遺産の宅地にセットバックの可能性あり!相続税評価額はどう変わる?

こんにちは!

こうのとりです。

 

在宅ワークが多くなると、家の汚れについつい目がいきます。

そこで、カーペットの掃除にと、重曹をまいてみました!

しかし・・・掃除機で重曹を吸い取ったところ、大変!

安物のハンディ掃除機だったせいか、フィルターで重曹がろ過されず、掃除機の排気口から重曹が勢いよく飛び出す始末!

家の中が、バルサンを焚いた後のようになってしまいました・・・まぁ、無害なのでいいですけどね^^;

 

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  【ベーキングパウダーにも変化する重曹ってすごいですよね】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は金井様(仮称:48才)です。

金井様は、遺産分割協議に際して、ご実家の宅地の相続税評価額を算出することになったのですが、宅地にセットバックの可能性があるという指摘が親族からあったとのことで、評価額の算出方法について相談にいらっしゃいました。

 

そもそもセットバックとは、建築基準法第42条の第2項に規定されている道路に面している宅地のうち、将来その道路を4m幅に広げる可能性を見越して、宅地を中央線より2mの範囲で後退させた部分のことを指します。この部分には建築物はもとより、門や堀なども建てることはできません。

なぜ、セットバックが個人の資産である宅地に設けられることになったかといえば、建築基準法第43条にある「建築物の敷地は、建築基準法上の道路に2m以上の長さで接していなければならない」という接道義務(火災などの災害時の消火活動、救命活動などに備えることを目的)があるからです。

そして、この建築基準法上の道路については、原則として幅が4m以上あることが必要とされています。しかしながら、日本には幅が4m未満の道が多く存在しているため、宅地が接道義務を果たすことができません。

そこで、この救済措置として、建築基準法第42条の第2項にて、いわゆる「みなし道路」が設けられたというわけです。このみなし道路は2項道路と呼ばれています。

 

さて、相続税評価の話に戻しますと、2項道路に接している宅地のうち、セットバック部分は家や建造物を建てらず、利用することができないのですから、所有者にとって価値の無い土地であるといっても過言ではありません。

一方で、接道義務が定められたのは1950年であるため、それ以前に建てられた古家に関しては2項道路に接していてもセットバックをせずに宅地利用されている場合もあるわけです(このような宅地に再建築をする場合に、セットバックが求められることになります)。

これらの状況から、セットバックを必要とする宅地の相続税評価額については7割を控除し、価値率を3割とすることで計算されます。

 

具体的な計算方法としては、(1)宅地全体の評価額を計算し、算出された評価額に対して、(2)セットバック部分の割合から、セットバック部分の評価額を算出します。そして、(3)宅地全体の評価額からセットバック部分の評価額の7割を差し引きすることで、最終的な評価額とします。

たとえば、敷地全体が200㎡(1㎡を100,000円とする)、セットバック部分が20㎡の宅地について考えてみましょう。

(1)宅地全体の評価額は20,000,000円です。

(2)セットバック部分は全体の10%なので、セットバック部分の評価額は2,000,000円です。

(3)20,000,000円-(2,000,000円×70%)=18,600,000円がこの宅地の相続税評価額となります。

 

ちなみに、自身が所有している宅地の一部が私道として利用されている場合にも、評価額の控除がなされています。

具体的には、通り抜けができる私道については100%の控除行き止まりがある私道の場合にはセットバックと同じく7割を控除し、価値率を3割として計算されます。

 

さて、相続税とは関係ありませんが、セットバックをした部分に関しては、固定資産税・都市計画税が非課税です。ただし、非課税とされるためには申告が必要です。

そもそも宅地については特例で固定資産税が6分の1に減額されていますし、セットバック部分も宅地全体の数パーセントであるため、あまり節税の効果が無い可能性もありますが、頭の片隅に入れておくべきでしょう。

 

金井様は、今回のご相談でセットバックについてもクリアになり、遺産分割協議が進むと喜ばれておりました。肉親であっても骨肉の争いになる可能性がある遺産分割については、できるだけスムーズに行いたいものですね。

 

本日はここまでといたしましょう。

遺産分割協議に全員が集まらない!行方不明者に対する失踪申告と不在者財産管理人の指定

こんにちは!

こうのとりです。

  

東京アラートって一体なんだったんだろうな~と思いつつ、

アメリカの株価暴落を後目に、経済活動再開ってすごい難しいな~と感じる日々です。

早く昔のように戻ればいいなと思いますが、油断は禁物ですね!

  

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【桜はすっかり新緑に変わりました。在宅ワークはニューノーマルになるのでしょうか?】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は大内様(仮称:48才)です。

大内様は先日、お母様がお亡くなりになり、10人いる兄弟姉妹(大家族!)を集めて遺産分割協議をすることになったのですが、久々に全員に連絡をしてみたところ、その中の一人がどうしても連絡がつかず、困ってしまっているとのことで、ご相談に参られました。

たしかに、遺産分割協議については、相続人全員で行うのが原則です。遺産分割協議をするために、故人の戸籍謄本を辿っていくことで相続人を確定していく作業を行うのですが、確定した相続人に連絡をしていくのが、案外骨の折れる作業になります。大内様のように兄弟が多かったり、実は相続の権利がある親族が新たに見つかったりすれば、なおさらです。

しかし、連絡を取ろうとしてもどうしても連絡がつかない行方不明者がいる場合には、どうしたらよいのでしょうか?

