相続税対策はできるのか!?小規模宅地の特例

こんにちは!

こうのとりです。

 

来年の東京オリンピック、一体どうなるんでしょうね?

コロナウィルスを乗り越えた結果としての開催であれば、過去最大級に盛り上がるでしょうけど、縮小のまま開催するなら、むしろ再延期のほうがいいんじゃないかなと思ったりします。

高校野球もそうだったけど、なんといっても人生をかけているアスリートの方々の努力が報われない現状には、ほとほと嫌気がさしますね・・・。

 

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 【以前は北海道出張が多かったのですが、今では全てWEB会議です】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は南條様(仮称:62才)です。

南條様はご子様たちへの遺産相続に先立ち、相続税対策として、所有している土地を有効活用できないか、ご相談に参られました。

相続税については、平成25年度の税制改正を受けて、基礎控除額が大幅に減額されました。具体的には、それまで「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)」だったものが、平成27年1月1日以降より「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」へと変更になっています。

相続税は元々基礎控除が大きいですから、ほとんどの方が非課税とされてきたものですが、今回の改正で最低でも2,400万円もの大幅な減額となったことで、南條様はもしかすると相続税の課税対象になるかもしれず、今のうちから対策をしておきたいとのことでした。

 

さて、相続税対策として土地の相続を考えた時に有効活用したいのが小規模宅地の特例です。これは、適用された場合に、相続税を計算する際に用いられる土地の相続税評価額が最大80%も減額されるという強力な節税方法です。

しかしながら、適用されるためにはいくつかの条件がある上、本来の目的は事業承継や、配偶者が継続して居住できるような配慮であるため、相続税対策としての駆け込み要素は排除されていることにも注意しなければなりません。

まず、対象となるのは、相続前から被相続人と生活を共にしていた(もしくは生計を一にしていた)親族であることです。

そして、評価額減額の対象は、住宅の敷地である宅地(特定居住用宅地等)、事業に用いられている建築物がある宅地(特定事業用宅地等)、アパートや駐車場など不動産貸付業に使用されている宅地(貸付事業用宅地等)の3種類に大分され、それぞれに減額割合と対象とされる上限面積が決められています。

 

1、特定居住用宅地等

主に被相続人の配偶者が継続して居住できるようにするたできるようにするための要件ですが、必ずしも同居が必須というわけではありません。また、条件によっては別居の親族でも特例が受けられる場合もあります(家なき子特例)。

減額割合は80%で、上限面積は330㎡までです。

 

2、特定事業用宅地等

被相続人が行っていた事業を継続して行うことができるようにするための要件です。会社というよりは、八百屋や書店などの店舗をイメージするとよいでしょう。相続税節税を目的とした駆け込み的需要の対策として、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等は、除外される法改正が近年ありました(例外あり)。また、相続人が相続税の申告期限まで事業を継続している必要もあります。

減額割合は80%で、上限面積は400㎡までです。

 

3、貸付事業用宅地等

被相続人が賃貸アパートや駐車場などの不動産貸付業に使っていた土地を相続する場合の要件です。相続税対策として賃貸アパートや駐車場を設置する行為が乱用されたため、「相当の対価」で貸付が行われているか、駐車場についてはその形態が「構築物の敷地」といえるかどうかなど、対象となるかどうかの判断基準が若干複雑です。また、こちらも相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等の除外対象となっています。

減額割合は50%で、上限面積は200㎡までです。

 

南條様はこれらの特例の活用を見据えながら、まずは本当に相続税が課税されるのかどうか、遺産の整理から行うことにされたようです。

相続税が課税される可能性がある遺産相続に関しては、様々な特例を計画的に利用しつつ、生前贈与や遺産分割の方法、遺書の作成なども含め、包括的な目線で行うべきです。法改正も度々行われますので、我々のような専門家に事前相談しながら、確実に進めていただければと思います。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

共有不動産を相続した場合に単独でできることは限りある!

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスによって、主にバックオフィスの業務は

在宅ワークが推進されるようになっていますが、

なかなか根づかないのは日本固有のコミュニケーション文化が

身体に染みついているからなのでしょうかね?

