遺産分割!相続する不動産の価値はどうやって決めるの?

こんにちは!

こうのとりです。

  

ゴールデンウィークは7~8割の自粛率だったそうですね!

日本人ってこういうところ、すごいですよね!

罰則も無いのに、みんな家にいるんだもんな~!

もともとソーシャルディスタンスを大事にする民族だし、このままコロナが終息すればいいんですけどね。

そしたら、自粛した分、苦しかった観光地や飲食店にお金が循環すると思います!

今はみんなで辛抱ですね。

 

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【間近で見ることがなかったスカイツリー、でっかいです!】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は椎名様(仮称:62才)です。

椎名様は先日お父様が亡くなられ(お母様はすでに他界)、お父様の遺産を妹と弟の3人で分けることになったそうです。

しかし、残された遺産はご実家の不動産のみでした。

そこで、この不動産を売却して、お金を3等分しようという話に一度は決まったのですが、しばらくしてから妹さんが「思い出の残る実家を残したい!」ということになり、実家を継ぐ代わりに、その他2人に相続相当分の金銭を支払うことで合意しました。

 

椎名様のようなケースは、比較的良くある話なのですが、今回椎名様がご来所された理由は、相続相当分の金銭はどのようにして決めれば良いのか?というご相談だったのです。

 

ちなみに、遺産分割において、不動産の分割方法はいくつかの種類に分けることができます。

まずは、不動産を売却してから売却代金を分割する換価分割、次に、実際に不動産の現物を3等分する現物分割、そして、椎名様のような、特定の相続人が不動産を相続する代わりに金銭を支払う代償分割です。

 

そして、代償分割を行う場合には、不動産の価値を評価することになりますが、この評価の種類は、相続税申告評価額、固定資産税評価額、公示価格、不動産鑑定士による評価額、実勢価格など多岐にわたるものです。

 

1、相続税申告評価額

相続税路線価ともいいますが、相続税を算出するために全国共通で設定された道路ごとの評価額です。毎年評価が見直されているのでタイムリーな価格を参考にできますが、その価格は実勢価格(実際に取引が行われた場合の評価額)の80%程度の金額とされます。土地のみの価格です。

 

2、固定資産税評価額 および 固定資産税路線価

固定資産税路線価は、市町村が固定資産税を課税する際に基準となる道路ごとの評価額です。3年ごとにしか評価が見直されないことには注意すべきでしょう。その価格は実勢価格の70%程度の金額とされます。路線価については土地のみの価格です。

一方、毎年課税されている固定資産税評価額については、この固定資産税路線価を元に決められているもので、土地のみではなく建物についても評価額の参照が可能です。こちらも実勢価格の70%程度の金額とされています。

 

3、公示価格

公示価格とは、国土交通省によって定められた、土地の評価額です。不動産鑑定士が関与し、その鑑定結果をもとに評価されています。毎年見直しが行われて、例年3月下旬頃に公表されるものです。

不動産鑑定士が関わっているだけあり、実勢価格により近い価格ではありますが、土地のみの価格しか確認できません。実勢価格の80~90%程度の金額とされています。

 

4、不動産鑑定士による評価額

個別に不動産鑑定士に依頼をして得られた評価額については、信頼性が高く、遺産分割調停などにおいても利用されるものです。それだけ信頼度が高いとはいえども、鑑定を依頼する場合には鑑定費用がかかることがネックとなります。親族同士が不動産の評価額で紛糾しない限りは、利用されにくいといえるでしょう。

 

5、実勢価格

実際に取引が行われた場合の価格である実勢価格を知るためには、不動産会社の査定を受けるという方法がポピュラーです。市場で取引されている類似物件や建物の外観などを踏まえながら総合的に値付けされるものですが、依頼をする不動産会社によって価格が上下するというデメリットがあります。

 

これだけ多くの参考価格があると、どれを選択したら良いかわからないという方も多いかもしれませんが、ここには大きなポイントがあります。

実は、合意形成さえ取れればどの価格を参考にしても良いのです。

つまり、代償分割を行う場合に、代金を受け取る相続人が納得しさえすれば、どの価格を参考にして代償すべき金額を決めても良いのです。

2つの評価額を組み合わせて参考にしても良いですし、不動産会社に査定を依頼して見積もられた金額だけを参考にしても良いということです。

 

遺産分割協議というと、何やらお堅いイメージになりますが、あくまでも「話し合い」に過ぎません。話し合いで合意さえできれば、相続分をどのように配分しようが、問題無いのです。

法定相続分や遺留分は、法に則った場合にはこのように分割しなさいという決まりであり、租税の計算などに使われる形式的なものです。

もっとも、話し合いで簡単に決まることではないので、法的な根拠を元に遺産分割協議が行われるという実態はあります。

どんなに仲が良い肉親であっても、遺産相続で骨肉の争いに発展する可能性は十分にありますので、そんな争いに発展しないためにも、法に則りながら、平等に分割するのが良いともいえますね。

 

さて、椎名様は結局、知り合いの不動産会社に依頼をして不動産査定をしてもらい、その金額を元に代償分割を行ったということです。

とはいえども椎名様も弟様も、実は実家を売却することに抵抗が無かったわけではなく、「実家を妹が引き継いでくれるなら」ということで、結果としてわずかな現金を代償として引き受けるだけで、合意したそうです。

そして、今では1年に一度は、思い出のあるご実家に集まるようになったそうですよ!

 

 

本日はここまでといたしましょう。

不動産を相続するときの流れとは?

こんにちは!

こうのとりです。

 

緊急事態宣言が延長となりましたが、ほんとにコロナによって世界が混沌としている気がします・・・。

税理士事務所としては、5月ごろまでが繁忙期なのですが、今年はちょっと違った忙しさですね。

資金繰りですとか助成金のお話が多く、繁忙期はまだまだ続きそうです。

ここは皆の力を合わせて、乗り切っていきたいですね!