 

その場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選定を申し立てることができます。

任命された不在者財産管理人が、行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加することで、協議を滞りないものとすることができるのです。

なお、申立てにあたっては、不在者財産管理人選定にかかる管理費用について、家庭裁判所に納める必要がありますが、予納金については30~50万円と高額になることには注意が必要です。

 

さて、もし不在者財産管理人を選定して遺産分割協議を行った場合、その後行方不明者が一向に現れなければ、第3者である不在者財産管理人が分割された遺産の管理をし続けなければなりません。これでは、不在者財産管理人にリスクが多すぎます。

このような状態を回避する方法として、行方不明者の遺産相続分は少なく配分しておいて他の相続人が一時的に預かり、もし行方不明者が戻ってきた場合に、預かっていた遺産を受け渡すという帰来時弁済型遺産分割の方法が利用されることがあります。

もちろん、遺産を預かる相続人に関しては、使い込みを避けるためにも、家庭裁判所に対して自身の資力が十分にあることを証明しなければなりません。

 

また、行方不明者である相続人が生きているかどうかも分からない場合には、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てるという方法もあります。

この申立てによって、行方不明者の消息不明となってから(最後の連絡など)7年が経過している場合に限り、失踪宣告がなされ、行方不明者が亡くなっているとみなしてもらうことができるのです。

ちなみに、震災などに被災して行方不明者となった場合(危難失踪)には、危難が去ったときから1年の経過にて失踪宣告の申立てが可能となる特例もあります。

なお、当然ではありますが、失踪宣言の申立てができるのは利害関係人に限られ、行方不明者の配偶者や相続人、財産管理人、受遺者など、失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者とされています。

 

失踪宣告を経た遺産相続について注意すべき点は、その行方不明者に子どもがいる場合、その子が代襲相続人となる点です。ただし、行方不明者が亡くなったとみなされた日が、被相続人が亡くなる前であれば、そもそも行方不明者は相続人でなかったことになるため、代襲相続は発生しません。

また、行方不明者が見つかって失踪が取り消された場合には、すでに行った遺産分割は取り消されないものの、受け取った遺産が残っているのであれば、その範囲内で遺産を返す必要があります。

なお、失踪宣告の手続きには少なくとも半年の時間がかかるため、相続税の申告期限(被相続人の死後10ヶ月以内)に間に合わない可能性が十分にあります。この場合、申告期限の延長だけでは不十分になるケースが多いため、一旦は不在者財産管理人を選任して申告期限までに相続税申告を済ませておき、失踪が宣告された後で改めて修正申告をすることになります。

 

大内様は、不在者財産管理人と失踪宣告の併用で問題を解決することになりましたが、遺産分割協議については、どんな状況であってもすんなりいくことはないなぁと、再認識させられたのでした。

 

本日はここまでといたしましょう。

遺産分割!相続する不動産の価値はどうやって決めるの?

こんにちは!

こうのとりです。

  

ゴールデンウィークは7~8割の自粛率だったそうですね!

日本人ってこういうところ、すごいですよね!

罰則も無いのに、みんな家にいるんだもんな~!

もともとソーシャルディスタンスを大事にする民族だし、このままコロナが終息すればいいんですけどね。

そしたら、自粛した分、苦しかった観光地や飲食店にお金が循環すると思います!

今はみんなで辛抱ですね。

 

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【間近で見ることがなかったスカイツリー、でっかいです!】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は椎名様(仮称:62才)です。

椎名様は先日お父様が亡くなられ(お母様はすでに他界)、お父様の遺産を妹と弟の3人で分けることになったそうです。

しかし、残された遺産はご実家の不動産のみでした。

そこで、この不動産を売却して、お金を3等分しようという話に一度は決まったのですが、しばらくしてから妹さんが「思い出の残る実家を残したい!」ということになり、実家を継ぐ代わりに、その他2人に相続相当分の金銭を支払うことで合意しました。

 

椎名様のようなケースは、比較的良くある話なのですが、今回椎名様がご来所された理由は、相続相当分の金銭はどのようにして決めれば良いのか?というご相談だったのです。

 

ちなみに、遺産分割において、不動産の分割方法はいくつかの種類に分けることができます。

まずは、不動産を売却してから売却代金を分割する換価分割、次に、実際に不動産の現物を3等分する現物分割、そして、椎名様のような、特定の相続人が不動産を相続する代わりに金銭を支払う代償分割です。

 

そして、代償分割を行う場合には、不動産の価値を評価することになりますが、この評価の種類は、相続税申告評価額、固定資産税評価額、公示価格、不動産鑑定士による評価額、実勢価格など多岐にわたるものです。

 

1、相続税申告評価額

相続税路線価ともいいますが、相続税を算出するために全国共通で設定された道路ごとの評価額です。毎年評価が見直されているのでタイムリーな価格を参考にできますが、その価格は実勢価格(実際に取引が行われた場合の評価額)の80%程度の金額とされます。土地のみの価格です。

 

2、固定資産税評価額 および 固定資産税路線価

固定資産税路線価は、市町村が固定資産税を課税する際に基準となる道路ごとの評価額です。3年ごとにしか評価が見直されないことには注意すべきでしょう。その価格は実勢価格の70%程度の金額とされます。路線価については土地のみの価格です。

一方、毎年課税されている固定資産税評価額については、この固定資産税路線価を元に決められているもので、土地のみではなく建物についても評価額の参照が可能です。こちらも実勢価格の70%程度の金額とされています。

 

3、公示価格

公示価格とは、国土交通省によって定められた、土地の評価額です。不動産鑑定士が関与し、その鑑定結果をもとに評価されています。毎年見直しが行われて、例年3月下旬頃に公表されるものです。

不動産鑑定士が関わっているだけあり、実勢価格により近い価格ではありますが、土地のみの価格しか確認できません。実勢価格の80~90%程度の金額とされています。

 

4、不動産鑑定士による評価額

個別に不動産鑑定士に依頼をして得られた評価額については、信頼性が高く、遺産分割調停などにおいても利用されるものです。それだけ信頼度が高いとはいえども、鑑定を依頼する場合には鑑定費用がかかることがネックとなります。親族同士が不動産の評価額で紛糾しない限りは、利用されにくいといえるでしょう。

 

5、実勢価格

実際に取引が行われた場合の価格である実勢価格を知るためには、不動産会社の査定を受けるという方法がポピュラーです。市場で取引されている類似物件や建物の外観などを踏まえながら総合的に値付けされるものですが、依頼をする不動産会社によって価格が上下するというデメリットがあります。

 