喫煙所での会話や、飲みニケーションも風化しつつある今、

世代間ギャップも広がりつつあるなぁと思う今日この頃です・・・。

 

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 【昨年の慰労会。お酒は弱いけど、ご飯をしっかり食べると割り切って参加しますw】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は森永様(仮称:68才)です。

森永様は、お父様の他界によって、地方にあるご実家を遺産相続することになりましたが、相続人の兄弟姉妹との話し合いの結果、ご実家が避暑地に所在していることもあるため、共有不動産として相続をすることにしたそうです。

森永様は兄弟姉妹が4人いますが、仲は良いとのことで、実家は別荘代わりとして、各々が利用したい時にすればよいという考えで一致し、持ち分を4等分にして相続をした後、5年が経った今まで、何ら問題なくご実家を共有してきたそうです。

 

しかしながら、兄弟姉妹の1人であるお兄様が他界し、この共有不動産の権利をお子様が相続することになってから、事態は変わってきました。

お兄様のお子様(甥っ子)は「シーズンオフに放置をしているのはもったいない。建物としての傷みもひどいのだから、土地も含めて売却を検討しないか?」と、残りの兄弟姉妹に相談を持ち掛けてきたのでした。

甥っ子様の主張もごもっともであり、経年劣化する遠方の不動産を誰が管理するかについては、いずれ問題となりそうな状況です。

しかし、相談の結果、残った3人の兄弟姉妹のうち、2人は甥っ子の主張に賛成でしたが、1人だけ「思い出の詰まった実家を手放したくない」と否定的であったため、甥っ子の提案はあえなく却下されてしまったとのこと。

この問題をきっかけに、これはいずれかの二次相続(遺産の権利者が後継者に移ること)後の紛争にもなりかねないとのことで、共有不動産の扱いについて、ご相談に来社されました。

 

共有不動産については、できることが限られています。

そして、その内容から、以下の3種類に分類されます。

1、単独でできること

2、共有持ち分を所有する割合が過半数以上でできること

3、共有者全員の同意のもとにできること

 

1、単独でできることについては、共有不動産の使用、修繕などの現状維持を目的としたリフォーム(保存行為)、共有持ち分の売却です(他に不法占有者への明け渡し請求や、虚偽の内容に関する登記の抹消請求)。

2、共有持ち分を所有する割合が過半数以上でできることについては、短期間に限っての賃貸物件としての貸し出し(利用行為)、資産価値を高めるようなリフォームやリノベーション(改良行為)です。

3、共有者全員の同意のもとにできることは、共有不動産の売却、建物の解体、建物の建築、抵当権の設定、長期間における賃貸物件としての貸し出し(これら全て処分行為)です。

 

共有持ち分の売却については甥っ子が単独でできるものの、活用が制限されている共有不動産の一部の持ち分だけを買う人はほとんどいないばかりか、相場よりもかなり安い値段となることは免れません。やはり、売却をするのであれば、共有者全員の同意をとりつけ、共有不動産全体を売りに出すべきでしょう。

また、空き家を賃貸物件として貸し出すことは可能ですが、短期か長期かによって同意を求める人数が変わってきます。土地については5年以内、建物については3年以内が短期とされており、この場合は共有持ち分の過半数以上の賛成で賃貸が可能となります。

 

今回の件で森永様は共有不動産の取り扱いの難しさを痛感されたようです。いくら兄弟姉妹の仲が良かったとしても、いずれはやってくる二次相続の結果として、それぞれのご子息同志で紛争になるようでは元も子もないと、現在の所有者同士で改めて実家の処分を話し合うことに決めたとのこと。

共有不動産の状態になるのは、相続の結果としてやむを得ずというケースはありますが、基本的には避けるべき状態であることは、認識しておかなければなりませんね。

本日は、ここまでといたしましょう。

超複雑!超タイト!相続税の申告手順と必要書類について

こんにちは!

こうのとりです。

コロナウィルスの動静に一喜一憂することはなくなりましたが、やはり今年のお盆は帰省せず、家でおとなしく過ごすことにしました。

都会の喧騒を離れて、田んぼの多い田舎に帰るのは年に数回の楽しみだったのですが、今回は止むを得ません。万が一自分が無症状で、大切な人たちにウィルスを感染させてしまっては、後悔してもしきれませんので。

年末には帰れるといいな~と思っています。 

 

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 【暑い日についつい食べたくなるのがこのサクレ、レモン味以外もあるんですね!】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は篠原様(仮称:52才)です。

 

篠原様のお父様が先日急逝されたとのことで、今後の遺産相続に関して長男である篠原様が遺産相続手続きの全てを一任されており、どのような手順で進めれば良いのかわからないということで相談に参られました。

 

相続税の申告については、①被相続人の戸籍情報を手にいれつつ、相続人となりうる人たちをリストアップすることから始まります。

次に、②遺産についてのリストをつくり、そのリスト次第で相続放棄や限定承認を決めることになるのですが、相続放棄や限定承認の期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から3ヶ月以内とタイトです。

そして、③遺言書が無い場合には遺産分割協議に入りますが、原則は法定相続人全員で協議をしなければならないため、皆のスケジュールを合わせて集まるのがひと手間です。

しかしながら、④相続税の申告については被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内と決まっており、相続人共同で提出しなければならないため、この申告の前には遺産分割協議を終える必要があるのです。