 

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【桜の木はすっかり新緑となりました】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は寺岡様(仮称:38才)です。

寺岡様は奥様のお父様の遺産相続(特に不動産)に関して、どのような進め方をして良いかわからず、まずは専門家のアドバイスをということで来所されました。

たしかに、ひとえに相続とはいえども、被相続人がお亡くなりになった後の流れを時系列で理解しておくのは重要なことです。その大きな理由な1つとしては、遺産相続に関わる申請について、それぞれ期限が決められているからです。

 

<被相続人の臨終より7日以内>

・葬儀社に相談

→各種相談、火葬場の予約などを代行してくれます。病院から葬儀社の紹介を受けることもあるでしょう。また、終活の一環で、生前に葬儀社を決めている場合もあるため、後述する遺言書の有無や財産の有無も含め、日頃のコミュニケーションが重要といえるでしょう。

 

・死亡診断書を病院に記載してもらう

→コピーを何部か取っておくと、様々な手続きの際に便利です。

 

・死亡届を死亡地か本籍地、または届出人の所在地の市区町村役場に提出

→同時に火葬許可申請書を提出することで、火葬(埋葬)許可証が発行されます。なお、死亡診断書と死亡届は同じ用紙であることが多いようです。また、火葬許可申請書に火葬場所を記載することになるので、葬儀社などに事前確認をしておきましょう。

 

<被相続人の臨終より10日~14日以内>

・年金関係の手続き

→年金受給停止、年金受給権者死亡届の提出など、説明は割愛

 

・保険関係の手続き

→国民健康保険証の返却、介護保険の資格喪失届など、説明は割愛

 

・住民票関係の手続き

→住民票の抹消届、住民票の除票の申請、世帯主の変更届など、説明は割愛

 

<被相続人の臨終後なるべく早め

期限はないものの、相続放棄および限定承認の手続きは相続発生から3ヶ月以内という非常に短い期間であるため、遺産に関わる以下4つの項目は、葬儀終了後、速やかに行う必要があります。

 

・遺言書の有無の確認および検認

→公正証書遺言以外の遺言書については、家庭裁判所の検認が必要です。中身が気になるかもしれませんが勝手に開封しないように注意しましょう。

もし、家の中に遺言書が見つからない場合でも、被相続人が公正証書遺言を残していれば、公証役場の遺言検索システムで遺言書の存在を確認することができます。

 

・相続人の調査

→被相続人の戸籍謄本などを取り寄せ、法定相続人を確定させていく作業ですが、この作業が案外、骨の折れる作業であり、被相続人の死亡時の戸籍謄本から、戸籍を遡って取得していくことになります。転籍や婚姻など、様々な事情で戸籍は変遷していくため、集めていくと最終的には複数枚の戸籍に及ぶこともあります。

この作業の結果で血縁者が確定すると同時に、法定相続人も確定します。

 

・財産の調査

→生前あらかじめ財産が整理されていればよいのですが、突然の死去だった場合などはそれぞれを調査していかなければなりません。

不動産関係で財産となるのは、土地や建物の現物以外に、借地権や借家権が挙げられます。不動産関係以外の財産としては、預貯金、生命保険、株式(有価証券)、ゴルフ会員件、貴金属、自動車などが該当します。

財産調査の手がかりは郵送物や納税書類等ですが、煩雑になることも多いため、これらの調査を専門家へ代行依頼することも可能です。

 

・遺産分割協議

→法定相続人と財産が揃ったら、遺産分割協議を行うことになります。

基本的には法定相続人全員が顔を突き合わせて話し合うことで、相続人全員の合意形成が必須です。

相続人全員の合意形成がとれれば、合意の証明として遺産分割協議書を作成することになります。この遺産分割協議書は、被相続人の各種名義変更や預金引き出しの際に重要となります。

 

<被相続人の臨終後3ヶ月以内>

・相続放棄または限定承認の申述

→相続の手続きをタイトにしているのが、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内を期限としている、相続放棄または限定承認の申述です。

相続放棄は借金などのマイナスの遺産が多い場合に遺産を放棄をする方法で、限定承認はプラスの遺産とマイナスの遺産のどちらが多いかわからない場合に利用し、結果として財産がプラスになった部分のみ引き継ぐ方法です。

ここで重要なのが、相続放棄は相続人一人一人が単独で行える申述である一方で、限定承認は相続人全員の共同で申述しなくてはならない点です。

さらに、期限を過ぎれば単純承認をしたと見なされるので、マイナスの遺産が多い場合でもその遺産を相続していく必要が出てきてしまいます。

このような事態を避けるためにも、遺言書、相続人、財産の調査および遺産分割協議については、速やかに行うべきなのです。

ちなみに、特段の事情があれば、相続放棄または限定承認の申述の延長が認められることもあります。どうしても進捗が悪い場合には家庭裁判所へ相談しましょう。

 

<遺産分割協議終了後、相続財産が確定したら速やかに>

・相続財産の名義変更

→相続財産の中に不動産が含まれる場合には、その不動産の名義変更をしておくほうが無難です。名義変更は義務ではありませんが、二次相続などが起こった場合に揉め事にならないよう、あらかじめ自身の名義に変更しておく べきといえるでしょう。

 

<被相続人の臨終後4ヶ月以内>

・被相続人の所得税の確定申告(準確定申告)

→被相続人は1年の途中で臨終を迎えることになるでしょうから、その時点までの被相続人の確定申告は、相続人が代わって 行います。

この、準確定申告についても、相続人全員で行う必要があります。もし、個別で行った場合には、他の相続人に申告内容を通知しなければならないのです。

 

<被相続人の臨終後10ヶ月以内>

・相続税の申告

 →相続財産が多額であり、控除分を超えてしまう場合には、相続税を申告しなければなりません。こちらも被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内と期限が明確に決められており、万が一期限に間に合わなければ、延滞税や無申告加算税などの追徴課税が科されることになるため注意が必要です。

 

<その他>

 ・公共料金の名義変更、解約

→電気、ガス、水道、インターネット、携帯電話などが挙げられますが、これらも早めに行ったほうが良いでしょう。

 

・各請求関連

→葬祭費、埋葬費、高額医療費、生命保険金などの請求はもれなく行いましょう。

 

 以上が相続における一連の流れです。

 やることがほんとにたくさんありますね。

ご相談者の寺岡様は、被相続人が存命のうちに相談し、なるべく整理をしておくとのことでしたが、やはり終活は大事なんだなと実感いたしました。

 

本日はここまでといたしましょう。

民法大改正による不動産相続への影響とは!?

こんにちは!

こうのとりです。

 

 

現在外出制限真っただ中ですが、最近外出したのはいつだろうな~と思っていると、2月初旬にイベント参加した時以来、まともな外出をしていないことに気が付きました(汗)

基本的に出不精だし、勉強もあるしってことで納得なんですが、過去の写真を眺めていたら「アルパカ」を発見!

