 相続人が配偶者と親であれば、配偶者が3分の2、親は3分の1

③ 相続人が配偶者と兄弟姉妹であれば、配偶者が4分の3、兄弟姉妹は4分の1

となります。

高橋さんは総額8,000万円ほどの遺産があり、課税対象は1,800万円でした。

そして、①のパターンになるため、この課税対象となる金額を各人の法定相続分をで計算すると

配偶者   1,800万円×2分の1=900万円

子どもA         1,800万円×2分の1÷2=450万円

子どもB         1,800万円×2分の1÷2=450万円

となり、これが相続税の課税対象となります。

 

この各々の課税対象に対して、取得金額の税率と控除額を元に、相続税額を計算していくのですが、取得金額が1,000万円以下の場合、税率は10%で、控除額は0円です。

 

高橋さんの場合、配偶者である奥さまは90万円、子どもはそれぞれ45万円の相続税をそれぞれが申告し、納付する必要があることが分かったというわけです。

  

しかし!これはあくまでも法律で決められた相続税の計算方法です。

実際に遺産分割協議をし、それぞれの相続分が決められたら、それぞれの相続分に応じて相続税を支払うのは当然のことです。

高橋さんの場合、配偶者も子どもも全員同じ取り分にすることを決めたので、

相続税総額180万円のうち、それぞれが60万円ずつ平等に相続税を申告し、納付する義務を負うことになったというわけです。

 

 

いや~高橋さんのケースは、これでも案外シンプルな事案です。

本来であればもっと入り組んでいることが多く、専門家の力を借りなければ到底簡単に計算できるものではないと思います。

 

今日はこのくらいにしておきましょう!

頭の整理がついた気がします!