もちろん、遺産が相続税の基礎控除額以内「3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)」に収まっていれば相続税の申告は不要なのですが、相続放棄や限定承認の期限は被相続人が亡くなってから3ヶ月以内であるため、遺産が基礎控除額内であっても、一定の手続きは進めておかなければならないのです。

 

さて、今回は主に相続税が課税される場合の手順についてご説明していきます。

全般の流れについては国税庁のホームページからダウンロードできる「相続税の申告のしかた」を読み進めるとよいでしょう。

ただし、この冊子も文章が多く、読むだけでも苦労しますので、心してかかってくださいね(笑)

 

まず、相続税の申告書と申告に必要な書類を準備します。

申告書については、最寄りの税務署か国税庁のホームページでもダウンロード可能ですが、基本的には手書きです(専用の申告ソフトなどがあれば別)。

申告に必要な書類は相続財産の種類が多ければ多いほど多岐に渡りますが、こちらも国税庁のホームページでダウンロード可能な「相続税の申告のためのチェックシート」を確認しながら行うと良いでしょう。

以下、チェックシートに記載があり、必要とされる書類です。

 

1、相続財産の分割について

遺言書があれば遺言書の写し

未成年がいれば特別代理人の審判の証明書

戸籍謄本

遺産分割協議書の写し および 各相続人の印鑑証明書

 

2、相続財産について

不動産に関する書類

事業用(農業用)財産に関する書類

有価証券に関する書類

現金・預貯金に関する書類

生命保険金・退職手当金等に関する書類

立木に関する書類

その他財産に関する書類

 

3、債務・葬式費用について

債務に関する書類

葬式費用に関する書類

 

4、生前贈与について

相続時精算課税および暦年課税についての書類

 

5、財産評価について

不動産評価に関する書類

非上場株式に関する書類

上場株式に関する書類

立木に関する書類

 

6、特例について

小規模宅地等の特例を受ける場合の書類

特定計画山林についての書類

農地等の納税猶予についての書類

 

このように、相続税の申告には多くの書類が必要となる上、相続税の申告書は第1表から第15表まで、様々な様式で構成されているため、記載する順番についても重要です。

以下の順番で記載していくと良いでしょう。

① 第9表(生命保険金など)

② 第10表(退職手当金など)

③ 第11表 および 第11の2表の付表1~4(小規模宅地の特例など)

④ 第11表(課税財産)

⑤ 第13表(債務・葬式費用等)

⑥ 第14表(相続開始前3年以内の贈与財産等)

⑦ 第15表(相続財産の種類別価額表

⑧ 第1表(課税価格、相続税額)

⑨ 第2表(相続税の総額)

⑩ 第4表(相続税額の加算金額の計算書)

⑪ 第4表の2(暦年課税分の贈与税額控除額の計算書)

⑫ 第5表(配偶者の税額軽減)

⑬ 第6表(未成年控除・障碍者控除)

⑭ 第7表(相次相続控除)

⑮ 第8表(外国税額控除)

 

以上のように、相続税の申告については、時間をかけながら個人で行うことも可能ですが、期限が決められていることもあり、我々税理士事務所のような専門家に依頼をしたほうが良い場合もあります。

専門家に依頼したほうがよい例としては、遺産総額が多額(1億円を超える)な場合、遺産に不動産が多く含まれる場合、特例や税額軽減を利用したい場合、などは任せてしまったほうがよいと感じます。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

愛人が子どもと共に遺産相続を主張してきた!その権利は?

こんにちは!

こうのとりです。

 

 

今年は梅雨が長い?という印象がありますが、皆さまはどうお感じになられますか? 

雨が降っていると私の天敵であるヤブ蚊があまり飛ばないのでうれしいのですが、セミも鳴きはじめ、そろそろヤブ蚊たちも出てくるようになってます・・・。

もちろん、そんな時に欠かせないのは蚊取りリキッドなのですが、私はどちらかというと蚊取り線香のほうが好き。

ただ、、蚊取り線香で蚊が死んでいることを見たことないのですが・・・効果はいかほどなのでしょうかね・・・。

 

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【お香の香りは好きなんですが、蚊取り線香を浴びると煙臭くなるので注意です】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は浜本様(仮称:42才)です。

浜本様は突然の事故でご主人を亡くされ、その後、遺産相続を粛々と進めておりましたが、そんな最中、ご主人の愛人を名乗る女性が訪ねてきて、ご主人との間にできた子供の養育費のため、遺産を分けてほしいと依願してきたそうです。

たしかに浜本様はご主人との結婚生活が破綻していたことは認めておられましたが、とはいえども、ご主人の愛人にまで遺産を渡したくはないとのことで、ご相談にいらっしゃいました。

 