一緒に行ったとある女性から「あっちにカピバラがいるよ!」といわれ、他の男性からは「ヤギがいるから見に行ったら?」といわれ、結局いたのは「アルパカ」だったという・・・ややこしや・・・。

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【カピバラでもヤギでもなく、アルパカです】

 

さて、今回はお客様の案件ではありません。

相続法に関する近年の大きな出来事について、まとめておきたいと思います。

その大きな出来事とは、およ40年ぶりの改正といわれる民法の大改正です。

 

相続法に関しては2018年7月に改正され、その施行が段階的におこなわれていますが、コロナショックの渦中において、4月1日にも施行された内容もあるのです。

こういう改正や特例措置があるから、税理士資格は勉強が大変で・・・という愚痴はさておき。

 

主な改正内容(施行日)は以下のとおりです。

1、配偶者への優遇措置(2019年7月1日、2019年4月1日)

2、遺言に関する条件緩和(2019年1月13日、2020年7月10日)

3、介護(特別寄与)に応じた額の金銭要求(2019年7月1日)

4、預貯金の払戻し制度の新設(2019年7月1日)

5、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ(2019年7月1日)

 

1、配偶者への優遇措置

配偶者への優遇措置としては、以下2点の改正です。

① 居住用不動産の贈与等に関する優遇(2019年7月1日より施行)

② 配偶者居住権の新設(2019年4月1日より施行)

 

これらの優遇措置がなされた背景について考えてみましょう。

たとえば、地方の実家に住む父と母、都内に住む息子の3人家族だったとしましょう。

父が他界した場合、相続の権利は母と息子に半分ずつの分配になります。

もし実家の不動産に3,000万円の価値があり、預貯金が1,000万円あったとすれば、どのように遺産を分配すればよいのでしょうか。

本来は2,000万円ずつの相続になるはずですが、実家に住み続けたい母が実家を相続すれば3,000万円の相続、息子は現金1,000万円のみ相続することになり、息子の相続分が1,000万円足りません。

すると母は、息子に対して不足分を補わなければいけません。

このような事態を解消するために新設されたのが、①と②の措置です。

 

①についてはすでに施行済ですが、婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産の遺贈又は贈与については、遺産分割の際に相続財産としてみなさないという措置です。

本来、生前贈与は遺産の先渡しという取り扱いでした。

そのため、愛する妻のためにと生前贈与をしたとしても、遺産分割の際には結果的に相続の対象となってしまいます。

 

先ほどの例でいえば、もしマイホームの持ち分を半分生前贈与していたとすれば、今回の措置によってマイホームに関する相続1,500万円分と現金のみが遺産相続の対象となります。

結果として、2,500万円分を半分ずつ相続するため、各自1,250万円の相続となり、息子に支払うべき金額を1,000万円から250万円までおさえることができました。

 

そして、先日施行されたのが、②の配偶者居住権の新設です。

こちらは、配偶者が引き続きマイホームに住み続けることができる措置になります。

この配偶者居住権については、相続発生時に自宅に住んでいた配偶者にだけ認められ、かつ、登記が必要な措置です。

 

先ほどの例でいえば、生前贈与をしていても息子へ現金補填をしなければいけないため、問題が全て解決したとはいえない状態でした。

しかし、配偶者居住権の新設により、問題は全て片付きます。

これは、所有権を配偶者のために分離するという、非常に大きな措置です。

この措置によって、本来相続するはずの3,000万円相当の所有権を、配偶者居住権1,500万円と負担付き所有権1,500万円とに分割することができます。

そして、相続の際には、それぞれの所有権を相続するのです。

 

つまり、母は配偶者居住権1,500万円と現金500万円を相続し、息子は負担付き所有権1,500万円と現金500万円を相続することになります。

母の負担が相当軽くなったといえるでしょう。

 

2、遺言に関する条件緩和

遺言に関する条件緩和についても、以下2点の改正です。

①自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月13日より施行)

②遺言保管制度の新設(2020年7月10日より施行)

 

①については、自筆証書遺言のうち財産目録はパソコンで作成できるようになったというもので、なんだか時代に追いついていない気もしますね・・・。

②については2020年7月10日からの施行ですが、法務局で遺言者の自筆証書遺言を保管してもらえることになるため、自宅で保管していて紛失したという事態を防ぐことができます。

 

3、介護(特別寄与)に応じた額の金銭要求

こちらもよくある話ですが、面倒見るといっていた相続人の肉親が面倒を見ず、他の親戚が面倒をみていたりというケースに関して、金銭を要求できるというものです。

詳細は割愛しますが、相続人ではない親族が被相続人に特別寄与した場合、相続の恩恵を特別寄与料として受け取ることができるようになりました。

すでに施行済の法律です。

 

4、預貯金の払戻し制度の新設

こちらも遺産相続のあるあるですが、遺産分割が終了するまでは預貯金に関しても勝手に使用ができないため、葬儀を執り行う相続人が自己負担で建て替えるケースが多く、負担となっていました。

そこで、被相続人の葬儀を行う相続人に関しては、単独であっても、被相続人の預貯金の一部を払戻せるようになりました。

こちらも施行済の法律です。

 

5、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ

遺留分は、最低限保証された相続人の取り分です。

この遺留分の存在によって、本来は避けるべき共有不動産が存在することになっていました。

共有不動産は、処分が厄介になるだけではなく、特に会社の事業承継の足かせになっていました。

このような事態を避けるべく、共有不動産となりうるケースにおいては、遺留分に関して現金のみが請求できるようになりました。

「減殺」ではなく「侵害額」になったのですね。

こちらも施行済の法律です。

 

 

相続に関するこれらの措置の背景には、もちろん遺産相続問題があり・・・。

肉親であっても、骨肉の争いに発展する可能性はあります。

いくら仲が良かった肉親であってもです。

このような事態になる前に、遺産に関しては真剣に、かつ被相続人が健在な時から話し合いの場を設けておくべきといえるでしょう。

 

本日はここまでといたしましょう。

不動産売却時の節税方法について

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスの影響で、緊急事態宣言が出されました。

経済への悪影響からリーマンショックやブラックマンデーと比較されますが、

それよりもスペイン風邪の再来かもしれません。

ともすれば100年に一度の出来事です。

当時は医療がそこまで発達していなかったので、

日本での死者も38万人にのぼったそうです。

人の流れが止まると、お金の流れが止まります。

しかし、今は辛抱でしょうね。

自分のせいで誰かの大切な人をあやめるわけにはいかないのです。

 