これだけ多くの参考価格があると、どれを選択したら良いかわからないという方も多いかもしれませんが、ここには大きなポイントがあります。

実は、合意形成さえ取れればどの価格を参考にしても良いのです。

つまり、代償分割を行う場合に、代金を受け取る相続人が納得しさえすれば、どの価格を参考にして代償すべき金額を決めても良いのです。

2つの評価額を組み合わせて参考にしても良いですし、不動産会社に査定を依頼して見積もられた金額だけを参考にしても良いということです。

 

遺産分割協議というと、何やらお堅いイメージになりますが、あくまでも「話し合い」に過ぎません。話し合いで合意さえできれば、相続分をどのように配分しようが、問題無いのです。

法定相続分や遺留分は、法に則った場合にはこのように分割しなさいという決まりであり、租税の計算などに使われる形式的なものです。

もっとも、話し合いで簡単に決まることではないので、法的な根拠を元に遺産分割協議が行われるという実態はあります。

どんなに仲が良い肉親であっても、遺産相続で骨肉の争いに発展する可能性は十分にありますので、そんな争いに発展しないためにも、法に則りながら、平等に分割するのが良いともいえますね。

 

さて、椎名様は結局、知り合いの不動産会社に依頼をして不動産査定をしてもらい、その金額を元に代償分割を行ったということです。

とはいえども椎名様も弟様も、実は実家を売却することに抵抗が無かったわけではなく、「実家を妹が引き継いでくれるなら」ということで、結果としてわずかな現金を代償として引き受けるだけで、合意したそうです。

そして、今では1年に一度は、思い出のあるご実家に集まるようになったそうですよ!

 

 

本日はここまでといたしましょう。

不動産を相続するときの流れとは?

こんにちは!

こうのとりです。

 

緊急事態宣言が延長となりましたが、ほんとにコロナによって世界が混沌としている気がします・・・。

税理士事務所としては、5月ごろまでが繁忙期なのですが、今年はちょっと違った忙しさですね。

資金繰りですとか助成金のお話が多く、繁忙期はまだまだ続きそうです。

ここは皆の力を合わせて、乗り切っていきたいですね!

 

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【桜の木はすっかり新緑となりました】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は寺岡様(仮称:38才)です。

寺岡様は奥様のお父様の遺産相続(特に不動産)に関して、どのような進め方をして良いかわからず、まずは専門家のアドバイスをということで来所されました。

たしかに、ひとえに相続とはいえども、被相続人がお亡くなりになった後の流れを時系列で理解しておくのは重要なことです。その大きな理由な1つとしては、遺産相続に関わる申請について、それぞれ期限が決められているからです。

 

<被相続人の臨終より7日以内>

・葬儀社に相談

→各種相談、火葬場の予約などを代行してくれます。病院から葬儀社の紹介を受けることもあるでしょう。また、終活の一環で、生前に葬儀社を決めている場合もあるため、後述する遺言書の有無や財産の有無も含め、日頃のコミュニケーションが重要といえるでしょう。

 

・死亡診断書を病院に記載してもらう

→コピーを何部か取っておくと、様々な手続きの際に便利です。

 

・死亡届を死亡地か本籍地、または届出人の所在地の市区町村役場に提出

→同時に火葬許可申請書を提出することで、火葬(埋葬)許可証が発行されます。なお、死亡診断書と死亡届は同じ用紙であることが多いようです。また、火葬許可申請書に火葬場所を記載することになるので、葬儀社などに事前確認をしておきましょう。

 

<被相続人の臨終より10日~14日以内>

・年金関係の手続き

→年金受給停止、年金受給権者死亡届の提出など、説明は割愛

 

・保険関係の手続き

→国民健康保険証の返却、介護保険の資格喪失届など、説明は割愛

 

・住民票関係の手続き

→住民票の抹消届、住民票の除票の申請、世帯主の変更届など、説明は割愛

 

<被相続人の臨終後なるべく早め

期限はないものの、相続放棄および限定承認の手続きは相続発生から3ヶ月以内という非常に短い期間であるため、遺産に関わる以下4つの項目は、葬儀終了後、速やかに行う必要があります。

 

・遺言書の有無の確認および検認

→公正証書遺言以外の遺言書については、家庭裁判所の検認が必要です。中身が気になるかもしれませんが勝手に開封しないように注意しましょう。

もし、家の中に遺言書が見つからない場合でも、被相続人が公正証書遺言を残していれば、公証役場の遺言検索システムで遺言書の存在を確認することができます。

 

・相続人の調査

→被相続人の戸籍謄本などを取り寄せ、法定相続人を確定させていく作業ですが、この作業が案外、骨の折れる作業であり、被相続人の死亡時の戸籍謄本から、戸籍を遡って取得していくことになります。転籍や婚姻など、様々な事情で戸籍は変遷していくため、集めていくと最終的には複数枚の戸籍に及ぶこともあります。

この作業の結果で血縁者が確定すると同時に、法定相続人も確定します。

 

・財産の調査

→生前あらかじめ財産が整理されていればよいのですが、突然の死去だった場合などはそれぞれを調査していかなければなりません。

不動産関係で財産となるのは、土地や建物の現物以外に、借地権や借家権が挙げられます。不動産関係以外の財産としては、預貯金、生命保険、株式(有価証券)、ゴルフ会員件、貴金属、自動車などが該当します。

財産調査の手がかりは郵送物や納税書類等ですが、煩雑になることも多いため、これらの調査を専門家へ代行依頼することも可能です。

 

・遺産分割協議

→法定相続人と財産が揃ったら、遺産分割協議を行うことになります。

基本的には法定相続人全員が顔を突き合わせて話し合うことで、相続人全員の合意形成が必須です。

相続人全員の合意形成がとれれば、合意の証明として遺産分割協議書を作成することになります。この遺産分割協議書は、被相続人の各種名義変更や預金引き出しの際に重要となります。

 

<被相続人の臨終後3ヶ月以内>

・相続放棄または限定承認の申述

→相続の手続きをタイトにしているのが、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内を期限としている、相続放棄または限定承認の申述です。