さて、まずは愛人への遺産相続を考える前に、配偶者と愛人、そして内縁の妻について整理しておきましょう。

配偶者は紛れもなく民法上の婚姻関係にある異性を指し、愛人ただの恋愛関係にある異性を指します。そして、内縁の妻というのは、民法上の婚姻関係にはないものの、同居をして生計を一にしているなど、いわゆる事実婚の状態にある異性を指します。

つまり、遺産相続の権利を持つ法定相続人という観点からいえば、愛人や内縁の妻は法定相続人とされないため、遺産を相続する権利を有しないことになります。

 

しかし、愛人や内縁の妻が遺産を相続する方法が無いわけでは無く、その主たる方法が遺言であるといえます。

もし、被相続人が愛人や内縁の妻に「遺産を全て渡す」と書かれている形式上有効な遺言が残されていた場合、その遺言が尊重されることになりますが、もちろん、「全て渡す」という意思が残されていても、全てが記載どおりに尊重されるわけではありません。

被相続人をそそのかした愛人が悪いのか、結婚生活を破綻させていた配偶者が悪いのかという論点はさておき、法定相続人については遺留分という最低限の権利が残されているのです。そして、遺留分は法定相続分の2分の1と決められています。この権利がある以上、法定相続人は遺産を相続する強い立場を有することになります。

 

また、被相続人と生計を一にしていた内縁の妻に限っては、被相続人の身の回りの世話をしていたということで、特別縁故者への相続財産分与が認められるケースがあります。

ただし、これが認められるためには、被相続人に法定相続人がいないことを条件とし、家庭裁判所にて特別縁故者と認められる手続きが必要です。

 

それでは、愛人や内縁の妻の子どもについては、どうでしょう?

被相続人と愛人の関係がたとえ不埒であったとしても、彼らの子どもにも罪を負わせるのはあまりにも酷い仕打ちといえるでしょう。

そのため、愛人や内縁の妻の子どもについては、配偶者との間にできた子どもである嫡出子に対して、非嫡出子という区分であっても遺産相続が認められます。

さらに、2013年9月5日の法改正によって、嫡出子と非嫡出子が受け取れる相続分の差異が無くなり、被相続人の子どもとして法定相続を受けることが可能となりました。

 

ただし、非嫡出子として相続が認められるためには、父親が自分の子どもであると認知することが必要です。

認知がなされていない場合には、その子どもは遺産相続はおろか、父親に対する扶養請求すらできません。

その場合、認知の訴えを裁判所に対して起こすことになりますが、ここでは割愛とさせていただきます。

 

このように、いくら婚姻生活が破綻していたとはいえ、法定相続人の権利はしっかりと守られているため、正しく遺産を相続したいのであれば、法的に婚姻関係の解消、もしくは結ぶことが求められます。

 

相談者の浜本様は、遺産が全て自分のものにならなかったことに不満はあったようですが、認知されていた子どもにまでその責任を負わせることには自責の念があったようで、遺留分を相続することでご納得されたということです。 

 

本日は、ここまでといたしましょう。

遺産相続?生前贈与?お得に遺産を残す特例の活用方法

こんにちは!

こうのとりです。

 

東京のコロナウィルス感染者が急増し、全国の1日の感染者もとうとう1,000人超えをするなか、ニューノーマルな生活への対応の難しさが浮き彫りになっていますね。

若い人ほど重篤化する可能性がないという情報が先行してしまっているので、若い人たちがコロナに対しての危機意識を削ぐ結果となっている気がします。

少なくとも人を感染させるリスクを考えて行動してほしいものですが、人の善意を拠り所にする方法はあまりにも短絡的で、せめて検査が手軽に、かつ強制的に行えるようになってほしいなと思うばかりです。

 

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【実家近くの駅は超ローカル線です。今年は規制も憚られますね】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は内村様(仮称:65才)です。

内村様はご自身のお子様たちが遺産相続で紛争とならないようにするために、遺言書をしたためておられましたが、遺言書より確実に遺産を相続すべく、生前贈与について検討をされるようになったそうです。

ただし、遺産相続であれば基礎控除額が大きいため税金の心配は無かったものの、生前贈与については税金がどのように課されるのか、また損をすることが無いかなど不安も多いにあるとのことで、今回ご相談に参られました。

 

たしかに、遺産相続に課される相続税の基礎控除については、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」となっており、ほとんどの方がこの基礎控除の範囲内に収まることから、税金の心配はいりません。

一方、生前贈与については、相続税ではなく贈与税が科されることになるため、贈与税の基礎控除を理解しておかなければ課税対象となり、単純に損をすることになってしまうのです。