さて、3月下旬に某インターネットショッピングサイトで、「マスク」を買いました。

30枚で1,680円なので、1枚55円ですか。

まぁこのご時世で妥当かなぁと思い。

届いたら中国製でした。しかも簡素な袋に入って。

これは現地で作ったものを高く売ってるだけでしょうけど、

マスクを買い占める転売屋だけはちょっと許せないですよね~いかがなものか、です。

 

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【一応使えそうなマスク】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は城之内様(仮称:40才)です。

城之内様はお父様からの遺産のうちの1つであるご実家(不動産)の処分について頭を悩ませておりました。

相続をしたものの、遠方のため使い道が無く、管理もままならないどころか、このままだと、ただただ毎年固定資産税を支払うことになりそうだというのです。

そこで、不動産の売却を検討しているが、売却時に税金がどれくらいかかるのか、あらかじめ知っておきたいということでした。

 

確かに不動産を売却する際には、様々な税金がかかります。

ただし、実際には必ずかかる税金と、状況に応じてかからない税金とに分けることができます。

 

必ずかかる税金

印紙税、登録免許税

状況に応じてかからない税金

譲渡所得税、住民税(+復興特別所得税)

 

それぞれの税金について、解説していきましょう。

1、印紙税

不動産売買契約書に貼りつける収入印紙です。

契約金額によって、貼りつけなければならない印紙の金額は異なります。

なお、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成される不動産の譲渡に関する契約書については、軽減措置が適用されています。

不動産の売買としてメジャーである価格帯の印紙税は以下のとおりです。

500万円超~1,000万以下・・・5,000円(本来10,000円)

1,000万円超~5,000万以下・・・10,000円(本来20,000円)

5,000万円超~1億円以下・・・30,000円(本来60,000円)

 

2、登録免許税

いわゆる登記のための代金です。

なお、不動産売買に関わる登記は主に3種類です。

抵当権抹消登記は住宅ローンが残っている場合、住所変更登記は売主の現在の住所や氏名が登記簿上の住所と異なる場合などに必要です。

抵当権抹消登記(売主)不動産の数×1,000円(+司法書士への報酬)

住所変更登記(売主)不動産の数×1,000円(+司法書士への報酬)

所有権移転登記(買主負担のため割愛)

 

3、譲渡所得税および住民税(+復興特別所得税)

不動産の売買金額に固定資産税などの清算金を加算した金額(譲渡収入金額)から、不動産の取得費および譲渡にかかった費用を差し引いた残りの金額に対して課税される国税です。

 

なお、城之内様のケースのように、ご実家の売却に際して取得費がわからない!ということもあります。

そのような場合には、譲渡収入金額の5%とみなされます。

 

また、譲渡にかかった費用に関しては、以下の項目が該当します。

・仲介手数料
・登記費用
・印紙税
・立退料
・建物の取壊し費用や建物の損失額
・測量に必要となった費用
・買主変更のため支払った違約金
・借地権を売る場合の名義書換料
・資産の維持や管理のためにかかった費用など

 

ポイント!

城之内様のケース(遠方にある空き家を売買する場合)には、特別な控除が適用されます!

これは、少子高齢化や過疎化による空き家問題を解消しようとする政府の試みでもあります。

なお、空き家問題とは、空き家が放置されることによる倒壊などの危険管理、景観を乱す恐れ、悪臭異臭など環境被害の恐れ、犯罪の温床となる恐れなどを指します。

<空き家を売ったときの3,000万円の特別控除の適用条件>

・相続した空き家を取り壊す、もしくは耐震リフォーム後に売却する場合

・旧耐震法の1981年5月31日までに建築された戸建て住宅

・相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかった

・相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る

・売却代金が1億円以下

・平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売却すること

 

条件は厳しいですが、3,000万円の控除によって譲渡所得が0円になる可能性も非常に高いため、ぜひとも有効活用したい特例といえます。

なお、適用を受けるためには各必要書類を添付した上で確定申告が必要となること、延長の可能性はありますが、令和5年12月31日までの適用であることには注意しましょう。

 

 

ちなみに、特例が適用されない場合の税率は、所有期間によって3パターンに分かれています。

① 短期譲渡所得 所有期間が5年以下・・・39.63%

② 長期譲渡所得 所有期間が5年超~10年以下・・・20.315%

③ 長期譲渡所得 10年超・・・金額により14.21%もしくは20.315%

このような棲み分けがなされている理由の1つとしては、不動産の転売によって得た譲渡所得と、マイホームとして住んでいた物件を住み替える目的で得た譲渡所得とを区別することにあります。

 

ただし、先述した空き家に関する3,000万円の特別控除と同様に、マイホームを売却した場合にも3,000万円の特別控除が認められる特例措置があります。

 

 

今回、城之内様は空き家に関する3,000万円の特別控除が無事に適用され、ご実家を円滑に売却できたと喜ばれておりました。

生まれ育ったご実家を手放すということにためらいがあるのは誰もが同じことですが、管理ができずに朽ちていくご実家を見るのもつらいということでしたので、特別控除のあるこの時期の売却は城之内様にとっては最善の選択だったといえるでしょう。

 

 

なお、不動産の売却などを検討される場合には、我々税理士事務所の出番でもありますが、不動産会社からの適切なアドバイスも必要不可欠です。

相続に強い不動産売却の会社に仲介を依頼するというのも、円滑な売却のためには重要といえると感じました。

 

本日はここまでといたしましょう。

相続の盲点、二次相続を考える

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスのせいとはいえ、ここまで株価が暴落するのを目の当たりにすると、さすがに恐怖心が出てきますね・・・。

アメリカのダウ平均は高値から10,000ドル以上も下がって、トランプ大統領就任時と同じ株価になってしまったとか。

今年はアメリカの大統領選挙がある中で、今まで株価をけん引してきたトランプさんにとっては厳しい展開になりそうですが、とにもかくにもコロナウィルスの終息を願うばかりです。 

 

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【佐渡でトキに遭遇しました!】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は二宮様(仮称:50才)です。

二宮様は先日旦那様を亡くされたのですが、旦那様の遺産相続について相談にいらっしゃいました。

というのも、配偶者が相続税を大幅に控除されるという話を親戚から聞き、どのような制度が知りたい、ぜひとも活用したい!とのお話でした。

たしかに、相続税に関しては配偶者への特例があり、配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円(もしくは法定相続分)までは、配偶者には一切相続税がかかりません。

しかし、そこには二次相続の落とし穴があるのです。

 

さて、そもそも相続税が課税されるケースはごく稀といってよいでしょう。

2018年の統計では死亡者に対する相続税の課税件数割合は8.5%となっていますが、これは2015年に相続税の税制が改正されたことによるもので、それ以前は4%程度でした。

なぜここまで相続税が課税されるケースが少ないかといえば、そもそも相続税の基礎控除額が大きいことに起因しています。

現在の税制における相続税の基礎控除額は「3,000万円」に「600万円×法定相続人数」を加算したもので、たとえば奥様と子ども2名が相続人となる場合には、「3,000万円+600万円×3=4,800万円」まで基礎控除とされるのです。

4,800万円相当の遺産が残されている家族なんて、そんなにいないと思いませんか?