相続放棄は借金などのマイナスの遺産が多い場合に遺産を放棄をする方法で、限定承認はプラスの遺産とマイナスの遺産のどちらが多いかわからない場合に利用し、結果として財産がプラスになった部分のみ引き継ぐ方法です。

ここで重要なのが、相続放棄は相続人一人一人が単独で行える申述である一方で、限定承認は相続人全員の共同で申述しなくてはならない点です。

さらに、期限を過ぎれば単純承認をしたと見なされるので、マイナスの遺産が多い場合でもその遺産を相続していく必要が出てきてしまいます。

このような事態を避けるためにも、遺言書、相続人、財産の調査および遺産分割協議については、速やかに行うべきなのです。

ちなみに、特段の事情があれば、相続放棄または限定承認の申述の延長が認められることもあります。どうしても進捗が悪い場合には家庭裁判所へ相談しましょう。

 

<遺産分割協議終了後、相続財産が確定したら速やかに>

・相続財産の名義変更

→相続財産の中に不動産が含まれる場合には、その不動産の名義変更をしておくほうが無難です。名義変更は義務ではありませんが、二次相続などが起こった場合に揉め事にならないよう、あらかじめ自身の名義に変更しておく べきといえるでしょう。

 

<被相続人の臨終後4ヶ月以内>

・被相続人の所得税の確定申告(準確定申告)

→被相続人は1年の途中で臨終を迎えることになるでしょうから、その時点までの被相続人の確定申告は、相続人が代わって 行います。

この、準確定申告についても、相続人全員で行う必要があります。もし、個別で行った場合には、他の相続人に申告内容を通知しなければならないのです。

 

<被相続人の臨終後10ヶ月以内>

・相続税の申告

 →相続財産が多額であり、控除分を超えてしまう場合には、相続税を申告しなければなりません。こちらも被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内と期限が明確に決められており、万が一期限に間に合わなければ、延滞税や無申告加算税などの追徴課税が科されることになるため注意が必要です。

 

<その他>

 ・公共料金の名義変更、解約

→電気、ガス、水道、インターネット、携帯電話などが挙げられますが、これらも早めに行ったほうが良いでしょう。

 

・各請求関連

→葬祭費、埋葬費、高額医療費、生命保険金などの請求はもれなく行いましょう。

 

 以上が相続における一連の流れです。

 やることがほんとにたくさんありますね。

ご相談者の寺岡様は、被相続人が存命のうちに相談し、なるべく整理をしておくとのことでしたが、やはり終活は大事なんだなと実感いたしました。

 

本日はここまでといたしましょう。

民法大改正による不動産相続への影響とは!?

こんにちは!

こうのとりです。

 

 

現在外出制限真っただ中ですが、最近外出したのはいつだろうな~と思っていると、2月初旬にイベント参加した時以来、まともな外出をしていないことに気が付きました(汗)

基本的に出不精だし、勉強もあるしってことで納得なんですが、過去の写真を眺めていたら「アルパカ」を発見!

一緒に行ったとある女性から「あっちにカピバラがいるよ!」といわれ、他の男性からは「ヤギがいるから見に行ったら?」といわれ、結局いたのは「アルパカ」だったという・・・ややこしや・・・。

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【カピバラでもヤギでもなく、アルパカです】

 

さて、今回はお客様の案件ではありません。

相続法に関する近年の大きな出来事について、まとめておきたいと思います。

その大きな出来事とは、およ40年ぶりの改正といわれる民法の大改正です。

 

相続法に関しては2018年7月に改正され、その施行が段階的におこなわれていますが、コロナショックの渦中において、4月1日にも施行された内容もあるのです。

こういう改正や特例措置があるから、税理士資格は勉強が大変で・・・という愚痴はさておき。

 

主な改正内容(施行日)は以下のとおりです。

1、配偶者への優遇措置(2019年7月1日、2019年4月1日)

2、遺言に関する条件緩和(2019年1月13日、2020年7月10日)

3、介護(特別寄与)に応じた額の金銭要求(2019年7月1日)

4、預貯金の払戻し制度の新設(2019年7月1日)

5、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ(2019年7月1日)

 

1、配偶者への優遇措置

配偶者への優遇措置としては、以下2点の改正です。

① 居住用不動産の贈与等に関する優遇(2019年7月1日より施行)

② 配偶者居住権の新設(2019年4月1日より施行)

 

これらの優遇措置がなされた背景について考えてみましょう。

たとえば、地方の実家に住む父と母、都内に住む息子の3人家族だったとしましょう。

父が他界した場合、相続の権利は母と息子に半分ずつの分配になります。

もし実家の不動産に3,000万円の価値があり、預貯金が1,000万円あったとすれば、どのように遺産を分配すればよいのでしょうか。

本来は2,000万円ずつの相続になるはずですが、実家に住み続けたい母が実家を相続すれば3,000万円の相続、息子は現金1,000万円のみ相続することになり、息子の相続分が1,000万円足りません。

すると母は、息子に対して不足分を補わなければいけません。

このような事態を解消するために新設されたのが、①と②の措置です。

 

①についてはすでに施行済ですが、婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産の遺贈又は贈与については、遺産分割の際に相続財産としてみなさないという措置です。

本来、生前贈与は遺産の先渡しという取り扱いでした。

そのため、愛する妻のためにと生前贈与をしたとしても、遺産分割の際には結果的に相続の対象となってしまいます。

 

先ほどの例でいえば、もしマイホームの持ち分を半分生前贈与していたとすれば、今回の措置によってマイホームに関する相続1,500万円分と現金のみが遺産相続の対象となります。

結果として、2,500万円分を半分ずつ相続するため、各自1,250万円の相続となり、息子に支払うべき金額を1,000万円から250万円までおさえることができました。

 

そして、先日施行されたのが、②の配偶者居住権の新設です。

こちらは、配偶者が引き続きマイホームに住み続けることができる措置になります。

この配偶者居住権については、相続発生時に自宅に住んでいた配偶者にだけ認められ、かつ、登記が必要な措置です。

 