そして、贈与税の基礎控除はたったの110万円(暦年贈与の場合、1年間の基礎控除額)ですから、基礎控除を比べるだけでも、圧倒的に遺産相続のほうが遺産を多く残せることになります。

 

しかし、生前贈与にはいくつかの特例があるため、これらの特例を有効活用することで、一定の遺産を損なく生前贈与することが可能となっています。この特例を利用して生前贈与をし、残った遺産については通常通り遺産相続をしてもらえば、遺産の金額も抑えられ紛争のリスクも抑えられるというわけです。

 

では、実際にどのような特例があるかですが、まず不動産の贈与として効果が高いのが、配偶者控除の特例です。

この特例は、婚姻期間20年以上の夫婦間において居住用不動産を贈与する場合に、2,000万円まで非課税となるもので、主に夫婦で居住していた実家などが、遺産相続の対象とならないようにするため、定められた特例です。

 

続いて、教育資金の贈与非課税の特例も利用価値があります。

父母や祖父母などの直系尊属から、教育資金として一括贈与を受ける場合1,500万円までが非課税となるため、お孫さんに対して学費を出してあげたいという場合などには特に有効に機能します。

注意すべきは、平成25年4月1日から令和3年3月31日までという期限が決められていることと、受贈者は30歳未満の方に限るということ、専用口座が必要となることです。

 

さらに、 結婚・子育て資金の贈与非課税の特例も活用したいところです。

こちらは、父母や祖父母などの直系尊属から、結婚・子育て資金として一括贈与を受ける場合1,000万円までが非課税となるため、大いに活用可能な特例です。

こちらも、平成25年4月1日から令和3年3月31日までという期限が決められており、受贈者は20歳以上50歳未満の方と決められていること、専用口座が必要となることには注意が必要です。

 

加えて、住宅取得等資金の贈与非課税の特例も活用すべきでしょう。

父母や祖父母などの直系尊属から、住宅取得等資金として一括贈与を受ける場合最大3,000万円までが非課税となる特例もあります。

同じく、平成27年1月1日から令和3年12月31日までという期限が決められており、省エネ等住宅か否か、また、契約の締結日によって非課税限度額が大きく異なるため、十分な注意が必要です。

 

これらの特例は、少子化や受贈者の高齢化など、様々な社会問題の対策として講じられているものでもありますので、幅広くこれらの特例措置を利用していただくことにより、生前贈与を促すものとなります。

 

ご相談者の内村様は今回のお話をご理解され、奥様に不動産の生前贈与と、お孫さんに教育資金の生前贈与をすることになさったそうです。

残った金額は取るに足らないため、お子様たちで争うことはないだろうと安心されておりました。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

相続登記って必要あるんですか?備えあれば憂いなし 

こんにちは!

こうのとりです。

 

在宅ワークが増えると、日本の四季を感じられる機会も少なくなってる気がします。

通勤はストレスでしかないと思っていたけど、風景を見たり、あれこれ考える時間にはなっていたのかなと思います。ただし、あくまでも満員電車でなければの話ですが(汗)

 

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【私が一番好きな長野の戸隠神社。自然の偉大さを体感できます。また行きたいです。】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は旭様(仮称:35才)です。

旭様は遺産分割協議にて、土地を相続することになりましたが、相続に際して名義を自身に変更しておくべきか否か、周囲の方々に聞いてみても意見が割れているということで、ご相談に参られました。

 

不動産を所有している方が亡くなられた際に、相続人が不動産を相続し、名義変更をする手続きについては、相続登記と呼ばれています。

相続登記については、ズバリ、義務ではありません。罰則もありません。

しかし、将来的に問題の火種となる可能性があるため、本来あるべき名義にしておいたほうが良いといえるでしょう。備えあれば憂いなしということです。

 

もし、相続登記をしない場合、相続人全員が不動産を共有しているとみなされてしまいます。相続人同士で話し合いが済んでいたとしても、万が一その相続人の誰かが他界してしまえば、相続の権利は他界した相続人の妻や子供に移ります。

つまり、相続登記をしていなかったことで、2次相続3次相続の際に紛糾する可能性や、いざ登記をしようと思った際に手間がかかることになるのです。

また、相続人全員が不動産を共有している状態であるとみなされることで、相続人の中に債務を払いきれない方がいた場合には、差し押さえの対象となる可能性があることにも気を付けなければなりません。

もちろん、相続した不動産を処分する場合に、自身が所有しているという登記が必要であることはいうまでもありません。

 

このように、相続登記をしないことで様々なリスクが発生、かつ混在する可能性があります。そのため、相続登記については義務化も検討されているようですね。

 

さて、実際に相続登記が必要となるケースは、一通りではなく、その内容によって、相続登記をすべき人が変わります。

主なケースとしては、1、遺言による遺産相続を起因とするもの2、相続人同士の遺産分割協議による遺産相続を起因とするもの3、遺産分割協議が長引いていることを起因とするものに分けることができます。