結局、遺産が基礎控除額内であれば無税となるので、実際に相続税を課税されるケースが1割未満に収まっていることになります。

 

今回ご相談にいらした二宮様の場合は2人の子どもがいらっしゃったため、基礎控除額としては4,800万円まであったのですが、旦那様の遺産が1億円ほど残されており、基礎控除額をオーバーしてしまうことが明白でした。

そんな時に、配偶者の控除が1億6,000万円まであると聞いて、相談をしにいらっしゃったのですが、もちろん、この控除をフル活用することは可能です。

つまり、配偶者である二宮様と2人の子どもで話し合い、1億円の遺産を全て二宮様が相続することで、全額に対して無税とできるのです!

 

しかし、もしその後、二宮様が亡くなった場合、どうなるのでしょうか。

1億円の遺産がそのまま残っていたら、結局は2人の子どもがその遺産を相続することになります。

被相続人の配偶者が相続することを一次相続とすれば、これが二次相続です。

 

さて、一次相続で、配偶者控除をフル活用し、遺産の全部を配偶者である二宮様が相続した場合と、通常の相続をした場合で、シミュレーションをしてみましょう。

一体どれくらい差が出るのでしょうか。

 

まず、一次相続で配偶者控除をフル活用した場合、一次相続時にかかる相続税は、もちろん1億6,000万以内になりますので、0円です。

しかし、二次相続ではそのまま1億円を2人の子どもが相続することになるため、「1億円-基礎控除額(3,000万円+600万円×2)=5,800万円」が課税対象となり、法定相続分の課税対象額は子どもそれぞれが2,900万円となります。

 

一方、一次相続で法定相続分通り(母が2分の1、子どもが4分の1ずつ)相続をした場合、「1億円-基礎控除額(3,000万円+600万円×3)=5,200万円」が遺産に対する課税対象となり、法定相続分で課税価格を求めると配偶者が2,600万円、子どもはそれぞれ1,300万円ずつが課税対象額となりますが、配偶者控除をここで利用することになるので、配偶者分は無税です。

そして、二次相続については、配偶者が相続した5,000万円が遺産となるため、「5,000万円-基礎控除額(3,000万円+600万円×2)=800万円」が課税対象となり、二次相続については子どもはそれぞれ400万円ずつが課税対象額となります。

一次相続と二次相続を合算すると、課税対象額は子どもそれぞれが1,700万円となり、一次相続で配偶者控除をフル活用した場合よりも安く済むことになるのです。

 

このように、目先の利益だけを考えて配偶者控除を利用してしまうと子どもが損をすることもあるため、遺産の相続については自分の後の世代のことも考えながら、どのような方法を取るべきか検討すべきといえるでしょう。

ちなみに、二宮様はこの話を説明したところ、通常通りの相続をすることに決めたとのことでした。

 

本日はここまでといたしましょう。

 

遺産が不動産しかない!不動産の分割方法

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルス、まだまだ終息しないようですね・・・。

マスクが手に入らないのがほんとに厄介で、一体どこへ消えてしまってるんだ~と思うばかりです・・・。

 

不幸中の幸いとはちょっと違いますけど、毎朝の通勤電車がすごい空いてます!

あんなに押し合い圧し合い、満員電車で通う意味って何なんでしょう?

いろいろ考えさせられる日々です。

 

そういえば、先日佐渡に行く機会がありまして、佐渡金山にも立ち寄ってみました。

世界遺産間近だって聞いてますけど、コロナウィルスが終息しないとお客さん来ないだろうな~。

 

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【歴史を感じる入口でした】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は新藤様(仮称:42才)です。

新藤様は地方に住むご実家にお父様が1人で住まわれていたのですが、先日他界され、遺産を処分することになったそうです。

相続人としては、配偶者であるお母様がすでに他界されていたこともあり、ご本人と弟、妹の3人ですが、この時に判明したのが、お父様の遺産がご実家の不動産以外、特段残されていなかったこと。

そして、皆で集まってご実家を誰が継ぐのかという話になったそうです。

しかし、3人とも実家に遠い場所に住んでいるため、あまり乗り気ではありません。

もし、実家を相続したとすれば、空き家として管理をしなければいけない上、毎年固定資産税を支払う必要があるためです。

そこで、他に何か良い方法は無いかということで、当事務所へ相談にいらっしゃいました。

 

このように、相続する遺産の中に不動産がある場合は、相続人が納得できるような遺産の分割が難しいことがあります。

たとえば、預貯金や株式、車など、様々な遺産があれば、「長男が不動産を相続する代わりに次男は車と預貯金半額、長女は預貯金半額と株式」など、話し合いで分けることは可能ですが、そう簡単に話し合いが進むわけではありません。

そこで、不動産をさまざまな形で分割することで相続することになります。

 

さて、不動産の分割方法としては主に次の4種類の方法がありますが、それぞれメリットとデメリットもあるため、どの方法が適切か、しっかり検討する必要があります。

 

1つ目の方法は、現物分割です。

現物分割は、土地や建物をそのまま相続人に対して分け与える方法です。

複数の不動産を所有していれば、相続人同士の話し合いでどの不動産を相続するか決めることも可能ですが、一つの不動産しかない場合にはその不動産そのものを分割します。

つまり、相続する土地が広くて物理的に分割できるようなら、境界線を確定して、分割したそれぞれの土地を個々の相続人の所有とします。

個々の所有となった後は、自由に利用、また処分ができるようになります。

そもそも分割できるほどの不動産を所有していなければ、採用できない方法です。

 