先ほどの例でいえば、生前贈与をしていても息子へ現金補填をしなければいけないため、問題が全て解決したとはいえない状態でした。

しかし、配偶者居住権の新設により、問題は全て片付きます。

これは、所有権を配偶者のために分離するという、非常に大きな措置です。

この措置によって、本来相続するはずの3,000万円相当の所有権を、配偶者居住権1,500万円と負担付き所有権1,500万円とに分割することができます。

そして、相続の際には、それぞれの所有権を相続するのです。

 

つまり、母は配偶者居住権1,500万円と現金500万円を相続し、息子は負担付き所有権1,500万円と現金500万円を相続することになります。

母の負担が相当軽くなったといえるでしょう。

 

2、遺言に関する条件緩和

遺言に関する条件緩和についても、以下2点の改正です。

①自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月13日より施行)

②遺言保管制度の新設(2020年7月10日より施行)

 

①については、自筆証書遺言のうち財産目録はパソコンで作成できるようになったというもので、なんだか時代に追いついていない気もしますね・・・。

②については2020年7月10日からの施行ですが、法務局で遺言者の自筆証書遺言を保管してもらえることになるため、自宅で保管していて紛失したという事態を防ぐことができます。

 

3、介護(特別寄与)に応じた額の金銭要求

こちらもよくある話ですが、面倒見るといっていた相続人の肉親が面倒を見ず、他の親戚が面倒をみていたりというケースに関して、金銭を要求できるというものです。

詳細は割愛しますが、相続人ではない親族が被相続人に特別寄与した場合、相続の恩恵を特別寄与料として受け取ることができるようになりました。

すでに施行済の法律です。

 

4、預貯金の払戻し制度の新設

こちらも遺産相続のあるあるですが、遺産分割が終了するまでは預貯金に関しても勝手に使用ができないため、葬儀を執り行う相続人が自己負担で建て替えるケースが多く、負担となっていました。

そこで、被相続人の葬儀を行う相続人に関しては、単独であっても、被相続人の預貯金の一部を払戻せるようになりました。

こちらも施行済の法律です。

 

5、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ

遺留分は、最低限保証された相続人の取り分です。

この遺留分の存在によって、本来は避けるべき共有不動産が存在することになっていました。

共有不動産は、処分が厄介になるだけではなく、特に会社の事業承継の足かせになっていました。

このような事態を避けるべく、共有不動産となりうるケースにおいては、遺留分に関して現金のみが請求できるようになりました。

「減殺」ではなく「侵害額」になったのですね。

こちらも施行済の法律です。

 

 

相続に関するこれらの措置の背景には、もちろん遺産相続問題があり・・・。

肉親であっても、骨肉の争いに発展する可能性はあります。

いくら仲が良かった肉親であってもです。

このような事態になる前に、遺産に関しては真剣に、かつ被相続人が健在な時から話し合いの場を設けておくべきといえるでしょう。

 

本日はここまでといたしましょう。

不動産売却時の節税方法について

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスの影響で、緊急事態宣言が出されました。

経済への悪影響からリーマンショックやブラックマンデーと比較されますが、

それよりもスペイン風邪の再来かもしれません。

ともすれば100年に一度の出来事です。

当時は医療がそこまで発達していなかったので、

日本での死者も38万人にのぼったそうです。

人の流れが止まると、お金の流れが止まります。

しかし、今は辛抱でしょうね。

自分のせいで誰かの大切な人をあやめるわけにはいかないのです。

 

さて、3月下旬に某インターネットショッピングサイトで、「マスク」を買いました。

30枚で1,680円なので、1枚55円ですか。

まぁこのご時世で妥当かなぁと思い。

届いたら中国製でした。しかも簡素な袋に入って。

これは現地で作ったものを高く売ってるだけでしょうけど、

マスクを買い占める転売屋だけはちょっと許せないですよね~いかがなものか、です。

 

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【一応使えそうなマスク】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は城之内様(仮称:40才)です。

城之内様はお父様からの遺産のうちの1つであるご実家(不動産)の処分について頭を悩ませておりました。

相続をしたものの、遠方のため使い道が無く、管理もままならないどころか、このままだと、ただただ毎年固定資産税を支払うことになりそうだというのです。

そこで、不動産の売却を検討しているが、売却時に税金がどれくらいかかるのか、あらかじめ知っておきたいということでした。

 

確かに不動産を売却する際には、様々な税金がかかります。

ただし、実際には必ずかかる税金と、状況に応じてかからない税金とに分けることができます。

 

必ずかかる税金

印紙税、登録免許税

状況に応じてかからない税金

譲渡所得税、住民税(+復興特別所得税)

 

それぞれの税金について、解説していきましょう。

1、印紙税

不動産売買契約書に貼りつける収入印紙です。

契約金額によって、貼りつけなければならない印紙の金額は異なります。

なお、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成される不動産の譲渡に関する契約書については、軽減措置が適用されています。

不動産の売買としてメジャーである価格帯の印紙税は以下のとおりです。

500万円超~1,000万以下・・・5,000円(本来10,000円)

1,000万円超~5,000万以下・・・10,000円(本来20,000円)

5,000万円超~1億円以下・・・30,000円(本来60,000円)

 

2、登録免許税

いわゆる登記のための代金です。

なお、不動産売買に関わる登記は主に3種類です。

抵当権抹消登記は住宅ローンが残っている場合、住所変更登記は売主の現在の住所や氏名が登記簿上の住所と異なる場合などに必要です。

抵当権抹消登記(売主)不動産の数×1,000円(+司法書士への報酬)

住所変更登記(売主)不動産の数×1,000円(+司法書士への報酬)

所有権移転登記(買主負担のため割愛)

 

3、譲渡所得税および住民税(+復興特別所得税)

不動産の売買金額に固定資産税などの清算金を加算した金額(譲渡収入金額)から、不動産の取得費および譲渡にかかった費用を差し引いた残りの金額に対して課税される国税です。

 

なお、城之内様のケースのように、ご実家の売却に際して取得費がわからない!ということもあります。

そのような場合には、譲渡収入金額の5%とみなされます。

 

また、譲渡にかかった費用に関しては、以下の項目が該当します。

・仲介手数料
・登記費用
・印紙税
・立退料
・建物の取壊し費用や建物の損失額
・測量に必要となった費用
・買主変更のため支払った違約金
・借地権を売る場合の名義書換料
・資産の維持や管理のためにかかった費用など

 

ポイント!