遺言については最優先されるため、遺留分を侵害していない限り、指定された相続人が相続登記をすることになります。

遺産分割協議を経た場合には、遺産分割協議で不動産の相続が決まった相続人が相続登記をすることになります。複数人が相続をするのであれば共有不動産として相続登記をします。

問題は遺産分割協議が長引いている場合ですが、先に述べたとおり、この状態では相続人全員の共有不動産とみなされるため、やむを得ず相続登記をする場合にも、ひとまず共有不動産として相続登記をすることになります。

 

続いて、相続登記の方法ですが、相続する不動産を管轄している法務局で、登記申請書を提出することで行います。一般的には司法書士や弁護士などに代理で依頼をすることが多いでしょう。

 

相続登記の費用としては、士業への報酬と登記に必要な登録免許税(登記する不動産の固定資産評価額の0.4%)、各書類を取り寄せるための実費と合わせて、10万円~20万円程度の費用となりますが、不動産の価値や士業へ依頼する際の代理の範囲(書類作成のみか、その他代理行為をお願いするか)によって変動することには注意が必要です。

 

相続登記に必要な書類としては、登記申請書、被相続人の一連の戸籍謄本、被相続人の住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本・抄本、不動産を取得する相続人の住民票の写し、相続する不動産の固定資産税評価証明書、(代理申請の場合)相続人の委任状、相続関係説明図・・・と多岐にわたる上、遺産分割協議などが行われていた場合にはそれ以外にも必要となる書類が出てきます。

この書類集めの煩雑さが相続登記について敬遠される原因ともなっていますが、お金はかかるものの士業への代理も検討しながら、コツコツと着実に進めていくべきでしょう。

 

旭様は相続登記をしないことによるデメリットの多さに驚かれ、早速相続登記の手続きを始めることにしたようです。

少子高齢化が進むことで、相続した遠方の実家をどう処分するかなど、相続については登記の煩雑さはもとより、今後多くの課題があると感じた次第です。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

借地権は立派な相続財産~借地権割合とは

こんにちは!

こうのとりです。

 

コロナウィルスで人との交流が分断されていることは間違いないですね。

以前は通勤時にアタッシュケースを持っていた観光客の方が多かったのですが、今では全く見かけず、通勤が快適です。

しかし、インバウンドに力を入れて観光立国を目指していた日本としては、これではいけないんだろうなぁと感じています。

感染リスクは抑えなきゃいけません。難しい綱引きが始まっています。

 

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【コロナ前の夜の雷門です。観光地も見かけるのは日本の方のみです】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は佐野様(仮称:38才)です。

佐野様は、この度、遺産分割協議に参加することになりましたが、相続財産の中に記載のあった借地権について、正しい扱いを受けているかお知りになりたいと、ご来社されました。

 

借地権は「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と借地借家法に規定されています。つまり、マイホームなどを建てる場合に、土地を買わずに、地代を支払って地主から土地を借りる場合の権利が借地権です。

しかし、なぜ土地を購入せずに借りるのでしょう?

もちろん、借りている土地ですから、地代を支払う必要があったり、建物の増改築や売却には地主の承諾が必要だったりと、一定の負担は必要ですし、将来的に返却しなければならない資産です。

つまり、返却しなければならない土地ですから、買うよりも当然費用は安く済むことになります。また、土地を所有するわけではないので固定資産税の負担もゼロとなり、金額面で総じてお得なのです。

 

さて、今回のお客様である佐野様については、資産として借地権が存在していました。実は、ご実家は借地に建てられたマイホームだったのです。

この場合、ただ土地を借りているだけの権利である借地権は、財産にみなされることになります。なぜなら、借地権については契約期間も長く、正当な理由がなければ更新を拒むこともできないため、総じて借地人が強い権利を持つことになるからです。特に借地借家法が施行された平成4年8月1日以前の「旧法借地権」については、地主と借地人のどちらが所有者かわからなくなるほど、強い権利でした。

よって、土地の所有権は、借地権を設定していることで不完全なものとなります。考え方としては、借地人のもつ借地権と、地主の持つ名義としての権利(底地権)を合わせて、はじめて土地の所有権として存在できるようになるのです。

 

では、それだけ強い権利である借地権の価値は、どのように考えられるのでしょうか。遺産分割協議や相続税の算出のためには、借地権の評価をしたうえでその価値を決めなければならないのです。

そこで利用されるのが借地権割合というものです。

 

借地権割合は、国税庁の路線価図・評価倍率表を参照しますが、固定資産税路線価ではなく、相続税路線価にて借地権割合を調べることができます。インターネット上でも検索可能です。