2つ目の方法は、換価分割です。

換価分割は、不動産売って換金してから、相続人たちで分ける方法です。

現金であれば分けやすいので、一番ポピュラーともいえる方法ですが、相続する不動産によってはなかなか売れなかったり、売れるまでに時間がかかったりすることがデメリットになります。

また、先祖代々受け継がれた実家を売却するのは嫌だという方がいらっしゃれば、採用できない方法になります。

 

3つ目の方法は、代償分割です。

代償分割は、相続人のうち誰かが不動産を相続する代わりに、他の相続人へ不足分を支払う方法です。

換価分割のデメリットである、先祖代々受け継がれた実家を売却したくない場合などは、その方が実家を相続する代わりに、他の相続人へお金を支払うことで解決が可能です。

ただし、不動産の相続人に、支払えるお金の資力がなければ採用できない方法であることは、いうまでもありません。

 

4つ目の方法は、共有分割です。

 

共有分割は、相続人全員で不動産を共有不動産として扱う方法ですが、後ほど紛争につながる可能性が高いため、あくまでも最後の手段として利用される方法です。

たとえば、新道様の例であれば、ご本人と弟、妹のそれぞれが3分の1の権利を持つ不動産として相続することになります。

共有不動産になってしまうと、全員の承諾を得なければ不動産の売却ができない(持ち分の売却は可)など、さまざまな制約があるためおすすめできません。

そして、相続人同士が仲が良ければそれでいいというわけでもなく、相続人が死亡すれば、その配偶者や子どもが相続をすることになり、権利関係がグチャグチャになることもデメリットになります。

 

ちなみに、新藤様については、換価分割の方法を取り、ご実家を売却した上で分割する方法を決断されたようです。

たしかに、自身の思い出もある実家を簡単に手放すことには葛藤もあったようです。

しかし、2015年5月26日に施行された「空家等対策特別措置法」が、新藤様たちの背中を押す要素になりました。

「空家等対策特別措置法」は、倒壊などの恐れのある空き家を減らして、所有者に対して適切な管理を求める法律ですが、この法律によって一定の要件を満たした空き家は、特定空き家として認定されることになります。

もし特定空き家に認定されると、建物が建っている土地へ固定資産税の優遇措置が撤廃されることになるため、固定資産税が6倍になるケースも考えられます。

管理もままならない遠方の実家をそのまま残しておくことがリスクにつながる可能性を考えて、新藤様は実家の売却を決定したようですね。

 

地方の空き家問題は少子高齢化社会でますます深刻になっていきますが、遺産として不動産がある場合には、その遺産が空き家として相続人の負担になる可能性も考え、生前に処分するなり、相続方法を検討しておきたいものですね。

 

今日はこのあたりにしておきましょう。

 

 

余命宣告とリビングニーズ特約

こんにちは!

こうのとりです。

私の父親は肺がんですでに他界しているのですが、間質性肺炎という診断を受けた際に、余命5年と言われ、本当に5年目に亡くなってしまいました。

父親の意思を尊重し、抗がん剤治療は受けずに、ホスピスでの治療を選択したのですが、他界する1週間前まで実家で過ごしてましたし、ほとんど苦しまなかったと思います。

もっと長く生きたかったとは思うけど、自分の意思とは別に事故などで死んでしまう人がいる中、余命宣告があったことでその後の5年間はいろいろな心構えができたともいえます。

もちろん、本人の気持ちは今となってはわかりませんが・・・。

少ししんみりした出だしになってしまいましたが、今回は余命宣告に関わる内容なので、記載させていただきました。

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年始には父の墓参りに行ってきました。 

 

 

皆様は生命保険のリビングニーズ特約については、ご存知でしょうか?

リビングニーズ特約とは、被保険者の余命が6か月以内と医師から判断された場合に、死亡時に受け取ることができるはずの死亡保険金の一部または全部を、生きている間に受け取ることができる特約です。

この特約によって生前に受け取った給付金については、自由に使うことができます。

高額になるであろう医療費に使うこともできますし、亡くなっていく方の意思を尊重した金銭の使い方もできるのです。

このように、個人を尊重したメリットの多いリビングニーズ契約ですが、税金面での扱いはどのようになるのでしょうか?

 

そもそも死亡保険金については、被保険者が亡くなった後で受け取ると、契約内容に応じて以下の税金のいずれかが課税されることになります。

① 契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じ場合、所得税

② 契約者(保険料負担者)は被保険者で保険金受取人が別の人の場合、相続税

③ 契約者(保険料負担者)が被保険者でも保険金受取人でもない場合、贈与税

 しかし、リビングニーズ特約で受け取るお金については、生前給付金であり、死亡保険金ではないため、税金の取り扱いも異なってきます。

 

まず、リビングニーズ特約を使って生前給付金を受け取った場合、受給者が所得税を支払うことはありません

これは、もともと疾病や重度障害になった際に支払わられる保険金が非課税であることに起因するものです。

生前給付金は、死亡保険金の前払いと言い換えることができるかもしれませんが、受け取りの条件が余命半年以内となっており、死亡が給付条件になっていません。

よって、上記の疾病や重度障害になった際に支払われる医療保険金が非課税となることと同等の扱いを受けることができるのです。

 

では、相続税の扱いはどのようになるのでしょうか。

実は、使いきれなかった現金があるかどうかが肝心で、生前に受け取って余っていた現金(預金)は、単なる相続財産として扱われます。

よって、相続税の課税対象になるというわけです。

 

ここでの注意点は、生前給付金に対しては、死亡保険金の非課税枠が適用されないことです。

生命保険などで、死亡した際に受け取ることができる死亡保険金については、特別な非課税枠が用意されています。

もし、働き盛りバリバリのお父さんが急逝してしまったら、残された家族はこの保険金が唯一の頼りとなります。

この時に、全てを課税対象にするには酷ではないかというお話。

しかし、生前給付金として受け取った場合には、この非課税枠(「500万円×法定代理人数」)の適用を受けることができないということになります。

 