城之内様のケース(遠方にある空き家を売買する場合)には、特別な控除が適用されます!

これは、少子高齢化や過疎化による空き家問題を解消しようとする政府の試みでもあります。

なお、空き家問題とは、空き家が放置されることによる倒壊などの危険管理、景観を乱す恐れ、悪臭異臭など環境被害の恐れ、犯罪の温床となる恐れなどを指します。

<空き家を売ったときの3,000万円の特別控除の適用条件>

・相続した空き家を取り壊す、もしくは耐震リフォーム後に売却する場合

・旧耐震法の1981年5月31日までに建築された戸建て住宅

・相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかった

・相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る

・売却代金が1億円以下

・平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売却すること

 

条件は厳しいですが、3,000万円の控除によって譲渡所得が0円になる可能性も非常に高いため、ぜひとも有効活用したい特例といえます。

なお、適用を受けるためには各必要書類を添付した上で確定申告が必要となること、延長の可能性はありますが、令和5年12月31日までの適用であることには注意しましょう。

 

 

ちなみに、特例が適用されない場合の税率は、所有期間によって3パターンに分かれています。

① 短期譲渡所得 所有期間が5年以下・・・39.63%

② 長期譲渡所得 所有期間が5年超~10年以下・・・20.315%

③ 長期譲渡所得 10年超・・・金額により14.21%もしくは20.315%

このような棲み分けがなされている理由の1つとしては、不動産の転売によって得た譲渡所得と、マイホームとして住んでいた物件を住み替える目的で得た譲渡所得とを区別することにあります。

 

ただし、先述した空き家に関する3,000万円の特別控除と同様に、マイホームを売却した場合にも3,000万円の特別控除が認められる特例措置があります。

 

 

今回、城之内様は空き家に関する3,000万円の特別控除が無事に適用され、ご実家を円滑に売却できたと喜ばれておりました。

生まれ育ったご実家を手放すということにためらいがあるのは誰もが同じことですが、管理ができずに朽ちていくご実家を見るのもつらいということでしたので、特別控除のあるこの時期の売却は城之内様にとっては最善の選択だったといえるでしょう。

 

 

なお、不動産の売却などを検討される場合には、我々税理士事務所の出番でもありますが、不動産会社からの適切なアドバイスも必要不可欠です。

相続に強い不動産売却の会社に仲介を依頼するというのも、円滑な売却のためには重要といえると感じました。

 

本日はここまでといたしましょう。

相続の盲点、二次相続を考える

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスのせいとはいえ、ここまで株価が暴落するのを目の当たりにすると、さすがに恐怖心が出てきますね・・・。

アメリカのダウ平均は高値から10,000ドル以上も下がって、トランプ大統領就任時と同じ株価になってしまったとか。

今年はアメリカの大統領選挙がある中で、今まで株価をけん引してきたトランプさんにとっては厳しい展開になりそうですが、とにもかくにもコロナウィルスの終息を願うばかりです。 

 

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【佐渡でトキに遭遇しました!】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は二宮様(仮称:50才)です。

二宮様は先日旦那様を亡くされたのですが、旦那様の遺産相続について相談にいらっしゃいました。

というのも、配偶者が相続税を大幅に控除されるという話を親戚から聞き、どのような制度が知りたい、ぜひとも活用したい!とのお話でした。

たしかに、相続税に関しては配偶者への特例があり、配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円(もしくは法定相続分)までは、配偶者には一切相続税がかかりません。

しかし、そこには二次相続の落とし穴があるのです。

 

さて、そもそも相続税が課税されるケースはごく稀といってよいでしょう。

2018年の統計では死亡者に対する相続税の課税件数割合は8.5%となっていますが、これは2015年に相続税の税制が改正されたことによるもので、それ以前は4%程度でした。

なぜここまで相続税が課税されるケースが少ないかといえば、そもそも相続税の基礎控除額が大きいことに起因しています。

現在の税制における相続税の基礎控除額は「3,000万円」に「600万円×法定相続人数」を加算したもので、たとえば奥様と子ども2名が相続人となる場合には、「3,000万円+600万円×3=4,800万円」まで基礎控除とされるのです。

4,800万円相当の遺産が残されている家族なんて、そんなにいないと思いませんか?

結局、遺産が基礎控除額内であれば無税となるので、実際に相続税を課税されるケースが1割未満に収まっていることになります。

 

今回ご相談にいらした二宮様の場合は2人の子どもがいらっしゃったため、基礎控除額としては4,800万円まであったのですが、旦那様の遺産が1億円ほど残されており、基礎控除額をオーバーしてしまうことが明白でした。

そんな時に、配偶者の控除が1億6,000万円まであると聞いて、相談をしにいらっしゃったのですが、もちろん、この控除をフル活用することは可能です。

つまり、配偶者である二宮様と2人の子どもで話し合い、1億円の遺産を全て二宮様が相続することで、全額に対して無税とできるのです!