具体的な借地権割合の記述については、路線価と並んでそれぞれの土地にアルファベット表記されており、アルファベットごとに借地権割合が決められています(Aは90%、Bは80%~Gは30%など)。

なお、借地権割合については、土地の価格が高い地域ほど高く設定される性質のものです。これはもちろん、先に述べた借地権の権利としての強さと、地価の高い土地を使用できるという意味とが相まって、高く設定されるものと考えれば良いでしょう。

 

さて、借地権割合が判明すれば、その土地の路線価と合わせて、借地権の資産価値を算出することができるようになります。

たとえば、路線価が3,000万円で借地権割合が70%だとすれば、借地権の価値は「3,000万円×70%=2,100万円」と算出されます。

 

今回ご相談にいらっしゃった佐野様の場合、借地権として1,200万円の記載があったということでしたが、実際にインターネット上で調べた結果、相違はなかったということです。借地権の性質も理解され、安心できたようですね。

それにしても、借地権はあくまでも土地を借りているというだけの権利であるのにも関わらず、ここまで強い権利であること、そして財産としてもしっかり評価されることには驚きですよね。

 

本日は、ここまでといたしましょう。

遺産の宅地にセットバックの可能性あり!相続税評価額はどう変わる?

こんにちは!

こうのとりです。

 

在宅ワークが多くなると、家の汚れについつい目がいきます。

そこで、カーペットの掃除にと、重曹をまいてみました!

しかし・・・掃除機で重曹を吸い取ったところ、大変!

安物のハンディ掃除機だったせいか、フィルターで重曹がろ過されず、掃除機の排気口から重曹が勢いよく飛び出す始末!

家の中が、バルサンを焚いた後のようになってしまいました・・・まぁ、無害なのでいいですけどね^^;

 

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  【ベーキングパウダーにも変化する重曹ってすごいですよね】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は金井様(仮称:48才)です。

金井様は、遺産分割協議に際して、ご実家の宅地の相続税評価額を算出することになったのですが、宅地にセットバックの可能性があるという指摘が親族からあったとのことで、評価額の算出方法について相談にいらっしゃいました。

 

そもそもセットバックとは、建築基準法第42条の第2項に規定されている道路に面している宅地のうち、将来その道路を4m幅に広げる可能性を見越して、宅地を中央線より2mの範囲で後退させた部分のことを指します。この部分には建築物はもとより、門や堀なども建てることはできません。

なぜ、セットバックが個人の資産である宅地に設けられることになったかといえば、建築基準法第43条にある「建築物の敷地は、建築基準法上の道路に2m以上の長さで接していなければならない」という接道義務(火災などの災害時の消火活動、救命活動などに備えることを目的)があるからです。

そして、この建築基準法上の道路については、原則として幅が4m以上あることが必要とされています。しかしながら、日本には幅が4m未満の道が多く存在しているため、宅地が接道義務を果たすことができません。

そこで、この救済措置として、建築基準法第42条の第2項にて、いわゆる「みなし道路」が設けられたというわけです。このみなし道路は2項道路と呼ばれています。

 

さて、相続税評価の話に戻しますと、2項道路に接している宅地のうち、セットバック部分は家や建造物を建てらず、利用することができないのですから、所有者にとって価値の無い土地であるといっても過言ではありません。

一方で、接道義務が定められたのは1950年であるため、それ以前に建てられた古家に関しては2項道路に接していてもセットバックをせずに宅地利用されている場合もあるわけです(このような宅地に再建築をする場合に、セットバックが求められることになります)。

これらの状況から、セットバックを必要とする宅地の相続税評価額については7割を控除し、価値率を3割とすることで計算されます。

 

具体的な計算方法としては、(1)宅地全体の評価額を計算し、算出された評価額に対して、(2)セットバック部分の割合から、セットバック部分の評価額を算出します。そして、(3)宅地全体の評価額からセットバック部分の評価額の7割を差し引きすることで、最終的な評価額とします。

たとえば、敷地全体が200㎡(1㎡を100,000円とする)、セットバック部分が20㎡の宅地について考えてみましょう。

(1)宅地全体の評価額は20,000,000円です。

(2)セットバック部分は全体の10%なので、セットバック部分の評価額は2,000,000円です。

(3)20,000,000円-(2,000,000円×70%)=18,600,000円がこの宅地の相続税評価額となります。

 

ちなみに、自身が所有している宅地の一部が私道として利用されている場合にも、評価額の控除がなされています。

具体的には、通り抜けができる私道については100%の控除行き止まりがある私道の場合にはセットバックと同じく7割を控除し、価値率を3割として計算されます。

 

さて、相続税とは関係ありませんが、セットバックをした部分に関しては、固定資産税・都市計画税が非課税です。ただし、非課税とされるためには申告が必要です。

そもそも宅地については特例で固定資産税が6分の1に減額されていますし、セットバック部分も宅地全体の数パーセントであるため、あまり節税の効果が無い可能性もありますが、頭の片隅に入れておくべきでしょう。

 

金井様は、今回のご相談でセットバックについてもクリアになり、遺産分割協議が進むと喜ばれておりました。肉親であっても骨肉の争いになる可能性がある遺産分割については、できるだけスムーズに行いたいものですね。

 

本日はここまでといたしましょう。

遺産分割協議に全員が集まらない!行方不明者に対する失踪申告と不在者財産管理人の指定

こんにちは!