これら様々な条件を踏まえたとき、余命6ヶ月の段階で生前給付金をもらうほうがいいのか、それとも死亡保険金として相続人に残すべきなのか、悩ましいところです。

どちらが良いかについては、様々な条件次第と言えるのですが、いくつかのケースに分けて説明していきます。 

① 相続財産が基礎控除の範囲内である

相続財産が基礎控除額の範囲内であれば、そもそも相続税はゼロなので、生前給付金としてもらっても死亡保険金としてもらっても問題はありません。

② 死亡保険金として受け取った

この場合は、死亡保険金の非課税枠が適用され、その範囲を超えた部分で相続税が課税されることになります。

③ 生前給付金を全額使い切った

例えば、死亡保険金が5,000万円だった場合に、2,000万円を生前給付金として受け取り、全額使い切ったとしまます。

残りの3,000万円に対しては、死亡保険金の非課税枠が適用され、その範囲を超えた部分で相続税が課税されることになります。

ただし、相続税については基礎控除額が「3,500万円+500万円×法定相続人数」ありますので、死亡保険金以外の財産を合わせて基礎控除額内であれば、相続税は課税されません。

④ 生前給付金を使い切れなかった

例えば、死亡保険金が5,000万円だった場合に、2,000万円を生前給付金として受け取り、1,000万円を使いきれずに残してしまったとします。

この場合、死亡保険金として受け取る3,000万円に対しては、死亡保険金の非課税枠が適用され、その範囲を超えた部分で相続税が課税されることになります。

一方、残った1,000万円は現金としてそのまま相続税の課税対象となります。

 

このように、リビングニーズ特約で受給した生前給付金については所得税が非課税であり、使いきれなかった部分については財産として相続税がかかる(かつ死亡保険金のような非課税枠はなし)ことには注意が必要となります。

法定相続人数や保険金の金額、全財産の金額によっては、課税対象額が大きく異なってきます。

我々の存在価値の1つでもありますが、これらを踏まえて、様々なパターンを検討しつつ、一番お得なお金の受け取り方を考えるべきです。

これが、正攻法の節税ともいえます。

 

今日はここまでにしておきましょう。

実家を残したければ限定承認

こんにちは!

こうのとりです。

昨日は事務所の大掃除をしたのですが、不要になった書類などを整理するのは本当に一苦労です・・・

それでも掃除が終わると心機一転というか、気持ちを新たに業務に取り組める気がしますね。

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【こちらは夜の浅草です。電気ブランが体に染みます~】

 

さて、今回まとめていくのは限定承認について。 

別の記事で相続放棄について記載すると思うのですが、財産と借金を比べて相続を放棄すべきかどうかについては、相続放棄と同じく限定承認についても、相続があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出なければいけません。

相続放棄も限定承認もしなかった場合には、単純承認をしたとみなされてしまうのです。

財産と借金を比べて相続を放棄すべきかどうかについて、全てを把握するために時間がかかりそうという場合や、財産と借金を相殺した時に、プラスであるのかマイナスであるのかわからないという場合に、この限定承認という手続きが有効となります。

 

まず、限定承認とは相続をするかしないか(単純相続か相続放棄)を検討するにあたり、相続財産に資産・財産と負債・借金が混在していた場合、資産額で相殺できる限度でのみ負債を相続するという非常に便利な相続方式です。

非常に便利ではあるもの、そこには大きなハードルがあるためあまり利用が広がっていません。

限定承認も相続放棄と同じく、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があるとは先に述べましたが、これに加えて限定承認は、法定相続人が複数いる場合、相続人全員が共同で行わなければならないとされています。

つまり、相続人のうち1人でも反対する者がいれば、限定承認を行うことができません。

たった3ヶ月の間に、相続人全員の同意をもらうこと自体が手間で、苦慮する場合もあるため、限定承認は相続人単独で申請できる相続放棄とは使い勝手が違うのです。

 

さらに、限定承認をするとき、取得する相続財産に不動産が含まれると、その不動産は、被相続人から相続人に対して、取得時の時価で譲渡したものとみなされることにも注意が必要です。

その結果、不動産が購入時から値上がりしていると、被相続人の生前の収入があったということとみなされ、準確定申告を行う必要が出てくる上、「みなし譲渡所得税」という税金が課税されることになります。

 

このように、便利な方式に見えて、実は複雑な限定承認を申請するよりも、相続放棄をしてしまった方が早いことから、敬遠されがちな相続方式なのです。

なお、3ヶ月以内に相続を放棄すべきかわからない場合には、家庭裁判所に「相続放棄のための申述期間伸長の申請」を行うという手段もありますが、今回は割愛します。

 

 

では、そんな限定承認をすることで受けることができるメリットをまとめておきましょう。

1つ目は、先にも述べましたが、相続した財産以上の借金を弁済する必要がなくなるという点です。

相続人が残した借金を、自腹で弁済する必要がなくなるということです。

2つ目は、不動産を手元に残すことができるという点で、この理由で限定承認が選ばれるケースが多いといえます。

思い出が詰まった実家だけはお金を払ってでも手放したくないという方にとっては、限定承認は有効な手段となるのです。

もちろん、不動産相当額の借金を弁済できなければ不動産を売却しなければいけないのことには注意が必要です。

3つ目は、後から見つかった隠し財産についても相続できるという点です。

もし相続放棄をすでに選択してしまった後、後から隠れた財産が大量に見つかったとしても、すでに相続をする権利はありません。

しかし、限定承認であれば、後から発見されたプラスの財産についても、負債と相殺されたのちに相続することが可能です。

4つ目は、 少人数で相続手続きを終わらせられる可能性があるという点です。

限定承認は相続者全員の同意が必要ではあるものの、相続者が配偶者と数人の子どもだけであれば、比較的同意は得られやすいのかもしれません。

昔のように兄弟が10人以上いるともなれば話は別ですが(笑)

さて、相続順位が同じ人が全員相続放棄をすると次順位の人が新たに相続人とされます。

つまり、配偶者と子ども2人が相続人だとして、子ども2人が相続放棄をすれば、その権利は被相続人の親、親が既に他界していれば被相続人の兄弟姉妹が得ることになります。

しかし、子ども2人が相続放棄をした理由が、借金が多額であったことだとしたらどうでしょう。

これらの理由も後順位の方々に伝達しておかなければ、思わぬ不利益を他の人が被る可能性もあるのです。

このような事態にならないように、限られた人数で話をつけたい場合には限定承認が選ばれるケースもあります。

 

続いて、限定承認のデメリットについても簡単に触れておきましょう。

1つ目は先にも述べましたが、相続人全員で行う必要があるという点です。

相続人のうち1人でも反対する人がいた場合は限定承認をおこなうことができません。

2つ目も先に軽く触れましたが、譲渡所得税を支払う必要があるという点です。

限定承認の場合、被相続人から相続人に財産が時価で譲渡されたとみなされるため、譲渡所得税を支払う必要があります。

さらに、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をおこなう必要もあるため、単純承認よりも手続きが増えます。

3つ目も手続きの煩雑さに関する者ですが、債務清算手続きに手間がかかる点です。

限定承認の場合、裁判所の手続きで債務を清算することになります。

そのため、裁判所に様々な申請書を提出するなど、手続きに手間がかかりますが、その間は財産を処分することができないため、相続放棄には無い大きなデメリットといえるでしょう。

 

 

最近の方というのは案外ドライなようで、田舎の古い一軒家である実家を継いでも仕方ないしなぁと考える方も多いようですね。

たしかに、誰かが住むわけでもない、古家付きの不動産を遠方に所有していても管理が行き届かないことは間違いありません。

特定空き家に認定されれば支払う固定資産税額も増えることになりますし・・・。

 

今日は頭がいっぱいなので、ここまでとします!