 

しかし、もしその後、二宮様が亡くなった場合、どうなるのでしょうか。

1億円の遺産がそのまま残っていたら、結局は2人の子どもがその遺産を相続することになります。

被相続人の配偶者が相続することを一次相続とすれば、これが二次相続です。

 

さて、一次相続で、配偶者控除をフル活用し、遺産の全部を配偶者である二宮様が相続した場合と、通常の相続をした場合で、シミュレーションをしてみましょう。

一体どれくらい差が出るのでしょうか。

 

まず、一次相続で配偶者控除をフル活用した場合、一次相続時にかかる相続税は、もちろん1億6,000万以内になりますので、0円です。

しかし、二次相続ではそのまま1億円を2人の子どもが相続することになるため、「1億円-基礎控除額(3,000万円+600万円×2)=5,800万円」が課税対象となり、法定相続分の課税対象額は子どもそれぞれが2,900万円となります。

 

一方、一次相続で法定相続分通り(母が2分の1、子どもが4分の1ずつ)相続をした場合、「1億円-基礎控除額(3,000万円+600万円×3)=5,200万円」が遺産に対する課税対象となり、法定相続分で課税価格を求めると配偶者が2,600万円、子どもはそれぞれ1,300万円ずつが課税対象額となりますが、配偶者控除をここで利用することになるので、配偶者分は無税です。

そして、二次相続については、配偶者が相続した5,000万円が遺産となるため、「5,000万円-基礎控除額(3,000万円+600万円×2)=800万円」が課税対象となり、二次相続については子どもはそれぞれ400万円ずつが課税対象額となります。

一次相続と二次相続を合算すると、課税対象額は子どもそれぞれが1,700万円となり、一次相続で配偶者控除をフル活用した場合よりも安く済むことになるのです。

 

このように、目先の利益だけを考えて配偶者控除を利用してしまうと子どもが損をすることもあるため、遺産の相続については自分の後の世代のことも考えながら、どのような方法を取るべきか検討すべきといえるでしょう。

ちなみに、二宮様はこの話を説明したところ、通常通りの相続をすることに決めたとのことでした。

 

本日はここまでといたしましょう。

 

遺産が不動産しかない!不動産の分割方法

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルス、まだまだ終息しないようですね・・・。

マスクが手に入らないのがほんとに厄介で、一体どこへ消えてしまってるんだ~と思うばかりです・・・。

 

不幸中の幸いとはちょっと違いますけど、毎朝の通勤電車がすごい空いてます!

あんなに押し合い圧し合い、満員電車で通う意味って何なんでしょう?

いろいろ考えさせられる日々です。

 

そういえば、先日佐渡に行く機会がありまして、佐渡金山にも立ち寄ってみました。

世界遺産間近だって聞いてますけど、コロナウィルスが終息しないとお客さん来ないだろうな~。

 

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【歴史を感じる入口でした】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は新藤様(仮称:42才)です。

新藤様は地方に住むご実家にお父様が1人で住まわれていたのですが、先日他界され、遺産を処分することになったそうです。

相続人としては、配偶者であるお母様がすでに他界されていたこともあり、ご本人と弟、妹の3人ですが、この時に判明したのが、お父様の遺産がご実家の不動産以外、特段残されていなかったこと。

そして、皆で集まってご実家を誰が継ぐのかという話になったそうです。

しかし、3人とも実家に遠い場所に住んでいるため、あまり乗り気ではありません。

もし、実家を相続したとすれば、空き家として管理をしなければいけない上、毎年固定資産税を支払う必要があるためです。

そこで、他に何か良い方法は無いかということで、当事務所へ相談にいらっしゃいました。

 

このように、相続する遺産の中に不動産がある場合は、相続人が納得できるような遺産の分割が難しいことがあります。

たとえば、預貯金や株式、車など、様々な遺産があれば、「長男が不動産を相続する代わりに次男は車と預貯金半額、長女は預貯金半額と株式」など、話し合いで分けることは可能ですが、そう簡単に話し合いが進むわけではありません。

そこで、不動産をさまざまな形で分割することで相続することになります。

 

さて、不動産の分割方法としては主に次の4種類の方法がありますが、それぞれメリットとデメリットもあるため、どの方法が適切か、しっかり検討する必要があります。

 

1つ目の方法は、現物分割です。

現物分割は、土地や建物をそのまま相続人に対して分け与える方法です。

複数の不動産を所有していれば、相続人同士の話し合いでどの不動産を相続するか決めることも可能ですが、一つの不動産しかない場合にはその不動産そのものを分割します。

つまり、相続する土地が広くて物理的に分割できるようなら、境界線を確定して、分割したそれぞれの土地を個々の相続人の所有とします。

個々の所有となった後は、自由に利用、また処分ができるようになります。

そもそも分割できるほどの不動産を所有していなければ、採用できない方法です。

 

2つ目の方法は、換価分割です。

換価分割は、不動産売って換金してから、相続人たちで分ける方法です。

現金であれば分けやすいので、一番ポピュラーともいえる方法ですが、相続する不動産によってはなかなか売れなかったり、売れるまでに時間がかかったりすることがデメリットになります。

また、先祖代々受け継がれた実家を売却するのは嫌だという方がいらっしゃれば、採用できない方法になります。

 

3つ目の方法は、代償分割です。

代償分割は、相続人のうち誰かが不動産を相続する代わりに、他の相続人へ不足分を支払う方法です。

換価分割のデメリットである、先祖代々受け継がれた実家を売却したくない場合などは、その方が実家を相続する代わりに、他の相続人へお金を支払うことで解決が可能です。

ただし、不動産の相続人に、支払えるお金の資力がなければ採用できない方法であることは、いうまでもありません。

 

4つ目の方法は、共有分割です。

 

共有分割は、相続人全員で不動産を共有不動産として扱う方法ですが、後ほど紛争につながる可能性が高いため、あくまでも最後の手段として利用される方法です。

たとえば、新道様の例であれば、ご本人と弟、妹のそれぞれが3分の1の権利を持つ不動産として相続することになります。

共有不動産になってしまうと、全員の承諾を得なければ不動産の売却ができない(持ち分の売却は可)など、さまざまな制約があるためおすすめできません。

そして、相続人同士が仲が良ければそれでいいというわけでもなく、相続人が死亡すれば、その配偶者や子どもが相続をすることになり、権利関係がグチャグチャになることもデメリットになります。

 

ちなみに、新藤様については、換価分割の方法を取り、ご実家を売却した上で分割する方法を決断されたようです。

たしかに、自身の思い出もある実家を簡単に手放すことには葛藤もあったようです。

しかし、2015年5月26日に施行された「空家等対策特別措置法」が、新藤様たちの背中を押す要素になりました。

「空家等対策特別措置法」は、倒壊などの恐れのある空き家を減らして、所有者に対して適切な管理を求める法律ですが、この法律によって一定の要件を満たした空き家は、特定空き家として認定されることになります。

もし特定空き家に認定されると、建物が建っている土地へ固定資産税の優遇措置が撤廃されることになるため、固定資産税が6倍になるケースも考えられます。

管理もままならない遠方の実家をそのまま残しておくことがリスクにつながる可能性を考えて、新藤様は実家の売却を決定したようですね。

 

地方の空き家問題は少子高齢化社会でますます深刻になっていきますが、遺産として不動産がある場合には、その遺産が空き家として相続人の負担になる可能性も考え、生前に処分するなり、相続方法を検討しておきたいものですね。

 

今日はこのあたりにしておきましょう。

 

 

余命宣告とリビングニーズ特約

こんにちは!