こうのとりです。

  

東京アラートって一体なんだったんだろうな~と思いつつ、

アメリカの株価暴落を後目に、経済活動再開ってすごい難しいな~と感じる日々です。

早く昔のように戻ればいいなと思いますが、油断は禁物ですね!

  

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【桜はすっかり新緑に変わりました。在宅ワークはニューノーマルになるのでしょうか?】

 

さて、今回ご紹介する案件のお客様は大内様(仮称:48才)です。

大内様は先日、お母様がお亡くなりになり、10人いる兄弟姉妹(大家族!)を集めて遺産分割協議をすることになったのですが、久々に全員に連絡をしてみたところ、その中の一人がどうしても連絡がつかず、困ってしまっているとのことで、ご相談に参られました。

たしかに、遺産分割協議については、相続人全員で行うのが原則です。遺産分割協議をするために、故人の戸籍謄本を辿っていくことで相続人を確定していく作業を行うのですが、確定した相続人に連絡をしていくのが、案外骨の折れる作業になります。大内様のように兄弟が多かったり、実は相続の権利がある親族が新たに見つかったりすれば、なおさらです。

しかし、連絡を取ろうとしてもどうしても連絡がつかない行方不明者がいる場合には、どうしたらよいのでしょうか?

 

その場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選定を申し立てることができます。

任命された不在者財産管理人が、行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加することで、協議を滞りないものとすることができるのです。

なお、申立てにあたっては、不在者財産管理人選定にかかる管理費用について、家庭裁判所に納める必要がありますが、予納金については30~50万円と高額になることには注意が必要です。

 

さて、もし不在者財産管理人を選定して遺産分割協議を行った場合、その後行方不明者が一向に現れなければ、第3者である不在者財産管理人が分割された遺産の管理をし続けなければなりません。これでは、不在者財産管理人にリスクが多すぎます。

このような状態を回避する方法として、行方不明者の遺産相続分は少なく配分しておいて他の相続人が一時的に預かり、もし行方不明者が戻ってきた場合に、預かっていた遺産を受け渡すという帰来時弁済型遺産分割の方法が利用されることがあります。

もちろん、遺産を預かる相続人に関しては、使い込みを避けるためにも、家庭裁判所に対して自身の資力が十分にあることを証明しなければなりません。

 

また、行方不明者である相続人が生きているかどうかも分からない場合には、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てるという方法もあります。

この申立てによって、行方不明者の消息不明となってから(最後の連絡など)7年が経過している場合に限り、失踪宣告がなされ、行方不明者が亡くなっているとみなしてもらうことができるのです。

ちなみに、震災などに被災して行方不明者となった場合(危難失踪)には、危難が去ったときから1年の経過にて失踪宣告の申立てが可能となる特例もあります。

なお、当然ではありますが、失踪宣言の申立てができるのは利害関係人に限られ、行方不明者の配偶者や相続人、財産管理人、受遺者など、失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者とされています。

 

失踪宣告を経た遺産相続について注意すべき点は、その行方不明者に子どもがいる場合、その子が代襲相続人となる点です。ただし、行方不明者が亡くなったとみなされた日が、被相続人が亡くなる前であれば、そもそも行方不明者は相続人でなかったことになるため、代襲相続は発生しません。

また、行方不明者が見つかって失踪が取り消された場合には、すでに行った遺産分割は取り消されないものの、受け取った遺産が残っているのであれば、その範囲内で遺産を返す必要があります。

なお、失踪宣告の手続きには少なくとも半年の時間がかかるため、相続税の申告期限(被相続人の死後10ヶ月以内)に間に合わない可能性が十分にあります。この場合、申告期限の延長だけでは不十分になるケースが多いため、一旦は不在者財産管理人を選任して申告期限までに相続税申告を済ませておき、失踪が宣告された後で改めて修正申告をすることになります。

 

大内様は、不在者財産管理人と失踪宣告の併用で問題を解決することになりましたが、遺産分割協議については、どんな状況であってもすんなりいくことはないなぁと、再認識させられたのでした。

 

本日はここまでといたしましょう。