遺言書は自筆証書遺言か、公正証書遺言か

こんにちは!

こうのとりです。

最近は勉強で頭がパンパンですが、まだまだ勉強不足を痛感しています。

いつになったら自分の自身につながるのかなぁと、不安て仕方ありません(汗)

その不安を払拭すべく、今日も頭の整理をしていきたいと思います。

 

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【今年は暖冬ですね!こちらは昨年の木場公園です】

 

さて、今回ご相談にきた吉田様(仮称:65歳)は、有名なおしどり夫婦である俳優の中尾彬さんと女優の池波志乃さんたちが行ったという終活に触発され、自身の身辺を整理し始めたということでした。

吉田様は妻と子供3人の家族ですが、そんな吉田様には終活をするにあたって、1つの懸念事項がありました。

それは、勘当してしばらく会っていないという長女の存在。

詳細は割愛しますが、とにかく自分勝手なことをして出て行ったことから、もし、自身が死んで遺産分割となっても、この長女だけには遺産を残したくないという強い思いがありました。

しかし、いくら吉田様の思いがあったとしても、法定相続人に対しては遺産を相続する権利(遺留分)が与えられています。

そこで、吉田様の意思を尊重するために、とある遺言書を残すことにしたというわけです。

 

さて、遺言とは自分の死後のために、財産の処置などを言い残すことですが、本人が死んだ後はその真否を正すことはできません。

それだけ重要なものですから、口約束でも成立してしまう「契約」とは違って、遺言の残し方については、法律で厳しく定められているものなのです。

そして、その方式は書面とされており、その方式を守らない遺言は全て無効です。

例えば、声を録音テープによって遺言を録音したとしても、スマホで動画を撮影していたとしても、法律では認められず、無効です。

録音テープなどのデータは、改ざんの可能があるという理由からです。

現在、日本国内で有効となる遺言の残し方は書面のみです。

  

そして、この書面にも3つの種類があります。

①自筆証書遺言

遺言者が、遺言の全文・日付・氏名を自書し、捺印した遺言書のことです。

自分で紙に書き記す遺言書のことで、誰でも気軽にいつでも作成が可能です。

そのため、遺言書としては一番多く利用されていますが、書き間違えがあったり、その内容が判然としない場合には遺言書として無効と判断されることがあり、注意が必要です。

 

②公正証書遺言

遺言者の指示により公証人が筆記した遺言書に、遺言者、公証人および2人以上の証人が、内容を承認の上で、署名・捺印した遺言書のことです。

公証役場にいる公証人と呼ばれる人が、法律の規定どおりに公正証書として書類を作成します。

確実に有効な遺言書を残したいときや相続財産の金額が大きい時に主に利用されている方法で、一番確実に遺言を残すことができます。

 

③秘密証書遺言

遺言者が遺言書に署名・捺印の上封印し、封紙に公証人および2人以上の証人が署名・捺印等をした遺言書のことです。

公正証書遺言の無いように加えて封印されることで、遺言内容について公証人に知られずに作成できるため、役人であっても誰にも知られたくない!という場合に利用できますが、あまり利用はされていません。

 

遺産相続に関しては、主に①か②で遺言書を残すことになりますが、①よりも②のほうがはるかに効果の強い遺言書となることはご理解いただけたと思います。

  

なお、吉田様の場合、遺言執行者として、私の働く事務所を指定してくださいました。

あらかじめ遺言執行者を決めておくと、遺言の内容を正確に行う権利を得ることとなります。

この遺言執行者とは、遺言に記載することで指定することできるのですが、指定できるのは、未成年者及び破産者以外のものです。

つまり、相続人を指定することもできますが、基本的には第三者であり、法律知識や事務能力に長けた個人又は法人を指定することがほとんどです。

そして、執行できる内容は相続登記や名義変更ですが、しかも単独でできるのがポイント。

遺産相続では誰かのサインがもらえないから話が進まないという事態が起きがちです。

遺言執行者を指定することで、相続人の勝手な行為を防ぎ、遺言内容の確実な履行を行うことができるというわけです。

 

さて、長女にはビタ一文渡したくない!という吉田様の強い意志を踏まえ、まず我々を遺言執行者として公正証書遺言を作成しました。

そしてその中に『相続人による虐待行為があったために相続排除を希望する』旨を記載しておくことになりました。

もし、吉田様の長女が遺留分を主張してきたとしても、相続排除が認められれば遺留分すらもらうことができなくなります。

なお、相続排除の該当要件としては、暴力がふるう・侮辱をしてくる・著しい非行のあるなどの推定相続人です。

吉田様の長女が該当するかどうかは、また別のお話。

ひとまず、被相続人の死後、我々遺言執行者が家庭裁判所に申立をすることで相続排除の手続きを執行することも可能となったというわけです。

 

最後に、遺言が見つかった場合の手続きスケジュールをまとめておきましょう。

① 遺言を発見する

② 家庭裁判所へ検認の申し立てをする(公正証書遺言は不要)

③ 遺言執行者が就職する

④ 遺言の実現を行う

・財産目録の調製と相続人への交付を実施する

・財産目録に基づく財産管理を行う

・遺言の執行に必要な登記行為を行う

⑤ 遺言執行が終了した旨を相続人に通知する

 

今日は遺言書についてまとめてみましたが、相談にいらした吉田様も、ほっとした顔で帰っていかれたのが印象的でした。

親子であっても、兄弟であっても、遺産相続では揉め事が多くなります。

万が一の際にそのような事態にならないよう、皆様も遺言を残してみてはいかがでしょうか。

 

本日はここまでといたしましょう。