こうのとりです。

私の父親は肺がんですでに他界しているのですが、間質性肺炎という診断を受けた際に、余命5年と言われ、本当に5年目に亡くなってしまいました。

父親の意思を尊重し、抗がん剤治療は受けずに、ホスピスでの治療を選択したのですが、他界する1週間前まで実家で過ごしてましたし、ほとんど苦しまなかったと思います。

もっと長く生きたかったとは思うけど、自分の意思とは別に事故などで死んでしまう人がいる中、余命宣告があったことでその後の5年間はいろいろな心構えができたともいえます。

もちろん、本人の気持ちは今となってはわかりませんが・・・。

少ししんみりした出だしになってしまいましたが、今回は余命宣告に関わる内容なので、記載させていただきました。

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年始には父の墓参りに行ってきました。 

 

 

皆様は生命保険のリビングニーズ特約については、ご存知でしょうか?

リビングニーズ特約とは、被保険者の余命が6か月以内と医師から判断された場合に、死亡時に受け取ることができるはずの死亡保険金の一部または全部を、生きている間に受け取ることができる特約です。

この特約によって生前に受け取った給付金については、自由に使うことができます。

高額になるであろう医療費に使うこともできますし、亡くなっていく方の意思を尊重した金銭の使い方もできるのです。

このように、個人を尊重したメリットの多いリビングニーズ契約ですが、税金面での扱いはどのようになるのでしょうか?

 

そもそも死亡保険金については、被保険者が亡くなった後で受け取ると、契約内容に応じて以下の税金のいずれかが課税されることになります。

① 契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じ場合、所得税

② 契約者(保険料負担者)は被保険者で保険金受取人が別の人の場合、相続税

③ 契約者(保険料負担者)が被保険者でも保険金受取人でもない場合、贈与税

 しかし、リビングニーズ特約で受け取るお金については、生前給付金であり、死亡保険金ではないため、税金の取り扱いも異なってきます。

 

まず、リビングニーズ特約を使って生前給付金を受け取った場合、受給者が所得税を支払うことはありません

これは、もともと疾病や重度障害になった際に支払わられる保険金が非課税であることに起因するものです。

生前給付金は、死亡保険金の前払いと言い換えることができるかもしれませんが、受け取りの条件が余命半年以内となっており、死亡が給付条件になっていません。

よって、上記の疾病や重度障害になった際に支払われる医療保険金が非課税となることと同等の扱いを受けることができるのです。

 

では、相続税の扱いはどのようになるのでしょうか。

実は、使いきれなかった現金があるかどうかが肝心で、生前に受け取って余っていた現金(預金)は、単なる相続財産として扱われます。

よって、相続税の課税対象になるというわけです。

 

ここでの注意点は、生前給付金に対しては、死亡保険金の非課税枠が適用されないことです。

生命保険などで、死亡した際に受け取ることができる死亡保険金については、特別な非課税枠が用意されています。

もし、働き盛りバリバリのお父さんが急逝してしまったら、残された家族はこの保険金が唯一の頼りとなります。

この時に、全てを課税対象にするには酷ではないかというお話。

しかし、生前給付金として受け取った場合には、この非課税枠(「500万円×法定代理人数」)の適用を受けることができないということになります。

 

これら様々な条件を踏まえたとき、余命6ヶ月の段階で生前給付金をもらうほうがいいのか、それとも死亡保険金として相続人に残すべきなのか、悩ましいところです。

どちらが良いかについては、様々な条件次第と言えるのですが、いくつかのケースに分けて説明していきます。 

① 相続財産が基礎控除の範囲内である

相続財産が基礎控除額の範囲内であれば、そもそも相続税はゼロなので、生前給付金としてもらっても死亡保険金としてもらっても問題はありません。

② 死亡保険金として受け取った

この場合は、死亡保険金の非課税枠が適用され、その範囲を超えた部分で相続税が課税されることになります。

③ 生前給付金を全額使い切った

例えば、死亡保険金が5,000万円だった場合に、2,000万円を生前給付金として受け取り、全額使い切ったとしまます。

残りの3,000万円に対しては、死亡保険金の非課税枠が適用され、その範囲を超えた部分で相続税が課税されることになります。

ただし、相続税については基礎控除額が「3,500万円+500万円×法定相続人数」ありますので、死亡保険金以外の財産を合わせて基礎控除額内であれば、相続税は課税されません。

④ 生前給付金を使い切れなかった

例えば、死亡保険金が5,000万円だった場合に、2,000万円を生前給付金として受け取り、1,000万円を使いきれずに残してしまったとします。

この場合、死亡保険金として受け取る3,000万円に対しては、死亡保険金の非課税枠が適用され、その範囲を超えた部分で相続税が課税されることになります。

一方、残った1,000万円は現金としてそのまま相続税の課税対象となります。

 

このように、リビングニーズ特約で受給した生前給付金については所得税が非課税であり、使いきれなかった部分については財産として相続税がかかる(かつ死亡保険金のような非課税枠はなし)ことには注意が必要となります。

法定相続人数や保険金の金額、全財産の金額によっては、課税対象額が大きく異なってきます。

我々の存在価値の1つでもありますが、これらを踏まえて、様々なパターンを検討しつつ、一番お得なお金の受け取り方を考えるべきです。

これが、正攻法の節税ともいえます。

 

今日はここまでにしておきましょう。